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ご訪問いただきありがとうございます。大人の女性向け、オリジナルのBL小説を書いています。興味のない方、18歳未満の方はご遠慮ください。
BLの丘
七色の虹 6
2012-09-18-Tue  CATEGORY: 七色の虹
テーブルの上に置いたグラスに、高畠がビールを注いでくれる。同じく自分のグラスにも注ぎ足していた。
「あ、ありがと…」
手酌をさせてしまったことに申し訳なさが浮かぶが、そういったことに頓着する性格ではないこともすでに知る。
気がきくところはたった一つでも違う歳の差なのだろうか。
隣に並んでしまえば、正面から顔を見るとはいかないが、近付けた感じはずっとあった。

由利が買い置いていた野菜チップスには様々な色のものがある。
緑色のものはホウレンソウだろうか。黄色はかぼちゃ?赤いのはニンジン?黒いのは…。
少し硬めのポリッとした食感がつい手を伸ばさせる。
高畠は新しい発見に出会ったかのようにつまんでいた。
「面白いな、これ。塩気もちょうどいい」
「ユーリがさ、ネットで見つけては色々買いこむんだよね」
「ユーリのチョイスなの?」
「どこかの誰かサンに出会ってから、何気に機械に強くなっちゃってさぁ」
「ネットショッピングに、強いも弱いもないだろうが…」
由良の発言に高畠は呆れた口調を混じらせるが本気のものではない。
某社メンテナンス社員という人間が、あらゆる意味で機械物に詳しいのだろうな…とは高畠でも容易に想像がつくところだったが、拗ねたような由良の発言に苦笑を浮かべる。
家の中にいるのに、人間よりも機械に取られたような悔しさが滲み出ていたのだろうか。
今までと同じ生活を送っているつもりでも、少しずつ溝は深まっているのかもしれない。
痛いところを突かれては、また唇を尖らせた由良の目の前に、赤い色のチップスが届けられた。
高畠が無言で「あーん」の意思表示をしてくる。
高畠自身がこんなことをするのは非常に珍しい出来事だったが、由良は動揺を隠してそのまま口を開いた。
いつも苦々しい笑みで由良と由利の行動を見守っていた人だけに、やはりふたりだけの空間は特別の感情を抱かせるのだろうかと期待が高まる。
ほんのちょっとの仕草が、より一層近付けてくれるもののように感じられた。
ニンジンだと思っていたはずのものからトマトの酸味がふわりと鼻腔を漂った。
一瞬驚いたような表情を浮かべた由良の反応に、隣で”やっぱり”と分かった笑みがこぼれる。
そして同じ思いは…。

「俺もさぁ、最初食べたのがニンジンで、次がトマトで。同じ色でも違うんだなぁって気付いたよ。これ、なかなかイケるね。あとでユーリに追加注文、頼もう」
由利が選択したものに評価をもらえるのは嬉しくもあったけれど、今は悔しさの方が半分。
同僚なのだから、親しい話をするのは当然のことで、由良自ら『由利が注文したもの』と公言したのだから頼るところがそちらに向かうのは否めないとしても…。
遠慮もなく手を伸ばしてくれる姿には、由良も気が緩んでいく。
由良も適当に掴んでは高畠の口元に寄せた。
「じゃあ、これは?」
ベージュ色のチップスをつまみ上げる。
「あ、それ、さっき食べた。じゃがいもだろ?」
「高畠さん、食べるの、早すぎっ」
小さな苦情もものともせず、由良の指まで食べてしまいそうな勢いで食いついてくる。
唇に触れた指先…。それだけで緊張を含ませた。
慣れたことなのか、さりげない仕草でかわされてしまうことが、やっぱり悔しい。
自分よりもずっと先を行く”大人”みたいだ。
実際には一つしか歳が違わないのに、すごく離れているような気がするのは、見た目なのか、落ち着きなのか、日々新しいことを生みだそうとする脳の活性化なのか…。
高畠は常に由利の近くにいる。
それと同じ感覚なのだとは百も承知していても、やはり由良を”ひとり”として見てほしい欲望が渦巻く。
いや、見ていてくれているのだろうが、もっと深く、由利と切り離したもの…。
あからさまに由利だけを特別視した羽後のような独占欲が欲しいと思ったのは初めてではないか…。
態度を変えてはいけない…と意識しながら、「じゃあ、これ…」と由良はまた食べさせるために手を伸ばす。
やはり触れた唇の温かさに、ゾクッとするものが背筋を這った。

高畠は何を思うのだろう…。
飲みながらの、いつもと変わらない清々しい態度にこれ以上を望むのは無理なのかと葛藤が襲ってきた。

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思いっきり足踏みしている…(汗)



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七色の虹 7
2012-09-19-Wed  CATEGORY: 七色の虹
初めて出会ってから三年の月日が経過している。
ついこの前まで、由利と余所余所しい態度を取っていたせいで高畠とも距離があったが、今では他部署では一番近い存在になっていた。
もちろんそこは、由良自身から近付いていった意図もある。
由利に恋人ができたことが、何よりのきっかけになったのだが、周りを取り囲む人も分かったように受けとめてくれたことがより居心地の良さを生んだ。

三本目の缶ビールが終わる頃にはだいぶ時間が経っていた。
家の中でこれだけの量を飲むことはまずない。家の中という気安さも酔いの回りを早めるのだろうか。
ソファの前で足を伸ばした格好で座った由良は、天井を仰いで「ふーっ」と大きな息を吐き出した。
その様子を隣で見ていた高畠の手が伸びてくる。
「飲み過ぎて、誰かさんみたいにいきなり意識を飛ばすのは勘弁してよ」
火照った頬に触れた高畠の掌は冷たくて、もっと触れたいと思ってしまう。
「う…ん…」
“誰かさん”は、ここまで送ってこられた由利のことだろう。
まぁ、自宅にいることを考えれば、たとえここで眠ってしまっても、由利ほどの迷惑にはならないはずだ。
無意識のようにそのひんやりとした肌に縋ってしまいそうになる。
微妙な動きにも高畠は気付くのだろうか。
「由良?」
覗きこむようにしてくる高畠の表情が灯りに遮られて陰りができる。
手がかかる、迷惑な存在だとは思われたくなくて、気力だけで奮い立たせる。
「平気、平気っ。…あー、でも、もうお酒はいいや」
無駄に明るい声を出した由良を、少しばかり心配そうに見つめてくる。
溜め息ともとれる小さな吐息の後、頬から離れた手は頭上を撫でた。
「もう寝るか?俺は帰るから戸締りはちゃんとしとけよ」
グラスに残っていたビールを一気に飲み干しては、すくっと立ち上がって、グラスや空き缶、すでに空になってしまった野菜チップスの乗っていた皿を片付け始めた。
そんなことは自分でやるのに…と慌てて由良も後を追う。
「高畠さん、いいよ、置いておいて…」
それから、これだけ飲んで、ちゃんと自宅に帰ろうとする精神力にも感心してしまった。
「ひとつやふたつの食器を洗うのに、何分かかるっていうんだよ。ごちそうになったお礼ってことでいいから」
全く気にした様子もなく、手早く片付け終えてしまう。

由良は一つの疑問をぶつけてみた。
そんな台詞が零れたのは、やはり酔っ払っていたからなのだろうか。
「泊まっていかないの…?」
ピクッと一瞬高畠の動きが止まる。
徐に振り返られては困惑と動揺の表情を向けられた。
「由良~ぁ。ユーリの無防備さも心臓に悪いけれど、おまえも充分”危険発言”しているって自覚しろ。…やっぱり兄弟だな、おまえら…」
最後は盛大な溜め息に送り出された台詞のようだった。
もちろん、他の人間にこんなことは言ったりしない。
その影に潜む危険度は由利よりも良く知っていると自負しているし、そんな軽い人間ではない。
高畠だからこそ、この返答だったのだろう。他の人間だったらどう返されるのか…。
そんな印象を高畠に植えてしまったのは逆効果だっただろうか…。
咄嗟にうまく回らない頭をどうにか回転させながら、由利と同レベルに落とされた悔しさのようなものがまた湧いた。
「別に…」
再び唇を尖らせてしまった由良の頭上を、濡れた手をタオルで拭いた高畠が撫でてきた。
「心配してくれてありがとう。でも俺はその辺で寝こけていたりしないから安心して。由良こそ一人で眠れるのか心配になるけれど」
最後は完全に茶化した態度だった。
でもその奥には一人にさせることの不安も垣間見える。
そんなに由利と一心同体のように捉えられているのか…。

…寝られない…って言ったら、そばにいてくれるのか…?

とろけたような脳みそは不埒なことを考え始めてしまった。
たぶん、今、過ごしている由利の時間が見えてくるから…。
わずかに残った理性だけが、その発言を避けてくれる。

「平気に決まっているじゃんっ。幾つの子供だよっ」
尖った口調にクスクスといつもの笑みが注がれてくる。
「うん。ほら、おいで」
高畠は由良の手首を取ると引っ張っていき、リビングに放り投げていた上着や荷物を手にした。
そのまま一緒に玄関に向かう。
高畠が靴をはいている後ろ姿を黙って見つめているしかなかった。
振り返った高畠は、由良に釘を刺してくる。
「由良、俺、帰るからな。ちゃんと鍵、閉めろよ」
ここまで連れてきたのは戸締りの音を聞くためだろう。

鍵を閉めて、ここで転がって眠ってしまったらどうするつもりなのか…。
それはもちろん自己責任の範囲になるのだけれど…。
そこまで付き合いきれないと突き放されたような気分にも陥らせてくれた。
だけどやっぱり迷惑はかけたくなくて、頷くにとどまる。
「今日は…、ありがと…」
「こちらこそ。メシ美味かったよ。次は奢ってやるからな」
ふわっと笑った高畠に、「そんなのいいから…」と断りながら、次の約束を取りつけられたようで沈んだ気持ちが少し浮き上がる。
去り際、また高畠はいつものように髪を撫でてくれた。
この道を閉ざしたくはないけれど…。
鍵を締めるのは玄関ドアなのか、…自分の心なのか…。

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七色の虹 8
2012-09-20-Thu  CATEGORY: 七色の虹
由利が帰ってきたのは翌日の夕方だった。
毎度のことなので今更嫌味を言うこともないし、言ったところで由利の心を傷つけるだけになる。
かといって、何があったのかを聞く気にもなれない。また報告する気も…。
だけど家の中のわずかな変化を気付いてしまうものなのだろう。
リビングのソファにのんびりと寝転がりながらテレビを見ていた由良に、キッチンから飲み物を持ってきた由利が話しかける。
「由良?誰か来たの?」
友人はほとんど共通といっていい。
だから誰が来ても嫌がられることはなかったし、不思議にも思わないのだが、またそれとは違ったものを由利は敏感にも感じ取ってしまったのか…。

由良は一瞬悩んだが、隠すのもなんだかなぁ…と口を開いた。
由良よりも由利の方が高畠の近くにいるのだから、知られるのは時間の問題だろう。隠す意味がない。
「昨日、高畠さんが来た」
由良の返事はあまりにも意外だったのか、ラグの上にペタンと座った由利は、あからさまに驚いて、瞬きを止めた。
「高畠さんっ?!なんでっ?!どうしてっ?」
自分の同僚と親密なお付き合いがあると匂うような発言は確かに驚きのネタだけど…。
普段の付き合い方は知っていても、自宅にまで呼ぶとは、想像の範疇を越えているのだろう。
由良だって、新庄が由利と一緒にいたと聞いたら目や耳を疑う。
しかもその発言だけで、みんなが一緒ではなくて、ただ一人を連れたと由利は理解できていた。

「たまたま。偶然。…昨日の帰りに高畠さんと会ってさ。ごはん食べる話が、うちで…ってことになっただけ」
「そうなの?…ごめんね、由良…」
申し訳なさそうに謝ってくる由利に、由良は苦笑を浮かべる。
一人にさせてしまった責任や後ろめたさなんて、感じることはないのに…。
いつも一緒にいたふたりが離れていくのには、まだ時間がかかるのだろうか。
由良は寝そべっていた体を起こした。
「別にユーリが謝ることなんかないじゃない。高畠さんだって『一人での夕ご飯がつまらない』って付き合ってくれたんだから、お互いさまなんだよ」
本当かどうかは疑問だが、心の片隅にそれくらいの感情の一つもあったのではないかと、勝手に位置付けてしまった。
案の定、由利は納得して「そうなんだ…」と頷いてくれる。
誰もが由利を『無防備』というが、それはこうした”真に受けてしまう”態度もあるのだろう。
今は由良が言うから尚更…。
無垢な部分はいくつになっても薄れていかない。
それでも淋しい時間があったとは理解できるのか、赤ちゃんがハイハイするような格好で近付いてきた由利は、由良に抱きついてきた。
…由利みたいに淋しがったりしないのに…と内心で一人ごちる。
「もう…」
抱きしめ返しながらポンポンと背中を叩く。
気遣われているんだか、気遣っているんだか…。
浮かぶのは苦笑ばかり。
これこそが高畠が心配した”一心同体”なのだろうか、と振り返ってしまう。
お互いにそれぞれの相手ができたとしても、離れられないものを持っているのは確かだと、再確認させられる。
でもそれを認めてくれる相手を求めてしまうのだろう。
分かるからこそ、由良はきちんと区別をつけてくれる高畠を身近に置きたいと思うのだと身に染ませた。
ただの後輩なのかもしれないけれど…。
同僚の兄弟という存在でしかないのかもしれないけれど…。
一緒にいる時間が長くなればなるほど、高畠の良さが見えてくる。
由利が安心して身を寄せられる人だと知るからこそ、由良も甘えてしまう。望んでしまう。期待してしまう…。

「由良、今日はご飯、作ってあげるからね」
「ホントに?ありがとう」
「カップラーメンでもいい?」
「…………」

それは間違えなくても、『作る』とは言えないだろう…。
だけどどこかだるそうな由利を知れば、無理もさせたくなかった。
気持ちだけ、ありがたく受け取っておこう。
由良は微笑む。
…甘いなぁ…。
自分の由利に向ける態度に、自身で呆れてしまうところがあるのだが、譲れないところでもある。
「ハイハイ。今、何種類、ストックがあったっけ…」
由良の許可が下りたと分かれば由利の表情も緩んでくる。
家事を面倒くさがるため、レトルト食材や乾物は普通の家よりあると思えた。
男の二人暮らしなんて、こんなものだろう。
恋人ができたとしても二人で過ごす空間は変わらないのかもしれない。
いや、逆にこの時間が欲しいのか…。
見つめ返してくる同じ顔の瞳が満足げに微笑んでくれる。
由良の気持ちを充分に読み取ってくれているからこそ…。
向こうから近付いてきてくれる人が愛おしく思えた。
…もちろん、血縁者としてだけれど…。
由利を抱きしめる。ずっと感じてきた体温も感情も…、分かっていて新しく求めていくもの…。
由利は見つけた…。由良にしてみたら一つの安堵だったのだろうか。

でもまだ明かせない…。
由利にだけは打ち明けることはできないと強く自分を制する力を持つ。
板ばさみになるのは、由利なのだから…。

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七色の虹 9
2012-09-21-Fri  CATEGORY: 七色の虹
休み明け、由良は食堂で高畠と再会した。
新庄と食堂に入っていこうとして、後ろから「由良~」と聞きなれた声が響いてくる。
振り返れば大きく手を振った由利が駆けだしそうな勢いで笑顔を向けていた。
その後ろで苦笑した高畠は、半ば呆れかえっている様子だ。
由利が由良と顔を合わせるたびに、童心に返ったような態度に出るためで、本来の由利の姿とも言えるものだった。
腕を絡ませて抱きついて…。一連の”挨拶”を済ませて、由良は高畠に向き直る。
いつもと違う光景がそこにはあった。
「あれ?湯田川さんは?」
企画室の人間が三人揃うのが常なのに、一人足りない。
由良からの質問をもらった高畠が、「なんだか人に会うとかで外に行った」と簡潔に答えてくれる。
休憩時間になにをするのも自由なので、由良も新庄も素直に受け入れてしまう。

テーブルに着こうとして全員が無意識に顔を見合わせた。
どう座ろうかと考えてしまったのだ。
普段であれば由良を中心に両脇を由利と新庄、前に高畠と湯田川が座るのだが、四名となった現在、二名ずつに分かれるところだろう。
当たり前のように新庄が高畠の隣に行こうとしたのは、離れたがらない双子を知るからだった。
だけど同時にこんなチャンスは滅多にあることではなく、由利には申し訳ないけれど、由良は高畠の隣に寄りたかった。
咄嗟に名案が脳裏を過っていく。

「俺が高畠さんと並ぶよ。たぶん、みんなユーリと間違えるよ」
「ってことは本荘君は”由良”になっちゃうってことか」
悪戯心満載の由良に気付いた新庄がクスクスと笑いながら位置を変わってくれる。
これには高畠が呆れるかと思ったが、由利さえ許せばどんなことでも受け入れてくれる寛容さがあった。
結局、精神的な意味も含めて、高畠の中では由利に基準があるのは致し方ないことなのだろう。
そこは悔しいところでもあるが、職場を共にすれば気にするのは当たり前だった。
一瞬戸惑いを見せた由利だったが、目の前にいるのだから反対はされなかった。
もちろん由良の企んでいることも理解しているから、その”いたずら”に乗ってきてくれる。
少しの後ろめたさはあったけれど、一番もっともな理由づけだった。

新庄と由利が並んでいる姿を見るのも不思議な感覚だった。自分が新庄の隣にいる時も、こんなふうに見られているのだろうか。
新庄はやはり由良に接するのと変わらない態度で由利に声をかけてくれている。
すでに免疫のついた新庄だからこそ、由利も気を許しているようだった。
由良は高畠のトレイに視線を落とした。
さんまの蒲焼丼のご飯は大盛りだし、他にミニ天ぷらうどんが添えられている。色とりどりの具材が煮込まれた肉じゃがの小鉢付きだった。
すでに食べる量は知っていたが、改めて見れば、すごいなぁと感心し、また、先日出した料理の少なさを思い起こさせた。
ちなみに今日の由良と由利は揃って親子丼だった。お味噌汁と漬物がついている。
「やっぱり物足りなかったんじゃ…」
ボソッと零れてしまった言葉に、高畠が「?」と首を傾げる。
由利と新庄も何かと耳を傾けてくる。
「この前…。ご飯、少なかったんじゃ…」
由良の言いたいことは高畠もすぐに理解できるのだろう。ポンポンと頭上に手のひらが乗る。
「夜の寝る前にそんなに食ってどうするんだよ。酒も入っていたんだからちょうどいいか、摂り過ぎだろ」
「そうだけど…」
今は昼間だし、エネルギー補給はしなければいけないの、ともっともな意見を語られた。
それから思い出したように高畠が由利に向き直った。
「あっ、そうだ、ユーリ。あの”ナントカチップ”、俺買いたいんだけれど、どこで売ってるの?リピートすることがあるのなら一緒に頼んで欲しいし、ないならサイト、教えて」
「"ナントカチップ”?」
由利が素っ頓狂な声で聞き返してくる。
勝手に袋を開けてしまったことを伝え忘れていたと、由良も今になって気付いた。
それ以前に、何も言ってこないけれど、由利はすでに気付いているのだろうか。
「この前、ユーリがネットで買った野菜チップってやつ、半分食べちゃったの…」
由良が改めて言えば、「そーなんだ…」と大して気にしていない様子で返される。
まぁ、こんな反応だろうな…とは前もって想像できたことでもあったけれど。

新庄だけが黙って様子を伺っているという感じだった。
会話の端々から状況を読み取っているのだろう。
「うん、いいよ。美味しかったんだ~。よかった~ぁ」
はやり自分が選んだものを評価されれば嬉しいだろう。
「まさか由良、ユーリに黙っていたんじゃ…」
今頃になって現実を知ったらしい高畠が半ば咎めるように由良を見下ろしてくる。
だけどこれが普通だった自分たちに、端から責められる権利はないだろう…と思ってしまうのは甘えか…。
まぁ、そこのところの繋がりの良さも、咄嗟に判断できない高畠でもなく、スッとこの話題からは反らされた。

いつも通りに食事を進める。相変わらず食べるのが早い高畠と新庄だったが、由良と由利はマイペースで進んでいく。
会話はテレビの内容だったり、またネットの話に戻ったりと、結構賑やかだった。
由良が「肉じゃが、もらってもいい?」とそっと尋ねると、箸先でつまんでいた高畠がそのまま由良の口元に寄せてくれた。
由良と由利の間では普通の出来事でも、高畠が相手となれば違和感も生まれるというものだろう。
でもその自然さが、由良をより昂らせてくれる。
嬉しくて頬が上がった。
自分でいつも食べているはずのものなのに、人からもらうとどうしてこんなに美味になるのだろう…。
いつもであれば由良が気付く、由利が頬張っては口端を汚した由利を、新庄がペーパーで拭ってくれていた。
まぁ…、羽後に見せられる光景ではないだろうが…。

そして誰もがきっと由利と由良の違いなど分かってはいないだろう。
だからこそ、高畠に甘えられたのかもしれない。
由利はこんな風に甘えないかもしれないけれど、由利になれるから、高畠に近付けることでもあった。

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七色の虹 10
2012-09-22-Sat  CATEGORY: 七色の虹
食事を終えると由利が由良に「今日はカフェラテ、買いに行くの?」と聞いてきた。
毎日…の出来事ではないが、週に二度三度とあれば、今日はその日なのかと思われるのも自然な流れになる。
由良は束の間、考えてしまった。
立ち上がればこのまま、ここの人たちとは別れることになる。
高畠の隣に座った居心地の良さをまだ味わいたかった由良は、次に起こす行動を躊躇った。
だからといって、高畠も長い時間ここには留まらないだろう。
「うーん、…どうしようかな…」
チラリと隣の高畠を見ると、不思議と視線があってしまった。
…別についてきてほしい…とか思っていないのに…と、心の奥底で呟きながら、そんな時間が持てたらいいのに、という期待がないわけでもない。
その時、新庄がいつもでは言わないことを言い出した。
「由良が買いに行くんだったら、俺の分も頼みたかったんだけれどな」
一人でどこかに行かせようとすることはまずなかったから由良の方が驚いた。
一緒に行くというのが今までの新庄であって、由良が故意的に避けない限り、ついてくる存在だったはずなのに。
更に「本荘君、俺と一緒に待っていようか」とまで由利に言い出して、つまりのところ、由良だけでなく、高畠まで追い出すような流れを作り上げていた。
特定の相手ができた由利に対して、今更何かを仕掛けるような新庄ではない。
というより、由利に何らかの感情を持っているとはとても思えない。
そこは一緒に待たれても安心できる相手ではあるけれど…。
少しの動揺を滲ませながら、由良がどう返事をしようかと悩むと、高畠がすぐに「ユーリは?」と尋ねた。
由利も流れが分からないようだった。
「あ…と…」
そのぎこちなさを高畠がすぐに払拭してしまう。
「ユーリの分も買ってきてやるよ。欲しかったんだろう?」
由利から声がかかった意味まで理解しているらしい。
その気遣いに嫉妬するものがあるけれど、「ほら、由良」と声をかけられて嫌がる理由もなかった。
不意に訪れた二人きりのデート…と言えるのか…。
高畠に促されて後に付いていく。
すっかり慣れた道のりだった。
相変わらず店は混んでいたけれど、待たされる時間がもっとほしいくらいになる。

どこか気遣ってしまった…。
「あ…。高畠さん、ごめん。ユーリが飲みたいの、汲み取ってくれたんだ…」
「何、謝っているの。いつものお買いものコースと思えばいいんじゃないの?」
言いだしっぺの由利が何を思っていたのかまで掬い取ってくれるのは同じ環境で働く人だからなのか。
羨ましくもあり憎たらしくもあり…。
だからといって本当に恨むものに変わるわけではない。
由利を心配してくれるからこそ、由良のことも気にかけてくれている。
第二…の存在は否めないのだけれど、それでも嬉しいものであった。
由利がいなかったら、高畠とは知りあわなかったし、こんなふうに親しくなることもなかったのだから…。
「でも、誰かがいてくれるって嬉しいよ」
一人並ぶ時間よりもそばにいてくれる人のこと…。
ポツリと呟いた由良に、いつもと変わらない手のひらが降ってくる。
「由良は”お兄ちゃん”なんだって思いすぎなんだよ」
「え…?」
呟かれた言葉は一瞬で、その意味を理解できないうちに歩が進んだ。
何をどう言われたのか…。どう受け止められているのか…。
踏み込めない恐ろしさが足元から襲ってくる。

何も言えずに、他愛のない会話で間を繋いで…。
社屋のロビーに戻ってはそれぞれの部署に別れた。
もっと話したい…。その欲求はかなえられることはないが、最後まで見守ってくれる優しさがうかがえる。
きっと、新庄も由利も、食堂から離れているだろうことは、なんとなく想像がついていた。

案の定、事務所に戻った由良を迎えた新庄は、カフェラテを受け取りながら、まだ話したいプライベートな時間の流れを作ってくれた。
「由良ってさぁ…。高畠さん狙いなの?」
唐突に告げられたことに、飲み込んだ甘いカフェラテが苦さを運んでくる。

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