FC2ブログ
ご訪問いただきありがとうございます。大人の女性向け、オリジナルのBL小説を書いています。興味のない方、18歳未満の方はご遠慮ください。
BLの丘
原色の誘惑 6
2012-08-18-Sat  CATEGORY: 原色の誘惑
その後、由良がどうあの男に話をつけたのかは、由利が知ることはなかった。
食堂で湯田川が「デザートも食べる?」なんて、人の意見も聞かずに三人分のティラミスを購入していた。
いつもであれば食べ終わればさっさと立ち去ってしまう食堂のはずなのに、そんなおかげで長居をすることになる。
想像力の逞しい企画室の人間は、簡単に、先日の酔い潰れた由利と先程の男の繋がりを理解していた。
さらに繋がってくる、兄弟の在り方。
常に共にいた人間の心情を把握できるから、由利は本音が晒せないのだろうということも。
素直に”惹かれた”という感情すら隠そうとする。
それは”兄”のためなのか、傷つきたくない自分のためなのか…。
軽い男なのだな…とは、出会っただけで悟れた先輩たちだった。
たぶん、由良にまで声をかけていたと分かった時点で…。

「ユーリ、味わって食えよぉ」
「おまえが食いたかっただけだろ」
「人におごらせておいて、良く言うわっ」
人を和ませる会話が温かい。
クスクスと由利は笑みを浮かべたが、心の底は再会してしまった人間に引き寄せられていた。
人を平気で傷付けるような、嫌な人だったはずなのに…。
まるで初めて出会ったような印象の違いがあった。
その顔や態度を見ては、弾んでしまった心がある。
否定も言い訳もできない、湧き上がるものがなんなのか、溺れていくような恐怖が立ちはだかってあの場所から逃げ出した。
由良と一緒に向かう時は、与えられた屈辱を返してやろうという意気込みまであったはずなのに。
なにもかもが弾け飛んだ…とはこのことを言うのだろうか…。
顔を見た瞬間から、あの人は”別人”だったのだ。

双子が揃った…という噂から、社内はどこか騒然としていた。
空気がいつもと全く違う。向けられる視線の数も違う…と、肌で感じるのが由利だった。
気にさせないようにと高畠と湯田川がフォローに回ってくれていたけれど、収まることのない雰囲気は一種の興奮を纏っていた。
そこに由良が現れてしまったものだから、もう抑えられるものは何もない。

剣呑な雰囲気を漂わせながら、由利の隣にドカッと座りこむ。
自分の隠した感情を悟られているのは知れることだった。
「ユーリ、あの男に何感じてんの?ねぇ、自分が何されたか、わかってる?」
こんな場所で話題にされたいことではないが、由良の怒りも収まらないのだろう。
やっぱり感情など気付かれてしまっていたことに対して、隠し事もできない不甲斐なさも由利を落ち込ませた。
もちろん”護りたい”と大事にされる気持ちも伝わってくる。
「べつに…」
ドギマギと視線を伏せてしまった由利を庇うように、目の前に座った高畠が由良を宥めた。
「まぁまぁ。由良、メシ、まだなんじゃないの?何がいい?買ってきてやるよ」
「食う気なくした…。はぁぁ……、会わせたらもっと嫌うと思ったのに、なんだよ、この結果…」
やはり物事を見極めているのは由良のほうなのだろうか。
盛大な溜め息のあとに呟かれた独り言は、誰に向けられて意味を理解しろというものなのか…。
由良は由利が握っていたフォークを取り上げると、食べかけていたティラミスを頬張る。
今更反対する人間もいない。
どこか諦めの境地を迎えた由良を高畠と湯田川は認めてしまう。
反感はあっても最終的に選ぶのは、『由利の幸せ』という言葉なのだろうか。

由良は一枚の名刺を出した。
「絶対に渡せって脅されてきたから。最初こそ間違えても、あの一瞬で俺とユーリの違い、ちゃんと把握できてるんだよ。びっくりした。そのことで叩きのめしてやろうと思ってたのに…」
由良の策略にははまらなかったことに感心している点も、ここに繋がることになるのだろう。
違いを見極められない人間に惹かれることなどない。その考えは由良も同じだったようだ。
『羽後雄和(うご ゆうわ)』
渡された名刺の名前を繰り返し読む。
ナンパ男だ、痴漢男だと散々に言われ、だけど改めて本人を前にした時、またその思いがどんなふうに由良の目にかなったのか…。
「ゆら…」
「門限10時。守れなかったら一カ月、全室の部屋の掃除と食事当番」
由利の隠した気持ちをさりげなくでも汲み取ってくれることはありがたいけれど…。
そうやって護ってくれる存在も大きいけれど…。
むくれた由良の台詞に目の前の二人は大爆笑だった。
「今時、どこの人間が『門限』だよっ」
「いっそのこと、帰らなきゃ、掃除も食事もしなくていいんじゃない」
半ば煽ってくれる湯田川の言葉には、ますます機嫌が悪くなっていく由良だ。

いやいやいや、まだまだそんな急展開はないんだって…っ。
焦る由利の心情など丸ごと無視。
だけどなぜか、ふわんと浮き上がるような感情に出会った。
軽薄な男かもしれないけれど、待っていてくれる…そんな気持ちが伝わってきたような気がしたから…。
たぶん、由良がこの名刺を預けたことだけでも、認められた何かがあったのだろう。
人を見る目は、きっと由良の方が確かなのだろうから…。

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
人気ブログランキングへ 
ポチってしていただけると嬉しいです(///∇//)

成パパが追いかけてきた意味が分からない…(←やっぱり不明な人気順…)
すみません、だれか、コメント欄に、一言入れてくれませんか。
本当にカラッポすぎる頭なんです…。(成パパ、何もコメントがなくて…。何を希望されているのかしら。)
みこっちゃんでも充分なくらい悩まされているのに、みっちゃんまで追加ですか~~~。
どーしよー。
もうこの際、安住と光也の禁断の恋でも書くか~(←ありえねぇぇぇぇぇ。これこそありえない。全く想像できない)
安住とみこっちゃんのほうがまだ可能性ありだなぁ…。(←いえ…)

次の追い上げ…って栗本なんですか…。冷汗…

トラックバック0 コメント3
原色の誘惑 7
2012-08-19-Sun  CATEGORY: 原色の誘惑
どんな初心な小中高生だろうかと思ってしまった。
由良にもらった名刺の一枚を、何回も眺めてしまう。
昼休みを過ぎてすでに就業時間。
座った自分の席には、積まれている書類の山がある。
新しいものを企画していく…、また、その評価をまとめていかなくてはならない場所。
それなのに…。頭は再会した、別人ともとれる人物に惹かれているのだ。

「ユーリ、新企画の統計…、…、ユーリ?」
高畠に声をかけられて我に返る。
「あ、はい、はい…っ」
見ていた湯田川が溜め息とも呆れともつかない息を吐いた。
「ユーリちゃん、心、ここにあらず。あのさ、電話の一本も入れた方がいいんじゃないの?そんなボーッとして」
動揺を聞きつけた赤倉が話に乗りこんできた。
「なんだか、昼から騒ぎがあるんだが…。本荘、心配事があるなら…」
「係長、そんな心配、ぜーんぜーん」
赤倉の発言に高畠が手を振っている。
確かに今更、心の中に渦巻くものが個人的な、恋愛ごとであると分かるから、改めて口にしたりしないが…。
私情を挟むのはいけないことだとわかっても、脳裏を横切っていく存在は払拭できなかった。
「僕…」
だからといって、こちらから折れていくような、堕ちた態度には出たくないプライドもある。
あの、強く出てくる姿勢には確かに惹かれていたのかもしれないけれど…。
やっぱり悔しい思いはどこかにはびこっていたのだ。
なのに、ハマってしまっている…。
こんな自分を見た時、あの男はまた、口角を上げた笑みを見せるのだろうか。
その仕草だけでも…いや、もう、いい、言わない…。

由利がうだうだと考え込む隣で、高畠が見つめていた名刺を取り上げた。そのまま電話機を操る。
「ったく、ラチあかねぇ」
「た、たか、はた…さん?」
相手にはすぐにつながったのだろう。
かろうじて聞こえていた呼び出し音はすぐに切れた。
「ユーリに直接言えよ。仕事にならねぇ」
『だれ?』
「ユーリを心配する人でーす。あとさ、由利と由良を間違えた謝罪もな。兄ちゃんが認めたんだ。堂々と胸張って来いよ」
“兄ちゃん”って誰が兄ちゃんなんだか…。
そうやって周りから堀を固めてくれる状況は嬉しさでもあったけれど…。
もちろん不安も宿している。
『由利は?いいって言ったの?』
「さぁな。そのあたり、決めるのは本人同士だろう。とにかく、このふぬけた存在、どうにかしてくれない?明日にでも解雇してやりたいんだけど」
『あ、その方向でお願いします』
冗談が冗談でなくなる瞬間。
さすがにその返事には高畠も絶句していたけれど…。
囲いこみたい存在に、湯田川は爆笑だった。
当然、それどころではない由利だったのだが…。
「何言っているんですか―っ」
『由利、そこにいるの?かわって』
聞こえた声に甘い囁きが被さってくる。
きちんと聞きたい声のはずだった。
躊躇いとか動揺とか、色々なものが混じり合って、だけど電話を手にしたら、早い鼓動が胸を刻む。
押さえられた電話が、相手の吐息まで伝えてくるようだった。
「あ…」
『由利?』
かろうじて漏れてしまった声に、確認のしっとりとした声音が響く。
電話機越しだからなのか…。
もっと男らしいものを感じた。

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
人気ブログランキングへ 
ポチってしていただけると嬉しいです(///∇//)
栗本~。
なんでこんなに人気が出ているんだか…。
どこまで発達してくれる人気票なんだろう…。
わかんない…わかんねぇ…。
栗本さん、譲原さんに振られ続けた日々の中、手ぇ出した誰かいたんですかね。
もう、本当に分からない私…。
昨年も、何故人気を集めたのか理解できないまま、ここにたどりついて…。

週末、またお休みの予感…。
書けたらupします。

アンケは好きにかいておいてください。
つかね、年配者にそんなに何か聞きたいアレがあったんでしょうか。
今回、どっちとっても年配者なのに…。
トラックバック0 コメント5
原色の誘惑 8
2012-08-19-Sun  CATEGORY: 原色の誘惑
R18 性描写があります。閲覧にはご注意ください。


『由利?』
返事ができずにいた由利に、再び声がかけられる。
なんと答えたらいいのだろうか。
一瞬の悩みの後、「う、…うん…」と小さな声が零れた。
電話機の向こうから、安堵したような吐息が漏れるのを耳にした。
『この前…、悪かったよ。あの後どうなったかって、本荘さんに聞いたけど…』
この前、というのはトイレでの一件だろう。名字で呼ぶのは由良のことで、たぶん仕事上の立場がそう呼ばせるのだろう。
「うん…」
一時は逆上するくらい怒り心頭だったのに、今は謝罪の言葉を素直に受け止めてしまう。
耳に響いてくる声は、やはり初めて出会った時とは全く別人のもののようだった。
『だけどさ、あの時の由利、マジで可愛かったんだよ。本気で嫌がられるのもなんだし…と思って引いたけど…』
…あれで”引いた”のか…?
疑問が脳裏に咲いてしまう。酔っていたのは由利も一緒だったが、けしかけていい悪戯の範囲ではなかっただろう。
覗きこんだり、尻を触ったり…。
『だから今日、本荘さん、見た時はすげぇびっくりして…。最初は動揺で違いなんて分からなかくて由利だと思い込んでいたけれど、なんていうかな…。ふたり揃うと、雰囲気が完全に違うのな…。間違えたことは悪かったって本荘さんにも言っておいたけどさ。…由利、こうして電話してきてくれたってことは、期待してもいいってこと?単なる通り過ぎだったら諦めもつくけれど、居場所が分かった今、俺、無理だわ…』
その『無理』は諦められないということなのだろうか…。
そこまで自惚れていいのかと由利は自身に自制をかける。
気を引きたくて起こした痴漢行為は甚だしいものだけれど、印象を植え付けるには充分だった。
憎たらしかったはずなのに…、真摯に囁かれる言葉はジンと胸の中に落ちてくる。
「僕…」
これが会社の電話だからだろうか。周りにいる人の視線も感じるからなのか、由利から言葉が発されることはなかった。
その状況を、雄和も悟れるのだろう。
無理に何かを求めはしない。
『由利、時間作れない?今日でも明日でも…。何時でもいいよ。迎えに行くから…』
きちんと向かいあって、最初からやりなおそう、という提案に、どう返事をしたらいいのかと、やはり由利は黙ってしまった。
困ったように見上げた先、高畠が、聞こえていないのだろうが、内容を理解できているように、「頷いとけ」と笑ってくる。
爆笑していた湯田川が、わざとらしく相手に聞こえるように「門限、10時だって~っ」と大声を上げた。
『は?』
何やらかわされる複数の会話に、目に見えない人は疑問の声を上げたけれど…。
想像力の豊かな企画部の人間は、時に恐ろしい…。

「な、なんでもな…い…。…あ、あの、携番、言うから…」
『うん、ありがとう』
素直に受け答えをしてくれる姿勢に、鼓動はますます早くなる。
もう出会った時の嫌なイメージはどこにも湧いてこなかった。
今が仕事中だということも分かるから、この場での会話を切り上げたかった。
自分の番号を伝え、電話を切るとホッと溜め息が漏れた。
高畠と湯田川が同時にくしゃくしゃと髪を撫でてくる。
「ちょ…っ、もぅっ」
「由良はさ、ユーリを泣かせる奴、絶対に許さないよ。ユーリが我慢して耐えることも」
「そうそう。だから思いのままに進めばいいんだよ。ユーリが幸せだって言えれば、由良も満足するんだから」
高畠と湯田川に同じことを言われて、でもやはり控え目な態度になってしまう。
それは由良から離れていく恐怖にも似たものなのだろうか。
ずっと一緒に育ってきた。いつだって一緒にいた。一番近くにいたのは由良だったはずなのに…。
まるで裏切るような後ろめたさが湧きあがってくるのだ。

その日は定時で上がった。
待ち合わせたように由良も姿を見せて、ふたりで並んで帰る。
雄和のことをどう話題に出そうか、だけど言えないまま、家路について、あり合わせの食事をして、風呂に入った。
一緒にいるのに、どこかぎこちない空間に、戸惑いを覚えているのは、ふたりともなのだと思う…。

リビングで何度も溜め息を吐く由利の心情を分かったように、由良が隣に座った。
肩を抱かれて、胸に抱き寄せられて、もう何年と味わってきた安らぎを感じ取る。
「由良…」
呟いた唇を、同じ形のものが塞いだ。
温かい…。
吐息を混ぜ合わせるように口腔を舐めあう。
絡ませた舌先が、新たな水音を生んだ。
不安になる由利を慰めてくれる者…。
「ユーリ。今日、一緒に寝る?」
時々、魂が惹かれあったように、寝床を共にすることがあった。
欲求不満とも呼べるべきものまで、ふたりは共有してきたのだ。
「…うん…」
由利は誘われて、手を繋がれて、由良の部屋に入った。
シングルベッドなのに、ふたりでくっついて眠るにはちょうどいい大きさだった。
シーツの海になだれ込み、どちらからともなく、衣類を脱ぎすてていく。
同じ行為を、雄和とも交わす日がくるのだろうか…。
そんなことを想像したら、グッと腰の周りに熱いものが注ぎ込まれた気分だった。
ダイレクトに触れてきた由良の手が、由利の性器を包んだ。
「今日のユーリ、熱い…」
「や…、ゆら…っ」
横向きのまま、重ねた腰が揺らぐ。
滾る怒張同士がぶつかる。
「由良…」
離れていくことの怖さ。由利の不安と雄和に対する期待を、由良は感じ取ってしまっているのだろうか。
「ユーリ…」
湿った声が、落ち着かせるように耳朶に降ってきた。

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
人気ブログランキングへ 
ポチってしていただけると嬉しいです(///∇//)

あーっ、もぅっ。
消すに消せなくなった…。
学習しよう、きえちん.・゜゜・(/□\*)・゜゜・
明日分の記事、どうするんだよ~~~~っヽ(`Д´)ノウワァァン!!

トラックバック0 コメント3
原色の誘惑 9
2012-08-20-Mon  CATEGORY: 原色の誘惑
R18 性描写があります。閲覧にはご注意ください。


何度もくちづけあって、下半身を擦り合わせる。
欲望は知られているのだろう。
由良の雄芯がなだめてくれるようにその先を促してくれる。
擦れ合う感覚は今までとは違う欲望を孕んでいた。
「あ…っ、由良…」
「いい?ユーリ、いつもよりやらしい…」
「や…っそんなこと…」
言わないで…とささやかな抵抗が言葉に表れる。
二人で重なり合う空間に囁かれたくはないのに。
その一言が余計に次の興奮を生んでくれた。
押さえられない欲望も、由良の前でなら晒すことができたはずなのに。
やっぱりはずかしい。
由良の声が木霊する。由利の声が密室に響く。
色艶のある二人の喘ぎ…。
擦り合わせる下半身に差し込まれる手がある。
由利と由良のものが…。重なるものが判り切ったように、次の欲を望んでいた。

「由良…」
確実に吐き出そうとさせる行為に、戸惑いがあっても、そのまま欲望に溺れてしまった。
吐き出す為に繋ぎとめようと、由良の下半身に伸ばした手が、彼の熱を伝えてくる。
二人、一緒に…。
いつもそうだった。
そう思って狙いを定めて抵抗もなくまた膨らむ。
「ユーリ…」
誰よりも、何よりも大事な存在だと分かるのに、この場所から離れようとしまった行為…。
由良は認めてくれているけれど、離れられないのは、やはり由利のほうなのだろうか。
雄和に返事をしてしまったことは、この存在を失うことになるのだろうかと思って苦しさが生まれる。
失いたくない…。この存在を誰よりも大事にしたいと分かっているのに…。
涙ぐんだ由利の感情を感じ取れるのだろうか。
「ユーリ…」
もう一度囁いた由良がきつく抱きしめてくれる。
「いいんだよ…」
その一言は、離れていくことをあたりまえと理解しているのだろうか…。
「ゆら…」
「ばか…」
大事にして、愛して、何よりも大切だったものが、少しずつ意味のある距離を持ち始めた。
でも、なくせない、変わらない存在は未来にも繋がっていく。

「ユーリ。俺は絶対にユーリのそばにいるから。心配しなくていいの。いつだって、どんなときだって、ユーリの隣にいる。苦しかったらいつだって言って。辛いならいつでも泣いて。ユーリ…。ユーリ…」
重なる体の奥から絞り出される愛情は、由利の燻った背中を押してくれるものだった。
脅えた状況かもしれないけれど、逃げ帰ってきてもいいと甘えさせてくれる。
「ゆら…」
合わせた体、反応した下肢は同じ熱さに飲みこまれていった。
一番分かっている人の手のひら。
さすられて扱かれて、気持ち良さに声が出せなくなる。
「あ、ゆら…っ」
「ユーリっ」
重なり合う体の下で、興奮した下肢は擦り合い、捌け口を探した。
胎内の奥から湧きあがってくる欲望を、幾度感じてきただろう。
由良の前で、”恥ずかしい”という思いはどこか消えていた。
だから、痴漢にあったとも、平気で伝えられたのだろうか。
「うんっんっ」
二人して求めた先。
どちらが何を求めたのかは分からないけれど…。
弾け飛ぶ瞬間、見えた世界は、今までの由利にはないものだった。
男臭い、傲慢な態度をとった男が最後の一撃を加えてくれた。
あの男から聞こえた「由利」という声が、そのとき、響いたのだ。
「ゆ…わ…」
初めて囁いた声が、初めて由良を裏切り、そして認めさせた。
この後重ねる体は、もう兄弟ではない…。
最後の繋がりだとを二人は一番に感じている。
「ユーリ…」
“愛している”…。
続いた声を由利も由良も、耳にしなかったことにした。
知り過ぎていたから答えることが怖かった。
その声に答えた時…、絶対に離れられない情があるのだろう。
「ゆら…」
どうしようと迷う由利をぐっと抱きしめて、それ以上の発言を止める。
「寝よう…」
全てを誤魔化して、また由利の気持ちをありのままでいいと受け止めてくれる。
隠すことなど何もないと生まれたままの姿を受け入れてくれる兄…。
「ゆら…」
「ユーリ」
響き渡る声がただ嬉しくて…。そばにいてくれるものだと強く感じて…。
「由良…」
もう一度囁いたらくちづけをくれた。
「もう、最後だよ…」
終わりを告げた双子の関係。
安らぎは新しい人に委ねられたのだ…。

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
人気ブログランキングへ 
ポチってしていただけると嬉しいです(///∇//)

短い?
だって予想外に記事が出ちゃて…。
トラックバック0 コメント4
原色の誘惑 10
2012-08-21-Tue  CATEGORY: 原色の誘惑
「ユーリ、起きて。遅刻しちゃうよ」
由良の声で目が覚める。
肌に直接触れてくる布地の感触で、自分が全裸でいるのだと知った。
まぁ、由良と体を重ねた後は脱力感に襲われて、大概生まれたままの姿で転がっているものなのだが…。
それでも由良が起きれば自分も目覚めるはずなのに、今日はどうしたものか。
名残惜しくていつまでも由良に縋りついていた結果だろうか。

「うーん…」
「ユーリ。ほら」
裸の肩を撫でられてその温かさにゴロゴロと寄り添いたくなる。
「ユーリ」
声音には困ったものが含まれていた。
迷惑をかけているのだとは分かるのだけれど…。
やっぱり離れる淋しさが由利にははびこっているのかもしれない。
「由良…」
両手を伸ばせば抱きしめ返してくれる。
強請るようにくちづけを求めると、苦笑しながら軽く合わせてくれた。
甘えたくなる朝、”今日も一日そばにいるから…”と、これまでもおまじないのように繰り返された行為。
由良の力強さにいつも守られてきた。
「置いていっちゃうよ」
「やだ…。起きる」
半分抱き起こされる形で、由利は半身を上げた。
サラリと落ちていった肌掛けから、華奢な裸体が晒される。
抱き合う行為に入る時は、どちらともなく平気で脱いでいってしまうのに、由良だけがきちんと衣類を纏っている姿を目にすると、恥ずかしさが走った。
そう…。朝一緒に起きても、ふたりとも裸だったら抱かなかった感情を初めて感じた。
同じ体を持っているのに…。鏡に映したようなふたりは、改めてその姿を見ても抵抗も羞恥もなかったはずなのに…。
由利の持った戸惑いは、やはり由良に伝わってしまうのだろう。
「もう一回キスしてあげるから早く起きておいで」
チュッと音を立てて落とされたキスは、由良自身、ここから逃げだす口実だったのだろうか…。

由利は一人にされた部屋で、落ちていた衣類を身につける。
ダイニングに行くと、ほんのりと焼き色のついたトーストとスクランブルエッグがあった。
仕事がある日は、大概二人で並んで朝食の用意を済ませるのだが、眠りこけていた由利を気遣ってくれたのか、由良はギリギリまで起こしに来なかったらしい。
胸に抱えている小さなわだかまりを、まだ受け止めきれていない由利の心理状態を、理解しているからこそ…。
雄和のことを由利から言い出せはしなかったけれど、由良は充分なほど分かってくれている。
期待と不安を同時に抱えてしまっていること。
出会ったばかりの男に対して…。長年連れ添ってきた兄との関係についても…。

由良の態度はいつもと変わらなかった。
会社までも一緒に向かった。
冗談や日常の会話もポンポンと飛び出してくる。
普段では別々のエレベーターに乗るのに、この日は同じ箱の中に収まった。
周りの人にどう見られているのか、幾分緊張した空気が包むのに、由良は相変わらず気にした様子もない。
その姿勢が由利の心も和ませてくれる。
先に降りていく由良が、「じゃあね、ユーリ」と笑顔とキスを残して行った。
いたずら三昧である。
同乗していた人たちは、その状況を把握できずに、ただ呆然と一瞬の出来事を何が起こったのかと残された由利に視線を置く。
「もう…」
恥ずかしそうに俯いたただならぬ由利の色気に、一部下半身を押さえた人間がいたことは、由利は気付かなかったけれど。

噂はあっという間に広がっていく。
エレベーターの中での双子のキス事件は社内を駆け回り、その現場を見られた人間を羨ましいと言うものや、次回を虎視眈々と狙う奴だったり。
そんな由利と共にいる企画室も騒ぎの渦中にあった。
高畠が盛大な溜め息を、もう何度目か吐く。
「公衆の面前でチューしてる兄弟がどこにいるんだよ…」
「どんな感じなの?鏡に向かってキスしているイメージ?」
「(湯田川)あつみ、それ、キモイ…」
高畠と湯田川が冗談を交えながら、朝一番の出来事を繰り返す。
そんなに衝撃を与えるものだと思っていない由利は、昨日の雄和との出会いのほうが印象的で、日常的に繰り返される由良との出来事はどうでも良かった。
おかげでいらない言葉がポロリと零れた。
「べつに…。いつもしているもん…」
その瞬間、賑やかだった企画室の全員が黙り、妄想したのは言うまでもないが…。
今まで故意的に避けられていた双子が、陰で濃密な関係にあるとは誰が想像できたことか。

「ユ、ユーリ…?」
目を見開いた高畠が、「今、何を言った?」と確認を求めてくる。
兄弟で仲良くすることの何が悪いのか…といった感じで由利は答える。
「寝る前とか、起きた時とか…」
「「しねーよっっっ!!!」」
同時に反論されて、じゃあ、淋しい時はどうしているんだ…と内心で毒づいた。
それを思えば、そばにいてくれた由良の存在に改めて感謝するものが湧いたが…。

湯田川が思いっきり頭を抱えた。
「会社内で、作ってきた兄弟関係が崩壊しました…って?あの男のせいかよ…。由良の嫉妬も恐ろしいものがあるな…」
「それより、メンテナンス員、すげぇ、苦労しそう。絶対に当てつけられるぞ」
口々に言いたいことを言っている二人を放って、由利は仕事に向かう。
由良とは兄弟であって、恋人にはならないのだから。
きちんと顔を合わせたわけではないけれど、雄和に抱くものは由良に向けるものとは違っている。
お母さんのお腹の中から、ずっと一緒にいた人とは、裸で触れあって当たり前の存在なのだ。
チューだって、きっとこの世に生まれる前からしていたことだろう。
その考え方は、誰にも受け入れられなかった。
「文句は言わないけれど…。人前でのキスはやめたほうがいいぞ…」
高畠が理解できないものを見る目で由利をみつめた。
お腹の中と違って隠してくれる壁はない。
そんな時、由良から『今日のお昼は一緒に食べよう』とメールが入った。
続いて『羽後さん、また来社するって』と昨日からの確認事項があると伝えられればドキンと胸が跳ねあがる。
たぶん、故意的に合わせられた時間帯なのだろう。

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
人気ブログランキングへ 
ポチってしていただけると嬉しいです(///∇//)
トラックバック0 コメント2
<< 2019/12 >>
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -


Copyright © 2019 BLの丘. all rights reserved.