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BLの丘
契りをかわして 6
2012-03-11-Sun  CATEGORY: 契り
R18 性描写があります。閲覧にはご注意ください。


手にしていた缶ビールを取り上げられた。
くちづけられる唇の動き、ざらりとした舌の蠢きに翻弄される。
口から伝わる苦い味は煙草のもので…。ここ最近、自分では近付くことのなかった匂いだった。伊吹は自分が煙草をやめて以来、人の煙を嫌う『嫌煙者』になっていたはずなのに、甲賀に対しては何も感じなかった。
それどころか、忘れた味を思い出させるように強請って吸った。
伊吹の舌も伸ばされる。
「いし、べ…」
「俺の名前、知ってんだろ?」
くちづけの合間に掠れた声が響く。
「…こう…が…」
ムード作りをしようとは自分にもある。かろうじてもれた声に、また口端が上がった気がした。雰囲気を認めてくれる態度は、年下ではない…。
挑発されているのかどうなのか…。質問には咄嗟に応えることができる能力が…。
余裕が逆に恨めしい…。
誰にでもこう、対応するのかと思われてしまうところ…。
『こうが』…。その名はいつ脳内に刻まれたのだろうかと、脳裏を過った。

「伊吹…」
恐ろしく骨身に染み込んでくる声だと思った。
どうにか冷静を取り戻したかった。
伊吹は唇をはなすと、硬い胸板に触れる。指先と、濡れた唇と…。
盛り上がった硬い筋肉は、自分を包んでくれるものと、安心感が湧く。
大胆だ…と分かっていながら、その行為を止められなかったのは何故だろう。
年上…?心に余裕のあるフリを見せたかったのか…。自分を冷静にさせる手段だったのか…。
甲賀の脚を跨いで座った。
彼の逞しい胸板に指を滑らせ…。…唇を寄せる。
ぴくりと動く筋肉がなんとも心地良い。
飾りとしか思えない乳首を舌先でもてあそび、硬い腹筋を撫でて、スーと体を埋めた先。
まだ布に覆われた場所に手をかける。
甲賀も協力してくれて、すんなりと衣類は足から抜け落ちた。
硬くても柔らかな毛に覆われた場所に指先が辿り着いて、一拍の呼吸を置いてから上目遣いで見上げた。
チラリと舌先を見せると、『焦らすな』といった感じの飢えた雄の顔が見えた。
何の刺激がなくてもピクッと跳ねあがる逞しい雄は…。赤黒く筋張っていた。

伊吹は目の前の怒張に舌を這わせる。
さらさらと落ちてくる髪をかきあげながら、伊吹の口の動きを追う視線を感じた。
目一杯含めば中から刺激され頬はふくらみ、絞り出すような動きに唇が窄まる。
「いぶき…」
頭上から響いてくる低音と、撫でられる頬への欲情。

先走りの苦い味が口の中に広がり、張り詰めたものが弾けるのも間もなくか…というときに、甲賀は伊吹の両脇を支えて胸元へと引き上げた。
甲賀の腿をまたがる姿勢は変わっていない。
「…?石部さ…?」
あのまま口の中でイっても良かったのに…と疑問の声を発すると、甲賀の眉根が僅かに寄った。
「名前で呼んどけ」
顧客の我が儘に対応したことなど多々。
相手がそう、望むのなら…と、順応性が高いのは幸か不幸か。
「甲賀…」
伊吹の声に満足を得たのだろう。
伊吹の額にキスをひとつ贈ると、甲賀が動きだした。
簡単にひっくり返され、四つん這いに足を広げさせられて、バスローブの裾を捲り上げられ後ろの状態を伺われた。
それだけで、どれだけ馴染んだ人間なのかと晒すようなものだった。
慣れているとはいえ、準備まで済んでいる。孔の具合を改めて確かめられるなど…。
羞恥に顔が火照り、枕の中に顔を埋める。
もう少し自分自身に余裕ができていたと思っていたのに…。
最後の砦のようなものは残っていたらしい。
双丘をわざとらしく両手で割り、親指の腹で孔の上を撫でつける。
あの瞳が、どんなふうに見つめているのか、想像するだけで後孔が収縮するようだった。
「綺麗なピンク色」
「言うなっ!」
自分でも見ることのない場所の解説などいらない。
乾いた肌に湿ったものが押し当てられる。這わされる熱さと動きで、舐められているのが分かった。
「あ…、ん…。甲賀…」
意識した、甘ったるい声が伊吹から吐き出される。
“演じる”…。これが伊吹のセックスだった。

セックスは決して好きではない…。
妙に自分だけが冷静で、興奮している相手の意のままにされる。
気持ちいい…、確かにそんな瞬間もあるのかもしれないが、束の間のやすらぎを得たいがために身を差し出しているようなもの。
抱きしめられて、ホッとできる瞬間を求めて、色々な意味で相手に”奉仕”した。
培ってきた営業根性が、こんなところにまで発揮されるとは皮肉なものだ。
「こ…が…」
上げる声もその一つ。

甲賀が持つあの筋肉質な体に包まれたら、どれだけ安らげるだろう。
人との繋がりに疲れた体を癒してくれる存在を、伊吹はいつも求めているのかもしれない。
突然ヒンヤリとしたものが後孔から陰茎を伝わって滴り落ちた。
ローションかと思ったが、あまりのサラサラとした感触に下から覗きあげる。
黄金色の液がシーツに染みを作っていた。
「な…っ?!」
自分のものではない。分かってはいても、先端から垂れ落ちる液体は、粗相をしたようにしか見えなかった。
体をあげようとしても、がっしりと掴まれていた腰は動くことがない。
「甲賀っ?!」
「濡らさないとだろ。ヒクヒクしながらちゃんと飲んでるよ」
先程取り上げられた缶ビールを口にして、孔の中に注ぎこまれる。零れたビールは再び同じ経路をたどり、シーツに落ちた。
「やぁぁぁっ!!」
これまで感じたことのない羞恥だった。
全身に火がつく。

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更新ない、とか言いながら隠れて書いたら書けちゃったからupします。
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契りをかわして 7
2012-03-12-Mon  CATEGORY: 契り
R18 性描写があります。閲覧にはご注意ください。


「甲賀っ!!それ、嫌っ!やめてっ!!」
伊吹の悲痛な叫びを無視しているのか、甲賀はビチャビチャと音を立てて舐めたりすすったり舌を差し込んだりと、伊吹の後ろから動かない。
体中を駆け巡る羞恥と与えられる快感に、ドクンと伊吹の中心が跳ね、先走りがビールに混じって流れ落ちた。
「甲賀っ!!」
孔に注がれたビールまでもが零れ出るのではないかと思うと、嫌でも力を入れて固く閉じようとするのだが、舐めまわされる快感に抗えない。
「甲賀っ!!」
声だけの抵抗に、甲賀も機嫌を損ねたくないと思うのか、覗きこむような態勢で双球までを口に含んでから体を起こした。
「分かったよ…。ローション、使えばいいんだろ」
「…っ!!」
返す言葉も見つからなかった。伊吹の羞恥をわざと煽る為の行為だったらしい。
腰に腕を回され、今度は仰向けにひっくり返される。
バスローブの紐を解かれ、胸元から入った両手が左右に布地を分けた。袖は抜かれない。脱がせるとは違う。

伊吹の細い腰に跨った甲賀が首筋に唇を落とす。差し出された舌先が湿った感触を残しながら下へと向かっていった。
捕らえられた胸の蕾を食まれ、唾液が絡みつく。もう片方も指の腹がくるくると撫でまわした。
「んっ」
強弱つけられた吸い上げ方や噛まれかたにいつもとは違うゾクゾクとした快感を覚えた。
他の人間と何が違うのか冷静に考えようとしても、次から次へとやってくる、痺れるような性感が思考を妨げる。
「あ…っ、甲賀…っ、そこばっか…っ」
相手に対して、感じているから先に進んでくれ、という見せかけのものが、甲賀には全く通用しなかった。
好きではないセックスという行為をさっさと終わらせてほしいから煽る態度にでてしまうのに…。
執拗なほど乳首を弄ばれ、唾液で艶めかされる。痛みを伴うほどで、だけどその痛みがまた快感に化けてしまうのだから、流れゆく先が怖かった。
「こ…っ」
「赤くなってる。ぷっくりして可愛いよ」
「あぁぁっっ」
見たことがない大きさになったものを、もう一噛みされてから、唇は下肢へと向かって動いた。
腹につくまで反りかえった分身はしとどに濡れ、辺りを汚していたといってもいい。
甲賀の大きな掌が裏筋を撫で上げるだけでドクドクと脈打つ。
包まれて扱かれたら、それだけで達してしまうのではないかと思うくらい、張り詰めていた。
前戯にこれほど時間をかけられたのも初めてかもしれない。何より、先に与えられた羞恥心がただでさえ伊吹の体中を蝕んでいたのだ。
「くぅっ」
弾けないようにと力を込めようとするのだが…。
両膝を立てられM字開脚の姿勢にされても、身動きもとれなくなっているほど、伊吹の体は先に悦楽を求めていた。
「ローション、いらねぇんじゃね?」
先走りの体液を指に絡め、陰嚢を揉んでから柔らかくなりかけている後孔に触れた。指先で二、三度押されてから指先が入り込んでくる。
どれだけ濡れているのかとわざわざ言われたことで、尚更伊吹は言葉を発せなくなる。
異物感を覚えても、骨張った指はあまりにもすんなりと潜り込んできた。
「あっ」
「伊吹ん中、あちぃ…」
「あぁぁぁっ」
ぐちゅぐちゅとした水音は、甲賀が注ぎこんだビールなのか、自分が吐き出した体液なのか…。
体内で感じる体温はソレとは違うのに、巧みに動かれて疑似的なものを味わう。
内壁を擦られ、一番弱いところを責め立てられて、ますます伊吹は追いこまれていった。
「も、っいっ。もぅ、いいから~っ」
「まだだよ。…伊吹、一回イっとけ」
「いゃぁぁぁっっ」
「その”余裕”、無くせ」
どうにか振舞おうとする伊吹を感じ取っていたのだろうか。
挿いってくる指が増えた。もう片方の手が張り詰めたモノを、精液の溜まった嚢を揉みしだく。
一気に襲ってくる射精感に全身が戦慄き、かかとがシーツを蹴って掌は布地を握りこんだ。
相手に奉仕して追い詰めることはあっても、自分の方が先に極めることなど滅多にあることではない。
先程まで甲賀に跨っていたのは自分のほうだったのに…。
狭道の奥にある膨らみをやわやわと擦られ、熱棒を手のひらに包まれて…。
伊吹の培ってきたものが崩れていく。
調子を崩してくれるこの男にはどこまで翻弄させられるのだろう…。
抵抗する間もなく、的確に攻められて白濁が飛び散った。
見つめてくる瞳が微笑んで、いつものように口角が上がったのが悔しかった。

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契りをかわして 8
2012-03-13-Tue  CATEGORY: 契り
R18 性描写があります。閲覧にはご注意ください。


吐き出したことで全てが変わった性感帯があった。
耳元に寄せられる口元。囁かれる僅かな名前…。「伊吹…」
全身の全て…鼓膜まで犯される…。
低くて脳髄に響き渡る声は嫌ではないし…、なにより、掴んで包んでくれる逞しい腕が…。

「こ…が…」
わざと甘えたわけではない。放出を伴って意識が削がれた。
本能のままに、”包んでもらえる”と縋った精神。
「甲賀…」
弛緩した体の奥からもう一度囁くと、認めたように口端を上げた甲賀が伊吹の全身を包んだ。
一時は悔しいと思ったはずなのに、包まれる安堵に負けた。肉質の良さにホッと溜め息が零れる。
勘の良い彼は何を求めるかまで知ったのだろうか。
でも今求めたのは彼の筋肉から吹きだされる一時的な安堵。
それが自分のものになりはしないと、すでに諦めていた伊吹なのかもしれない。
そしてわかっているのだろう、甲賀も…。開き直りとは時に怖い。一時の逢瀬にあまりにも慣れてしまっていた伊吹だったが。

入り込んでくる熱。うねる肉筒が迎えた。すんなりと埋められて…。
感じる快楽を浴びるのは…、全身を覆われていく安堵と享楽。
こんなセックスは知らなかった…。溺れていく…。狂わされていく…。
連続して与えられる快楽への充(み)ち。
泳がされるようなキスも初めてだった…。
何もかもを曝け出すセックスも初めてだった…。
「やめて」と強請っても止められることのなかった愛撫と性交。
だけど嫌うことなど一つもなくて…。
待つ間もなく、すぐに入り込んできた甲賀の熱に溜め息とも喘ぎとも分からないものが発された。
「あ…っ、んっあっっっ」
一度達したおかげで、体の全てが…、鼓膜まで性感帯だった。どこを触られても意識を飛ばしそうになる。
「伊吹…」
両足を抱え上げられ、重なった体の先で囁かれる名前。
ブルッと震えると、「もう一回は待ってよ…」と囁かれる。
萎えたはずだった先に手のひらが入り込み…。
手のひらの温かさがあるはずなのに表面温度の冷たさにドクリとする。
握り込まれて、その反応など感じ取っているのだろう。
ゆるやかに動いていたはずの掌が、明らかな動きを見せた。

「い…っやぁ、だめっ、こ…が、ぁ…来てぇ…」
何の気も無しに誘ったいつもの言葉のように思えたが…。全てが違っている。…それが本音…。
口端を上げた甲賀はゆっくりと中途半端だった侵入を全て果たす。
それからの動きは恐ろしく緩慢だった。
伊吹は我を忘れて、何度放出の時を迎えたのだろう…。

気を失うまで溺れた。
訳も分からない言葉を幾度も口走った。
その中には、「甲賀、好き…っ」という言葉もあったような気がする。
溺れていく中で、甲賀は決して伊吹を離しはしなかった。
どんな体位になろうと、しがみつく伊吹を守るように…。
だからこそ発せた言葉だったのか…。
それが、いままで感じたことのない愉悦と安堵だったのだと、伊吹自身知ったのだろうか…。

こんなことは本当に初めてで…。セックスが気持ちいいものだと初めて知って意識がすり替えられた。
甲賀と繋がっている時は、『早く終わりにして』とも、自分から何かを強請ることも失った。
相手の思うままに翻弄させられる。
その中で生きられる。

「こうが…っっ」
「伊吹…」
耳元に届いた、鼓膜という一番の性感帯に響く声…。

伊吹は意識を飛ばすまで、何度も執拗に甲賀に責め立てられ、そのそばでどれほど縋りついても動じない逞しい体を感じて安堵した。
“守ってくれる”…。
一時的なものでもいい。
やすらぎを得たい心は、”見た目”にでも平気で縋りついた。
まさに、一時だったのだ。今が安らげればいいと…。
顧客との関係などその程度だと…。最初から多くは望んでいない。
それなのに反面で引きずった心…。

『気持ちいい…』

セックスに対して初めて感じた、快楽。…その他にもらえた精神的な癒楽。
一夜だけの出来事にしてはあまりにも大きかったことだと実感しつつ、明け方、目を覚ました伊吹はバスルームを使用した。
甲賀も疲れたのか、まだ起きる気配がない。
布地に包まれているが、触れた筋肉質な体は伊吹が知っているものだ。
他の何人…。そう考えて虚しさに思考を止める。
年上という立場、相手が顧客ということを思って、静かに甲賀が吸っていた煙草の下にホテル代を意味する一枚の札を置いた。
二度とこんなことはないだろう。それとももう一度あってほしいのか…。
複雑な思いは、感じた体に直結している。…あんな体験は、過去になかった…。…もう一度…。
狂って何もかもを失った時間…。

疲れた体を引きずるように、表通りに出てタクシーを拾った。
春の夜明け。薄らと白じんできた時間帯。
もう、…まだ…、寝ていてくれればいいと願った先の、帰りついたマンションには、明りが灯っていた。

電気をつけっぱなしで寝ているんだろうか…。まさか待たれているんだろうか…。
色々考えはしても、伊吹が帰る場所はここしかなかった。
何の物音もしないマンションの廊下を歩き、静かに鍵を開ける。
夜明け前、何一つ音がしないことに安堵して自室に入ろうと廊下を歩いた先…。
カチャリとあいたドアがあった。
浅井信楽(あさい しいら)。過去、仕事を失った時から伊吹を精神、経済共に面倒を見てきてくれた、二つ年上のフリーライターである。

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やっと話が進んだよ… ┐( ̄ヘ ̄)┌ フゥゥ~
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契りをかわして 9
2012-03-14-Wed  CATEGORY: 契り
部屋から出てきた男は、特に伊吹に近寄ってくるようなことはしなかった。
ドアにもたれかかるようにして立ち、全身を確認するように見回される。
甲賀ほどではないが、信楽も充分背は高いほうだろう。180センチの背丈と、整った顔立ち。家の中では変わることのない、どこかボサっとした姿は深夜のものである。
額に流れてくるサラサラの髪は、伊吹のものにも似ていた。
昼になれば…、外に出れば、この姿は一変する。誰もが引きつけられるような男前。
そこに惹かれたのは伊吹自身だったのだが…。
営業の一端で出会った男だった。最初の夜、誘ったのはどちらだったか…。

自室まで進みかけた足が止まった。
咄嗟に営業用のスマイルを浮かべられるのは、本当に”賜物”としか言いようがない。
「あ、ごめん。起こしちゃった?」
こんな朝方まで仕事をしていることも多々ある信楽だ。あえて、起こしたのかと強調したのは、寝ていてほしかった伊吹の願いでもある。
「いや…。詰まっていた原稿があったから…」
待たせたと思われるのは、どこかで苦痛を生みだす。
それが分かるのか、信楽も”仕事”と言い張った。
自分のため…。そう思われ、負わされるものを感じるのは嫌だった。
仕事、と言い訳をつける男に、素直に頷いてみせる。
「そう…」
「伊吹、昨夜、顧客と食事とは聞いていたけど、朝帰りとまでは聞いていないぞ」
「ごめん…。ちょっと飲み過ぎちゃって…。あ、会社の人とかいっぱい集まっちゃってさぁ」
『合コン』に出るなどとはもちろん言えず、食事の用意はしなくていいと伝える時に、伊吹は取引先との食事、と言い訳を口にした。
“営業”として、反故にできない環境は信楽も知るところだ。
肌艶良い状態に保たれているのは、信楽の恩恵でもある。
信楽は週の半分ほどを自宅で過ごした。時に出版社などに出向くことはあっても、基本的に職場は”自宅”だ。
伊吹を”待つ”人なのである。
食事のほとんどは信楽が用意してくれたし、清掃までも請け負ってくれている。
営業という、他人に翻弄されがちな伊吹を影ながら支えてくれた人といって過言ではない。
「飲み会になっちゃったわけ?」
「あー、まぁ、そんなとこ。…ごめん、ちょっと、眠いんだ…」
「…、だろうね」
何かを言いたそうな信楽が口を閉じた。
それは伊吹の体調を思ってのことなのか、現実を知りたくないからなのか…。
信楽は過去の伊吹を知る。
『体で営業成績をとる』…。そこまで蔑まれてはいないが、見栄えの良さがどんなふうに働いたか、伊吹が何を求めて、過去の男たちと体を重ねたか…。
その一人である信楽。
今伊吹がここにいるのは、信楽の努力の結果ともいえる。
職を失ったと聞いた時に、真っ先に動いたのが信楽で、生活に必要なもの全てを、整えた。

だるい体を抱えていたこともあった。
むやみに近付かれて、これ以上の不信を仰ぐのも嫌で、とにかく個室に入りたかった伊吹は、逃げ出す口上を述べる。
どこまで信じられているかは、甚だ疑問だ。
大人しく見送ってくれる信楽の態度に感謝し、また不安も抱え、短い廊下を歩いて伊吹は自室に入り込んだ。
このマンションには、仕事部屋としている信楽の部屋と、伊吹のために用意してくれた個室、他に20畳を越すリビングダイニングがあった。
もともと両の二部屋は信楽が仕事用とプライベート用に分けて使っていたのに、伊吹を呼ぶために空けてくれたものだった。
あの頃は惚れていた。
“あの頃”…。
甘えるだけだと分かっていても、収入の途絶えた伊吹には行くあてがなかった。
会社は倒産。当月の給料もあてにならなくて…。
優しい言葉と、包んでくれる体が好きで…。

だけど、甲賀の逞しさを知ってしまった今…。

まるで丸裸になるように衣類を脱ぎすて、ベッドの中に横になると、先程まで感じていた温度を思い出す。
何もかもが初めてで…。思い出すだけで興奮する自分を知ってしまう。
一瞬のやすらぎを求めるために差し出す体だと思っていたのに…。
与えられたものは深く伊吹の精神と体を犯してくれた。
自分を見失うことが怖いはずなのに、我を忘れられる時は味わったことのない、”本当の姿”。

「こ…ぅ…が…」

そっと呟いた名前。二度と口にすることはないだろうと思われた名前。

あんなに疲れたはずなのに、指を這わせるだけで思い出してしまう自分が浅ましくて嫌だった。
同時に生まれた、縋りたい感情。
自分を包んでくれる、守ってくれる”かもしれない”肉体が好き…。
そこに心が伴う日、そんな相手が訪れてくれるのだろうか…。

信楽は親切で年上で頼りになるけれど。
伊吹が安堵できるものを持ち合わせていなかった。
伊吹よりはずっと逞しいし、出会った頃は容貌に惹かれたところもある。
だけど…。甲賀に抱かれてしまった今、はっきりとした肉体の違いを思い浮かべることができた。
どうしたって伊吹は逞しい男が好きだった。比べることが悪くても…。

それでも、甲賀は自分のものにならない…。

あまりにも早すぎた体の繋がりは、軽薄なものとしか印象として残さなかった。
自分と同じように幾人の者に声をかけ、繋がる逢瀬を繰り返している人だと思うから…。

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モンモン(いれずみじゃないですっ)…があちこちに~。
つか、どして私が書く話はこんなに暗いのでしょう…。
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契りをかわして 10
2012-03-15-Thu  CATEGORY: 契り
夜明け…というか、朝日が差し込んできた時間帯に、鳴り響く着信音で目覚めた。
仕事上、会社から支給されている携帯電話は、あまり手放すことがない。
こんな朝から…と嫌いやながらでも通話ボタンを押す。もう、義務みたいなものだ。
「はい…」
『なに、先に帰ってんだよっ?!』
聞こえた声は明らかな苛立ちを含み、不満を正直にぶちまけてくる。感情を素直にあらわせる、甲賀らしい態度でもあった。
耳元で響く声。怒りと分かっていながらドクっとしてしまう体はなんなのだろうか…。
「あー…、…今日、用事があったから…」
一番面倒くさくない言い訳を口にして、伊吹は逃げを打った。ベッドの中で毛布を握り締める。
帰らなければならない事情を甲賀に知られたくなかった。
信楽の存在を隠したかったのは…。嘘をついた自分を守るためなのだろうか。…蔑まれたくなかった。
…離れなければ…。
そう危機感を持ったのは、いつなのか…。翻弄させるこの男が危険だと感じたのは…。
普段の男なら、『こんな男だ』と思われても開き直れたはずなのに…。
嫌われたくない思いが湧いていた。

『用事?今自宅?あの体で帰れたのかって不安になったわ、俺』
この時間帯。居場所はそれとなく悟られるものなのか…。
甲賀も伊吹に対してどんな態度を取ったのか理解しているらしい。
意識を飛ばすほどまでいたぶった…、可愛がってくれた逞しい体に対して、伊吹の体はあまりにも華奢過ぎた。
そして、勝手なうぬぼれ…。
帰らせたくなかった…思いが甲賀にはあったのかと。だからこそ、あれほどの行為を向けてきたのだろうかと…。

気遣ってもらえることは尚更伊吹の心を抉ってくれた。
一夜で済ませたくない、それ以上の感情があるのではないかと誤解を生ませる。
通りすがりの行為で済ませてほしいような…。
「だい…じょ…」
『伊吹?』
掠れた伊吹の声に素早く反応してくれる態度。
信楽とは違う、踏み込んでくる姿勢に嫌でも惹かれていく自分を知る。
信楽は見守ってくれる。甲賀は…。
だけど強がってしまうのは…。信楽を思うからなのか、甲賀にのめりこみたくない予防線なのか…。
「今、寝ないと…」
『あぁ、分かったよ。…また連絡するから…』
朝と知ってか、状況をどのように捉えたのか、大人しく引き下がってくれた。
消えていく声が悲しく思えてしまうくらい…、伊吹の心は揺れていた。

『また』…。
それがいつに、なるのか。
切れた携帯電話を耳に寄せ、無音になった時に気持ちが馳せる。
一番に縋りたいものはなんなのだろうか…。

『伊吹』…。

鼓膜の奥まで響いた声が消えない…。

縋った人間は何人もいた。その時々、伊吹を支えてくれる人たちだった。
伊吹の体を目当てにしたのかもしれないし、こちらも一時的な安堵を求めただけかもしれない。
好きでもないセックスを繰り返し、思いを寄せているのだと見せかけの態度を取り続けた日々。
初めて知った、『気持ちいい』という性行為と、これまでの『これくらいはするべき』という温情が違うものだと認める。
何もかもを曝け出し、訳もなく思いのまま突っ走れた時と、相手の意思を尊重して過ごす冷静な自分は明らかに違った。
恥ずかしくても…、『気持ち良過ぎた』…としか言いようがない。

対照的なものの狭間に落ちた。
比べられる立場にあるからこそ、違いは実感できたし、何を求めるのかも自分で知れてくる。
将来的なものや、立場や、状況。
信楽はそういう業界の人間だからこそなのか、全てを受け止めてくれたし、年上という甘えも含まれてくる。
甲賀は…。頼りたい部分が大きい自分にとって、年下の彼は、どうなのだろう…。

諦めるべきだとは思う。信楽との関係を崩さないためにも…。今の安定した時を大事にするべきだと伊吹は思った。
だけど刻まれてしまった、体への快感…。
嫌いなセックスを初めて、心地良いと感じて、まだ…と求めた瞬間…。幾度も達したことが何よりの証明。
どれだけ縋っても余裕で受け止めてくれた肉体。
「甲賀…」
通話の切れた電話の向こうに、そっと囁いた。
全てを抱き締めてほしい、…伊吹の願いを乗せた言葉なのかもしれない。
伊吹を思ってくれる気持ちは分かっても、自分本位のセックスをする人…。それが信楽なのかもしれない…。

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某局(日テレ系ミヤネ屋)でトルコを映してくれて嬉しかったです。「あ~、これこれ~っ」って思いながら見てました。うかがったあの連中もこんな光景の中…?!あいつらは食い倒れてましたけどね。また放送してくれるそうなのでお暇な方は見てください。少しでも気分が味わえるかも。うちの文には再到来しなくていいですよ~。
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