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BLの丘
ただそこにいて 6
2011-08-30-Tue  CATEGORY: ただそこにいて
頑なに首を横に振った俊輔に対し、「おまえ、いつまで休む気だよ」と半ば冷たくもとれる台詞が落ちてきた。
冷たいようであるが発破をかける優しさだ。
同じ班で働く人間には迷惑をかけている。俊輔とて、長くなんて休んでいられない。吉賀なりの生活を危惧する気遣いなのだとは今までの付き合いで分かりはしたが…。
分かる言葉だったが、この先は自分自身でどうにかするべきなのだと知れてくる。
「薬、飲む…。座薬も自分で…」
「できんの?今、俺がいるんだから甘えとけって」
誰だからいい、という問題でもなかった。
親切心はありがたいが、ここまでくると、それこそ津和野並みかそれ以上の”過剰”さがみえてくる。
そこまで心配されることは、確かに一人にされていないと思えて嬉しいのだが…。
特に吉賀に対しては殊更深い感情が芽生えてしまう。
どこまでも見捨てられないような…。

俊輔が自分でする、と言ったことに、吉賀は特に文句も言ってこなかったが、間違いなく薬を『飲んだ』という証拠を見せろと迫ってきた。
飲み干す錠剤はなんの無理もないものの、下腹部に押し当てなければいけない『飲み方』は、人前でやるには大きな抵抗がある。
恥ずかしさはもちろん、同時に津和野に押し込まれた窮屈感と痛みが甦って、一瞬震えた。
痛みがあると分かることを、自分からしたくはない。
そのことを、しっかりと吉賀は読み取っている。たぶん、津和野が目の前にいても同じことだろう。
注射を脅える子供みたいだ。
さらに、好きな人に見られること、と、医療行為だと慣れた仕草で津和野が扱うこととははっきりとした違いがあり俊輔を苛んでくる。

布団の中に埋もれて動かない俊輔に、催促する言葉が投げかけられた。
「できねーんだろ」
吉賀の言葉にはいつもと違って、棘があるように感じられた。
出勤前で、また急遽休みになったことでいら立たせているのか…。
「できるっ、できるできる、できる~っ!!!」
咄嗟に吉賀を遠ざけようとしたことも失敗に終わった。
上辺だけの口調だと、これまでの経験で知られている…というべきか…。
簡単にねじ伏せられて緩い部屋着があっという間に剥かれた。
うつ伏せにされ尻を剥き出しにされた状態だ。

「よし…っかっ、吉賀っ、ダメダメっ!!どこ触ってんの~っ!!」
「先生に見せられても俺はダメってか?!薬、入れるだけだって言ってんだろ―。大人しくしろっ」
怒鳴りつけられて逆らう気もそがれていく。
もう、絶対に、二度と風邪なんか引かない、と涙ぐみながら俊輔は思った。
自分で見られない場所をこんなふうに晒して弄られるなんて…。
しかも汚い場所だ。吉賀の手を汚すようにも思えた。

昨日の津和野のように、横向きにされ手際良く膝を『く』の字に曲げられる余裕もなかった。
うつ伏せにされたうえに、足を開かされて重りのような吉賀の体が俊輔の背中を押さえつける。
つぷっと潜り込んできた異物が、また俊輔を苦しめた。
「いたぁぁぁ」
「え?!これ、どこまで入れりゃあいいの?」
俊輔の逃げようとする激しい身の捩り方に、津和野と同じようにしたつもりの吉賀も動きを止めた。
不躾なほど勢いよく指を突っ込まれたからだと、その差は俊輔には分からない。
ただ、はっきりと『痛い』と感じられたことは、津和野と違うのだと思わせた。
長くとどまろうとする指の存在が、余計に苦しさを増してくる。

「はぁぁぁっっっ!!!」
激しい息をついたあと、吉賀の指が抜かれた。
俊輔ですら想像しなかった奥まで入れられた気分だった。
見動き一つとれずに伏せる俊輔に、「ごめん…」と気遣う吉賀の言葉が届く。
俊輔の体調を気遣うからこそ、行ってくれた行為…。
しかもあんな場所まで指を入れてくれる『薬の飲ませ方』には、感謝するべきこと…。
感謝とジンジンとした痛みと、ここまで気遣ってもらえる喜びに俊輔は言葉を無くしていた。有り難いことなのだ…。
グスグスと泣く姿を見られては「ごめんな…」とうまくできなかったことを何度も謝られてくる。
だけど確実に座薬は奥に治まっていた。
吉賀が悪いわけではない。心配をかけているのは自分であって、班にも迷惑をかけていて…。
少しでも早く職場復帰ができるようにと、吉賀も気を使ってくれただけのこと…。

俊輔は静かに首を振ると、「もう仕事に行って…」と静かに促した。
自分の体調が悪くなったことで、吉賀に必要以上に神経を使わせたくなかった。
「鍵、まだ持っていていい?なんかあったら呼べよ。あのスケベジジイは俊輔の体だけ狙っているようなやつだから気をつけろ」
冗談とも本気ともとれない言葉が吉賀から零れてくる。
軽はずみな発言が特徴ともいえる津和野の態度は皆が知っていたことだけれど…。
こうまではっきりと言われると、意味があるのかと思ってしまう。
「ん…」
だけど、考えたくない重たい頭があったのかもしれない。
俊輔は吉賀に頷く返事をするだけに留めた。
誰もが信頼を置いている、優しくて頼りになる、医者だと思ったから疑うこともしない。
津和野は俊輔が入社した時からいろいろと構ってくれた頼りになる『兄貴分』の存在だったのだ。
寝込みを襲われる事態、ということを知らなかった。

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またやった…、間違い飛ばし…。
記事記録あるのに、12時間以上お待たせするのはどうかと…←勝手に思って…up
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ただそこにいて 7
2011-08-31-Wed  CATEGORY: ただそこにいて
世の中がお昼休みになろうという頃、津和野が容体を見に俊輔の部屋を訪ねてきた。
吉賀が出勤したあと、俊輔はまた眠ったおかげで朝よりもずっとすっきりしていた。
今度は呼び出し音に気付き、俊輔が鍵を開けてやって津和野を迎える。
ここに来るのは2度目であるはずなのに、慣れたように上がりこんでは俊輔をベッドに寝かせた。
「どう?…あぁ、随分熱が下がったね」
額に掌を乗せた津和野が様子を確かめる。
「今朝、また座薬、入れたから…」
一応使用した薬の報告はするべきかと思い伝えれば、意外そうな顔をされた。
さすがに吉賀に無理矢理入れられた、とまでは言えない。
「そう。自分で?ちゃんと入った?」
俊輔が自分の部屋にいるのに、他の誰の手を借りたのかという質問はないだろう…と愚痴りたくなる。
実際、自分ではできなかったわけだし、見透かされている恥ずかしさも浮かんだ。
戸惑いがあっても俊輔がコクコクと首を縦に振ると、「ふーん」と納得してくれたようだった。

「食堂に頼んでご飯を運んでもらうよ」
津和野は携帯電話を取り出すと、たぶん食堂だと思われるところに連絡を入れている。
一社員に対してそんなサービスはよほどのことがない限りはしてもらえることではなく、津和野の存在の大きさを知らされた。
大概は昨日の吉賀の発言のように、身近な人間に頼むしかない。
黙って津和野のやり取りを聞いていた俊輔だったが、津和野が来てくれたことでホッとしたところもあった。
無事回復していることのお墨付きをもらった気分だ。

通話を終えた津和野に、ふと気付いたことを聞いてみる。
「先生、シャワー浴びても平気?」
「はぁ?ダメに決まっているでしょう。まだ熱、下がり切っていないんだよ」
「うん…、でも仕事してそのままだし…、汗もかいたから着替えただけじゃなんか気持ち悪くて…」
「それなら今拭いてあげるよ。それだけでも随分とサッパリすると思うよ」
狭い部屋である。ましてや私物なんて多くを持たない俊輔の部屋にあるものなど、一目瞭然といった感じだ。
きびきびとした動きでバスルームに行ってしまった津和野は、濡らしたタオルを持って戻ってきた。
「え?先生?」
津和野の動きを確かめる間すらない。
干しっぱなしだった数日前の洗濯物も一緒に持って来られて、津和野は俊輔の上半身をあっという間に裸にしてしまった。
「早くしないとご飯が来ちゃうからね」
「あ…」
ほど良い温度に湿らされたタオルが首回りを撫でると、抵抗しようと思うよりも先に気持ち良さに見舞われる。
流れるような動作は、長い時間空気中に晒していたくないためか。
しかし拭い残しがないのはさすがである。絶妙な力加減で擦られるのは自分でやるよりも気分が良いものだろう。
コロンとうつ伏せにされて背中を拭われるのは、また格別の気持ち良さだった。
津和野は腰までを拭いて一旦手を止めた。当然ここで終わりだと思った。
新しい着替えに袖を通すその隙に、不意に太腿の下に片腕を潜らせ、今度は下半身の衣類を下着ごと脱がされてしまう。
「ちょーっ?!先生っ!!!」
勢いの良さは脅威だ。
津和野はいつもと変わらずにニコニコと人の良い笑顔だった。
津和野にとってこういったスキンシップは"普通"かもしれないが、俊輔にとっては初体験である。
「昨日は仁多くんもいたからゆっくり見てもいられなかったけれど。俊くんの、可愛いね」
シャツを着ようにも妙なタイミングでひっくり返されたために腕が自由に聞かなかった。それを承知の上で、俊輔の柔らかな性器をちょんちょんとつつく。
「せんせーっ!!!」
お尻を触られたのは医療行為という名目があるだろうが、あきらかにソコは違うだろう。
…しかも『可愛い』って…。
咄嗟に身を捩れば、今度は尻が丸見えの状態になった。
もたもたとしか動けずにいる俊輔の尻を、温かなものが撫でた。
布ではない、素肌の感触…。
汗で湿ったせいか、掌が吸い付いてくる。

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セクハラお医者様…。
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ただそこにいて 8
2011-09-01-Thu  CATEGORY: ただそこにいて
R18 身体的な表現があります。閲覧にはご注意ください。


「せんせーっ!!!」
俊輔の叫び声なんて聞こえていないといった感じの津和野だった。
どうにか袖をすべて通し終わり、シャツの裾を引き下げて、背後に立つ津和野の手を叩く。
「あまり肉付きが良くないね。栄養いっぱいとらないと」
「もういいですってばーっ!!」
「何言ってるの。まだ全身拭き終わっていないじゃない」
「いいーっ!!もう、いいーっ!!」
慌てふためく俊輔とは対照的に、津和野はいたって落ち着いていた。その落ち着きぶりが憎らしいくらいだ。
一時的にでも隠そうと布団を手繰り寄せようとした手を逆に払われて、うつ伏せにされた。
再び湿った布が腰から尻のふくらみ、太腿とふくらはぎへと滑っていく。
前の部分が見えなければ、俊輔も少しは羞恥心から逃れられるというものだろうか。
膝を曲げられて、足裏まで丁寧に拭われていくのは、確かに嫌なことではないけれど…。
容赦ないのが津和野だ。

またコロンと正面を向かされて、慌てて両手で隠した。
「せんせっ、もうっ…っ!」
「一番大事な場所が残っています」
津和野はニコニコと実に楽しげである。
上を向いた太腿の部分を拭きながら、硬く閉じる足を少しずつ開かされる巧み(?)な技で、見事中心の部分にタオルが当たった。
「ほら、手をどかして」
「やだーっ」
「タオルで隠れているんだからいいじゃない」
俊輔の体中を拭いてきたタオルがぱさっと、必死で隠す手の上からかけられる。
直視されない状況になったというだけでホッとしてしまい、強張った腕からも力が抜けた。
これなら自分で拭ける、とタオルの下から手を引き抜いたのも安易な考えだった。
颯爽と津和野はタオルごとくるんで掴んでしまった。
「にゃぁぁぁっ?!」
他人に触れられたことで、俊輔はひっくり返ったような奇妙な声を上げた。
掌にすっぽりと収まってしまう大きさの性器は、今や津和野の手中である。
大事な部分を人質(?)にとられては、変に体を捩らせることもできなくなった。
「衛生的に保たなければならないところだからね。病気になりたくないでしょう」
直接見られているわけではないが、安心できる状況でもない。
「せんせーっ!!」
ふにゃふにゃの性器を持ち上げられて、もう片方の手がやはりタオルごと嚢を包みこんだ。
「あぅっ」
「はい、膝あげて」
言われなくても自然とかかとに力がこもってしまうのは本能なんだろうか。
ぬぐわれる(揉み扱かれる)気持ち良さに犯されていく。
両方の手が器用に動いて、汗でムズムズとしていた部分を快適にしていった。
尻の谷間までしっかり手が伸びて後孔の上まで拭きあげていく。
だけどこの行為は衛生的にしてもらって単に気持ちいい…だけで治まらなくなっていく。
敏感な部分に直接の刺激があるのだから、男としては当然のこと…。

…つかっ!絶対にわざとやってるっ!!…

「やめっ…!それ以上…っ!!」
大慌てで津和野の手をはがそうとするが、逆に強く握りこまれてしまった。痛いほどではないが、その加減がまた新たな刺激となった。
「良かったね~。ちゃんと機能するよ。高熱で不能になったらどうしようかと思ったけど」
それしきのことで…と俊輔は内心で思うが、声に出すまでには至らなかった。そんな余裕がなかったというべきか。
確実に津和野は俊輔の変化を感じ取っているのである。
「やぁ…、せんせ…っ」
「俊くん、可愛い声で啼きそうだよね。今度是非聞かせて」
ズクリと熱を宿し始めた中心を感じて、俊輔は思わず瞳を潤ませた。
それすら、見られて楽しいといった感じの津和野である。

「せんせ~…」
俊輔から情けない声が零れるのと、部屋の呼び出し音が響くのがほぼ同時だった。
二人の気が急に削がれる。
俊輔は神の登場だ、と思ったくらいだ。
だが津和野はあたりまえの流れのように受け止めている。
「いいタイミングだね。体も綺麗になったし、たっぷり栄養をつけてね。今後頑張ってもらわないと」
ニコリと笑った津和野は何事もなかったかのように、汚れたタオルを持ちバスルームに置いて手を洗ってから、入口のドアを開けに向かう。
その隙に俊輔はもぞもぞと衣類を身につけようとした。
ドアを開ければ全てが見渡せるような部屋だ。今の俊輔は下半身丸裸という状態だった。
しかし慌てては何もうまくいかず。結局布団に潜るということで誤魔化すしかなかった。

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ただそこにいて 9
2011-09-02-Fri  CATEGORY: ただそこにいて
食堂から、管理人さん経由で届けてもらった、おかゆや柔らかな煮物中心のメニューは、津和野が頼んだのだろう。
消化の良いものがトレーの上に幾つか。
食堂はバイキング形式で好きなものがチョイスできるシステムだったから、きっと俊輔の部屋に来る前に選んでおいたのだと思われる。
本来であれば食べに行かなければならないところを部屋まで運んでもらうなんて…。
…いたれりつくせりだな…。

「それくらいなら食べきれるでしょう。足りなかったらまた注文すればいいし」
決して多い量には見えなかったが、今の俊輔には充分足りている。
食べ物を無駄にすることは俊輔の中ではとても許し難いことであったから、少しずつを選んでくれた津和野には感謝すらした。
寝て過ごすだけの今だ。腹八分目以下でちょうどいいくらいである。
部屋の小さなテーブルの上にトレーが乗せられ、ベッドに背を預けるようにして俊輔は座った。
「なんだったら、食べさせてあげようか?」
「結構です!」
相変わらずニコニコと微笑む津和野を、早く職場に戻ってくれと追いたてる。
いつ、どんな人間がやってくるか分からない医務室だ。ましてや、この後の休憩時間にでもなれば、暇つぶしや相談をしにくる人もいる。
津和野は誰からも頼られる存在だった。

「食べ終わった食器は管理人さんに回収してもらうよう頼んであるから。明日の様子を診てからいつの職場復帰かを考えよう」
「でももう、今夜一晩休んでいれば…」
「無理は禁物。体力がちゃんと回復したらね」
ドクターストップがかかっていれば、出勤したところで班長に追い返されるのは目に見えている。
ここはもう、大人しく従うしかない。
俊輔が食べ始めたのを確認してから、津和野は部屋を出ていった。
正直あまり食欲があるというわけではなかったが、津和野が言うように体力をつけないと…とは俊輔も思うところがあった。
再び倒れても自分が困るだけだ。

食事を終え、だいぶ経ってから管理人さんが食器を下げに来てくれた。それから何をするわけでもなくテレビを見たりしながらゴロゴロと過ごす。
まだ体がだるいせいか、何かをしようという気力も湧かなかった。
誰かに何かをしてもらえる。その甘えも生まれているのかもしれない。
仕事で助け合いが感じられるのは当然のことだが、私生活についてはそれぞれ担うものがある。
そんな中で吉賀は本当に良く俊輔のことを見てくれていた方だった。彼の優しさにもっと触れたいと思っていたことは、こうして甘えられる環境に身を投げたかったからかもしれない。
長男として、ずっと、家族を支えていかなければ…という気合がほろりと崩れたような気もした。
だけどこんな風に甘えっぱなしではいけないのだ。あと4年…。せめて妹を高校くらい卒業させてやりたいから、今のこの環境で働くしかない。

勤務終了後、班長と吉賀が様子を見にやってきた。班長は津和野から容体を聞いていたので、あくまでも見舞いらしい。
栄養ドリンクを置いてすぐに帰ってしまった。
吉賀は親切心からなのだろう。何かをしたいようだった。
相変わらず俊輔は気持ちを勘違いしそうになって自分を戒める。
…同僚として気遣ってくれているだけだ…。

「俊輔、洗濯物は?着替えたやつとかどこいってんの?」
勝手にバスルームを覗きこんでいた吉賀が疑問の声をあげた。
今朝立ち寄ったときにあったはずのものがない、と吉賀は不思議がる。今の俊輔が、共同で使用できる洗濯機がある場所まで行けるはずがないと当然思ってのことだ。
吉賀の問いかけに、俊輔も初めて気がついた。
「えー…、っと、…あれ?」
「『あれ?』って、あのな~」
脱衣所から二手にバスルームとトイレに分かれた。トイレを使用していたくせに全く気付かなかった。
言われてみれば洗濯場所まで持っていっているランドリーバッグが消えていた。
昨夜着替えを入れた時は確かにあった。最後に着替えたのは…。
そこまで思いを巡らせて、「まさか…」とぽつんと漏れる。
最後に俊輔の着替えを手伝ったのは津和野だ。俊輔は食事を与えられるだけで立ち上がることもしなかった時間。
まさか、その隙に…???
「『まさか』?まさか何?」
「あー、…昼間先生が来てくれて…」
体を拭いてもらったとまでは口に出せなかった。
それなのに吉賀には過るものがあったらしい。眉間に皺が寄った。
良く見ればバスルームに干してあったはずの洗濯物もなくなっている。
昨夜着替えていながら、今日の、それも昼間に着替える理由…。しかもそのことを俊輔が言いもしないのに気付く津和野の行動…。
「俊輔っ!おまえ、まさか先生の前で脱いだりとかしてねーだろうなっ?!」
「え?!…あ、いゃ…」
真っ先に言い当てられて、しどろもどろになった俊輔の態度に、吉賀の中にあった疑惑は確信に変わった。

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ただそこにいて 10
2011-09-03-Sat  CATEGORY: ただそこにいて
脱いだどころの話ではない。身体を清めてもらうという目的があったにせよ、他人にはまず触れさせることのない場所までしっかり握りこまれた。その上、わずかではあるにしろ勃ちあがる兆しまでみせた。
それを思い出してはカァァっと顔を赤らめた俊輔に、ますます吉賀の機嫌が悪くなる雰囲気が見てとれた。
「俊輔っ!なんで先生の前で着替える必要があるんだよっ?!」
「え…、あ…、あっ、洗濯物、先生に聞いてみないと…」
その場から逃げだしたかったが、身を隠せる空間などありはしない。
ベッドへと戻ろうとする俊輔の背後で、「クソッ」という明らかな舌打ちが聞こえた。
それから「あのエロジジイ…っ」と悪態をつく言葉。
まるで俊輔がされたことを全て見られていたかのような恥ずかしさが浮かんだ。
吉賀は単に着替えただけと思っているようだから、それ以上のことは言わないに限る。
これ以上吉賀を不機嫌にさせるのも問題だった。

俊輔がベッドに戻ってしまうとその後を吉賀が追ってくる。
「俊輔、夕飯何食いたい?買ってきてやるし。一緒に食おうぜ」
自分なりに心を落ち着けようとしているようだった。気分を切り替えたいのが伝わってくる。
心配してきてくれているのに申し訳なく思ってしまう。
吉賀には食堂があるわけで、何もわざわざ外に買いに出たりここまで持ってくる必要もない。
一日ほとんど動いていない俊輔は、まだ空腹感もなかった。昼飯をしっかり食べたこともある。
「俺、いいや…。お腹すいてないもん」
「そんなこと言って~。ちゃんと食わないとダメだぞ」
「う~ん…。でももう少し時間がたってからでいい。だから吉賀、食堂に行っておいでよ」
「じゃあ帰りに何かもらってきてやるよ」
「うん。ありがとう」
俊輔が素直に従えば手を伸ばしてきた吉賀が静かに髪を撫でた。
こうやって気遣われて優しく扱われるから、勘違いしそうになるのだ…。
吉賀といつもよりスキンシップが多いことに気付いて、一度治まったはずの顔の火照りが復活しそうだった。

吉賀が出ていくと、カチャリと鍵の閉まる音がする。
「あ、そうだ。鍵…」
なんやかんや言ってまだ返してもらっていない。
吉賀は慣れて当然のように我が物顔でこの部屋を出入りしていた。
そのことが何とも言えないくすぐったさを生む。
規則では鍵を他人に渡すことは違反であったけれど、こんな時に役立つのにな…と漠然と思った。
ただそれは相手が吉賀だからであって、他の人間だったら全くもってお断りな話だ。
他の人間…と考えた時に、真っ先に浮かんだのが津和野だったのだが…。
吉賀は俊輔のことを考えて尋ねてから次の行動に出てくれるが、津和野は強引に事を進める。
その違いを、今回の騒動で強く感じ取ってしまった。
それとも、吉賀を好評価するのは俊輔の気持ちが加味されているからだろうか。
見てもいないのに、今日起きた津和野とのやりとりを知って、津和野に対して怒ってくれた態度も嬉しく思う。
津和野も決して悪い人ではないのだけれどな…。
大人としての経験があるから、先回りした行動がとれるのだろう。津和野の所作はどこをとっても無駄がない。

ベッドの中でそんなことを思っていると、うつらうつらとしてくる。
吉賀を待っていなければいけない…と思うのに、好きに入ってきてくれるという安心感が、俊輔の気を緩ませていた。

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