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BLの丘
囁きは今日も明日も 6
2010-09-08-Wed  CATEGORY: 囁きは今日も明日も
妙な照れを纏って思わずぎこちなくなる。
「な、何言ってんだか…。偶然出会ったって、さっきだって、な、中條さんが言っただろう?」
お近づきのしるしに、名前で呼ぼうかと提案したのは誰だったのか…。
今更ながらに恥ずかしさが増し、とても人前で彼の名を呼ぶことはできなかった。
「そうだよ、一葉ちゃん。磯部さんに今の一葉ちゃんを見せてあげようって連れて来ただけであって…。そんなふうに言われたら迷惑に感じちゃうよねぇ?」
そっと目配せをされ、頷いてくれという態度は分かったが、躊躇いのほうが大きかった。
そもそも『偶然』と先に口走ったのは自分で、その言葉に便乗して、中條は話を繋げてくれているのは分かる。
だからといって『迷惑』という言葉に頷くことはできなかった。
鈍感極まりないと思っていた朝比奈が何気に気付くのは安住という恋人ができたせいか…???

「俺としては中條さんを相手に…って言われるのは光栄だけど。むしろ中條さんに迷惑がかかることが心配」
「僕の心配はいいから~ぁ」
茶化したはずの台詞にもきちんと中條は応じてくる。
が、真相が掴めないその返事は何を意味するのだろう…と、逆に巣食うものが生まれたくらいだ。
「え?そうなの…?そうだよね…、びっくりしちゃった…」
くだけた二人の素振りは以前から…と思うのか、朝比奈の返事は、磯部に返すというよりも、馴染んだ中條に語りかける感じで、かつてとは違う親しみを込めていた。
安住だけでなく、中條とも良い関係が作れているのが一目瞭然だった。
そんな些細なことが何となく悔しい。

朝比奈の隣にいた男が、「軽食がほとんどなんですけど、ご注文があれば”がっつり系”作りますから」と柔軟なメニューを差し出してくる。
食後にはもれなく朝比奈の”食後のコーヒー”がついてくるらしい。
それ以外の用途があるのか?というくらいたどたどしい動きをしていた朝比奈だったが、他の客に「おかわり」と注文されて喜々と動く姿を眺めれば、やりがいがあることを見つけたのだな、とホッとした。
それくらい、生き生きと動いている姿に見えた。
あとは、片付けや、時折客の話し相手になったり…と、マスコット的な存在のようだが…。

「一葉ちゃん、可愛いでしょ?」
接客から放っておかれた二人には、静かな会話の時が訪れる。
ハンバーグに大葉と大根おろしがのったサッパリ系を食しながら、小声で中條との話が進んだ。
テーブル席を片す朝比奈はともかく、カウンターの中からあまり動かない男には聞こえているのか、だが何を言ってくるわけでもなかった。
そんなところも居心地の良さを伺わせる。
「意外だったな。うちでも窓口に座らせておけば少しは役にたったかも」
「磯部さん、酷過ぎ」
心底思っての台詞ではないのだろう。笑いながら中條が朝比奈の扱いを一応咎めてくる。
「うちにも『さくらちゃん』っていう子がいてね。あ、一葉ちゃんと同級生だったらしいんだけど。もう、顧客から引っ張られて大変」
「『さくらちゃん』?どこの源氏名?」
「うちの社員~ん。もうっ!今度会わせてあげるよ。『担当外したら取引やめる』とか脅されて、いっぱいいっぱいだよ、僕…。なんか、いいアドバイス、ちょうだい」
「中條さんを無下にする取引先が信じられないけどね。一番は中條さんでしょ。そんなことには巡り合ったことがないな~」
これだけの逸材をさし終えて何をいう?!
「まったくもうっ」
おだてているととるのか、しかし、笑顔には嬉しさがあったし、磯部も間違ったことは言っていないと心底思う。

顔で売っている営業と、窓口に置いておくマスコットと、どっちが酷いんだ?!と心の中で呟いた。
とはいえ、口上であって中條なりのジョークの一つなのだろう。
『枕営業』などしていないことははっきりと分かる。
そんなことは、この男は絶対に許しはしないだろう。
それとなく滲み出る雰囲気で感じ取った。

「もしかして中條さんの一番のお気に入り、とか?」
「気に入ってはいるけど、仕事上、ね。ま、彼には優秀なボディガードがいるし。そのボディガードから『営業用の携帯、GPS付きに代えてくれ』って言われたときは僕の方が驚いちゃった」
「え?部外者が?!」
さすがに仕事内容にまで口を出されては黙っていられないだろう。
どこまで踏み込んでくる気だ?と言いたくもなる。
クスリと笑った中條が「分かる気はするけどね…」と小さく呟いた。
「痴話喧嘩してはプライベート用の携帯の電源、落とされるみたいで。仕事用は絶対に切れないの、分かっているから」
「けどねぇ…」
反論しようとした磯部に、中條が「もうおなかいっぱいになっちゃった。はい、あーん」とフォークに刺したハンバーグを口元に持ってきた。
あまりにも自然な流れに思わず口を開いてしまう。

昔付き合った数々の人間とも、こんなことをしたことはなかった…。
そこに照れはあるのに、曝け出すことがぶざまなように感じる。
平然とした仕草をつき通し、嚥下するのを待つように、見つめていた中條がそっと名刺入れを出してきた。

「ねぇ、これって『まさひこ(雅彦)』さんって読んでいいんでしょ?」
さり気なく取り出されたのは、随分前に中條に渡した名刺だった。

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お待ちいただいている順番もなにも関係なく…な進みで本当にすみません。
こんな進み具合でもいいよっておっしゃってくださる方。
ぽちぱちってしてくれたらありがたいです。
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囁きは今日も明日も 7
2010-09-10-Fri  CATEGORY: 囁きは今日も明日も
中條に渡した名刺には振り仮名もなかった。
今のものとも少し違っている。
その後に一度デザインなどが変更されていたから、懐かしさもあった。
名前の読み方を確認されて、「そう」と答えながら、名前で呼ぼうと提案した自分の言葉を思い出した。
朝比奈を前にしては照れくさいだけだったが、自然と声に出されることに違和感も湧かない。

新しい名刺には、漢字の上にローマ字がふられている。
業務用の携帯の番号はもちろん、メールアドレスも印刷されていた。
まぁ、メールに関しては本社の人間に見られているわけで、私用は不可と言って良かったが…。
それを取り出し、交換するように手渡せば「あ、変わったんだね。会社に電話しなくて済みそう」と中條がニコリとした。
今回の約束をとりつけるのにも、電話をしてきたのは事務所だった。

「僕の名前、覚えてる?」
逆に問われる表情は悪戯をしかける子供のようだった。
中條ではないが、前回再会してから、何度かもらった名刺を眺めた。
間違える必要もなく、きちんと読み方はふってあったからその名前は頭に記憶されている。
こんな時でもからかうように口角をあげて「セイ(誠)?」と口にすれば、「もうっ!!」と肘を叩かれた。
「うそうそ。『まこと』でしょ。覚えてますよ、もちろん」
クスクス笑いながら叩く手をつかむ。
人に触れるのは失礼な時もあると思いながら、当たり前のように中條の手を握っていた。
「あー、からかわれたっ。嘘ついた罰でこのあとのコーヒーにも付き合ってよ」
「食後のコーヒーは付いているじゃん」
「じゃあおかわり」
「お安いご用で」

「えーと、その…、もう、淹れてもいいんでしょうか…?」
いつの間に目の前にいたのか、朝比奈が食べ終わった食器を下げたそうに戸惑っていた。
途端に、掴んでいた中條の手を離す。
なんとなく気まずい雰囲気になりそうなのに、それを払拭してしまうのは、中條と朝比奈の隣にいた男の持つ人間味か…。
「うち、ナンパ禁止なんで、いちゃつくなら外にしてください(笑)」(←常連は充分いちゃついているだろ?!)
「初めて知った!!一葉ちゃん、いつだって享とここで会っているじゃん」
「あ、あれは『お迎え』…で…」
「家付き、食事付き、足付きか。いい身分だなぁ」
「所長っ!!」
「そろそろ車もメンテナンスの時期だろ?俺に仕事を回してこい」
「磯部さん、営業うまいよね~。ま、ちょっと何か言えば享は『一葉のため』って週一で点検させそうだよ」
「上得意様だ」
「しませんよ、そんなこと~ぉ」

僅かな談笑が続いたあと、芳醇な香りを漂わせるコーヒーを前にして、再び『店員』はその場を離れた。
そのさりげなさには敬服する。
朝比奈にもそれなりの気遣いを持たせるように教育しているのは、あの男だろう。
若いのに…と、感心した。

再び戻った二人の時間。
首を傾げた中條が眼鏡の奥から艶やかな瞳を揺らせた。
「コーヒーのおかわり…ってさっき言っちゃったけど、時間大丈夫なの?」

つまり、まだ語りたい、会っていたい、そうとらえてしまうのは自惚れではないのだろうか…。

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短いけど我慢してね…。
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囁きは今日も明日も 8
2010-09-14-Tue  CATEGORY: 囁きは今日も明日も
仕事先には一日中出ていることを告げてあるし、緊急な場合でも連絡がとれないわけではない。
時間に余裕があることをさりげなく伝えればいたずらな笑みで「そういうことしちゃうんだ~」と目尻を下げた。
とはいえ、中條も仕事をしていることになっているのだから、お互い様だろう。
「こういう時に便利な仕事で」
「確かにそうだよね。けど磯部さんだから持てる時間じゃない?僕なんかいっぱいいっぱいだよ」
「またまた、謙遜しちゃって。じゃあこの余裕さは何?」
反対に笑いかければ「部下頼み」とやはり下手だった。
「いいねぇ、優秀な部下で。うちは今月、大ピンチって感じだよ」
「え?磯部さんの腕をもっても?」
「あのね~、一人で切り盛りしているわけじゃないんだって」
二人の会話はどこまでも朗らかで時折笑い声が上がっては、朝比奈などが目を止めてきた。
なんとなく知った顔の前で話し続けるのも聞き耳をたてられているようで抵抗が生まれる。
もちろん口外するような人間ではないだろうが、今一歩踏み込めないもどかしさも感じた。
元部下の前だから、という気恥ずかしさか…。

営業という人の顔を見ることに慣れた立場だからなのか、磯部の戸惑いを中條は感づいたようだ。
少し顔を近付けるような仕草をとって「お店変える?」と尋ねてくる。
この気の回し方はさすがだな…と感心した。
「あぁ、そうするか…」
立ち上がり帰ろうという態度をとれば、朝比奈がドアの前まで見送ってくれた。
「是非また来てくださいね」
「今度は営業しにくるよ」
「買えるわけないでしょ!!」
口を尖らせた朝比奈には、からかいがいがあるな、と内心で思っていたのは内緒だが…。

エレベーターで降りるか階段を使うかで小さないさかいが起こる。
何の迷いもなくエレベーターの前に立った磯部を、中條が隣り合う階段へと導いた。
「階段でいこ」
「なんで?」
「食後の運動」
手を取られれば離す方が不自然なのか、手をつないでいるほうが不自然なのか、困惑する磯部を気にせずに引っ張られた。
磯部には中條がそこまで体型を気にする理由が理解できずにいた。
確かに年齢を重ねると共に意識するところはあるが、ムキになるほど変化は感じられない。
「この前も思ったけど、変わってないよ。気にし過ぎじゃない?」
「そうも言ってられないんだよ。脱いだらすごいんです、状態で」
「それは是非拝見させていただかないと」
わざとらしく口角をあげれば、冗談と分かってくれていると思っていたのに意外と真面目な顔で振り仰がれた。
もしかしてこの手の話題は禁物だっただろうか…。

「それ、本気で言ってる?」
「え?本気…って、…」
思わず言葉に詰まれば「んー」とそれ以上の言及をせずにいる。
心のうちで冷汗をかいていたが、しばらくすると踊り場で足を止めた。

「付き合ってもいい、とか本気で思ってる?」
中條の静かな声がしーんとした踊り場に響いた。

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磯部…立場なし…。
この二人は意外と会話が多いので書きやすいかも。(っていいながら進みはカメ)
ポチしてくれたら嬉しいです♪
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囁きは今日も明日も 9
2010-09-15-Wed  CATEGORY: 囁きは今日も明日も
自分でも恐ろしくなるほどの急展開だった。
中條が伝えたいことはどちらなのだろうと、頭を過るものがある。
恋愛に対して簡単に人に声をかける人間と捉えられたからなのか、自分とのことを真剣に考えていたからこそ軽口を嫌ったのか…。

磯部にしてみれば確信に辿り着かず曖昧な態度だった自分の戸惑っていた所を突かれたようだ。

改めて問われて、心の中では明確な答えが生まれていた。
すべてを汲み取ってくれるような度量や、さり気なく回されてくる心遣い。
人前で交わす気の置いた会話でも違和感も嫌悪も持たせない。
場所を離れれば、親しみを込めて近づいてくる態度。
何もかもが新鮮であたりまえで、空気みたいで、安らぎで、癒されて…。

何故自分が”もっと近づきたい”と思ったのか、嫌でも知る。
意味を持って、“惹かれている”…

問われた言葉に戸惑いも躊躇いも浮かばなかった。
磯部からも朗らかな笑いが消えた。
「中條さんが相手でなかったらこんなことは言わない」
「名前で呼ぶって言ったの、誰?」
磯部の返事に満足げな表情を見せつつ、不満を漏らす声も聞こえた。
「ごめん。誠くん」
人前でなければさらりと口にしてしまえる名前。
これは中條の持つ雰囲気と自分の爛漫さを加えた怖気無さなのだろうか。
磯部が抵抗を見せるから、店の中では『確認』だけで終わって、気遣ってくれたのも今となってから知る。
積極的に動く中條には、年上の威厳も貫禄も何も通用していなかった。
まぁ、歳が1つしか変わらないわけだし…。

「じゃあ、『雅彦さん』」
改めて呼ばれれば照れくささの方が勝った。
「"さん”付けはちょっと…」
「同じだよ。この歳で『くん』付けってさぁ…」
思わず双方から笑みがこぼれる。
互いの言いたいことはもう伝わっているのに、改めて言葉にさせようという魂胆。
解かれていない指先に力がこもった。
「何て呼ばれたい?」
「『誠』でも『まこ』でも『まー』でも『オイ』でも」
「さすがに『オイ』は言えないなぁ」
また砕けた口調に戻れば、中條も「自分は?」と聞き返してくる。
「お好きなように」
「呼び捨てでもいいの?」
「もちろん」
今更それを聞くか?!と磯部は内心苦笑だった。
上目遣いの瞳に逆らう気力も失せる。…というか失われる。
可愛い仕草だな、と感じたくらいだ。

「じゃあ『まさ』にする」
「じゃあ『まこ』にしよう」
何とも似たような呼び名だなぁと思ったのは自分だけではなかったようだが…。

「約束だよ」
不意に背伸びをした中條が、掠める程度の唇の温かさを、磯部の唇に残していった。

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やっぱり喰われるんだ、磯部…
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囁きは今日も明日も 10
2010-09-17-Fri  CATEGORY: 囁きは今日も明日も
その後、2件目であるファミレスでドリンクバーとケーキを腹に収め、夕刻まで語り合った。
内容は日常についての他愛のない話だったが、互いにテンポが良いのか茶化すためか、なかなか先に進まない。
それでも知られざる世界を垣間見れたようで、気分は非常に良かった。
当然プライベート用の電話番号も交換した。
『名刺』など今では用がなくなっている。

日も暮れた頃、営業所に戻ってみれば、幾人かの社員が事務所に残っていた。
そんな中の一人、整備士である30歳になったばかりの竹島が声をかけてきた。
青いつなぎは仕事のためか、オイルなどで薄汚れている。
格好はともかく、邪魔にならないようにと、短く切り揃えられた頭髪には清潔感が漂っていた。
「所長、なんだかご機嫌ですね。また契約でもとれたんですか?」
「車の契約はだめなだけどなぁ。違う契約はとれたかも」
「…ずいぶん、意味深な答えですね…」
浮かれて口走ったことを今更ながらに後悔した。
ぽかんと口を開いた竹島に「いやいや、なんでもない」とひらひらと手を振る。
残務処理があるのだ、と言わんばかりにデスクに向かうのだが、頭を過るのは中條との会話ばかり。

『意外と甘いものが好き』と聞けば、洋菓子店のリサーチでもしようかと頭を巡らせるし、『ドライブなんてご無沙汰』と耳にすれば車好きの磯部はどこに連れて行こうかと悩む。
お互いに女の子が回るようなウィンドウショッピングは好きではないと知ったから、景色でも見に行くのがいいのだろう。
なんなら温泉でも取ろうか、と思いつつ、基本的に休みが合わないことに頭を悩ませた。
中條の休みは土日祝とカレンダーを見れば分かるようなものだが、磯部は平日ばかりになってしまう。
家族がある者などには優先的に休日を与えていたし、予定表を見ればしばらくの間は土日休みなどない磯部である。
かといって、中條に仕事を休ませるのも気が引けた。
一歩近づいたようで、だけどやっぱり遠い存在だ…。

「所長、さっきから、何、一人で百面相しているんですか?」
ふわりとコーヒーの香りがした。
竹島が訝しげにコーヒーカップを持って磯部に視線を送ってきた。
自分が悩める姿を見られているとは思ってもいなかった。
「そんな顔、してたか?」
「おもいっきりニヤけて、次の瞬間には奈落の底って感じですよ。とれた契約って彼女ですか?…まぁ、黙っててあげますけど…」
そばに寄ってきた竹島が声をひそめる。
営業の仕事時間は半分”自由時間”みたいなものだ…。
残ることを気遣ってくれたのか、淹れてくれたコーヒーカップを磯部のデスクに置いた。
「そんなんじゃねーよ」
一応反論はしてみるものの、売り上げをあげられない現在、返す言葉もない。

そんな時、ブルブルとプライベート用の携帯が小さな振動を伝えてきた。
僅かな時間で止まったことを思えばメールなのだろう。
さりげない仕草で携帯を覗けば、中條からで、『今日はお疲れ様。遊んでたのに意外と早く帰れそう。優秀な部下で良かった。マサはまだ仕事?長々と付き合わせちゃってごめんね。でもまた楽しみにしているから(はーと)』と入っていた。
人がいようがいまいが、緩む頬を抑えることなどできなかった。
「まったくもう…っ」
頭上からつかれる溜め息も磯部の耳には届いていない。

今更だが、朝比奈には感謝しようと心の隅で思っていた。
散々足をひっぱられ、手を焼いたが、時には役に立つこともある。(←安住にぶっ殺されるぞ)
「あ、そう。朝比奈が再就職したところに今日行ってきたから、おまえも後で顔、出してやれよ」
「所長が会ってたのって一葉君だったんですかっ?!」
脈略の無い会話に目を剥いたのは竹島だったが、彼が思うところの深い意味はもちろんない。
「ばーか。あいつが再就職したって話をしているだけだろーが。こんなのより、もっと美味いコーヒーを淹れられるようになっていたぞ」
「こんなの…って、インスタントです…」
比べたことをしょげたのか、明らかにショボンとする姿に笑みがこぼれる。
「あぁ、悪かった。上手いよ。疲れが吹っ飛ぶ」
「所長の疲れを癒してるのはメールでしょ」
それとなく耳を傾けていた社員からクスクスと笑いが漏れた。
売り上げだけを求めるのではなく、働きやすい環境を作ってやることで、仕事への意欲も変わるのだろう。
成績が良くなくても『余裕』という言葉を噛みしめていた。

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勢いで書いて読み返してもいない…。
磯部、お持ち帰りしなかった模様…。んでもって、へんなのが出てきちゃった…。
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