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ご訪問いただきありがとうございます。大人の女性向け、オリジナルのBL小説を書いています。興味のない方、18歳未満の方はご遠慮ください。
BLの丘
夢のような吐息 6
2010-04-16-Fri  CATEGORY: 吐息
野崎も敏い男だったから、人の感情はそれとなく読み取ることができた。
ひたすら仕事だけをこなす野崎を見て、宮原が何かを感じ、今思っていることがあるのだとは簡単に気付く。
ただ改めて言葉にされることで隠していたものを剥き出しにされるようなのは気分がいいはずがない。
人に対してビジネスモードの表情ばかりを見せるのは、内心を晒すことで精神が揺らぎ業務に支障が出るなど許せなかったからだ。
ただの強がりだと言われればそれまでだが、仕事をするうえで完璧にこなしたかった野崎が身に付けた仮面といっていい。
鍛え上げた精神の強さや鋭さは平静を失わないための殻だった。
人に心を寄せるような意味での付き合いを野崎はあまり好まなかった。
英人にのめりこみ完全に生活を崩された千城を見ているだけに、あんな風にはなりたくないという理想のようなものがある。

宮原はフッと口端を少し上げただけだった。
「別に…。なんとなく人に会いたかったっていうだけ。こういうところって『出会いの場』になるじゃん」
宮原には何かを隠しているという影のある雰囲気がありありと見えていた。
それならば仕事など辞めずに通えばいいだけのことではないか…?
そう思いながら履歴書にあった写真を思い出す。
外見だけでもかなり変わり果てた目の前の男に何もなかったはずはない。
水谷という男はそんなことをあえて聞くタイプでもないと知るが、自分の店を任せてもいいというくらいなら多少の素性は追うべきではないだろうか。

人ごとながら少々の心配をしつつも、宮原が自身の胸の内など告げる気がないのだと感じれば、野崎も質問した言葉を飲み込んだ。
そして先程宮原から誘われた言葉も消した。
表面上の付き合いだけ続ければいいと思うからそれ以上の詮索もしないし深入りもしない。

「そうですか。今後のことは水谷さんと話して決めます。もともとお一人でやっておられたことですので。貴方がお店を取り仕切れるようになれば自然と私は用無しですから」
暗闇の中で寄り添うようだった身体を引き離した。
それでは…、と帰る方向へ足を向ければ背中に「考えておいてよ」と投げかけられる声がある。
宮原がこれまでにどんな人間とどんな付き合い方をしてきたのかなど何一つ知りはしないが、ナンパでもされるような態度はやはり好まない。
何より、気の毒に…と思われたことが気に入らない。
疲れていると表情に出していたつもりもないし、水谷に癒してほしいと自ら望んでいる気持ちも持っていなかったつもりだ。
自分がこなしている仕事を否定されているようでもある。
奥歯をぎりっと噛みしめながら野崎は返事をすることもなく店を後にした。

言われなくてももうこの店に通うことはやめたかったのだ…。
心の中で悪態をついても、それが本心から発されている言葉ではないと何となく気付いたが今思った言葉で覆った。
これまで築き上げた『榛名』での生活を乱されたくない…。

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もう、SSの領域を越えそうですよ…。いや、確実に越えます。こんなのでもいいですかね~????
あとね、気付いたら人気投票、英人がとうとう安住を抜きましたね…。何日もつのかしりませんが…(すぐ抜かれるので…)母が分からないこの人気度…。
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夢のような吐息 7
2010-04-17-Sat  CATEGORY: 吐息
店を出てから3日もたたずに水谷から電話が鳴って、野崎は通話ボタンを押すことに躊躇った。
宮原の言葉に意識を向けたつもりはなかったが何故か耳に残っていた。
店に向けば宮原とも顔をあわせることになる。
水谷に簡単に身体を許す、と捉えられているようで顔を合わせづらいというのもあるかもしれない。
寝たのはたった一度だが彼の想像の中でそんなことはおもわれていないだろう。
最後に見た、何かを諦めたような表情も脳裏をちらついていた。
彼の過去など知りたくないと思うのに、あまりの豹変ぶりは少々気になる。
宮原ごときに気を反らされるなど…と何度も自分を戒め、新規事業も始まり多忙になったと理由付けて店に足を向けなければこの結果だ…。

夕闇で薄暗くなった窓の外を眺めながら社長室のデスクの上に翌日のスケジュールを置いていた最中で、千城が、躊躇いを見せた野崎を不思議そうに見上げてきた。
一瞬の躊躇まで感づいてしまうこの男もどこか憎い…。
「明日の予定を…」
平然を装い携帯電話のディスプレイに表示された名前を無視し、続きを促せば、千城が顎をクイっと扉に向けた。
外で電話をしてこいという意味だろう。
神戸に連れられて遠方に出かけた英人の帰りが遅いから時間は急がないと言いたい千城の気持ちが分かる自分もなんなのだが…。
普段なら早く帰りたがって、ついでに次の日にどれだけ重要な件があるのか知りたがるくせに(当然出社時間を調整するためだ)こんな日は余裕を見せる。
これまで次ぐ日の予定などどうでもいいというくらいに確認もすることなく、それとなく察せられればいいという態度が、分単位で事細かに聞いてくるようになった。
すべてはただ一人のために向かっている。
どっちを向いても忌々しいと思いながら野崎は溜め息一つ零すことなく、「失礼します」と一礼して廊下に出た。
そしてふと思った。

…そもそも誰が原因だ…????


水谷から相談されたことは、最近変動の激しい株式の件で、こればかりは野崎も先は読み越せないと断りをいれる。
取引のために必要となりそうなことなどは簡単に手に入れられても利用できない部分もある。
数々の情報を水谷に与えてしまったことを今更ながらに後悔した。
法に引っかからないというものでさえ、最新の情報を常に入れることができる野崎の存在が水谷にとってはありがたかったのだと思うから余計に手放せないのだろう…。

利用されているのは分かっている。全てを承知している。
単純にここまで関わっていたのは千城のためでしかない。
業務外の用件を押し付けられた(というより、解決策として自ら名乗り出た)野崎は、宮原が言っていた言葉を深く認めていた。
宮原が店に出た今、もう、水谷の傍にいる必要はないと…。

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夢のような吐息 8
2010-04-18-Sun  CATEGORY: 吐息
それからも数度店を訪れることはあったが、その度に宮原は良い顔をせずに野崎を迎えた。
今では1日の流れを確認している程度の仕事しかなかったから滞在時間は1時間ほどと短くなっていた。
数日分をまとめたとしてもたいして時間は変わらない。
「整理整頓くらいご自分でできるでしょう?何のために全てのファイルを分けてあげたんですか」
「美琴が見ながら分けたほうが効率がいいじゃないか」
「いつまでも頼るのはやめてください。もう全て御自身で出来る状態にはなっているはずですよ。宮原さんもお一人でやられています。本業に支障が出るのは嫌なんです」
「宮原君に会いに来る口実にすればいいだろう?その程度の支えでいいし坊やだって認めるさ」
至極当然のように答えられた台詞に目を剥いたのは野崎の方だった。
千城は野崎の性格を良く知っていたから水谷との関係が一時的なものだということにも気付いている。
まさか野崎が誰かと落ち付く関係になるなど思いもしていないはずだ。
その隠れ蓑にすればいいという発言もいかがなものか…。
あまりのことに続く言葉が出て来ない…。

脳裏を過ったのは帰り際のことだった。
店に来るたび、帰る際に裏口の外で宮原に捕まっていた。
千城の我が儘で予定を狂わされた時ほど的確に野崎の心情を言い当ててくる。
そんな雰囲気を出しているつもりはないのに、僅かな変化さえ気付くこの男が少々脅威に思えてきた。
千城の洞察力の良さに近いものがある。彼並みの意思の疎通の良さは快感に似ている。
そして立ち去る前に必ず口づけられた。
最初の頃こそ抵抗したが、幾度か続けば野崎は諦めて好きにさせた。
どうせ体格では敵わない。
「やっと付き合う気になった?」
「身体と心は別のものでしょう?この行為に諦めを感じているだけです」
「諦め早すぎ。だから誰にでも許せるようになるんだよ。そんでもって強情だね」
強気な態度に出るかと思えばふと淋しそうな表情を浮かべる。
何かを思い出すような雰囲気に、やはり宮原の”過去”が気になった。
「まぁいいや」
そう言ってスッとスーツの中に手を入れられ、あっという間に携帯電話を取られる。
素早い動きは水谷に並ぶだろう。
「ちょっと…っ!!」
取り返そうとした手を簡単に押し留められ、その隙に番号を入れられる。
直後、宮原の尻のポケットが静かに振動した。
「はい。これ俺の携番。今度の休み、付き合ってよ。一緒に行きたいところがあるんだ」
「何で私がっ?!」
「いいじゃん、ちょっとした気分転換ってことで。美琴さんを疲れさせるようなことはしないからさ」

約束をした(覚えはないが)日は明日である。

水谷がウィスキーグラスを傾けながらニヤリと笑った。
「最近物騒なんで裏口に監視カメラを付けたらいいものが見られた」
悪戯を見つけた少年の顔をする水谷に、野崎が顔を引き攣らせたのは言うまでもない。

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やっぱりみこっちゃんは可哀想な人のような気がしてくる…。

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夢のような吐息 9
2010-04-19-Mon  CATEGORY: 吐息
「恋はいいものだ、と前にも言ったろ?仕事以外に気を向ける物は持った方がいい。美琴は自分を追い詰め過ぎだ」
まるで分かったような台詞を吐く水谷の言葉にも抱えた頭を上げる気がおきなかった。
ここにもいらない誤解を与えた人間がいる。

「水谷さん…」
「何だ?恋の相談でもする気になったか?」
「冗談はやめてください。宮原さんとはなにもありませんので」
「でもあーゆーことするんだ」
「人のこと、言えないでしょっ!!」
“あーゆーこと”とあえて口にしないあたり性質が悪い。

振り返りたくない過去が甦ってくる。
水谷とのことを思えば宮原と交わしたものなど、挨拶だと思える。
その場の状況に流され、快楽に溺れ、我を失った時を巻き戻したいくらいだ。
「たまにはハメ外すのもいいもんだったろ。後まで引きずるのが恋愛だ。俺たちのアレはただその場だけの後腐れない欲求の果てだろ。美琴だって割り切ったから俺に抱かれたんだろうが」
「それ以上言わないでくださいっ!!もうこの作業は終了させていただきますっ」
「一度の間違いだ。闇に葬ればいい。美琴が宮原君に堕ちるならここにいたって手出しなんかしねぇよ。さすがに俺もそこまで節操のない人間じゃないんでね」

良く言う…と悪態をつきたいところだが事実なのだと分かる。
その時々、状況を見極めているだけにトラブルの話も聞かない。
自分も不覚と思いながら救われた部分があったのは明確だった。
この男の存在は無駄にはならない。
培ってきた月日が言わせるのか…。

「一度身を任せてみたらどうだ?それで何とも思わなければそれまでだ」
何て無責任な発言だろう…。
呆れて物も言えなくなる野崎に水谷は真剣な表情を向けてきた。
「少なくともあの子のことは随分と見てきた。飲み込みは早いし判断も的確だ。見た目こそあんなにチャラチャラとしているが中身はやっぱり真面目だよ。美琴に中途半端な気持ちで近づいているとは思えないけどな」
薄暗い裏口で見かけた表情の幾つかが脳裏を横切る。
野崎が疲労感を覚えている時ほど刹那的な瞳をした。
『救ってやりたい』と何かにつけて言われたセリフもある。
そんなに弱い人間ではないと、何度も耳に響いた声を追い払った。
同情などされたくない。
これは強がりなんだろうか…。

「大したもんだよ。俺が感じたことと同じことをたぶん宮原君も気付いたんだろう。美琴を見る目には哀れみなんかじゃない感情があるのは確かだ。俺とはまた違っている」
ズキンっと身体のどこかが鳴った気がした。

初めて唇を合わせた日は、水谷からも口づけられた日でその違いが鮮明だった。
水谷の一時的な癒しに対して、宮原には人生を達観した雰囲気が窺えた。

「水谷さんは彼の過去を御存知ないですか?」
「それを聞くのは美琴だろう?」
あくまでも興味がないという態度に少々の苛立ちを覚える。
気にすることはないと言い聞かせてきたはずなのに、今では興味をひかれた自分を認めざるを得ない…。

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あっちに比べると非常に人気のない番組(?)になったような気がしています…。
まぁ所詮裏番組(?)ですから…(/_;)
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夢のような吐息 10
2010-04-20-Tue  CATEGORY: 吐息
帰り際、いつものように野崎に続いて出てこようとする宮原を店内に押し留めた。
水谷がニヤけながらモニターの前にいるのが手に取るように想像できた。
「水谷さんが裏口に監視カメラを設置されていたと御存知でしたか?」
客には聞こえないようにと小声で話しかければ、宮原のスッとした眉がピクンと動いた。
この反応を見れば彼も知らなかったのだと分かる。
「いつから?」
「さぁ?ですが私と貴方のことは御存知でしたよ」
「オーナーに何も言われてない」
「人のことを気にする方ではないですからね。口出しなどしてきませんよ」
「まぁ俺はどっちでもいいけど。疾しいことをしてるつもりもないし。で、明日どこに迎えに行けばいい?」
これくらいでは動じないといった態度で、肩をすくめた宮原が誘った日のことを尋ねた。

野崎は頭を巡らせた。
断ろうと思っていた話だったからだ。
それが先程の水谷との会話で一度くらいはいいかという思いに変わっている。
たぶん、豹変する以前の宮原に興味があるのだろう。
今の彼と過去の彼をつないでいるのが、時折見せる人生を捨てたような表情だと感じる。
付き合うどうこうではなく、単純に人間性を見てみたいだけだ…と心に刻んだ。

「どちらに行かれるのですか?」
「そんなに時間はかからないけど…。うーん、でも昼前には出たい。10時くらいとか」
「では駅にしましょう」
「OK」

ここで別れるのだと思っていた。
だが野崎に続いて出てきた宮原がいる。
まさか…と嫌な予感を抱えて距離を取れば、宮原は裏口周辺をぐるりと見回していた。
そしてドアの上に設置された監視カメラを見つけると、これかぁと言うようにフッと笑った。
きっと宮原も今水谷がモニターを見ていると知っていての行動なのだろう。
度胸の良さには敬服する。
「美琴さん、おやすみ」
初めて聞く、柔らかな声のようで、野崎は一瞬ドキッとした。

大概の人間は、多少の表と裏があったとしても性格などは根本的に変わるものではないから行動パターンなどを見ればある程度つかめてくる。
宮原とはまだ顔を合わせてから大した月日があるわけでもないし、ほとんど会話などしたこともないといっていいのだから理解できなくて当然だった。
それでも普段の野崎からしてみれば、これだけの時間がありながら把握できない人間は滅多にいない。
宮原が見せる姿勢や仕草は排他的な部分がほとんどだが、僅かに同一人物なのかと勘違いするほど慈悲深い表情を垣間見せた。
最後にかけられた声もその一つだ。

水谷が恋だ愛だとまくしたてるから感情が反応しただけなのだろう、と自身に言い聞かせた。
明日、宮原が何をする気なのかをいまだに教えられていないが、妙な胸騒ぎが立つ言い訳だけは見つけられなかった。

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人気があろうがなかろうが、書かなきゃ気が済まない…。スミマセン、私の趣味の世界です…。一人でもお付き合いくださる方がいれば光栄です。
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