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BLの丘
チョキチョキ 13
2011-06-13-Mon  CATEGORY: チョキチョキ
部屋の中に無機質な機械音が響き、抱き合った二人の体が同時にピクリとする。
春日がふと時計を目にすればすでに10時を過ぎていて、誰が訪ねてきてもおかしくない時間だった。
そしてまた、羽生は例え休日でもこのような時間まで寝ていることはない。
ともすれば、春日が目覚めるのを待っていてくれた、ということになるのだろう。
思いを交わせたのは嬉しかったが、せっかくの時間を邪魔された悔しさは春日の中にも湧いてくる。

羽生から小さな溜め息が零れる。
「早過ぎだっていうの…」
ぽつりと呟かれた台詞は、今日、羽生が誰かと約束があったことを表していた。
チャイムは間をおいてもう一度鳴った。
「羽生さん…?」
残念ではあるが、先約があるのでは急展開のこの状況に春日が何を言えるわけでもなく、羽生から離れようとする。
「ごめんね」
春日の唇に触れるだけのくちづけを残して、羽生はスッとベッドを降り、リビングへと通じる方のドアから、寝室を出ていってしまった。
インターフォンのモニターがそちらにあるのだから、当然と言えば当然だが…。
唇の温かさを思い出し、余韻にしばらく浸っていたから気付かなかった。
羽生ともう一人、男の人の言い争う…というか、憎まれ口を叩き合うような声が聞こえてきて我に帰る。
羽生と客人がリビングに入ってくる物音がした。

春日はさっさと自分の部屋に戻ってしまえば良かったと後悔したが後の祭りだ。
羽生の寝室はリビングの隣に位置していた。
春日が自室に戻る為にはリビングに一度出てから廊下を通っていくか、仕切られてはいるが、ドア一枚を挟んで繋がっている書斎を抜けて廊下に出るしかない。
客がリビングにいることが分かれば、当然そちらのルートは使いたくないし、だからといって羽生の仕事に関することがびっちりと詰まった部屋を勝手に通過するのも躊躇われる。
だいいち、物音がすれば、嫌でも客に春日の存在を知らしめるものになる。
漏れ聞こえる口調は親しい者のようだったが、羽生が春日のことをどこまで伝えているのかは想像もできない。
きっとこのマンションの間取りは知っているのだろうから、羽生の寝室から姿を現したら何を言われてしまうのか…。

春日が思い悩みベッドのふちに腰かけて、どうしたもんかと悩んでいると、寝間着となっているシャツとゆったりとしたパンツを履いただけの羽生が戻ってきた。
考えてみれば、寝起きのこの姿を見せられるくらい近しい人間、ということになる。

「春日君も着替えておいで。もう少ししたら一緒に食事に行こう」
「へ?」
「もう手ぇ出したのかよ…」
リビングから呆れ返った男の声がこちらに向けて発される。
春日がここに住んでいることは知っていたらしいが、さすがに寝室にいるとは思っていなかったようだ。
明らかに誤解を与えているようで、春日はますます顔を合わせづらくなった自分を感じた。
「皆野に思いっきり邪魔されたけどね」
「それはそれはすみませんでしたね~」
全く悪びれていない態度だとわかる口調で、見えない姿同士が会話を進めている。
羽生に手を取られ、立ち上がった春日はそのままリビングへと引っ張っていかれる形になり、否応なく客の前に寝起きの格好を晒すことになってしまった。
「あ…、お、おはようございます…」
ソファに座り、興味津々で寝室の入り口を眺めていた男と視線が絡み、蚊の鳴くような小さな声で挨拶を済ませると、厭味ったらしい台詞を放った人物とは思えないくらい爽やかな笑顔で、「久し振り」と声をかけられた。
すぐに廊下へと飛び出そうとしていた春日は、少しだけ拍子抜けするのと、疑問符を浮かべる。

『久し振り』…???
「あの…、えと…」
春日に向かって話しかけられているのに無視して逃げ出すわけにもいかなく、咄嗟に羽生を見返した。
クスクスと笑った羽生が、「覚えていないよね~」と同意を求めてくるが、ここで頷いたら相手に失礼だろう。
どう答えたらいいのか戸惑う春日に、羽生が説明してくれる。
「春日君がファミレスで働いていた時に一緒に行ったヤツ」
その時のことが脳裏に浮かび、パッと瞳と口が理解したことを示すと、『皆野』と呼ばれた男が苦笑しながら、「うっわっ、存在、うすっ!!」とわざとおどけてみせた。
『ナンパ』と含みながら気軽に接してきた態度を思い出す。
二人の関係を聞いたことなどなかった。ファミレスに来てもらった時は二人とも立ち振舞いがあまりにもスマートで同僚かと勝手に思っていたが、羽生と一緒に働く現在、その可能性はなく、友人だと見てとれる。
「草加皆野(そうか みなの)です。よろしくね、春日君」
にっこりと笑われて、かつ、当たり前のように名前で呼ばれて、「はぁ…」と、何とも情けない返事が春日から漏れた。
羽生が春日の背中に掌を当てて、リビングから出そうとする。
「ほらほら。皆野の相手なんてしていなくていいから」
「大人げなく嫉妬ですか~、羽生さんよぉ」
「予定時間より30分も早く来た皆野とは話さなくていいからね」
皆野の言葉を全く無視して、羽生は春日にしか話しかけない。羽生にも先程の、蜜なる時間を奪われた恨みが存在しているらしい。
せめてあと10分は一緒にいられたはずだし、準備万端で皆野を迎える気だったのだろう。もしくは春日がもっと早く起きるか…。
朝から計画を狂わされた羽生の苛立ち…、というほどのものはあまり感じられず、どちらかといえば楽しんでいる印象が強い。
春日の気持ちを聞けたから…なのか…。
春日は、皆野が発した『嫉妬』という台詞に幾分心臓をどきどきとさせながら自室へと向かった。

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お邪魔虫、皆野登場~。

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コメント

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No title
コメント甲斐 | URL | 2011-06-14-Tue 00:01 [編集]
草加さーん
すっかり忘れられた存在のくせに
いいところを邪魔してくれたじゃないですか
もうちょっとだったのにー
ッチ
Re: No title
コメントきえ | URL | 2011-06-14-Tue 10:22 [編集]
甲斐様
こんにちは~。

> 草加さーん
> すっかり忘れられた存在のくせに
> いいところを邪魔してくれたじゃないですか
> もうちょっとだったのにー
> ッチ

舌打ちしてる(爆)
影薄いくせにね~。とんでもないところで登場です。
見せつけてやればもう邪魔をしに来ることもないでしょう(たぶん、きっと…)
からかわれるネタは掴んだかもしれないけど。
堂々と居座っているところがまたつわものです。
コメントありがとうございました。
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