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BLの丘
真っ赤なトマト 43
2011-05-26-Thu  CATEGORY: 真っ赤なトマト
以前ファミレスで働いていた頃より、圭吾の明るさも増したと思う。
あの頃は、孝朗には少年心丸出しで近付いてきていたが、他の従業員にはどことなく隔たりがあった。
人当たりは良かったが、芯からは接しないといった感じの、羽生に言わせるところの『壁』だ。
異動ばかりを繰り返していたから、圭吾なりに気を使っていたのかと、今になって振り返りもした。
だからこそ、活き活きとした圭吾を見られたことは、孝朗にとっても嬉しい出来事になっている。
きっと圭吾は、ずっとこんな環境に身を置きたかったのだろう。
『黙って辞めようと思っていた』とあの時、圭吾は言っていたが、自分がいない世界で、彼の明るさを出すことができたのかと考えるのは、自惚れだろうか。

賛否両論、様々な意見を皆で言い合う空間も楽しい。
食についての蘊蓄を唱えられるほど、孝朗の知識は詳しくなく乏しかったが、「プロが食べに来るわけではない」という越谷の言葉に、素直な意見が話せる。
元が教師という人物だけに、人を誘導、指導するのは上手いものがあった。彼の手助けをする羽生が何故あれほどまで凛々しくいられるのか、理解できる部分もある。
人の言うことを聞き逃すことなく、一つ一つを分析していく。
もちろん、この店を存続させたいから、という意識も強い。
そこに賛同した人間がこうして集まっているわけだから、当然仲間意識が強くなり、充実感も増していく。
この環境が孝朗は心の底から喜ばしかった。

レストランの定休日の前の夜、突然「みんなで飲みに行かないか」という話が浮上した。
客席から離れた場所で、勤務時間中にも関わらず、それぞれに話が行き渡った。
そうと決まれば閉店時間までの作業が早くに終わるのだから驚きだ。
こんなところも個人経営の強みなのだろうか。それとも連係プレーの凄さなのか…。
別に普段からだらだらと仕事をしているつもりはないが、楽しみが増えることで意欲が増すのは問題視されない。

皆で向かったのは深夜までやっている大手チェーンの居酒屋だった。
客席に仕切りがあるわけでもなく、店全体が見渡せる造りで、掘りごたつ式の座敷に、休憩時間と同じような並びで腰を下ろす。
今は孝朗を端に座らせて隣に圭吾がいた。
ジョッキを掲げ、威勢よく乾杯の音頭が取られて談話が進んだ。
「こういうところに来るとさー。変に従業員の動きに目が行っちゃうんだよね」
「そうそう。バイトが多いし、対応、なっていないとかね」
ホールのスタッフから辛口発言が飛び出し、孝朗はかつての自分を思い浮かべた。
注文一つの取り方から店内を移動する動作にまで自然と視線が向いてしまうのは孝朗にも思い当たる。
人に見られる存在、という意識はあったが、そこまで深く追求して考えたこともない。
同じ職業の人間から、自分も見られていておかしくなかったことに気付く。
「もう、職業病だよね~」
「あんまり言わないでくださいよ。タカ、そういうの、すごく気にするから」
振りまかれた話題に圭吾が口を出した。自分の考えていたことを見透かされたようで驚きもする。
一つを気にかければぎこちなさがつきまとう孝朗の性格を良く知っていた。
「俺は孝朗君の動きは好きだけどね」
羽生が孝朗を庇うように言ってくる。人の良さはそれぞれであり、神経質になることはない、と言いたいらしい。
その優しさがまた嬉しかった。
途端に圭吾が口端を上げる。
「羽生さん、そうやってタカに狙いつけるの、やめてくれません?」
「け、圭吾っ、何言って…」
過去のなんたら、はすでに水に流されているはずだ。しかも他の人間の前で言われたいことでもない。
慌てふためく孝朗の前で、「ほんと、タカくんって可愛いよね~」と別のスタッフが笑う。
圭吾と羽生が表向きの言葉遊びをしていただけのこと、気付くまでには随分な時間を要してしまった。
どうにもこの手の話題には馬鹿正直に反応してしまい、またそれが、周りにいる皆には理解できているのに自分では気付かない。

かつてこんな冗談も圭吾は言わなかった…とも思う。
絶対に圭吾は変わった!!と確信した。図々しさは以前からあったが、今は全く違う。
そう、『遠慮』というものがなくなっている。
過ごしやすい環境ではあるのだろうが、孝朗にしてみれば、これこそ気が休まれない状況だ。
「もぅ、けいご…ぉ…」
小さな声で文句を告げてみれば、そっと腰を引かれる。
「誰にもやんない」
耳元で囁かれた言葉を理解しようにも突然のことに脳味噌が停止した。
呆然とした直後、軽く唇が塞がれた。
目を見開いたままの視界の前に、ドアップの圭吾の顔がある。
賑やかに騒がれていた自分たちのテーブルの音が、…消えた。

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