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BLの丘
真っ赤なトマト 42
2011-05-25-Wed  CATEGORY: 真っ赤なトマト
定番のメニューはあったが、新しく生み出されていく数は非常に多い。
羽生はすぐに統計を取り、出数やアンケートを調べつくしていた。
客の要望で即座に違った料理に作り変えていけるところは、さすが「料理人」と言えるだけある。
すでに味が決まってしまっているファミレスとは、抱いている感覚が全く異なっていた。

新メニューが決まるまでには数多くの試食会が繰り返された。
見た目はもちろん、味に至るまで、従業員全員でコメントを言い合う。
特に月替わりのコース料理には力が入れられた。店の看板でもあるのだから当然の話。
大概は昼の休憩中の、食事代わりに出された。
数種の料理はそれぞれに取り分けられていく。
「タカ、こっちは?」
孝朗の口元に圭吾が、孝朗が食べていたのとは違うソースを絡めたステーキを、フォークに刺して持ってきた。

圭吾がさりげなく(?)関係をバラしてしまってから、孝朗の気負いはなくなった。
普段通りに話もするようになったし、自然と近付いたりもする。
それはいつもの行動のようでもあった。
孝朗は大人しく目の前に来たステーキ肉を口に入れた。
「どう?」
「お―――い」
先程食べていたものとの違いを尋ねられる言葉と、隣から掛けられる言葉が重なる。
「場所考えてくださ―――い」
茶化される声で我に返った。
本気で咎めたいわけではなく、からかいたいだけなのが、クスクスと笑われている姿で知れる。
先程自分が取ってしまった行動に、孝朗は瞬時に真っ赤になった。
少なくとも、皆が見ている前では、皿にでも乗せてもらうべきだったのだと気付くが後の祭りだ。
「タカくん、これは?」
更に隣にいたスタッフが違うものを差し出してくる。
馴染んでくれば、堅苦しく名字で呼びあっていた間もいつの間にか変わり、孝朗を名前で呼ぶ人も増えた。
その親しみは嬉しかったが、今は状況が違う。
明らかに圭吾と共に調子に乗った連中だった。
逆の意味では、これくらいのことは普通にしてしまうことなのだ、という抵抗を持たせない動きなのか…。
恋愛ごとに疎いのはすでに知られた話で、過剰なくらいのスキンシップを皆が謀ってくる。
もちろん、圭吾を不機嫌にさせるようなことはなく、その辺はきちんとわきまえていた。

「ダメですよ。タカに食べさせるの、俺なんだから」
「圭吾っ!!」
「今は半分お仕事中。独り占めは帰ってからでいいだろ」
「あ、俺も食べさせてあげたい」
「孝朗君、今の表情、可愛かったよね」
口々に飛んでくる台詞にますます顔が火照っていく。
こういったことに免疫がないのだから勘弁してほしい、とも言えないことだったが…。
ジロリと目の前の圭吾を睨み上げるが、全く意に介していない。
それどころか、二人の関係を見せつけてやれた、くらいの余裕を持っている。
今更スタッフたちに隠すことはないけれど、それでも孝朗にはすべてのハードルが高いのだ。

「おいおい。しっかり味を見ているんだろうな」
からかう声が飛び交う中を、どっしりとした風格で越谷がたしなめる。
孝朗を救いだしてくれる温かみがあった。
休憩時間中でもあるのだから、気安く接していていいのだが、ただ現在は今後の店の行方を語る時でもある。
こんなことで孝朗の口を閉ざしたくないという意思も見えた。
二人を温かな目で見守ってくれながら、居やすい環境を提供してくれる主。

自分が上手く対処できるようになれば、この場の雰囲気ももっと良いものに変わるのだろうか…。
すぐに羞恥を纏う自分の不甲斐なさを時々思う。
だからって到底圭吾のように、堂々とした態度をとれる神経は持てないだろうけど…。
でも居心地がいい。
圭吾の腕の中にいるのと同じくらい、この店の全てが自然で素直で、孝朗を解放してくれる。
照れてはいたけれど、心の中で圭吾に、いく度目か分からない感謝の言葉を呟いていた。

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