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BLの丘
真っ赤なトマト 28
2011-05-10-Tue  CATEGORY: 真っ赤なトマト
すっかり満腹になってしまってから、バザールに辿り着いた。時刻はもう夕刻に近い。
『グランド・バザール』と呼ばれた市場は、屋根付きのアーケード通りになっていた。
数多くの店が隣り合って並び、中はかなり広い。奥まで進んでしまうと迷子になるのではないかと思われた。
たくさんのお土産物や雑貨などが所狭しと並べられていて、観光客と店員との間で値段の交渉が行われている。
あちこちから掛けられる声を適当に聞き流しながら通り過ぎて、もう一つのバザール『エジプシャン・バザール』といわれる場所に向かった。
グランド・バザールが観光客向けならば、こちらは地元に根付いた感がある。
店数も圧倒的に少なかったが、並んでいるものは食品が多く、圭吾の目を惹いていた。
スパイスも多く、独特の香りが辺りに充満している。

「うわっ、すげー、ここっ!!」
孝朗では何が何だかわかりはしなかったが、圭吾は目を輝かせてあれこれと見つめ合っている。
店員もグランド・バザールの時ほど執拗に客引きをしてこない代わりに、試食を良く進めてくれた。
木の実やナッツ、ドライフルーツはもちろん、チーズなども量り売りで売ってくれる。
「タカ、タカ!明日ここ、来よう!!」
何やら興奮したらしい圭吾がゆっくり見て回りたいと言い出す。
バザールの外にも店は並んでいて、野菜や魚なども目についた。
言葉が通じているのか通じていないのか、圭吾は果物を手にとってはペットボトルの水で一度洗ってからそれを頬張っている。
店員が特に何も言ってこないので、一つや二つのものを試食されるのは問題ないらしい。
孝朗にも食べろと、店員が渡してくれる。

「今日の夕飯、どうすっかなー」
「まだ食べるの?」
「今はいいけど、夜になったら腹、減るよ」
「そうだけどさー」
数多くの店が深夜までやっていることはすでに知っていたが、その遅くに外に出ようという気があるだろうか。
治安の面でも少々気になるところがあるが、またホテルのレストランを利用しようとも、なんとなく思えなかった。
それは圭吾も同じらしい。
地元の、そこにあるものを食べたいのだとは伝わってくる。
「なんか、作るかな…」
「作る?!どこで、何を?!」
「部屋で。ナイフとカッティングボードと鍋、持ってきてるし」
「はいっ?!」
あまりの驚きに孝朗は絶句した。鍋というものがまず想像つかなかった。湯沸かし器くらいなら理解できたが…。
圭吾は歩きつつ、野菜を幾つかと、スィミットと呼ばれるドーナツ型のゴマがついたパンを買っていた。
もちろん、つまみ用にナッツ類とチーズも忘れていない。
カフェにあった、サンド用の肉を「売ってくれ」とまで言っている。

「タカには今日、無理させちゃったよな。腰、平気?」
「だ、大丈夫…」
多くの袋を抱えながら、そっと腰から尻を撫でられて飛びのく。あまりにも人が多い中でとられたくない仕草だった。
朝あった鈍痛も休みながらゆっくり動いていたおかげで引いている。
まぁ、昨夜、誘ったのは自分のほうだったし…と、すごく恥ずかしい事をした気持ちがむくむくと湧いてきた。
いや、そもそもは一緒に風呂になど入ったからだろう。
今日は絶対に一人で入るんだ、と固く心に誓い始める。
圭吾が何かひらめいたように口を開いた。
「あ、そうだ。トルコって『ダマスクローズ』とかっていうバラが有名だったよな」
「なんとなく聞いたことあるかな…」
「今日はさ。それ、風呂に入れようよ。その辺で売ってるだろ」
「ちょっと、圭吾?!」
土産ではなく、現地で使うから意味がある、とのたまう圭吾に背筋を寒くさせながら、必死で止めに入った。
この様子からでは、孝朗の意思は無視されかねない。
「なにが?入浴剤だと思えばいいじゃん。タカ休めるでしょ。…タカ、またイイこと想像した?」
耳元で囁かれる言葉に、自分が失言をしていることを知る。
確かに圭吾は「一緒に入ろう」とは言っていない。
孝朗が勝手に想像しただけのことだと、揚げ足を取られる。
「イジワルっ!!」
どこに向けたらいいのか分からない羞恥と自分の未熟さに、自分でも子供じみた反応しか返せなくて悔しくなってきた。
「タカ、可愛い」
「圭吾っ!!」
ぷぅと頬を膨らませた孝朗の頬を、スッと圭吾の唇が掠めた。
「…っ!!」
「タカのそういう無垢なとこ、好き」
堂々と告げられる告白の言葉にも照れて何も言えない。
人の往来が激しいこの場所で、こんな風に触れあえるのは、言葉の意味が通じないせいだからなのだろうか。
極端に反応し過ぎる自分も情けないが、いつかこうして自然と慣れていけるのだろうか。
ただ一つ分かることは、今ここに、圭吾と一緒にいられて良かった、ということだけだった。
新しい息吹を常に運んでくれる人…。

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コメント

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こんにちは~
コメント史生 | URL | 2011-05-10-Tue 19:37 [編集]
こんにちは~
可愛い無垢な反応って、いいですね(^^)
読んでいて微笑ましいです。

今、無垢と入力しようとして「剥く」になっちゃいました(^^;)、相変わらず腐った辞書です(^^;)
Re: こんにちは~
コメントきえ | URL | 2011-05-11-Wed 06:59 [編集]
史生様
おはようございます。

> こんにちは~
> 可愛い無垢な反応って、いいですね(^^)
> 読んでいて微笑ましいです。

微笑ましいんですけどエロくならない(´∀`;)
でもそんなところがふたりらしいんでしょうか…。

> 今、無垢と入力しようとして「剥く」になっちゃいました(^^;)、相変わらず腐った辞書です(^^;)

私も誤変換いっぱいあります~。
そして、もう人にパソコンは貸せません(^_^;)
腐った辞書を見られた日には…Σ( ̄□ ̄;)(←なんだ?この辞書は???です)
コメントありがとうございました。
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