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BLの丘
真っ赤なトマト 5
2011-04-15-Fri  CATEGORY: 真っ赤なトマト
2本の缶ビールを空けたところで孝朗は眠気を覚えた。
お腹もいっぱいになり、寝不足の日々にアルコールが入れば自然と体が萎えてくる。
うつらうつらと船をこぐ姿に斜め横に座っていた圭吾が隣に寄った。
カーペットが敷かれた床の上に、小さなテーブルとクッションがあるくらいの質素な部屋は自分の部屋とも変わらない。
部屋の奥に良いマットレスの置かれたベッドがあった。圭吾のこだわりなのだと思えるようなものだ。
「タカ?」
ふと肩を抱かれて引き寄せられ、そのまま沈み込むように圭吾の胸にしなだれかかる。
「ごめん、眠くなった…」
「みたいだな」
「帰るよ…」
玄関扉2枚を越えれば自分の部屋がある。分かっているのに、酔った体はその僅かな距離を移動するのが億劫だ。
目を閉じたまま圭吾にもたれかかると、「泊まっていけばいいじゃん」と安心させる声が聞こえた。
たった2つの扉。すぐ隣の部屋なのに…。
たぶん他の人間だったら、なけなしの意識を総動員させて自室に戻っているのだと思う。何故そう思うのかは分からないが…。
ただ、今一緒にいるのが圭吾だったから…。
孝朗は完全に気を許していた。
「でも…」
ゴニョゴニョという口元も怪しい。
目を閉じたら最後。あっという間に睡魔が襲ってきた。
「けい…ご…」
「タカ、寝ろって。神経張り詰め過ぎ…」
最後の方の言葉はなんだかも聞き取れないくらいに、勢いよく孝朗は闇の中に落ちていく。
人の前ですんなりと眠れるとは自分でも思わなかった。

「ばか…」
圭吾が最後に呟いた言葉が、現実のものなのか夢の中のものなのか判別もつかなかった。


目覚めた時、孝朗は背後から抱えられている立場を知った。
横向きになって寝ていた体勢。
そこは確かに自分の寝具とは違って寝心地がよかった。
体を支えてくれるマットレスも、普段では感じられない知らぬ温かさも…。優しく体を包んでくれている。
薄く目を見開くと、壁が見える。寝返りを打とうにも背後を抱えられていて身動きができない。
腰の前に回った手と背中に張り付く温もり。
僅かなすきまで顔だけ振り返らせると、圭吾の整った鼻梁が飛び込んできた。
触れそうな唇を感じて咄嗟に正面に向き直る。
ドキドキとする孝朗の心臓の音と、圭吾の静かな寝息が聞こえてくる。
夕焼けを思わせる紅い日差しがカーテンの隙間から部屋に届いていた。
見える世界は自分の心の中のようで燃えている錯覚が生まれる。
「け…」
言いかけて孝朗は言葉を飲みこんだ。
今夜休みである孝朗と、出勤しなければならない圭吾の立場は違っている。
少しでも寝かせてやりたいと思うのは、同じような生活を送っているからかもしれない。

できることなら再び眠りにつきたいと思いつつ、それは叶わなかった。
緊張に体が震え、項にかかる寝息の一つも孝朗を蝕んでくる。
圭吾が起きるまでじっとしているしかないと何故か思ってしまった。
それで圭吾が休まれるのであれば…。
自分はこの後、また眠ればいいと…。

目を閉じているのに眠りの世界に誘われることはなく、ただ圭吾の寝息と温もりだけを感じてしまう。
緊張で硬くなるだけの体に、ふと、圭吾の掌が部屋着ともいえるシャツを着こんだ孝朗の中に潜り込んできた。
どこかの女と間違えているのか…。
そんな手付きだ。
無意識に動くのか、さすがに孝朗は、その手を掴んで止めさせる。
「けっ…いっ…」
「タカ、起きてたんだ…」
手の動きはすぐに止まった。だが、孝朗が考えていたような”無意識”ではなかったのだとすぐに知らされる。
明らかに目的をもって蠢いていた手だった。
そしてはっきりとした声。
驚きながら振り返ると、間近に迫った顔は眠そうでありながら、安堵と驚愕を同時に浮かべていた。
「なっ…にして…っ…っ」
「ごめん、つい…」
「『つい』っ?!」
聞き捨てならない台詞に噛みつきそうになるのを、ククッと笑われて、自分の経験の無さを知らされた思いだった。
こんな状況に陥ったことなどなく、ひたすら焦りだけが生まれる。
圭吾の余裕な態度は、孝朗をからかっているようにしか思えない。
「なにっ…っ?!」
恥ずかしさと余裕の無さに動じてバタバタと手足がうごめく。
つい先ほどまで大人しく寝かせてやろうと気遣った心はどこに飛んだのかという暴れ方だった。
「ごめん、ごめんっ」
クスクスと笑いながら圭吾がそっと孝朗の体を解放した。
身を剥がそうとしたが、壁際に追いやられていた孝朗は逃げ場がない。
それでも上半身を起こすと、安心したような圭吾の視線が自分を見上げていて、何やら分からずに動きを止める。
「タカのそういうとこ、好き」
何を言われているのか、孝朗は理解できなかった。

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コメント

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No title
コメントけいったん | URL | 2011-04-15-Fri 11:34 [編集]
初心な孝朗にーー!ォー(@Σ@;)

まだ早いって 圭吾!
果実は まだまだ 青いよ~

食べ頃を 見極めるのも 優秀なコックでしょ♪
(*^‿・)b...byebye☆
Re: No title
コメントきえ | URL | 2011-04-15-Fri 12:09 [編集]
けいったん様
こんにちは~。

> 初心な孝朗にーー!ォー(@Σ@;)
>
> まだ早いって 圭吾!
> 果実は まだまだ 青いよ~

まだ青いトマト…。おいしく熟していないです…。
(え?そういう意味なの?!)
実になる前どころか苗だよw
これから青い実をつけて…(←先長いっ)

> 食べ頃を 見極めるのも 優秀なコックでしょ♪
> (*^‿・)b...byebye☆

食べごろを待っているところなんですけどね~。
はい、充分手塩にかけて育てている最中ですが…。
調理方法を今から考えています…。
コメントありがとうございました。
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