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BLの丘
真っ赤なトマト 2
2011-04-12-Tue  CATEGORY: 真っ赤なトマト
アルバイトや社員の休憩場所でもあるところは、厨房から脇にそれた場所にあった。
洗い場も近かったし四方を壁が作られたようなつくりでもなかった。
休憩時間中でも事が見られると言えばそれまでだが…。
テーブルや椅子が並べられてはいるものの、剥き出しの空間は店内の雑踏が聞こえてきて、あまり落ちつけた場所ではない。
しかし事務所も見渡せる場所にあるから、誰かの目で見守られている感じはある。
そしていつも誰とも会話がもてるような空間で交流の場でもある。
事務所に入れる人間は決まっている。
常に鍵をかけているわけでもない、無防備な場所であった。
休憩室のすぐ隣に事務所があったから、アルバイト同士の視線を交わさせ犯罪行為を防ぐにも役立っていた。
アルバイトの休憩をはさんでいない今、その休憩場所で、孝朗は圭吾が作ってくれたシーフードスパゲティーを食していた。
普段であれば事務所内でそっと食事をすることばかりだったが、圭吾がいると、事務所にこもる理由もなかった。
塩味が良くきいてスープの絡み具合もよく、喉をするりと通っていく。
作る人によっては火加減から水分が飛んでしまうこともあったが、圭吾が作るものは常に安定した味を保っていた。
そんな失敗がないようにと見守るのが厨房社員の存在であり、ホールとは違って厨房は絶えず社員が存在する。
契約社員に任せて店を開けられるホールよりも過酷な労働条件が敷かれている厨房だった。
だが、そんなことに文句の一つも聞かれたことはない。
まぁ、時折、シフトの組み方などの愚痴は耳にするものの…。何せ料理長の好き勝手にされている世界だ。
目の前には頼んでもいない照り焼きチキンを乗せたサラダの皿が置かれている。
メニューにもない、完全な圭吾のオリジナル作品だった。
基本的に従業員の食事(従食と言ったが)は、低価格での給料天引きとなる。
もちろん、短い労働時間のパート社員などにも適用されるシステムだった。
社員価格というべきか、ほとんどのメニューが定価の40パーセントほどで食せた。
外食するよりもずっと安上がりの価格だったから中途半端な食事時間でも利用する人間は多い。
「経費、狂うっ!!!」
出されたサラダに対して文句を言う孝朗に、圭吾はしれっとして、「不要食材であげちゃえばいいじゃん」といつもながらの答えが返ってくる。
時に、オーダーの取り間違いだとか、賞味時間が切れたとかで捨てられていく準備された食材は1日にすると結構な量だった。
即座に提供できる準備も一つ間違えたらただの無駄遣いになってしまう。
味を変えられないほとんどのものはレトルトとして本社工場から送られていたが、店で仕込まなければならないものもたくさんあった。
生ものの野菜などまさにその部類だ。

「不要…ねぇ…。仕込みの量、考えた方がいいんじゃないの?」
「決めてるの料理長だし。俺は言われたこと、やってるだけです」
確かに権限は料理長にある。レトルト食材とはいってもその解凍も準備数も料理長が過去のデータから導き出すものだ。
その過去データには、店長や孝朗が出したものも関わってくる。
予想来客数などを割り出すのは店長と孝朗の作業で、それをもとに料理長は食材を準備させていた。
それらを見ながら圭吾のようなものも現状を把握して成長していく。
「じゃぁ、このチキン、なに?」
「それ、俺のおごり。タカ、もっと肉つけろって」
「いらないっ!!こんな夜中に肉食ってどうするってのーっ?」
「もっと肉増やせって」
太れと言われているようで嬉しくなかった。
逆に胸やけでもしそうだと思ってしまう。
昼夜逆転したような今の生活に、深夜の食事も何もあまり苦になってなどいなかったが…。
一口大に切られた照り焼きチキンを、圭吾のフォークが差すと孝朗の口の前に差し出された。
「俺の愛情だって。ほら、あーんして」
「ふざけんなっ」
口を閉じようとしたところに押し込まれてくる温かい肉。
「んっむっ」
「うまいだろ?俺様の味」
この店にはない香ばしい味だった。
圭吾は専門の調理学校を卒業して、孝朗よりも1年早くこの業界の社員として入社している。
同じ年でも過ごしてきた過程が1年も違えば立場も変わっていいはずなのに、そこは、副店長としてなる孝朗と、ただの厨房社員としている立ち位置の違いで傍目には歴然とした違いがありどうしても孝朗の方が上の立場になっていた。
時折申し訳なくなってしまうのだが、圭吾はそういったことを気にしない。
「ちゃんと食えよ~。明日のつまみ、もっといいもの用意してやるからさ」
「勝手に店の食材っ…っ」
使うなと言いたいのだが、さすがに社員としてのわきまえは圭吾も持っていた。
むやみやたらに使いこむような奴でもない。
心配する孝朗の心をよそに「大丈夫。ちゃんとばれないようにしているから」と、聞きなれた台詞が返ってくる。
二人で飲み明かせる時がある時、必ず圭吾は自分で作った食品を孝朗の前に出してくれた。
外食ばかりだという孝朗の健康を気遣ってくれている。
普段から店の食事にあるメニューに任せてしまうし、一人暮らしで自炊などまずしない。
そんなところの健康管理を常に危惧されていた。
でも年に一回の健康診断では特に異常は見受けられない。
次々と放り込まれる野菜の数々をなんとなしに受け止めながら、「こんなに食わされたら眠くなる~」と嫌味がもれる。
腹八分目で押さえているのは深夜の眠気と戦うためもあった。
「終わったらゆっくり眠らせてやるよ」
目の前でニコリと笑った顔がある。
そこには、万が一の時には自分が店の責任を負ってやるという自負が見えた。
ただの厨房の社員…。だけど時には全てを負う覚悟のできた人…。

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コメント

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No title
コメントけいったん | URL | 2011-04-12-Tue 11:18 [編集]
孝朗って もしかして 圭吾に 餌付けされてるの?

まずは 胃袋を がっしりと掴んでぇ~
それからは?
(美味しそう)Oo。(o'¬'o)ジュルリ♪...byebye☆
Re: No title
コメントきえ | URL | 2011-04-12-Tue 12:47 [編集]
けいったん様
こんにちは。

> 孝朗って もしかして 圭吾に 餌付けされてるの?

餌付けΣ( ̄□ ̄;)
そ、そうかも…。(気付かないところをいつも読者様は指摘してくれる…)

> まずは 胃袋を がっしりと掴んでぇ~
> それからは?
> (美味しそう)Oo。(o'¬'o)ジュルリ♪...byebye☆

まずは食欲睡眠欲…つぎは…。
たしかにうまそうだ(じゅるっ)(←えっ?)
いや、ご飯が…。(誰にとってなにがご飯なのかはともかく…)
餌ばっかりあふれるこの世界…。
コメントありがとうございました。
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