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BLの丘
やすらぎ 7
2011-03-12-Sat  CATEGORY: やすらぎ
病院の裏手にある自宅に足を踏み入れると人の気配がなかった。
普段の望からすれば、帰宅には随分と早い時間であったし、特に連絡してあったわけではないので当然の”お迎え”である。
勝手知ったる台所に入り、そばにあるテーブルの上にスーパーの袋を置いた。
雑多に散らかっても良さそうな場所は、きちんと整理と掃除が行き届いている。
佳史の性格が良く表れているな~といつも感心させられた。
佐貫だったらこうはいかないだろう。
手間暇かけることを面倒がり、自分のことは何かと後回しにしてしまう人物だ。
もし、仮に付き合った時…、とありえないものを想像して、つい愚痴ってしまいそうな自分が浮かんだ。
どのみち、うまくなんていかなかったんだろう…。

上着をリビングのソファに投げ置いてから再び台所に戻った。
米を研ぎ、買ってきたしょうが焼用の豚肉を、醤油、酒、みりん…と取り出し、生姜をすりおろして付け込む。
付け込んでいる間に汁物と付け合わせの野菜、小鉢の準備を始めた。
「望?」
不意に玄関の方から佳史の声が聞こえた。
この家に入れる人間など限られている。
誰もいないはずの家に明りが灯っていれば、不審に思うのが一人暮らしの家主のはず…。
「うん、ごめん。勝手に入ってた」
まだ見えない姿に返事をすると、すぐに白衣を着たままの佳史が現れた。
「電気がついたからびっくりした。どうしたの?もう仕事終わったの?」
何をしているのかと背後から覗きこまれる。
驚いてはいても嬉しそうな表情をされると、ついこちらも頬が緩む。
「最近効率いいんだ」
手短に答えただけで佳史はどんな状況なのか理解してくれるところが回りくどくなくていい。
スムーズに進む仕事は望の調子の良さも表している。
「佳史こそ、病院は?」
「うん、今片付けてたところ。あと少しで終わるから」
「そう。じゃあお風呂沸かしておくよ」
「サンキュ」
軽く額に唇を落とされると、消毒液の匂いが鼻腔をつく。
仕事着のままで佳史はあまり望に近寄りたがらない。
それでも想いを表したい態度は、心地よく望に響いてきたし、嫌ではなかった。
佳史がすぐに台所を去ってしまうと、また一人の時間が訪れる。

誰かの為に食事を用意し、帰りを待つ時間。
今、自分は確実に受け入れてくれた人間を知るから励みになっているが、ここでこうして、いつ離れていくかもしれない人のために時間を費やしてきた佳史の思いはいかなるものだったのだろう。
それを思うと、5年という長い月日、いや、もっと以前から佳史を苦しませていたのがとても罪なことだったと感じた。
どれだけ自分が自己中心的に物事を進めてきたのか…。
「本当に、ずっと、待っててくれたんだ…、こんな僕のために…」
『いつか…いつか…』
望が佐貫に願ったことと同じことを佳史も思っていた。
佐貫は一切の感情を遮ってくれたが、自分は完全に佳史を頼り、ただ身体だけを与えてきた。
その行為がどんなに虚しかったか…。そして酷いことだったか…。
改めて考えるとぽとりと手元に涙が零れ落ちた。
「…ごめんね、佳史…」
誰もいない空間に小さな声が漏れた。

同じ位置に立って、佳史がどんな思いでここに居たのかと想像するのが辛い。
今、これから…、自分がしてあげられることはどんなことなのだろう。
『望がここにいてくれるだけでいい』
佳史の言葉が脳裏に木霊する。

心の中に宿る、ふんわりとした温かさ。
自分がとても幸せだと実感する。
この思いを素直に告げればいい…。
そう思えたのは、しばらくして満面の笑みをたたえた佳史が帰宅した時だった。

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大きな地震、初めての体験にとにかく驚くだけでした。
皆様がご無事でいることをお祈りしております。

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コメント

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コメント | | 2011-03-12-Sat 12:27 [編集]
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Re: No title
コメントきえ | URL | 2011-03-12-Sat 13:52 [編集]
K様
こんにちは。

> きえ様、ご無事で 良かったです。
> 私の住む所は 2~3回 揺れただけで 大丈夫ですが、
> 天災とはいえ 辛く悲しい状況ですね。
>
> まだ 地震が 続いてますので お気をつけて下さい。

悲しいです、こんなことになるなんて…。
昨夜もほとんど眠れず…今でも余震続きです。
もうどこが揺れているのか分からなくらい、微弱なものから家がみしみしいうものまで…。
ご無事な連絡を頂くとホッとするとともに、皆様がいかがな状況なのかととても心配しております。
この先も何が起こるか分かりません。
K様もどうぞお気を付けください。
コメントありがとうございました。
No title
コメントらぅら | URL | 2011-03-12-Sat 19:48 [編集]
きえ様、無事で何よりです。

そして。。。
きえ様のブログに来られる方の事も心配しております
大丈夫でしょうか?

被災地、そして被害にあった所では
まだまだ予断を許さない状況の様なので
きえ様そしてきえ様のブログに来られる方々も
お気を付け下さい。


望の印象が段々変わってきました。
何かもっとキツイ感じがしたのですが、(眼差しの印象がね。。。)今は佳史に心から愛されていると言うのが
実感してきたんでしょうね。
暖かな感じがします。

佐貫達に負けないくらい甘々になるのでしょうかね( ´艸`)ムププ
No title
コメント甲斐 | URL | 2011-03-12-Sat 23:45 [編集]
栗本さん5年もの間よく我慢できましたね
本当に大切に想っていたんでしょう
他の人を想う人をその想いごと受け入れて見守り続けることができる
なんて大きな人なんでしょうか
Re: No title
コメントきえ | URL | 2011-03-13-Sun 07:58 [編集]
甲斐様
こちらにもありがとうございます。

> 栗本さん5年もの間よく我慢できましたね
> 本当に大切に想っていたんでしょう
> 他の人を想う人をその想いごと受け入れて見守り続けることができる
> なんて大きな人なんでしょうか

栗本、本当に辛抱強いというか…。
感心します。
どんなことになっても望を守ろうとその強い思いがあったんでしょうね。
だからきっと、受け入れられた今、本当に嬉しいのだと思います。
この先をなんとか書かねば…
コメントありがとうございました。
Re: No title
コメントきえ | URL | 2011-03-14-Mon 05:06 [編集]
らぅら様
おはようございます。
Σ( ̄□ ̄;) すっかりレスした気分でいました….....(;__)/|
遅くなってすみません…。

> きえ様、無事で何よりです。
>
> そして。。。
> きえ様のブログに来られる方の事も心配しております
> 大丈夫でしょうか?

ご連絡いただくとホッとします。
うちはすっかり元通りの生活…になるかしら。
粗大ゴミの集荷場所が、何やら被害にあっているらしいので、もしかしたらしばらく自宅待機???なんてこともありえるかもしれません。
今日出勤して判明するでしょう。

> 望の印象が段々変わってきました。
> 何かもっとキツイ感じがしたのですが、(眼差しの印象がね。。。)今は佳史に心から愛されていると言うのが
> 実感してきたんでしょうね。
> 暖かな感じがします。

追い求めるばかりのころは、やはり焦りばかりでゆとりがなかったんでしょうね。
一つを諦めたことで、肩の力が抜けたというか…。
佳史の存在も大きいと思います。

> 佐貫達に負けないくらい甘々になるのでしょうかね( ´艸`)ムププ

甘甘にはなるでしょうが、まぁ、ふたりとも大人ですからねからね~。
猫っ可愛がりはしないでしょう。
コメントありがとうございました。
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