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BLの丘
眼差し 9
2010-12-19-Sun  CATEGORY: 眼差し
成俊が譲原望(ゆずはら のぞむ)という男と顔を合わせたのは、安住の事務所に立ち寄ってから3日としない夜のことだった。
辿り着いたビルの大きさに、入ることを思わず躊躇うほどだ。
仕事が終わってからの遅い時間で、普段ではいるはずの受付は誰もおらず、代わりにガードマンの男が事務所に繋がるエレベーターへと案内をしてくれた。
すでに内線電話で来客を告げられているようで、ガードマンの動きもスムーズだ。

指定されたフロアには、各個室が設けられており、数人の弁護士のネームプレートが飾られている。
キョロキョロとしながら進んでいくと、奥の方で一つの部屋のドアが開いた。
「こんばんは。君が武田君かな?」
上質な素材のスーツと分かるものを身につけ、少し長めの髪を両サイドから後ろへと流した、きっちり感のある男だった。
安住よりも幾分硬さを感じるが、仕事への意欲やひたむきな情熱を持つのだと見せてくれる。
確認をされて慌てて近寄り頭を下げた。
「はい。すみません、夜分に…」
並ぶと身長差がはっきりとした。
安住や佐貫ほど高くはないが、視線はどうしたって上を向かなければならない。
緊張でカチコチになる成俊にふわりと笑いかけられる。
笑顔を見せられると、途端に全体の雰囲気が和んだ。
「大丈夫だよ。深夜というわけではないんだから。さぁ、入って」
譲原にドアを支えてもらい、横をくぐり抜けた。
全体的に白い色でまとめられた部屋の中は明るさがあった。
綺麗に片付けられたデスクが奥に見えたが、パーティションで仕切られたソファセットの方へと促される。
「紅茶でいいかな?」
「あ、お構いなく…」
壁側には小さな流しと冷蔵庫があって、こちらも目隠しをするようにパーティションで遮られていたが、完全に隠れているものでもなく、その前に立った譲原がティーパックを取り出していた。
「安住のところでコーヒーを飲まれちゃったら、うちでなんか出せないからね」
ラクにして、と、まずは世間話から会話を繋いでいくのは誰も変わらない。
譲原の言う意味が理解できずに黙ってしまえば、不思議そうな声が上げられた。
「あれ?聞いていない?安住ってバリスタの資格も持ってるんだよ。だから結構仲間内では喫茶店代わりに寄るんだ」
コーヒーの味にこだわりがあるわけではなかったからはっきりとしたことなど言えないが、先日頂いたものはどれも香りも味も良かったな…と振り返る。
「この前、佐貫にも会ったんだって?」
喫茶店代わり…と言われれば、ふいに現れた佐貫の存在も、なんとなく想像ができた。

テーブルの上に出してもらったティーカップをすすったところで、譲原が本題に入りだした。
「さて。おおよそのことは安住から聞いたけど。また奥さん、随分と無茶を言い出したみたいだね」
「はぁ…。でも何がどうなんだか、全然分からなくて…」
「うん。だから素人判断って怖いんだよ。慰謝料や財産分与なんて、決められた算出方法があるわけでもないし、ケースによって変わってくる。お子さんがいるということだから親権のことも関わってくるしね」
そういった点では専門家に任せてしまうのが一番心強いことなのだとは安住にも説明されていた。
実際自分では何一つ解決するための糸口を知らない。
「今後は、『代理人』という形で僕が交渉に入っていくことになるけれどいいかな?本人たちだけでは感情が先行してしまってまともな話しあいにならないこともある。仕事などしていれば時間も取れないし話が進まなければ精神的なストレスを味わう期間が長くなるだけだからね。こういうことは君だって、早々に決着を付けたいだろ?」

家に帰るのが苦痛な日々。
同じ家にいるのに、顔を合わせないこともしょっちゅうだった。
新しい人生に目を向けようとようやく思うことができた今、譲原の言うとおりすぐにでも解決策を見つけ出して安息の日を持ちたかった。
さすがにそのあたりの心情まで理解してくれている譲原のようだ。

しばらく話をしているうちに、譲原に向けた緊張感というものがほぐれていった。
やはりこういったことに対しての経験もあるのだろうが、人の心をつかむのが上手いと言うべきか…。
すでに知り合った安住や佐貫の話なども交ぜてくれるので、堅苦しい話だけにはならないのも、気を許す理由になっているのかもしれない。
気付けば深夜にも近い時間で、すっかり長居をしてしまったことに慌てた。
「す、すみません、こんな時間まで…」
「あー、本当だ。いやいや、僕もつい話に夢中になっちゃって悪かったな。まだまだこれからが大変な時だけど、できるだけのことはさせてもらうから、宜しくね。何かあったらいつでも連絡してきていいから」
改めて頼れるものを見つけられたような安堵感に包まれた。
ついこの前まで奈落の底に突き落とされた気分でいたのが嘘のようだった。
事務所を出る時には、まだ何も始まっていないというのに清々しい気持ちが湧いていた。

成俊が弁護士を頼った…ということが、新たな火種を生むとは、この時の成俊には全く予想もできないことだったが…。

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コメント

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火種が ...
コメントけいったん | URL | 2010-12-19-Sun 18:32 [編集]
成俊の奥様は 相当 怖い方で いらっしゃるみたいで。

火種が 大火になり アッチコッチが 火の海と化す!?
・・・で どうなるの!!

やはり 弁護士さん、なのか...(^o^)ゞbyebye☆
Σ(・ω・ノ)ノ!
コメントらぅら | URL | 2010-12-19-Sun 19:35 [編集]
泥沼化ですか。。。
何か事件になる方向なのか、それで佐貫が出てきて。。。(。-`ω´-)ンー

(・艸・`; ぁ…違います?(´-ω-`;)ゞポリポリ

この先が気になるぅ~“o(><)o”
Re: 火種が ...
コメントきえ | URL | 2010-12-19-Sun 21:40 [編集]
けいったん様
こんばんは。

> 成俊の奥様は 相当 怖い方で いらっしゃるみたいで。

きっと怖い方だと思います。
容赦なくあれこれと要求してきたような奥様ですからね。

> 火種が 大火になり アッチコッチが 火の海と化す!?
> ・・・で どうなるの!!

どうなるんでしょーか(^_^;)
火の海…とはならないと思いますけど…。

> やはり 弁護士さん、なのか...(^o^)ゞbyebye☆

ひっぱりまくってすみません。
いつになったらBL要素が飛び出すんでしょう…(汗)
コメントありがとうございました。
Re: Σ(・ω・ノ)ノ!
コメントきえ | URL | 2010-12-19-Sun 21:43 [編集]
らぅら様
こんばんは。

> 泥沼化ですか。。。
> 何か事件になる方向なのか、それで佐貫が出てきて。。。(。-`ω´-)ンー

事件!!Σ( ̄□ ̄;)
えー、まぁ、穏やかな話し合いにはならない予定です。

> (・艸・`; ぁ…違います?(´-ω-`;)ゞポリポリ
> この先が気になるぅ~“o(><)o”

ゆっくりまったりとお待ちください。
いーところで年末年始に突っ込みそうだな―と、焦っていますけど。
コメントありがとうございました。
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