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BLの丘
白い色 28
2010-11-14-Sun  CATEGORY: 白い色
「何か言いたそうだな」
最初に沈黙を破ったのは駆だった。
駆は飲みかけのコーヒーカップを口元に寄せながら、前に座った大翔に視線を投げる。
「美祢、こっちこいよ」
社長がいなくなったことをこれ幸い、と言うべきか、大翔は正面にいる美祢を隣に導き寄せようとした。
駆の質問には答えようとしていない。
駆の横顔を見てしまえば、そんな大翔の態度に動揺することもなく、『好きにしていいよ』という雰囲気が見えている。
最初から駆は、大翔との”触れあい”を許していた。
他人(ひと)が聞けばただの嫉妬にしかならない行動も駆の中では”スキンシップ”の領域であり、責められることもない。
理解がある、というよりは、『嫉妬』すらしてもらえない関係なのだと認識した。
当然『恋人』になどなりえない、とも思う。

立ち上がれずにいる美祢の腰を、駆がそっと叩いた。
『もう、なにもかも、分かっている』…、そんな態度だ。
渋々ではあるが、促されるまま大翔の隣に移動すれば、駆から一つの吐息が漏れた。
「納まるところにおさまったのか?」
それは確認といっていい。
美祢は目を見開き、大翔は微動だにしなかった。

「兄貴、何であんなこと、言い出した?」
「あんなこと?」
「『美祢と…』って」
こんな場所で繰り広げられたくない内容だが、静かな空気を包みながら好き勝手に話は進められていく。
大翔の問いに駆は視線を伏せ、分かったようにフッと口角を上げた。
「そうでもいわなければ、美祢ちゃんはまた離れていくだろう?」
何のことか、と美祢は真正面から駆を見つめた。
躊躇いや後悔を宿すことなく、まっすぐな眼で美祢と大翔を見比べる。
「おまえたちが、どんな存在であるのか、確かめる時間は必要だったはずだ。恋人になった人間と上辺だけの付き合いをいくら繰り返しても、最終的に戻る場所は決まっている。何人の人間を重ねたところで変わることはない。大翔はともかく美祢ちゃんに他の人間を近付けない、その為の一役を俺が買っただけだよ」
駆の言葉はあまりにも衝撃的だった。

「かけ…る、くん…」
「美祢ちゃんには悪いことをしたかな。けど、他人を近寄らせて秀樹の二の舞を踏ませるのは嫌だったんだ。結局誰もが傷つく。大翔にも分からせてやりたかった。本当に大事にしたかったら、自分の手で守るべきだと、ね。恋愛だけじゃない。仕事も同じだよ。大翔にはもっと視野を拡げてもらいたい。他人と付き合う美祢ちゃんを気にかけて思うことで、足枷となってほしくなかったんだ」

駆が守りたかったのは、美祢でありながら、それ以上にたぶん、『弟』だったのだ。
すべてを見てきたような発言だった。
美祢の存在が大翔の将来を潰す…。
そう捉えてしまった美祢に気付いて、すぐに駆が否定の言葉をつないだ。
「改めて二人の気持ちを確かめ合えば必然と答えはでるだろう?それがどんな存在になるのかまでは俺も知らない。だけど、正直に自分の気持ちに従った時、どんな答えが出る?何を思っていても、今感じていることが、全ての答えなんじゃないのかな?」

駆や大翔が取った行動を振り返ってみる。
たぶん、きっと、駆はこうなることを予想していたのだと思う。
だから美祢に手を出すこともなく、付き合っていたフリをしていたのだろう。
駆という人間がいると分かれば、むやみやたらに人に声を掛けられることもないだろうし、他人にだらだらと流れ込むこともない。
焦らすだけ焦らして、最後に縋るのは誰なのか…。
大翔とは、美祢にとって、『必ず帰る”巣”』なのだ。
それを分からせたかった…。
今では駆の取った行動の意味が良く分かる。
抱かれた昨夜、失いたくないと切望した肌。
改めて美祢は、自分が誰を欲するのか感じた。

「駆くん、ゴメン…」
言う言葉が他に思いつかなかった。
美祢が涙声を上げれば、飲みほしたコーヒーカップを置いて、「おまえたちが互いに嘘をつくことはないからな…」と静かに告げた。
恋愛、云々は美祢の中ではまだ分からない。
だけど、『失いたくない』その想いだけはある。
大翔が、他の人と付き合うと言っても認めるだろう。
同様に、美祢が誰かと睦言を交わしても大翔は受け入れると思う。
しかし、誰と付き合おうとのめり込めず、控え目な態度に出てしまうのは、最後に戻る場所があることを知っているからだ…。
それは”嘘”のかたまりでもある。

過ちを繰り返さないための措置だったのだと気付く。
駆は大翔と美祢を、他人の目から守っていた…。

「ごめんね…」
泣いた顔を大翔の胸に押さえられた。
駆は「支度があるから」と席を立った。
大翔が言うように、立場は何なのかわからない。
けど、どんな立場であれ、決して失えないものの一つなのは確かだった。

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