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BLの丘
白い色 7
2010-10-25-Mon  CATEGORY: 白い色
社内に居ながら平然と繰り返される美祢と国分寺の”抱擁生中継”に、社長がつかつかと近付いてきて、国分寺の首根っこを掴んだ。
「大翔、美祢ちゃんの邪魔をしているんじゃないっ!」
ダミ声が事務所内に響く。
抱き込まれたまま腕の力を抜いてくれない国分寺にもがいていた美祢は、ようやく離れることができた。
「だってオヤジ、美祢が~っ」
「会社では『社長』と呼べと言っているだろっ」
甘ったれるように言い返す国分寺を父である社長がぴしゃりと押さえる。
『オヤジ』と呼ぶのはいつも美祢絡みの時だった。
この言い争いも聞き慣れたものだ。
怒っているわけではない、あくまでも『注意』なのだが、元凶となっている美祢は少し居た堪れない。

「大翔、分かったよ、もうすぐ帰れるし…」
社長にも一応「すみません」と頭を下げて謝罪する。
「美祢ちゃん、いつも大翔に付き合ってもらって悪いね。お母さんに夕ご飯作っておいてもらうように連絡しておくから」
「いえ、そんな…」
幹部役員の一人に名を連ねる社長夫人だった。
立場を強調する社長なのだが、自ら「お母さん」と呼んでしまうあたり、どうかと思う。
一瞬にしてほのぼのとした雰囲気に変わった。
話の内容など知らない社長は、単に我が儘な息子に付き合ってくれる友情と捉えているようだ。
実の息子に対する態度と美祢に対する態度の違いに、国分寺が明らかに剥れていた。
それでも、美祢が国分寺家に行くことが決まれば少しは機嫌が良くなる。
「なんか手伝えることある?さっさと終わりにしよう」
これといって国分寺に任せられることはないのだが、事務所から出る気はないようだし、手持ち無沙汰でそばに居られても気が散る。
連続用紙に印刷された請求書の切り離し作業くらいできるだろう、と束を押し付けた。
ためらいもなく国分寺に仕事を渡せるその度胸も事務所内で感心されているなど、美祢は知らない。

喜々と隣の席で作業を始める国分寺を見て、反対隣りの菊間がクスッと笑った。
「まるで大型犬だな」
小さな声はたぶん国分寺には聞こえていないだろう。
「?」
椅子をスッと滑らせて来て、隣に並び、美祢のデスクの上に乗った伝票の束に素早く視線を走らせる。
「あと何するの?今日の出荷の確認だったらしてやるよ。あまり待たせるのも悪いだろ?」
「いいよぉ。自分でやるし」
こちらでもぼそぼそと会話が始まる。
「これだけの件数、全部見ていたら副工場長の機嫌がまた悪くなるぞ」
「大翔がそんなに早く、あれの切り離しができるわけないから。紙で指切って泣くのが関の山だよ」
「ボロクソ言ってんな…」
事務処理に慣れた人間とは根本的に作業のこなし方が違う。
「貴宏さんこそ、仕事どうなの?」
「俺、もう終わってるし。いつでも帰れるくらい」
「ほんとに~?どうしようかな…」
「いいから甘えとけよ。先に帰ってひがまれるのも嫌だし」
二人して同時に国分寺の手際に視線を投げれば、気付いた国分寺が顔を上げた。
「俺に仕事させて、二人して何してんだよっ!貴宏さんの席、もっとあっちだろ」
「すぐ隣じゃん…」
「はい、すみません」
唇をとがらせる美祢とは対照的に、すぐに事務的な言葉を口に乗せた菊間は、それでも美祢のデスクから確認用の書類と伝票を持ち去っていった。

美祢は菊間のさりげなさに感謝しながら、FAXやメールで送られてきた翌日以降の注文数の変更届けに目を通し、工場へと送られる注文書の数をパソコンで入力し直し始めた。
自社にとっても取引先にとっても間違えることができない数字だし、普段と異なる数値を目にすれば目梨に報告しなくてはならない。
時にはゼロを一つ間違えた誤記入などもある。
特売情報や各取引先の発注数を理解し、スムーズに事が運べるようにと、各担当の事務員がいるようなものだ。
同時に運送会社に対しての配車の手配も済ませる。
菊間のおかげで、国分寺が半分も切り離せていない頃、美祢は帰り支度ができるようになっていた。
ほぼ同時に菊間も処理を終えてくれて、美祢としてはホッとするところもある。
「ありがとう。助かっちゃった」
「どういたしまして」
「今度、何かおごるね」
「気にするなって」
二人仲良く帰りの挨拶をしていれば、背後から菊間との会話を中断させる国分寺の声が響いた。
なんとなく機嫌が悪いのは長年の付き合いで感じ取れる美祢だった。
「帰りに美祢んち寄って着替え、持って行くから。車、会社に置いていけばいいだろ。明日俺と一緒に出社すればいいし」
「泊まるの?!」
「当然だろ。酒飲んで誰が送るんだよ」
「僕、飲まない…」
「久し振りに美祢が来るってオヤジだって上機嫌で帰っていったんだ。『飲まない』なんて言ったら泣かれるぞ」
社長の名前を出されれば従わざるを得ない。
渋々でも、国分寺の台詞に頷くしかなくなった。

事務所に残っていた数少ない部長クラスの社員は、酒豪の国分寺家に付き合った美祢がどうなるのか想像がついた。
明日は重役出勤になっても文句も言えない。
とりあえず、一番に宥めるのは目梨だろう…。

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