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BLの丘
白い色 6
2010-10-24-Sun  CATEGORY: 白い色
美祢と菊間の精神的な部分は、以前よりもずっと深まったようだった。
昼食はほぼ一緒に過ごしたし、帰りに「一杯だけ」なんて言いながら飲みに出ることもある。
会社から一歩出てしまえば、そこにいるのは『気の優しい頼れるお兄さん』だった。
美祢には8つ離れた姉がいて、つかず離れず状態で可愛がられてきた。
姉弟喧嘩もしたことがなく、歳が離れていたからか、会話も少なかったような気がする。
大翔には3つ違いの兄、駆(かける)がいて(今では常務として存在している)、何かと文句の言い合いをしたり、相談できる光景が憧れだった。
もしも自分に兄がいたら、こんな感じだったのかな…と菊間との関係を漠然と思った。

夕方の残業時間、事務所にやってきたのは副工場長として指揮を取っている国分寺大翔だった。
工場に入るための帽子やマスク、白衣は脱がれていて、ただのTシャツ姿である。
短くカットされた髪には食品を扱う故の清々しさが滲み出ている。
切れ長の鋭い視線を発する目つきだが、美祢が怯むこともない。
「なに?」
主従関係があろうが、そこはやっぱり昔を共に過ごした仲だった。
美祢の隣の空き椅子に腰かけた国分寺は、つんけんとした口調に苦笑いを浮かべる。
「そんな言い方すんなよ」
だけど、はっきりと『プライベート』と分かる用事で美祢の傍に寄れば、事務所内の空気がピンと張るのだ。
一斉に聞き耳を立てるのが感じられる。
美祢はその空気が好きではなかった。出来ることなら社内で話しかけてほしくない。
今更美祢と国分寺の仲は知れたもので、何も聞きたいことなどないだろう、と思うのに、社員のこの雰囲気はずっと変わることがない。
国分寺は全く気にした様子もなく、菊間が淹れてくれた美祢の冷めたコーヒーの入ったカップに平然と口をつける。
国分寺は美祢の物となると断りもなく手を出す。見慣れた光景だった。
営業部が存在するデスクの塊には、現在美祢と菊間しか座っていなかった。

美祢と添うように並ぶと、美祢の耳にかかる髪をかきあげ唇を寄せてきた。
「秀樹さんから、『美祢に連絡がとれない』って聞いたけど」
囁かれる吐息が耳にかかってくすぐったいくらいだ。
内容が内容だけに、一応周りを気遣ったのだろう。
だったらこんなところで話しださなきゃいいじゃないか、とむくれるのだが、すぐにでも事情を聞きたいせっかちな性格はすでに知るところだった。

美祢はとてつもなく大きな溜め息を吐いた。
真正面にきた国分寺の顔をまじまじと見つめる。
「なんで大翔のとこに?」
今まで美祢と北野がささいな喧嘩をしようが、何があろうが、国分寺が口を出してきたことは一度もない。
二人の仲を知っても、からかわれたことすらなかった。
付き合おうが別れようが、どうでもいいはずだろう、とも思う。
「兄貴には言えないだろ?美祢に近いの、俺のほうだし。何があったわけ?あの人に聞いても何も答えてくれないしさ」
「べつに…」
大翔の兄、駆と北野は友人だ。
さすがに付き合っていたなどとは耳にしていない駆のはずである。
北野の口から『美祢』と出れば違和感のほうが大きいのは理解できる。
北野が国分寺に答えないとは、言い難い内容なのだと察しがついた。
非難されるのが分かるから内密に美祢と話をつけたかったのだろう。
聞かなくて正解だと美祢は思った。

顔を近づけてのボソボソとした会話が続く。
どこか不貞腐れた態度の国分寺が新鮮だった。
いつも強気で自信に溢れている姿ばかりを見てきた。
珍しい姿だなと思ったのもあったのだが、国分寺に対して今更隠す内容でもなく、美祢は椅子に座りながらも少し背伸びをするように、国分寺の膝に手を置いて同じように彼の耳元に唇を寄せた。
完全な内緒話だ。
「別れた」
目を見開いた国分寺は心底驚いているようだ。
「なんでっ?!」
「んー。まぁ、いろいろと…」
「ちょっと、詳しく聞かせろよ。いつもは真っ先に俺に話してくれるのに、何で今回、何も言ってこないの?!」
国分寺が不貞腐れた理由はそれか…と頭の隅を過っていった。
美祢の全てを知りたがるのは昔からだが、そんなことで責められても困る。
「あー、ん、まぁ…。はっきり言われたわけじゃなかったけど。もう修復不可ってカンジ?」
「『カンジ?』とかあっさり言ってる時じゃねーだろっ。泣き虫美祢が我慢しているんだろ?おい、片付けろ。帰るぞ。うちでじーっくり俺が慰めてやる」
残業なんか無しだ、と勝手な事をのたまい始めた。
「もう、慰めてもらったからいいよ…」
「誰にっ?!」
ボソリと告げてしまえば、返って怒鳴られる始末だ。
だから今きれいさっぱり、淡々と語れるというのに…。
ここまでムキになる国分寺も珍しい。

さすがにこの場で「(菊間)貴宏さんに」とは答え辛く、美祢は「ちょっと…」と曖昧に誤魔化すことにした。
「みね~ぇっ。俺が一番のはずなのにっ」
訳の分からないことを口走りながら、いきなり背中に回ってきた腕にがしっと引き寄せられ、鍛えられた胸の中に美祢の顔面が押さえつけられる。

キスに似た仕草での内緒話や突然始まる抱擁があるから目が離せないのだ…、と社員に思われているなど、本人たちはこれっぽっちも気付いていない。
見ている社員のほうが赤くなっていることも当然知らない。

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場所をわきまえようね…ってほぼ全員が思っています。それか、目の保養。
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コメント

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No title
コメントmiki | URL | 2010-10-24-Sun 02:28 [編集]
お願いです、この会社に入らせて下さい!こんなステキな光景が見られるんなら残業でもでもしますのでm(__)m どんなに疲れててもこの光景だけて癒される~(^^)
No title
コメント甲斐 | URL | 2010-10-24-Sun 09:44 [編集]
北野は紹介者に泣きついたんですね
そこまでして最後までいい人になりたいのか
どうしていも言い訳して切れたいのか謎です

大翔にとっての美祢は親友なんですよね
カレシを紹介するくらいだから恋愛感情はなくて
でもこーんな眼の保養になるような
過剰なスキンシップみられるなんて
社員さん羨ましいです
Re: No title
コメントきえ | URL | 2010-10-24-Sun 11:08 [編集]
miki様
こんにちは

> お願いです、この会社に入らせて下さい!こんなステキな光景が見られるんなら残業でもでもしますのでm(__)m どんなに疲れててもこの光景だけて癒される~(^^)

私も率先して残業しそうです。
会社名『腐豆腐屋』になりそう…。
買い手がつかない…。
コメントありがとうございました。
Re: No title
コメントきえ | URL | 2010-10-24-Sun 11:12 [編集]
甲斐さん
こんにちは。

> 北野は紹介者に泣きついたんですね
> そこまでして最後までいい人になりたいのか
> どうしていも言い訳して切れたいのか謎です

ひっぱているようですみません。
最後、そこに行ったって感じの北野です。

> 大翔にとっての美祢は親友なんですよね
> カレシを紹介するくらいだから恋愛感情はなくて
> でもこーんな眼の保養になるような
> 過剰なスキンシップみられるなんて
> 社員さん羨ましいです

親友ですよ~。
それ以上にも以下にもならない存在です。
だから安心してこんなこともあーんなこともしちゃう。
人目憚らないところが二人らしい?!
コメントありがとうございました。
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