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BLの丘
策略はどこまでも 38
2009-08-06-Thu  CATEGORY: 策略はどこまでも
「こんにちは、さくらちゃん。久し振りだね。どうしたの?こんなに慌てて」
安住は突然現れた那智に驚いたように目を見開いたが、すぐに普段と変わらない那智を落ち着かせる柔らかな雰囲気を纏わせた。
「え…、あ、ど…して…?」
どうしてここに居るのかと問いかけたかったのが、思いがけない出会いにうまく呂律が回らなかった。
安住の姿を見るのは一カ月ぶりくらいだろうか。目を細めて無邪気な子供が笑うような仕草は変わっていない。
安住にぶつかった時に乱れた前髪を、安住の指先が触れて直してくれる。細くて繊細そうな指だった。

「那智っ!」
背後で鋭い久志の声が響いた。ハッとして安住の腕の中でクルリと首を回せば、追いかけてきた久志が安住を睨みつけるように見ていた。

つかつかと歩み寄ってきて、強引に那智の身体を安住から引きはがし、久志の腕の中へと移動させられる。
「え、ちょっ…、ヒサっ!!」
多くの人の往来のある場所で、故意的に抱きすくめられるなんて想像もしていなかった那智は慌てふためいた。
「すいません、こいつが急に走り出して」
真っ赤になる那智のジタバタなど、全く無視して、久志は事務的に安住に頭を下げた。まるで保護者が子供の不注意を謝罪するかのような態度に恥ずかしさがこみ上げてくる。ましてや安住の前でこんな醜態を晒されるなんてまっぴらごめんだ。

安住は気にした様子もなく、ニッコリと久志に笑って見せ、それから那智へと視線を下ろした。
「いいえ、僕は大丈夫ですから。さくらちゃんのお友達かな?」
「『さくらちゃん』?」
「ヒサっ!…ちょっと、もう放して…っ、ここはもう…。あ、安住さん、また後で連絡を入れさせていただきますから…」
「安住って…」

安住が親しそうに那智に話しかけてきたのを、久志が怪訝な顔つきで聞き返す。那智は安住の存在が久志の機嫌を悪くするだけだと咄嗟に判断して、この場から立ち去るのが賢明だと思った。
だが、那智が安住の名前を口にしてしまったことが、結局久志の興味を引くものとしてしまった。
「あなたが安住さんでしたか。お話は那智から色々と伺っています。よくご自宅にもお邪魔させていただいてたみたいで、ご迷惑をおかけしました」
那智は背中を冷や汗が伝ったと思った。久志の口調は丁寧だったが、充分すぎるくらいにトゲが含まれている。果たして安住が気付くかは疑問だったが、このままここにいて何を話されるのかと気が気ではなかった。

「迷惑だなんて。僕が誘ったんですよ。さくらちゃんにはいつも話し相手として付き合ってもらっていました。さくらちゃんもコーヒーが好きですからね。喫茶店代わりに前は良く寄ってくれたんですけど…。最近は仕事が忙しくなっちゃったのかな?」
安住が屈託のない笑みを見せ、ここのところ顔を出しにこないね、と視線で問われた。久志の那智を抱きかかえる腕の力が強まる。
「え、あ、あ、…えぇ。あの榛名のこともあって…」
「そう。中條はまた無茶を言ってない?何かあったらいつでも頼ってね。僕はいつでもさくらちゃんの見方でいてあげるから」
しどろもどろに応える那智は、まさか久志が行くなと言ったから行けないなどとは口に出せず。
親切心から言ってくれているとは思っても、久志の前では爆弾にしかならない言い回しは那智の心臓に非常に悪かった。

「あ、ありがとうございます。…あの、この後、まだ行かなくちゃならなくて…」
「そうなんだ。せっかくさくらちゃんに会えたのに残念。まぁ急いでいたみたいだしね。またいつでも遊びに来てね」
急いでいたというよりは久志から逃げたかっただけなのだが…。
何の口実も見つけられなかったが、この場を離れたかった那智は曖昧に言葉を濁すと、安住は納得したように頷いた。
那智の腰に絡みついた腕を小さくつねって放させ、先を促した。
「それじゃあ、これで…」
那智はニコニコと見送られ、その視線を背中に受けながら少しでも早くその場を離れたかった。
本当はもっとゆっくり話をしたかったのだが、久志が隣にいる以上そんな時間など取れっこない。

安住から離れ、しばらく無言のままズンズンと歩いていた那智の足が、ある程度離れたところで一気に緩んだ。
隣に並んだ久志が不機嫌そのもので、那智を見下ろした。
「随分頻繁に通ってたみたいだな」
「べ、べつにそんな…」
「俺のことより那智の方がなんかありそう」
「なんか…って…。…っ!!…あるわけないだろっ。何比べてんのっ!!」
那智はすっかり状況が入れ替わってしまったことに気付いた。
先程まで分が悪かったのは久志だったはずなのに、それこそこちらが責められる意味が違う。ダレカサンは『寝てた』とかいう話じゃなかったっけ???

「まぁいいさ。早く帰ろうぜ。誰もいないところでじっくり話をしてやる」
久志は口角を上げ、笑みを浮かべると那智の腕を掴んで駅へと急いだ。

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久々に安住さんを書いた…。
那智よ、母はこっちの男の方がいいと思うぞ…。
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コメント | | 2009-08-06-Thu 12:59 [編集]
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Re: 安住さんだ~
コメントきえ | URL | 2009-08-06-Thu 13:43 [編集]
M様

いらっしゃいませ~。

>久さんとご対面でハラハラしました(゜Д゜)

安住とヒサのご対面、別になんのこっちゃないんですけどね…。(←期待されているようで心苦しい…)

誰もいないとこで話…、当然那智のプライベートルームでしょう。
ヒサは自分のことを棚に上げて(那智知らないので)お仕置きタイムです。

続きを楽しみにしていただいているようで本当にありがたいです。
またぜひ遊びにいらしてください♪
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