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BLの丘
策略はどこまでも 36
2009-08-04-Tue  CATEGORY: 策略はどこまでも
滅多なことでは動揺などしない久志が、会社の人から告げられた内容に慌てる姿を見るだけで、那智はまた新しい人に手を出したんだな…と判断した。
動揺した理由が自分にあることも理解した。昨日の告白めいたやりとりの後、こんな話が出ては目も当てられない。
いつものことだ…。割り切ろうとしたのだが、心の中に渦巻いた恐怖や不安、悲壮感が那智を次々と攻めてくる。
一度でも信じてしまった那智は、昔のように久志の行動を物分かりよく捉えられなくなっていた。
ここ最近は久志が遊び歩いている話は聞かなかった。もちろん、そんなことを本人がベラベラと話すわけもなかったが、長年の付き合いで雰囲気的に伝わるものがあった。
これまで、たまに二人で飲みに出た夜など、かかってくる電話の数は半端なかったのに、最近は呼び出し音を聞いたこともない。それだけ付き合っていた数を減らした、つまり、昨日告げられた久志の言葉に真実味がある気がしたのだが…。

「だって滝沢のやつ、黒川部長に問い詰められた時、すっげぇバタバタしてぇ。顔真っ赤にしちゃうし。倉林部長と黒川部長に散々突っ込まれてたから…。みんな高柳さんと何かあったって疑ってますよぉ」
「冗談だろー?」
「ホントです。高柳さん、明日、覚悟した方がいいですよ~。黒川部長、絶対怪しんでますからぁ」
遠藤と呼ばれた男は、屈託のない笑みを浮かべ、久志に忠告とも取れない言葉を投げかけていた。
久志の会社でこういった会話が日常茶飯事だとは聞いていた。だから彼も気楽に久志に話しかけたのがわかる。
しかし、久志が束の間目を閉じ、眉間に手を当てるという仕草を見た時に、それが、会社の人間に対しての呆れの意味だったのか、自らの過ちを反省する姿だったのかまでは那智には判断がつかなかった。
が、今の那智では、後者としか受け止めることができず、遠藤が話した内容はサラリと聞き流せるようなものではなかった。

一番嫌なパターンだと思った。信じた矢先に裏切られる。やっぱり自分は久志にとって気まぐれで引き寄せたくらいの存在だったのだと思わされる。
あと一日早く、この話が那智の耳に届いていたら、今のショックだってなかったかもしれない。
自分のことを抱きながら、他に手にしていた奴がいたってどういうことなんだよ…。
過去を振り返れば、久志が同時に何人かと付き合っていた時期があったこともあった。一人に限定する意味が分からないといった感じで次から次へと乗り換えていたことを思えば、那智と同時進行で別の人間がいたっておかしくない。
しかも那智との付き合いが、身体のみのつながりだったと思えば尚更。
素直に想いを告げなかったのは自分だったし…。
仮に告げていたとして、久志の下半身が治まっていたかまでは疑問だが…。
分かり切っていたこととはいえ、昨日必死なほどの想いを打ち明けられていた後だけに、今、久志の同僚から聞かされた言葉はショック以外の何物でもなかった。

那智は久志を置いて、帰る駅の方向へとぼとぼと歩き出した。
それに気付いた久志が、会話を進めようとした男を制しているのが分かる。
「それ以上言うなっ!明日会社行って、全部説明してやるからっ!!」
久志はきつく言い放って、那智の後を追いかけてきた。
「那智、先に行くなよ」
那智のすぐ後を追い、隣に並んだ久志が那智の手首を掴んだ。
人前で手なんか…と思う気持ちもあったのだが、振り払おうとするのを、久志の力が止めた。
「なんでもないから。あいつとは何もないから…」
久志の切羽詰まったような声が聞こえてきた。何をそんなに必死に言い訳をしようとしているのだろうか…。

「『あいつ』って…?」

那智は、別に聞きたくもないことが口を滑ったと思った。


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