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BLの丘
一番近いもの 38
2010-09-09-Thu  CATEGORY: 一番近いもの
予定を切り上げてアパートに戻ることにした。
母は休暇中でも社会人になればなにかとあるのかと気遣って大人しく見送ってくれた。
義父はためらった様子を見せた。
そこには、『二度と戻ってこない』何かを感じたようだった。
戻らないのは、蝕むような肉体関係であって、”親子”として触れあう時間ではない。

海斗は淋しかったが、これが最善の策なのだと心に決めた。
父と母と…、自分をまもるため…。

「なにかあったら、いつでも来なさい」
それは仕事の面からなのだろうか。精神的な部分を含むのか。
警察沙汰になったことを、改めて口にされなかったが、それとなく知っているのだと感じた。
心配をかけないために母には黙っていたのだと思う。
どこまでも守ってくれようとする父の姿勢が嬉しくて…だけど、悲しくて…。
流れてきそうになる涙を必死でこらえた。

「また、お正月には来るね」
当たり前のような言葉を残して、海斗は住み慣れた土地に戻った。


アパートの階段をのぼりかけて、久しい顔に出会った。
「今、お帰りですか?」
花巻が海斗の帰省を知っていたと言わんばかりに微笑んでくる。
もちろん、留守を預けたわけではないし、適当に挨拶をする程度に留まっていた。
「ええ」
「喜ばれたことでしょう。子供の帰りは両親にとっても安らぎですからね」
実際に血のつながりがあるかどうかまでは花巻も知らないから、一般的な意見なのだろう。
海斗は物悲しくなりながら、笑顔を絶やさなかった。

そんな声が聞こえたのか、端の一室の玄関扉が開いて、鳥羽が顔を見せた。
「かいとぉ~ぉ」
むぎゅーっと人前に限らず、抱きしめられる格好になって、海斗が瞠目する。
「なにやって…っ!!!!」
「すっげー、さみしかったんだよっ!予定よりも早く帰ってくるからびっくりしちゃったっ!!そんなに俺に会いたかった?!」
「ばかじゃんっ!!!!」
冗談を言い合いながら、それでも心の底から”嬉しさ”が沸き立つのを止められない。
鳥羽に会いたかったわけではない…。きっと…。たぶん…。
確信が持てないまま、鳥羽に言われたことにドキンと心臓が高鳴った。

『俺に会いたかった?』…
…そんなわけはない…。

父との決別の時を迎えて、心が弱っているだけだ…と思い込もうとした。
同時に何かに縋りたい、弱い部分が見えてくる。

「ひっ…くっ…」
無意識に混み上がった感情と涙腺に、困った顔を見せたのは、花巻だったのか、鳥羽なのか…。

「海斗?」
覗きこもうとする鳥羽の視線を胸に埋めることで反らした。
何かを感じ取った鳥羽が、「部屋に行こう」とそっと促す。

何もかもを曝け出して、縋りたかったのは誰だったのだろう…。
少なくとも、恋する相手ではなかった。
惨めな自分を見せたくない。
だから黙ってしまうことに、鳥羽の僅かな苛立ちを感じた。
今の海斗に、全てを曝け出せるのは、後腐れもなく、似たような環境を過ごした有馬だったのだ…。

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くくの日になっちゃったよ…。かけて2倍でも3倍でも愛情浴びれられたらいい海斗なのに。
話はまだ『夏休み』ときたもんだ…(汗)
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コメント

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コメント甲斐 | URL | 2010-09-09-Thu 08:57 [編集]
こっちでも帰宅を喜んでくれる人がいる
待っててくれる人がいるっていうのはいいものですね
義父との決別を決心して故郷を離れた淋しさや不安も
受け止めてくれるといいのだけれど・・・
それは有馬?
鳥羽?
この期に及んでまだ”後腐れ”だなんて言っっちゃうのかな海斗くん
Re: タイトルなし
コメントきえ | URL | 2010-09-09-Thu 10:57 [編集]
甲斐様
こんにちは。

> こっちでも帰宅を喜んでくれる人がいる

待っててくれたね~。
淋しい海斗を撫で撫でスリスリしてくれる人。
しかし…。

> 義父との決別を決心して故郷を離れた淋しさや不安も
> 受け止めてくれるといいのだけれど・・・
> それは有馬?
> 鳥羽?
> この期に及んでまだ”後腐れ”だなんて言っっちゃうのかな海斗くん

まだ、後腐れない関係を望もうとする…。
問題児ですよ、海斗。
長年の何かが積もっているんでしょうか。
抱っこしてくれる鳥羽が報われない気がしてきた…。
コメントありがとうございました。
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