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BLの丘
一番近いもの 34
2010-08-31-Tue  CATEGORY: 一番近いもの
顔を見た途端に崩れたのは、自分の精神の弱さなのだろう。
飛行機とバスを乗り継いで、夕方には母と父が住む、共に暮らした家が見えた。
今日、この時間に帰ってくることは父も母も知っていたから、着くなり、長旅(?数時間だけど)を労われ風呂を勧められた。
この時期は父も母も家にいる。働くことはない。
風呂上がりで飲む酒と嗜む料理に文句のつけどころもなかった。
家族団欒、3人での時間は久し振りだし、迎えてくれる温かさにたかぶる気持ちがある。

父が何人も変わったことを不憫に思う母の気持ちもなんとなく理解していた。
だが、今の父と、心をゆるしたように語り合う姿をさらす風景は、母にとっても安堵の息を吐ける時だったようだ。
意味は全く違うが、それでも海斗は、母が悩まずにいてくれるのなら、どんな努力でもすると、ずっと思ってきた。
ただ、唯一譲れないことは『結婚』だった。
海斗は『女』を愛さない。
父はもちろん知っていたから、なにかあるごとに母を宥めてくれている。
海斗にだって出会いがある、とか、急ぐ必要はないとか。最近は晩婚だし…とか。
思えば、海斗の今の歳に、父は母と再婚を果たしていたのだ。
若くして弟のような息子を持った。
可愛がる意味の度合いは違ったかもしれないが、海斗は後悔していないし、なにより、母と続いていることが嬉しい。
そこには、『いつでも会える』
そんな意味が含まれているのだろうが。

海斗を出迎えることで、日中から頑張った母は、飲んでいる席の途中で「先に休ませてもらうわ」と寝室に向かった。
海斗の相手をしてくれる”旦那”がいるから安心しているのだろう。
翌朝にはまた早起きをして、朝食の準備をしてくれる姿も想像できる。

運が良かったのか悪かったのか、風呂上がりの海斗は半袖のTシャツとハーフパンツという、いつもアパートにいる格好と変わらなかった。
母が気付いたかどうかは疑問だ。
海斗の片腕にはうっすらではあったが、茶色く変色した丸玉模様がひとつ、あった。

リビングのソファに並んで座って、母を見送った直後、ずっと気にしていたと言わんばかりに、強い腕力に手首をひねられた。
「これは?」
囁くような声だったが、詰問である。
火傷をおった痕、水ぶくれは自然と潰れてしまったが、その後の処置によって海斗は痛みを忘れていた。
鳥羽は海斗の素肌が日光にあたることを酷く嫌がった。
理由が分からなく有馬に影ながら問えば、『日光はシミになる原因の一つ』と言われて、痕を残したくないのだと知る。
それが有馬のためだったのか海斗を思ってなのか、またしても海斗は真実を掴めずにいた。

父に尋ねられて、海斗は今住むアパートでの近況を伝えるべきなのだと思った。
ただ、隣近所、仲良くしている程度に留めた。
有馬と鳥羽に関しては、歳が近いから日頃から親しくしている、とあたりまえのようにふるまった。
そんな話をするうちに、海斗に影があるのを悟ったのだろう。
いくら、隣近所でも、親しくする理由が父には見出せなかったようだ。
海斗のどことなく気強い性格は良く知っていた。

「好きなのか?」
囁く声はもう寝室には届かない。
これまでも海斗には傷つかないようにあらゆる術を教え込んできたつもりだったが、火傷を負うなどの傷つけられても相手を非難しない態度には瞠目もあったようだ。
あくまでも『傷つかない』教えは”体”に対してであって”精神”ではなかったけど…。

問われた途端に、『不安』が海斗を襲った。

好き。
それは誰にたいしてなのだろう。
鳥羽は海斗が思うような気持ちで振り向いてくれないことは承知しているし、有馬は分かり切ったように甘やかしてくる。
誰かを好きと言った途端に父が離れる気がした。
いままでのいい加減な付き合いの中、海斗の感情が傾いていないことを父は知りながら見守ってくれていた。

体を満たしてくれる関係は、どこか虚しくても満足していた。
それが、ここのところ完全にご無沙汰。
開き直る関係にも疲れていたし、秘密を作り、近所にばれていくのも嫌だった。
何かあれば探られそうな”探偵”も隣にはいる。

緊張感の中から解放された、そんな意味もあったのかもしれない。
いつかのように、ただ貪るだけの行為でいい…。

黙っていても海斗の心を悟ってくれる父だった。
「シアタールームに行こう。少しは防音効果がある」
いつの間に作ったのか、映画好きな夫婦でリフォームした一室は、ソファと巨大なスクリーンが置いてあるだけのシンプルな部屋だった。

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お疲れモードでちょっと狂っているところもある模様です。
なんでか…はまぁ別宅にそれとなーく飾ってありますが。
誤字脱字意味不明、気付いたところとかあったらお知らせください。

相変わらず、出来次第upってことで…。
(どの作品でもいいんですけど)心待ちにしてくださる方には申し訳ないです。
そして、世間一般の夏休みも終わっているのに、夏休みネタ。季節外れ、ごめんなさい。
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コメント

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No title
コメント甲斐 | URL | 2010-09-01-Wed 08:41 [編集]
海斗くん帰ってきましたね実家に
久々の母の味に満足し、父と酒酌みかわす・・・
まではよくある帰省風景ですが
この義父と息子の関係普通じゃないから気になります
防音室で何することやら…と
Re: No title
コメントきえ | URL | 2010-09-01-Wed 09:32 [編集]
甲斐様
こんにちは。
テンプレをいじっている間にお越しいただいていた模様ですね…。

> 海斗くん帰ってきましたね実家に
> 久々の母の味に満足し、父と酒酌みかわす・・・
> まではよくある帰省風景ですが
> この義父と息子の関係普通じゃないから気になります
> 防音室で何することやら…と

すでに9月になってしまいました…(書くの遅いよね…)
実家でくつろぐ海斗です。
普通じゃない親子は何をはじめるのかな~?
言葉がなくても分かってしまう義父。(それで"最初"があったわけだし)
コメントありがとうございました。
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