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BLの丘
一番近いもの 29
2010-08-22-Sun  CATEGORY: 一番近いもの
鳥羽と有馬の関係にひびを入れるのが怖いと思いながら、しがみつくように潜っていこうとする自分が許せなかった。
それでも、弱くなった心を、身体を、少しでも癒してくれるものがあると知ってしまえば縋ってしまいたくなる。
過去にも同じようなことがあった。
父親と関係を持ち続けたこと。
身体を触れ合わせる、という行為に溺れていった海斗を咎めるわけでもなく蔑むわけでもなく、自然と受け止めてくれた。
身体だけではなく、何かにつけて精神が不安定になるたびにそばにいてくれたのは父だった。
そばに頼れるものがあれば、川の水が流れていくようにそちらに寄り添おうとする。
あの頃から海斗は一人になるのを怖がっていたのだと振り返る。

今はその相手が有馬になろうとしている。
勝手な自惚れなのだろうが、有馬には、海斗を傷つけることはしないだろうという安心感があった。
それは鳥羽に対しても同じことなのだが、何せ、鳥羽には寄せる想いと、まだ知らない彼の性格がある。
先に晒したのが有馬だった…。
ただ、それだけのことだったのかもしれない。
海斗がずっと好んできた『後腐れない』人間だと分かったから…。

有馬の胸に顔をうずめ、本当にこれでいいのだろうかと自問自答を繰り返しながら、結局欲求に負けたといっていい。
顔をあげてしまえば、「いい?」と確認する有馬の瞳が海斗を見つめた。
頷いて、そっと瞼をおとせば、温かな唇が海斗のそれに当たった。
ゆっくりと啄ばむような動き。
もどかしさにゆるく唇を開けば、少しずつ誘い出すような舌の動きで海斗の舌先を擦った。
こういった動きにどうしても海斗は焦れてしまう。
卑しい人間と思われるかもしれないが、有馬の舌を貪るように自ら動かせば、絡みつくように吸い上げられた。

…これはデジャビュ―?!…

海斗はこの感触を知っているような気がした。
有馬とこんなことをするのは初めてなのだから、いつかの誰かと重なっているのかもしれないと思おうとする。
激しい動きではない。優しく撫でるように、腫れものでも扱うかのような絡みつき方…。
身体だけの関係を続けてきた過去に、これほど落ち着きを持たせる男などいなかった。
ゆっくりとした動きは感情を剥き出しにしているものではない。
それこそ、『海斗次第』と言われているようだった。

数度角度を変えながら互いに絡め合って、唇を離した時、海斗は不思議なものでも見るように有馬を見上げた。
どうしても初めて有馬とキスをするようには思えなかったから…。
「物足りなかった?」
「う、ううん…」
からかう口調に咄嗟に首を横に振る。
有馬を見上げていたことを、そんな風に捉えられるのは、恥ずかしいだけだ。
たったそれだけで、沈み切っていた気分がふわりと浮いた。
泣き顔から照れ顔に変わったことで、有馬は安心したのか、クスッと笑っただけで、そっと海斗の体を引き離した。
「夕ご飯を食べちゃおう。続きは様子次第」
包帯で巻かれた手をトントンと指先で叩く。
冷やしているからまだいいのだろうが、それでもジンジンとした痛みが腕にはあった。
さすがにこの状況下で、いくら海斗が望んでもこれ以上に進む気はないのがそれとなく分かる。
有馬のそんな優しさも先程のキスに表れたのだろうか。
溺れそうになる自分を抑えてくれたようにも感じられ、ホッと胸を撫で下ろしている自分がいた。
だけど、空っぽになっていく心をどうしたらいいのか、進むべき道を導き出せない。
とりあえず今は、海斗と有馬、鳥羽と3人の関係に溝を作らずに済んだ…と良い方に捉えるべきなのだろう…。
だってやっぱり、海斗は2人に囲まれている空間が好きだったから…。

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コメント

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危機回避?
コメントけいったん | URL | 2010-08-22-Sun 04:10 [編集]
ウワァ 海斗と有馬の雰囲気が 危なかったですねー。 有馬の余裕の態度で 一旦は 二人とも 流れずに済んだけど・・・
海斗は もっと自分の気持ちを 大切にしなくちゃいけないのに。 孤独になる恐怖から すぐに 縋ってしまうですか...
夜は 長いですから まだまだ 危うい二人ですね。
海斗、堪えて(ToT)...byebye☆
Re: 危機回避?
コメントきえ | URL | 2010-08-22-Sun 09:21 [編集]
けいったん様
おはようございます。

> ウワァ 海斗と有馬の雰囲気が 危なかったですねー。 有馬の余裕の態度で 一旦は 二人とも 流れずに済んだけど・・・

有馬か゜落ち着いている人間で良かった…というべきか。
さすがにご近所様とオイタはいけないと思っているんでしょうか。
それとも単にやけどのせい?!

> 海斗は もっと自分の気持ちを 大切にしなくちゃいけないのに。 孤独になる恐怖から すぐに 縋ってしまうですか...
> 夜は 長いですから まだまだ 危うい二人ですね。

淋しがりやな海斗ちゃん。
身近なものによたよたと転がりこもうとするのは性格ですね。
夜は長い……、、、え、ぇぇ。(もう、終わるらしい…)
コメントありがとうございました。
有馬さん大人なのね
コメント甲斐 | URL | 2010-08-22-Sun 11:23 [編集]
淋しかったり不安だったりするときに
傍にいるあったかい腕にすがりつきたくなる海斗くん

そして今、
後腐れのない優しい腕がここにある
っとしたら必然なのかもしれませんね
けど、そんなことばかりしていても
救いはないような気がします
そこん所を有馬さんはおぼろげながらわかっていて
ちゃんとストップできたみたいですが
どうなるのでしょう?
Re: 有馬さん大人なのね
コメントきえ | URL | 2010-08-22-Sun 13:26 [編集]
甲斐様
こんにちは。
あっちの馬鹿さ加減と言い、こっちのシリアスさといい…。

> 淋しかったり不安だったりするときに
> 傍にいるあったかい腕にすがりつきたくなる海斗くん

どうしても身近な何かに縋りたいらしいですね、海斗。

> そして今、
> 後腐れのない優しい腕がここにある
> っとしたら必然なのかもしれませんね
> けど、そんなことばかりしていても
> 救いはないような気がします
> そこん所を有馬さんはおぼろげながらわかっていて
> ちゃんとストップできたみたいですが
> どうなるのでしょう?

有馬の自制心に敬意を払いながら、身を持て余している海斗です。
淋しいのはわかるんだけどね…。
こんなことをしていても好い結果は生まないよ。
有馬のほうがずぅぅぅっと大人ですね。理解しています。
この先、どうしちゃうんでしょう。
コメントありがとうございました。
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