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BLの丘
秘書記念日
2010-08-20-Fri  CATEGORY: 吐息
全く放ったらかしの"あんけーと"で、なんと、『部下』みこっちゃんが『上司』ちーちゃんを抜いていました!!
すっげー、そんなになにが人気なの?!(きえが驚きΣ( ̄□ ̄;))
で、本当は100票まで待とうかと思ったのですが、書けちゃったので、すぐup。
(後がなくなっても待てない性格なんです。ごめんなさい。)




野崎美琴の父は外交官だった。
幼少期から過ごしたのは国外で、日本に戻ったのは高校に進学するためである。
その時、美琴は父方の父母の家に預けられた。
仲睦まじい夫婦が別れるわけがなく、また10歳も離れた兄はすでに独立し、ある国の企業で力を発揮し始めていた。
一人日本に戻され、また、息子夫婦が戻ってくるものと信じて最新式の設備を取り入れ改築したものの、彼らとの同居を果たす前に祖父母は他界してしまった。
悲しみも薄れ、美琴が大学院に進学する頃に、一度は日本に戻った両親も、長年の外国暮らしに日本での生活感がどうも合わなかったらしく、定年とともにカナダに移り住んでしまった。
そして、一人、日本に残された美琴は、10数年の時を経ても今の家に住み続け、一度就職を決めた『榛名』の中で存在感を表し、不動のものとしていた。

最初に勤めたのは金融業を一手に担う榛名家総帥嫡男の一世(いちよ)の下で、しかも営業部の上層だった。
営業部とはいえ、扱うのは顧客などではなく、同系列の企業ばかりだった。
正確ともいえる予測力や洞察力、全てにおいて隙のない動きなどに目を留めたのは一世本人で、有無も言わせずに秘書室に招いた。
一世は感情を一切挟みこまない性格も気に入っていた。
美琴はすぐに頭角を表し、他を圧倒する勢いで30歳を過ぎた頃には『第一秘書』へと成り上がっていた。

入社当初から榛名家についてのことは事細かく調べ上げられている。
やがて一世が総家を継ぎ、代々継がれていくことは承知していたし、一世の傍にいる以上、直接とはいかなくても何かしら関わることになるのだろうとは予測が付いていた。
今は日本にいない一人息子の千城が海外で起業していることも耳にしていたし、やがて日本に戻り、一世に続いて『榛名グループ』を引き継いでいくのだということも漠然と感じていた。

何はともあれ、美琴自身、まさか全く面識のない息子『千城』に差し出されるとは思いもよらなかった。
一世に『無理強いはしないが』とは言われても、暗に『頼む』と依頼されれば逆らいようがない。
「喜んでお受けいたします」

恭しく頭を下げたのは何年前だったのだろう…。

一世いわく、「世間知らずな若造」だったが、さすがに育て上げられた肌が違うことは会ったその瞬間に分かった。
たぶん、一世以上に闘争本能を身につけた人間だった。

追々、美琴は榛名家の内々にも首を突っ込んでいくことになるが、どこかまだ、千城を手の内で転がしている印象が強かった。
そう、『暮田英人』という人間が現れるまで…。


「ねぇ、美琴さん、何考えてんの?」
野崎の住む自室の中で、腕に抱いたはずなのに、どこか上の空の美琴を嗅ぎつけて、キツイ声が降り注いでくる。
瑛佑が肌の上を這わせていた唇の動きを止めて不服の声を上げた。
「べつに…」
「うそっ!今、ぜーったい、俺以外のこと考えてた」
洞察力の高い人間を時々嫌だと思うことがある。
瑛佑も隙なく見透かすし、千城も些細なことを見逃さない。
瑛佑に限っては嫉妬の表れだと思うから内心で喜ぶところがあっても、考えていた相手が『上司』だとすれば気分がいいわけがなかった。
分かるからこそ黙る。
「考えていないです」
「ホント?」
一瞬の間を開けて、美琴はクスリと笑みを浮かべた。
「この家のことを、ね。ちょっと。祖父母たちと過ごした家だったから…。明日、工事がはいるのかな…と思ったら…」
「だから、別に俺、このままでもいいって言ったじゃん」
きつかった言葉が、美琴の台詞を聞いてやんわりと宥めるように静かになる。
瑛佑と一緒に住むために、この家を改築しようと決めた。
もう20年以上も前の建物だ。
最新式のマンションに住まわせた瑛佑にとっては不便な事も多いだろうと、美琴は心苦しかった。
瑛佑が気を使ってくれているのは分かる。
いいきっかけなのだと美琴は思いたかった。
こんなことでもない限り、変化を怖がって現状維持を続ける自分を知っている。
社会的には次々と企画やら意見やらと口出しをしても、自己のこととなると一歩引いてしまう。
美琴にとっては『特定の相手』、つまり、瑛佑と共に居ることすら青天の霹靂と言っていいほどだ。
それが『同居』までいっているのだ…。
言葉には出せなくても『半端な思いではない』とそれとなく伝えたかったのだと思う。

「貴方を幸せにしてあげたい」
「俺、なんか、嫁さんにくるみたい…」
不貞腐れた瑛佑の顔が少し可愛いと思った。
「嫁でも婿でもどっちでもいいですよ」
「変わんないと思う…」
クスリと笑った美琴に覆いかぶさってくる答え。

千城が人形から人間へと変わった理由が分かる。
たぶん自分も同じだろう。
操られるだけではなく自分の意思で動くこと。
生きる喜びと楽しみと感謝を教えてくれた瑛佑に敬意をはらおう。

―完―

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コメント

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祝!同棲生活スタート
コメント甲斐 | URL | 2010-08-21-Sat 00:33 [編集]
みこっちゃんが初めて『淋しい~』に登場したときは
勝手に、千城よりうんと年上で融通のきかない頭の固いおやじって思い浮かべてしまってたなーと思いだしました
融通のきかない頭の固いという部分は間違ってなかったかも
英人くんへの仕打ちには心を痛めましたよ
それも、恋を知って変わりましたよね
生きる喜びと楽しみと感謝を教えてくれた人がいるからだと思います

そしていよいよ同居ですか
同棲ですよね
忙しくてなかなか会えない恋人を持った瑛佑くんは
大層喜んだことでしょう
末長くお幸せに
Re: 祝!同棲生活スタート
コメントきえ | URL | 2010-08-21-Sat 07:26 [編集]
甲斐さま
おはようございます。
突発的に書いてしまいました。
筆の進む時は進むんですけどね…。

> 融通のきかない頭の固いという部分は間違ってなかったかも

頭が固いところはいまだに…なんでしょうけど…。

> それも、恋を知って変わりましたよね
> 生きる喜びと楽しみと感謝を教えてくれた人がいるからだと思います

恋して人を思いやることで自分も成長するんですね。
あのカタブツを変えた瑛佑、いい仕事してます。

> 同棲ですよね
> 忙しくてなかなか会えない恋人を持った瑛佑くんは
> 大層喜んだことでしょう
> 末長くお幸せに

同棲ですね。
でも恥ずかしがりやなみこっちゃんは『同居』と言い張るんだと思います。
瑛佑、やっとここまで来たよ~って感じでしょう。
ま、押せ押せムードな瑛佑ですから。
みこっちゃん、最終的には折れたっぽい。
コメントありがとうございました。
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