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BLの丘
策略はどこまでも 番外ヒサ編 18
2009-07-31-Fri  CATEGORY: 策略はどこまでも
久志の整った眉がピクンと動いた。胸の中に大きくて重たい鉛が飛び込んできたようだった。
今那智から聞かされた一言が、どれだけの衝撃で久志にぶつかったのか、咄嗟に判断などできなかった。
「…な…ち…?」
聞き返したはずの声は掠れていた。とめどなく流れ出る涙を拭ってやることもせず、ただ那智の悲しそうに歪む顔を見た。
何かの枷を外したかのように、那智の涙で潤う瞳が久志を見上げた。
「い、や…。…おまえ、いっぱいいるじゃん…。いつだって好き放題遊び放題。飽きたって言って全部捨ててきた…。抱いたって「好き」って言われた奴とは速攻で別れただろっ。他のやつみたいに、おまえの慰み物にされるのは、やだ…。…友達は違うって、おまえ言った……。岩村にだってこんなことしなかったのに…。……なんで、俺? …なんで俺なの?……俺、いつ飽きられんの? いつ捨てられんの?………好きって言った途端に捨てられるくらいだったら、絶対言わない。おまえのもんになんか死んでもなんないっ」
那智の瞳から絶えずに流れ落ちる涙が、その心を写す鏡のように瞳を覆っていた。
久志は心臓が痛かった。堰を切ったような言葉の羅列が、辛辣な批評として耳に聞こえてきた。

『慰み物』ってなんだよ…。ずっとそんな風に自分を位置付けていたのか…?

これまでに久志がとってきた行動を那智は良く知っている。その上で、那智を手にしようとしたことが、那智にとってどういう受け止められ方をされるのか全く気にしたことなどなかった。
思い返せば、一度だって自分からはっきりと那智に気持ちを伝えたことなどなかった。一方的に手に入れようと行動を繰り返しただけだ。
強引に身体を奪い、自分に陥落させることが那智にはどれほど酷なことだったのか、ようやく気がついた。想いを伝えたら最後。でも身体はすでに悦びを教え込まれた…。
初めての夜、友達に戻ってほしいと願い出た那智の想いの全てがここに繋がることを知った。
那智に久志を想う気持ちがあったからこそ、絶対に吐露しなかった感情。失うことに怯えていたのは自分よりもむしろ那智のほうだったのかもしれない。

「好き…、好きだ。那智だけが好き」
「信じられるかっ」
「信じろよっ、…信じて。頼むから信じてくれ。俺の中で那智だけが一番だったんだ。那智だけだったの。ずーっと那智だけが好きだった」
久志は胸が焦げるようだと思った。心臓が早鐘のように打ち鳴らされている。先程飛び込んできた鉛が、自分の中で巣食い始め、悲しみから焦りという感情へ変化して久志をどんどんと追い詰めていった。
この期に及んでどうやったら過去の自分を清算し受け入れてもらえるのか、手段が何も思いつかなかった。
那智の返事を聞くだけで、自分が思っていた以上に簡単になど那智の信頼が得られないことに焦燥感だけが募る。

「う…そ…」
「嘘なんかじゃないっ。那智に対してどういうふうに接していいか分からなかったんだ。部室で襲われた時、本当は抱きしめてやりたかった。だけど那智は怯えてた。男はダメなのかって思った。あれから俺は那智に触れたくて触れたくてどうしようもなかった」
久志はこれ以上隠すことの意味がないと、胸の内を赤裸々と語った。久志の中にあるわだかまった過去を晒すことで那智の心が少しでも解けてくれるなら、どんなに恥ずかしいことだって聞かせてやりたかった。

那智は再び瞳を閉じ、久志を視界から消すと首を横に振った。
………信じられない………。那智の感情がその仕草に全て詰め込まれているかのようだった。
久志は目一杯那智の身体を抱きしめた。思いの丈を込め、細い、華奢な身体が久志の力で折れてしまうのではないかと思うくらい、那智を抱きしめる腕は力強かった。
どんなに強く抱きしめても、一度植えられた自分への不信感は早々と覆されるものではないのだろうか。
たとえ、那智の代わりとして抱き捨てたことだったとしても、自分の欲情を他人に見せたことに変わりはなく、どう説明しても那智には受け入れがたいことなのだろうか…。
久志は自分の過去を呪った。誰彼となく易々と自分の腕の中に抱き入れ、那智を不安の底まで陥れた自分自身が許せなかった。

那智の頬に久志の頬が寄せられると、涙で湿った肌がピッタリとくっついた。
息すらするのが辛いかのように、那智は声を殺して涙だけを流していた。歯を食いしばっている様子が肌越しに感じられ、久志は顔を上げると額を那智の額と合わせた。
鼻先を付け、今にも唇同士が触れ合いそうなすぐそば、指先を那智の目尻に寄せると零れ落ちるだけの涙を親指の先で拭ってやった。
久志は静かに言った。
「絶対約束するから。もう泣かせないから。一生那智だけを愛してるって誓うから。……俺だけのものになってよ…那智」

「…ァ、あぁ…」
と、再び那智から呻くような嗚咽が零れた。これまでにため込んだ那智の感情の全てが、今のこの瞬間に流れ出たような錯覚が久志を覆った。
すぐ間近で那智の口から吐き出された溜息を久志の唇が受け止めた。
微かに触れ合った唇の先。苦しみに歪んだ那智の瞳がうっすらと開かれて、…再び閉じられる。

「すき…」
久志が声を振り絞るように喉を震わせると、間近にあった那智の唇がふいに久志の唇に触れられた。
一瞬のことで久志は何が起きたのか分からなかったくらいだった。
「な、ち…」
「おまえのことなんか、絶対に好きって言ってやんないっ!」
言葉とは裏腹にもう一度那智から唇が合わせられた。なんの技もないただ合わせただけの温もり。
久志は、那智から伝えられた初めての告白のようだと思った。

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明日でようやくヒサ編終了です。
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コメント

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コメントこな | URL | 2012-02-19-Sun 02:36 [編集]
やっとこさ、くっつきましたね!!!
良かったです(〃∀〃)

那智のツンデレ、
やばすですよぉ(´Å`〇)
Re: タイトルなし
コメントたつみきえ | URL | 2012-02-19-Sun 06:05 [編集]
こな様
おはようございます。

> やっとこさ、くっつきましたね!!!
> 良かったです(〃∀〃)
>
> 那智のツンデレ、
> やばすですよぉ(´遵ァ`〇)

やっとこさ…。
(この失敗作を読んでくださる方がいることが幸せです)
那智も気の強い子なんで~。
ヒサも苦労しましたね。
コメントありがとうございました。

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