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BLの丘
【観潮楼企画】 ~指先が触れた時~ 8
2010-08-14-Sat  CATEGORY: 観潮楼
この作品は、【観潮楼】「夏―心を焦がす恋―」参加作品です。



あかね色の夕焼けが村全体を包んでいた。
祖母の家の縁側から見る夕焼けは、都会のごみごみとした中から見るものとは全く違う。
同じ地球上にあるものであるはずなのに、とても澄んでいた。
それは人の心にも影響しているのだろうか…。

公民館での宴会は際限がなく、酒を飲み慣れない安里が次々と注がれる酒に酔いを表し、ぐったりとして陸に連れられることでお開きとなった。
それからも、祖母宅には果物や野菜がたくさん届いていた。
何をしたわけではない…。
傷を負わせるだけだった自分に、ここまでしてもらう資格などないと安里は涙ぐんだ。

一眠りしてぼうっと縁側の外をながめていたとき、黒い影が安里の前を横切った。
大きくて、逞しくて、それでいてしなやかな動き…。
「安里…」
『スイカ持ってきた…』と目の前の男は呟いた。
親から言い渡されたものなのか、自ら選んだのか、安里は知らないが、この家にやってくるための口実なのだとは分かる。
自分で振っておきながら、今はその腕が欲しい…。
図々しいと思うから余計にそっけなくなる。
「ありがと…」
おおきな塊を縁側で受け取って、このまま去ってくれと願う気持ちと、そばにいてくれという欲望が渦巻いた。

「俺、就職は安里の近くにするから」
思いがけない言葉が降ってきて、安里は目を見開く。
この村に残る若者が少ないことは知ってはいるが、『近く』という言葉には驚きしかない。
睦がもう就職を考える年なのだとは嫌でも知っている。
専門分野へと進んだのも受験を決めた時から聞かされていた。
その全てが自分へと繋がっているとは思いもしなかった。
「なに、言って…」
「ここを離れることは親父たちは昔から知っている。何も縛られることはないってずっと言われてきた。俺が縛られたいのは安里だけだよ」
握り締めたスイカを落とさないようにと指先が触れた。
同時に重なった唇…。

日に焼けた肌が眩しい。
赤く染める太陽と、焦げたような睦の肌。
そして焦げた自分の心…。

「安里がどうしても嫌だっていうなら諦める。けど少しでもまだ俺のこと、考えてくれるなら、一歩も引かない。今日触れた温もりは、その答えなんだろう?」
どこまで見透かすのかと思った。
ほんの僅かだけ触れた指先だけで、自分の心を読み透かされていた。
一度は振った相手でも、こもる熱は振りきれていない。
「むつみ……」
「好きだ…。あの頃は何の考えもなくひたすら安里を自分のものにしようとしていたけど、少し離れて俺の我が儘を知った。こんなやつにずっと付き合ってくれたのかって、すごく嬉しかったし後悔もした。安里に別れを切り出されて当然のはずなのに、でもやっぱ、諦められないよ。こんな言い方は卑怯だけど、責任とってって言いたい。俺、何もかもを安里に捧げて生きてきた…」
子供独特の独占欲に近かった。
それでも安里は嬉しかった。
そこまで自分を欲してくれる態度。

両親は共働きで家にはいつも一人。
夏に訪れる、うっとおしいほどにかまってくれる近所の少年たち。

教育者として、これはありなのだろうか。
葛藤する心の中で、導き出した答えは…。

「ばかやろ…」
自ら口付けたのはこれが初めてだった。

夏恋

なら様より「夏―心を焦がす恋―」をお借りしてきました。
無断転写はご遠慮ください。

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朝から何をしているかと思えば…。で、隠れてカタカタ打ち込んでいました。
次話、最終話になるかな~。ってか、いつ書けるんだ?!
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コメント

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少年から青年へ
コメントけいったん | URL | 2010-08-14-Sat 16:13 [編集]
きえ様、暑中お見舞い申し上げます

動物に近かった少年睦も やっと人間らしく 相手の事を思いやる気持ちが出て来たんですね。それが 成長と言うものなんでしょう。
反対に 安里は 全く成長は 見られませんねー。あの別れを 切り出した時のまま 止まってしまっている
...で ちょうど今 二人が 同じ地点にいるのかも。
この二人は きっと 睦が安里を 常に引っ張って行く事になるのでは(*?o?*)...byebye☆
Re: 少年から青年へ
コメントきえ | URL | 2010-08-14-Sat 18:04 [編集]
けいったん様
お体大丈夫ですか?
私、へたれました…。

> きえ様、暑中お見舞い申し上げます
>
> 動物に近かった少年睦も やっと人間らしく 相手の事を思いやる気持ちが出て来たんですね。それが 成長と言うものなんでしょう。
> 反対に 安里は 全く成長は 見られませんねー。あの別れを 切り出した時のまま 止まってしまっている
> ...で ちょうど今 二人が 同じ地点にいるのかも。
> この二人は きっと 睦が安里を 常に引っ張って行く事になるのでは(*?o?*)...byebye☆

動物は人間に近づいたようです。
我が儘言い放題襲い放題だったのですが、ここにきて…。
逆に安里が成長していません。
大人になろうとする睦とそれに付き合おうとする安里なのか。
安里視点で進めているため、時を止めたような感じがあるのは、ごめんなさい…としか言えないです。
うーん、でもここまできて、二人、並んだ感じはあります。
睦、引っ張るのでしょうね…。
コメントありがとうございました。
No title
コメント甲斐 | URL | 2010-08-15-Sun 18:22 [編集]
むっちゃん、一途だね~
一つ年上の近所のお兄さんに憧れたり
年上なのに守ってあげたいって思ったり
それでそのまま大人になるまでその思いを育てられるなんて
想われている安里くんが羨ましいです
けど、教育者としては…
同じ町の先輩としては…
好きなものは好き
だから一緒にいたい
傍にいたい
そう単純に実行できない性格の安里くんにとっては悩ましいですね
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