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BLの丘
一番近いもの 17
2010-07-29-Thu  CATEGORY: 一番近いもの
あまり飲まずにいようとするのに、口淋しいのか、グラスに口を付ける回数が多くなって、その度に饒舌になった花巻がビールを注いでくれた。
「海斗~、全然食べていないじゃん。悪酔いするよ」
なかなか箸の動かない海斗を気遣うのか、鳥羽がたまに「あ~ん」とテーブルの上に並べられたあれこれを海斗の口元に運んでくる。
有馬が作った料理は相変わらず見事なもので、フライパンごと持って来られたパエリアは花巻から絶賛されていた。
「元女房だって、こんな立派なものは作ってくれませんでしたよ。男、一人暮らしになると、外食ばかりになっちゃってね~」
「単純にお金が無いんです。働いてお金稼げるわけじゃないし。花巻さんほどの収入があれば外食に頼れるんですけどね…」
「いえいえ、不健康ですよ。栄養バランスも何も考えなくなるしね」
海斗だってまともな料理ができるわけではなかったし、日頃の食生活を振り返れば花巻の言うことも理解できる。
栄養士のいる社員食堂で昼ごはんを食べているから、少しは救われているのだろうか。

「ほら、海斗、これも食べて」
有馬の作った夏野菜の揚げ浸しを鳥羽に再度すすめられた。
健康管理には人一倍うるさそうだ…。
口をあけて待つ子供のようで恥ずかしさが募り、鳥羽の手を押し留める。
「もういいよ。自分で食べられるし」
「箸、全然持たないじゃん」
甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる鳥羽の存在が嬉しいのに悲しい。
たぶん、きっと、こいつは誰に対してもこうして優しく接するのだろう…。
「鳥羽君ってすっかり砺波さんのお世話役ですね。この前の『チュー』を見た時はびっくりしましたけど、二人の仲を思えば自然なことなんですかね」
「げほっ!!」
花巻から突然告げられたことに、海斗が激しくむせ込んだ。
男同士の付き合いを好む海斗のことはすでに知られたことなのだろうが、『鳥羽と…』と言われたら戸惑いと羞恥がわき上がってきた。
海斗の記憶の中からすっかり抜け落ちていたが、鳥羽が平気で人前で唇を寄せてきたことを思い出す。
かぁぁぁっと身体が熱くなるのも感じた。
同時に心苦しさも生まれた。
誰に対しても優しい存在なのだろうと思いながら、やはり誰に対しても平然とスキンシップをとる男なのか…。
「そ、そ、そ、そんな…、そんなんじゃないしっ…っ」
「え?違うんですか? 主婦の方から浮気調査を依頼されて、相手が男性だった、とかたまにありますから、私、そういうことに抵抗ないです。大丈夫です。口硬いですし」
ポロポロ漏らしている時点で「口の硬さ」の信用度はあるのかと思うが…。
激しく動揺する海斗を気遣うのか、鳥羽が苦笑を浮かべた。
「あの時はちょっとした『勢い』?海斗を慰めてやりたかったからなんだけど」
ズンと心が重たくなる。
『慰める』…?

「健太、すぐ手ぇ出すから」
「堪え性なしみたいに言わないでくれる?」
「若い時って盛んになっていいと思いますよ~」
笑い声が響き渡る部屋の中で、海斗一人が冷やかな感情を抱いていた。
自分だって、ずっと、性欲にかられて相手を変えてきたような人間だ。
人のことは言えたものではないのに、簡単に誰とでも手を触れ合わせる鳥羽が気に入らなかった。
苛立ち…だった。

やっぱりこんな場所に来るのではなかった…と、海斗は後悔していた。
昼間感じていた、そわそわした高揚はなんだったのだろう。
弄ばれたような感覚が全身を蝕んで、こんな場所で年下に対して大人げないと思いながら、酔いの為か率直な意見がこぼれた。
「おまえ、ほんと、気に入らないっ」
いきなり発された喧嘩ごしの台詞に、笑い事では済まない現実を感じた3人が黙った。
「人に慰められて生きていくような弱い人間じゃないしっ!!」
「海斗…」
「うるさいっ!!もういいっ!!関わんなっ!!!!」
立ち上がった海斗の手首を鳥羽がつかまえようとするのを渾身の力で振り払った。
訳の分からない悔しさで瞼が熱くなる。
どうして涙が出るのか…。
「砺波さん…」
花巻にも引きとめられる声を聞こえなかったことにして、玄関を飛び出した。
「海斗っ!!」
追ってくる声がアパートの廊下に響いた。
自分の部屋の鍵をあけることに手を焼いて…、その間に追いついた鳥羽が海斗の後を続いて部屋に一緒に入ってきた。
「出て行けよっ!!」
振り上げた掌をがしっと掴まれる。
「ごめん、言い方が悪かった…」
神妙な顔をした鳥羽が震える海斗の身体を腕の中に収めた。
気に入らないのに、ひどく安堵する腕だと思った…。
「こういう人、見ると、放っておけないんだ…」
傷ついた人間、と思われていることを知って、余計に愕然とした。

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コメント

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苛立ち
コメント甲斐 | URL | 2010-07-29-Thu 16:11 [編集]
傷ついたかわいそうな自分を慰めてくれる相手ではなくて
寄り添ってくれる人を求めてるんでしょうね
自覚ないけど

つまり、同情ではなく愛情が欲しいと…
Re: 苛立ち
コメントきえ | URL | 2010-07-29-Thu 17:53 [編集]
甲斐様
こんにちは~。
愛情が欲しい海斗クンに気付かれましたか(つーか、そう書きなさいという、表現の乏しいワタシ…)

> 傷ついたかわいそうな自分を慰めてくれる相手ではなくて
> 寄り添ってくれる人を求めてるんでしょうね
> 自覚ないけど

いっぱい暗い過去を背負った海斗なんですけど、まもなく、そんな背景も登場するかと思います。
なかなか進まず、また伝わりにくい稚拙な文にいつもお付き合い、本当に感謝です。
『寄り添ってくれる人』に誰を求めるのか、海斗ももう気づいていいはずですが…。
コメントありがとうございました。
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