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BLの丘
一番近いもの 13
2010-07-25-Sun  CATEGORY: 一番近いもの
大希に逢うのは一週間ぶりだった。
週末の土曜日、さすがにアパートにまで連れて行く気が起きなくて、連絡をもらっても、とあるバーで待ち合わせをしただけ。
ひかりがチカチカと舞うフロアでは、初めて会うものどうしなのか、再会なのか、いくつもの声が飛び交っている。
リズミカルな音楽に合わせて瞬きのたびに人間が移動していた。

大希には友人として、海斗をしつこく追っていた松島が逮捕されたこととか、隣人の話もかいつまんで話してあった。
さすがに警察沙汰になったことには驚いていたが、『裏社会』で生きているような自分たちに、どこか納得するものもあったようだ。

カウンターに並んで座った海斗と大希だったが、海斗はこの日何度目かの溜め息をついて、大希の苦笑をかっていた。
「ねぇ、俺を前にして、そんだけ溜め息はけるって、心ここにあらずそのままじゃん」
「えー、別にそんなことないけどさぁ…。激しい運動をした覚えもないし、肋骨にひびとかも入っていないと思うけど、なんかなぁ。呼吸するたんびに、胸が苦しくってさぁ…。煙草も吸っていないし、へんな病気になるはずもないとおもうんだけど…」
「ぶーっ!!!」
「うわっ、きたねっ!!!吐くなよっ!!!」
あわてておしぼりを突き出す。
海斗の呟きに目を瞠った大希が不思議なものでも見るように海斗をマジマジと凝視した。
「お、ま……」
大希の表情には『呆れ』も混じっていた。

海斗は、大希に会ったのはよいが、とても今夜ヤる気にはなれずにいた。
いつもなら、飲む間も惜しんでさっさとベッドへと向かおうとするのに、一向にその気が湧かない。
それどころか、愚痴のはけ口として、『友人』という立場に落ちている存在を改めて知った。
ヤる気が起きなければ、自分のことを良く知った友人で、酒の肴で愚痴相手。
同じように大希が海斗を見ているとは思えないが、それでも『ヤりたくない』といえば大希は無理強いしないから安心しているのだろうか。
「胸、苦しいの…?」
大希にあらたまって聞かれて小さく頷く。
「ちくちくって細胞を攻めるようなものじゃなくて、ドクンドクンって腫れていくようなやつ?」
海斗はまた頷いた。
今度は大希から盛大な溜め息が聞こえる。
「あのさー、海斗クン。『恋煩い』っていうビョーキがあること、知ってる?」
「『こい…』?……ま、まさかっ!!俺、そんな相手いないしっ!!」
改まって伝えられることに海斗は激しく動揺していた。
恋くらいならしたことがある。
幼稚園の時に、いつも遊んでくれた尚人先生とか、小学生の時に登校班で面倒をみてくれた5つ年上のあっちゃんとか。
身体が成長してからは欲求不満をはらすことばかりが頭にあったかもしれないが、あちこちでそれなりに想いを寄せる人がいた…と思う…のに思い出せない。
『恋』ってどんな感情だっけ?と振り返っていたりする。

「『そんな相手』いなくったって、今の海斗、そのままじゃん。言い訳になってねぇよ。で、相手誰なの?俺じゃないこと、確かだし。……あーぁ、もう海斗とも終わりだな~。結構気に入っていたのに」
大希が天を見上げながらぽつりと呟いた。
身体だけの関係が終われば、こうやって会うこともなくなるのかと、それも少し淋しい気がした。
大希とは気があっていただけに失うのは惜しい。
身体の繋がりがなくてもこうして時々あって、いろいろと話をする存在であってほしい…と望むのは欲張りな証拠なのか…。
「終わり…って、あのさ…」
「無理。誰かを想っているやつを慰めることは俺にはできません。つーか、身代わりにされるのは嫌。思い人がいるって分かったからには頼まれたって抱かないから」
珍しくカァァァと海斗が頬を染めた。
性に関してはあけっぴろげだったのに、なにが恥ずかしいというのか海斗にも分からない。
激しく大希が溜め息を吐いた。
「無意識にそういう顔見せるわけ?!初めて知った。海斗のそれ、犯罪級」
「な、なんだよ、犯罪…って…」
つい先日の松島の姿が瞼の奥を流れていく。
同じ意味での『犯罪』ではないのだとは思っても、チクリと胸を刺すものがあるのは確かだ。
大希も一瞬、告げるべき言葉を誤ったと苦虫を潰したような表情を向けた。
「ごめ…。変な意味じゃなくてさ…。海斗、すっげー『モテ顔』ってこと。俺、今更ながらに『惜しい』って思ったわ。前言撤回してさ。なぁ、そいつのこと忘れられない?俺たち、マジで付き合わない?」
「そいつって誰だよ?!」
「そんなの俺が知るかよ。海斗自身のことだろ?」
問い詰められても海斗も理解できていないのだ。
そして改めて告げられた『告白』に小さいながらも胸が高鳴っていた。
『もう終わり』だと言われた直後に伝えられた気持ちに動揺はあるものの、身体以上の付き合いに進展しないと分かっていたからなんとなくむず痒かった。
不安はある。
大希が言うような、『お付き合い』は心を伴うもので、それこそ海斗にとって『恋愛ごっこ』の始まりだった。
嫌なわけではないし、心を委ねてしまいたい気持ちもどこかにあった。
人に縋ることなど滅多にない海斗だからこそ、身体まで許した大希は休める場所でもある。
『大希のことを好きだと思えばいい』…。
海斗は何故かそう思った。
全ての平穏がそこにあるような気がした。
「俺んとこ、来いよ。今までの全部ひっくるめて、海斗のこと、好きになるから」
「うん…」
海斗は頷いた。
「今夜、うち。いいだろ…?」
身体だけの関係なのか、一歩踏み込んだ地に落ちたのか、定かではない。
だけど、見つめてくる眼差しが今までとは違うのは感じた。
幾度も繰り返した逢瀬。
重なるから分かるその違い。
ただ、心の奥底で悲鳴を上げる細胞があるのを海斗は理解していた。
大希を『好き』ではないのだ…。

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コメント

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胸どきゅん
コメント甲斐 | URL | 2010-07-25-Sun 12:27 [編集]
海斗くんは、今まで仄かな憧れや、好ましい想い
あるいは、欲求の解消以外の感情をもって
誰かを想うなんてことがなかったんでしょうね。
胸が苦しくなるびょーきも
未経験な訳で

苦しいくらいに誰かを恋しく想い
他の何かと代えがたいほどに求める気持ちを知ったら
その胸の渇きや色のない生活にも
彩りが生まれるかもしれませんね
Re: 胸どきゅん
コメントきえ | URL | 2010-07-25-Sun 14:32 [編集]
甲斐様
こんにちは~。
久し振りに『一番~』を書いている気になりました。
そんなに空けた気はないんですけど…。

> 胸が苦しくなるびょーきも
> 未経験な訳で

海斗ってばいつからこんな生活をしていたんですかね。(息子ながら分からないときたもんだ…)
あっちの処理が果たせればいいっていう考えでいたんでしょうか。
まぁ若いのであちこち液体をばらまいてきたんでしょう。

> 苦しいくらいに誰かを恋しく想い
> 他の何かと代えがたいほどに求める気持ちを知ったら
> その胸の渇きや色のない生活にも
> 彩りが生まれるかもしれませんね

乾ききった現在の生活にも少しずつ変化がみられることかと…。
大希の存在も海斗にあれこれと気付かせるものになるはず…なんですけど…。
まだ二人は『身体関係』が強いかも?!
こめんとありがとうございました。
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