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BLの丘
『親子教室』 2
2010-07-23-Fri  CATEGORY: 『想』―sou―
千城と安住が”仮眠室”に入ってみれば、スースーと寝息をたてる愛しい人の姿がベッドの上にあった。
英人は一葉に向かって丸くなっていたし、一葉は那智の胸の上に手を投げ出している。変わりに那智の足が一葉の足の上に乗るように大の字になっていた。
もちろんきちんと服は着ていた。(多少、めくれている部分があったとしても…)
日野と神戸も遅れて後ろから入ってきた。

神戸「あれま~。無邪気な寝顔を見せちゃって」
日野「千城さん、英人に場所を考えろって教えておいてよ。”ベッドの中で服は着ない”教育方針は自宅だけにしてくれない?おちおち、昼寝もさせられない」
安住「それで脱いじゃったわけ?凄い教えだね(クスクス)」
千城「おまえも見たのか?」
日野「俺、興味ないし。心配なら尚更ちゃんと教育して」
安住「ジーンズなんか穿いて寝ることなんかないものね。窮屈だよね。今度からパジャマも荷物の中に入れておくよ」
日野「…(それもどうなの…??…まだ続くのか、保育園…冷汗…)……」(断れない…)

そんなことより…と神戸が造りつけの棚の奥にある金庫に向かった。
解錠して、入れてあったはずのものがないことを確認してこめかみをピクリと揺らす。
その行動を追っていた日野が、こちらは動揺することもなく神戸の背中を見ていた。
神戸が『言うことがないか』と問うてきたのはこのことか、と今頃になって理解する。
「さっき野崎さんに聞いたんだけど」
「ん?」
全く悪びれた様子も見当たらず、神戸は『こちらもどう躾ようか』と頭を巡らせた。
小切手を出されたこと云々よりも、黙って行動を取られたことに苛立ちがある神戸だった。

「もう少し寝かせてあげましょう。ここで話続けるのは睡眠の妨げになるから」
神戸と日野のやりとりも気になるのか、安住がそっと掛け布団を直して皆を促した。
ドアが閉まってしまえば声を荒げても中に聞こえることはない。

千城と安住はカウンター席に座ったが、日野と神戸はいつもの定位置に落ちついた。
「何で勝手に小切手を返しちゃったりするの?!」
「『勝手』…ってさぁ。俺、何回も長流には言ってるじゃん。好き放題やってるのは長流のほうだろ?この店のこともそうだし、どれだけ千城さんに負担かけてると思ってんの?あんな小切手、貰う必要がないくらいにいろんなことしてもらっているんだよ。そりゃ、確かに長流のメンタルな面っていうのはあるかもしれないけどさ。全てをひっくるめたって、もう充分だろう」
「だからって一言くらい言ってくれたっていいじゃん」
「言ったら聞いたか?この繰り返し、何回やった?!」
日野が苛立ちを隠せないように神戸を見据えた。
子守の疲れもあって、聞きわけの無さに積もるものもあるのだろうか。
そこに仲介でもするような安住の静かな声が響いた。
「すごく、不思議なんですけれど。何故、野崎さんは、これほど重要な件を神戸さんに伝えていなかったの?本来なら『直接』神戸さんと野崎さん、もしくは榛名さんと神戸さんで話し合うべきところでしょう?」
全て秘書任せにしていた千城もこれにはピクンと気付く。
確かに神戸と具体的な話をしなかった自分にも非はあるが、安住のいうとおり、良く考えれば当然のことだ。
神戸が「知らない」と言った時点で気付くべきことだった。
何より、逐一神戸に報告するようなあの野崎が黙っていられるような内容ではない。

千城は咄嗟に日野を見た。
「野崎が神戸に伝えなかったのには故意的な理由があるのか?」
日野は一瞬口を閉ざす。だけど隠しきれない、諦めたようなものが日野の中を流れていった。
「野崎さん、受け取ったっていうより、『預かっておきます』って”預かり証”くれたよ。あくまでもこれは長流のものだからって」
つまり、返してもらったわけではないから言う必要もないということか…と千城は判断した。が、納得できるものでもない。
野崎は千城にすら詳しい説明をしなかった。
神戸に問わせないようにしむけたのもたぶん野崎の話術だ。
当然、疑問が浮かぶ。
「野崎とどんな密談を交わしたんだ?」
千城から鋭い視線を浴びて、日野は肩をすくめた。
「密談、だなんて…。何も」
「嘘をつけ。あの野崎が考えもなしにこんな行動に出るはずがない」
「さぁ。ただ俺は、長流が俺の言うことに耳なんて貸さないから野崎さんから言ってほしいって頼んだだけだよ。『ふたりにとってはいつものことですから気になさらないでください』って言われちゃったけど」
神戸が我が儘なのか、千城が甘いのかは判断つきかねるところだが、簡単に金品を要求する神戸も、当たり前のように差し出す千城も、日野の中では不可思議なものでしかなかった。
二人の間柄に慣れたとしても、日野自身として譲れない考えは持ち合わせている。
「そんなこと、野崎さんに言ったのっ?!」
「だって、千城さんも長流もうまく扱えるの、野崎さんだけじゃん」
「で、野崎は何て言ったんだ?」
「『たまにはお二人には良い薬かもしれませんね』」
千城が「くそっ」と悪態をつくのが先か、安住がクスクスと笑いだすのが先か。
周りを気にせず、自己中心的に物事を進めてきた二人を見ているだけに、予想外な動きを取った日野の行動に便乗したようなものだ。
『似た者同士』を抑止できる人間もいないのだが、『思い通りにはいかない』と思わせるには充分なものがあると踏んだのか、周りの意見など聞きもしない二人に一泡吹かせてやろうという野崎の魂胆が見えてくるようだった。
これまで、当たり前と思ってやってきたことも、他の人間からみれば常軌を逸している。
日野の動きで苦い良薬を飲まされていた。
二人を抑制するためにも、今回の『小切手騒動』はうまく使われていたのだ。
千城は神戸の小切手などどうでもよかったが、野崎に一枚食わされた方に悔しさが混じる。
千城にしてみれば、うまく飼い馴らしていたはずの飼い犬に手を噛まれた気分でもあった。

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また終わらない…。
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コメント

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無邪気な天使
コメント甲斐 | URL | 2010-07-23-Fri 13:00 [編集]
何にも知らずにすーすーと眠っている天使たちを置いといて、
大人たちは騒々しいですね。
いったいこの人達の中で一番苦労しているのは誰なのだかわからなくなりました。
かわいそう…と思った人が結構つわものだったり、
大変ねぇ…と思った人が結構したたかだったり、
そんなんだから付き合えるって気もしますけど。
安住さんもだんだん毒されてきましたね。
類友だー
Re: 無邪気な天使
コメントきえ | URL | 2010-07-23-Fri 18:17 [編集]
甲斐様
こんばんは。

> いったいこの人達の中で一番苦労しているのは誰なのだかわからなくなりました。
> かわいそう…と思った人が結構つわものだったり、
> 大変ねぇ…と思った人が結構したたかだったり、
> そんなんだから付き合えるって気もしますけど。
> 安住さんもだんだん毒されてきましたね。
> 類友だー

分からなくなりますよね~。
でもみんなしたたかに生きています。
やられっぱなしじゃないのよって自己主張しているような…。

基本的に私自身が上下関係のない"平等主義者"なので、そんなのもここにはあらわれているのかもしれません。
一番苦労している人…、誰なんでしょう。
お互い、持ちつ持たれつで平平凡凡と日々を過ごしていけたらいいなぁと勝手に思っています。
(この連中に『平凡』はない?!)
コメントありがとうございました。
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