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BLの丘
一番近いもの 12
2010-07-23-Fri  CATEGORY: 一番近いもの
松島の存在に脅えて恐怖に打ち震えていた昨夜が嘘のようだった。
鳥羽と有馬、そして花巻に囲まれて、したたかに酔い、気持ちの良い夜を迎えた。
花巻は友人2人と、計3人で探偵事務所を持っているとのことだった。
「生活が不規則でね。高校に上がったばかりの一人娘がいたんですけど、母親と団結されちゃって、『お父さん、もう帰ってこなくていいから』って追い出されちゃったんですよ~(涙)。まあ、もともと家庭内別居状態だったから、清々したっていうのが女房の言い分みたいですけどぉ」
今年の冬に40歳の誕生日を迎えるのだという花巻も酒が入ってくると、仮面のような表情が崩れていった。
たぶんこれまでにも溜まっていたものはあったのだろう。
口を軽くさせるのは有馬と鳥羽の存在なのだろうか…。
「俺も今まで住んでいたアパートが火事になっちゃって…ってか、ボヤだったんだけど。建て直しだなんだって騒ぎになっちゃってしばらく蓮のところに潜り込んでいたんだけどさ。男二人で住めるような環境じゃなかったし」
「お互い学費のこととか色々あったからね。ちょうどいい機会だから家賃半分こしようってことで探してもらったのがここ」
「へぇ。なんだかみんな、いろいろとあるんだ~…ヒック」
それぞれの他愛のない話を聞いているうちに、酒もすすんでいたようだ。
海斗が盛大なしゃっくりをあげると鳥羽が目尻を下げて笑った。
「海斗、もしかして飲み過ぎ?明日はちゃんと会社に行ってもらわなきゃだし。一眠りしておく?」
瞼の重くなった海斗を、鳥羽がそっと引き寄せてその胸へともたれかけさせる。
急に触れた人の体温に、何故かドクンとなって、海斗は慌てて離れようとした。
「へ、平気。もうそろそろ帰るし」
「あー、そうですね。有馬さんと鳥羽さんも明日また早いでしょうし。すっかり寛いでしまって…」
海斗の声につられるように花巻が崩していた足を正して背筋をピンと伸ばした。
酔っているんだか酔っていないんだか分からない『オヤジ』である。
有馬が「お気になさらずに」と微笑んだ。
ここに呼ぶことになった本来の目的、というか、原因となる話題はいつの間にか反らされていて、海斗も気兼ねなく付き合っていられた。
時間を忘れさせてもらったというべきか…。
「急にお呼び立てしてしまったようでこちらこそすみませんでした。またいつかこうしてみんなで食卓を囲めたらいいですね」
「えぇ、もうっ。一人で食べる食事って本当に味気ないですからね。是非今度はうちのほうへいらしてください。…とはいえ、何もないムサイ親父の住むところですけど…」
明るく語ってはいるものの、花巻の背には哀愁が漂っているように見えた。

「行こ、行こ。その時は海斗も来るんだよ」
「え?なんで俺まで?!」
「お隣同士なんですから、気なんて使わないでください」
鳥羽と花巻に促され、いつのまにか、『井戸端会議メンバー』に加えられている。
近所づきあいなんてこれまでなかったから、気恥ずかしい思いはあるものの、なんだかほんわりと胸の奥が温かくなるものを感じていた。
心の底から嫌がっているわけではない。
この辺も人懐っこいというか、すぐに人に気を許してしまう海斗ならでは、である。

立ち上がった花巻を追い掛けて、海斗も玄関へと向かった。
「俺、送っていってあげるから」
「隣で送るも見届けるもないからっ!!」
鳥羽の台詞にギロリと睨みを入れてみても、気にした様子のない鳥羽がサンダルをひっかけ、海斗の後を追ってきた。
廊下で、「おやすみなさ~い」と花巻と別れる。
鍵を開けて入った三和土に鳥羽も滑りこんできた。
「おまえさ~ぁ」
うっとおしげに鳥羽を振り返れば、玄関ドアが閉まると同時に鳥羽の逞しい腕が海斗の背に回った。
「よかった…。本当はちょっと心配してたんだ。あんたが気付かないうちに何か打たれていたら、とか飲まされていたらどうしようとか。警察に行くことになっちゃったの、俺のせいだったし。予想以上に早く元気になってくれたようだけど、どこか無理している?何かあったらいつでも相談にのるから」
鳥羽なりの優しい気持ちなのだとは分かる。
それを素直に受け止めたいのに、年下と思うからだろうか、自分を防御するように、少しひねくれた考えがあるのも確かだった。
「これ以上、おまえらの世話になんかなれねぇよ」
「そういうこと言うなよ。迷惑にならない程度にあんたのこと、見守ってやるから」
「大きなお世話だっつぅのっ!!」
反論はしてみたけど、告白でもされるかのような台詞に、年がいもなくドクドクと心臓が高鳴った。
ただの社交辞令だと思えばいいだけのものをまともに聞いてしまった自分がいる。
恋愛ごっこをしたことがあっても、『恋愛』をまともにしたことのない海斗は胸に刺さってくるような痛みが分からなかった。

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『一番~』よりも『ヤギ』をさっさと終わりにしろ?!…そ、そうですよね…。私も複数抱えるのは焦らしているようでイケナイことのように思えてきました。
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コメント

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No title
コメントきえ | URL | 2010-07-23-Fri 06:55 [編集]
拍手コメ エ様
おはようございます。

>焦らされている…んでしょうか? 伺う度に何が更新されてるかな、と福引の球の色をわくわく待つようなそんな風に楽しませて頂いてます♪

また焦らしぷれい?!
すみません、書くの遅くて…。
でもお待ちいただいている方がいると思うとがんばろうって励みになります。
福引ひいてもらって、とりあえず、ハズレがないようにしたいです。
コメントありがとうございました。
なんだかみんな、いろいろとあるんだ
コメント甲斐 | URL | 2010-07-23-Fri 13:13 [編集]
海斗くん、一段落してちょっと冷静になってみると、やっぱり人に頼ってしまったり構われたりするのが慣れてないようで、気恥ずかしかったりするみたいですね。
何があったか知らないけれど、これまで一人で頑張ってきたんだろうなと思います。
助けを求めた時点で負けなんだとか、
これからも自分だけで生きていく上で人に甘えたらやっていけないとか思ったらそうやすやすと心を見せられませんよね。
海斗くんの背景はまだよくわかりませんが、そんな感じの子じゃないのかなーと思いました。
Re: なんだかみんな、いろいろとあるんだ
コメントきえ | URL | 2010-07-23-Fri 18:22 [編集]
甲斐様
こんにちは。

> 海斗くん、一段落してちょっと冷静になってみると、やっぱり人に頼ってしまったり構われたりするのが慣れてないようで、気恥ずかしかったりするみたいですね。
> 何があったか知らないけれど、これまで一人で頑張ってきたんだろうなと思います。

人物設定がきちんとできていないから悩ませるところもあるのだと思うのですが…。
海斗は人よりも機械(コンピューター)相手にすごしてきた人間なので、コミュニケーションをとるのが苦手なんです。
ズカズカ入りこまれるようなこともなかったと思え、ビクビクしているって感じでしょうか。

> 助けを求めた時点で負けなんだとか、
> これからも自分だけで生きていく上で人に甘えたらやっていけないとか思ったらそうやすやすと心を見せられませんよね。
> 海斗くんの背景はまだよくわかりませんが、そんな感じの子じゃないのかなーと思いました。

徐々に(今更?!)背景を書きこんでいこうと思います。
もうしばらくお待ちを…。
(ホント行き当たりばったりの作品ですみません…)
コメントありがとうございました。
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