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BLの丘
一番近いもの 10
2010-07-19-Mon  CATEGORY: 一番近いもの
アパートの階段を2人の警察官が上がってきた。
松島の顔が引き攣れば、鳥羽がニヤリと笑う。
何のことなのか訳が分からなく、海斗はすぐ隣に立つ鳥羽を見上げた。
「薬物…ってな、んの、こと…?」
「覚せい剤。あんたも事情聴取されることになるけど。大丈夫だから」
松島に脅されていた件は事件にまで発展していた。

二人の警官に付き添われ、階段を下りていった松島は、乗ってきた車の中から白い粉の入った袋を取り出され、そのまま現行犯逮捕となり、その日のうちに懲戒免職となった。
海斗も署に連れられ、話を聞かれたものの、鳥羽が言ったようにすぐに解放された。
ただ、あの卑猥な写真は警察の人間にこそ見られてしまったけれど、流出することなく抹消され、闇に葬られた。

だからといって海斗が納得しているわけがない。
何故鳥羽がそのことを知っていたのか、すぐに警察がやってきたのか、真実までもが闇の中だ。
警官に聞いてみたところで、『調査の結果』とか『個人情報』とかの言葉で誤魔化されるばかり。
海斗は自分の部屋に入るよりも早く、隣の部屋のチャイムを鳴らした。
警察が黙るならこの男に吐かせるしかない。
なんていったって自分自身のことなのだ。
「無事終わって良かったね」「うん、良かった」で終わりになどできない。

小さなテーブルを挟んで海斗が詰め寄れば、最初こそやはり口を閉ざしていたが、あまりのしつこさにとうとう肩をすくめた。
「私立探偵と警察に知り合いがいたっていうだけのこと」
ますます訳が分からなくなるばかりだ。
警察が薬物所持の事実を知っていたのであればとっくに逮捕されていていいはずだし、そんな内容を鳥羽などの人間に話すとも思えない。
ドンっと海斗の握った拳がテーブルを叩いた。
「助けてくれたのは嬉しいけれどっ!!自分が同じ立場だったら納得できる?!不思議だらけなのっ!!」
「そんな怖い顔して睨まないでよ。可愛い顔が台無しだよ」
「おまえに『可愛い』言われたくないっ」
しばらく鳥羽は考えていたようだが、諦めたように口を開いた。
「日曜日に引っ越しをしてきた時にさ、あの男、海斗の部屋の前にいたんだよ」
海斗は目を見開いた。
引っ越しをしてきた3人の人間に呼び鈴を鳴らされるまで誰もチャイムを鳴らすものはいなかった。
海斗自身夕方までぐったりとしていて外にも出ていない。
両隣りに引っ越しをしてきた人間がいるらしい、という外の状況を漠然と感じていただけだった。
「それも、ドアに耳を当てているような態度でいたから、当然不思議に思うじゃん。近所に不審人物が出入りするような住まいも安心できないでしょ。それで探偵が調べてくれて、身元が割れて一応犯罪履歴がないか知り合いの刑事に問い合わせしたんだよね。親戚ってこともあって内緒で教えてもらったんだけど」
そこで一度鳥羽は口を閉じた。
海斗は何も言葉を発せず、ただ事情を飲み込むことに必死だった。
「そしたらさ、何が出てきたと思う?…『強姦未遂』。実際未遂だったかどうかは最終的に相手が何もなかったって話していたらしいから疑問だけど」
聞いた犯罪名に海斗の表情が引き攣った。
ただ抱かれるだけともなれば、同意の上と見做される。
今回の海斗のように『恐喝』が絡んでくれば話は変わるだろうが…。
「そこに海斗の話だよ。相手が誰なのかはピンときたし、放っておける内容じゃなかったからちょっと手を入れた…ってだけ」
「ク、クスリは…?」
「偶然…って言うべきかな。探偵が調べていた時、ちょうど売買の現場を目撃しちゃったんだよね。物がなんだったのかは分からなかったけど写真が残っていてそれが警察の手に渡った…」

最初こそ、海斗を脅すネタを、逆に松島を揺す振るために利用しようと考えていたらしいが、事は意外な方向へ転がったようだ。
ほんの短期間のうちに起こった出来事は、自分が中心にいながら、蚊帳の外に出されて周りだけが動いていた気がする。

そこへ帰ってきた有馬が、鳥羽が海斗に話して聞かせてしまったことを知って、咎めるような表情を見せた。
やはり裏情報は明かすべきではないという考えなのだろうか。
「まぁいいじゃん。それよりご飯作ってよ。海斗の『生還祝い』やろっ」
鳥羽はすっかり『海斗』と親しみを込めて呼び捨てにしている。
年下に言われるのもなんだが、一つしか違わなければ友達感覚なのだろうか。

一度は食事を断ったものの、有馬にも「今日は疲れたでしょう。ゆっくりしていってください」と誘われれば、何故か妙に居心地の良さを感じている自分に気付いた。
こうやって親しくなっていく近所もいいかぁ…と内心で思った。
「お言葉に甘えて…」と縋ってしまえば笑顔が帰ってきて、昨日の恐怖が一夜で終わってくれたことに安堵した。
この二人には迷惑、かけっぱなしだな…。

有馬の部屋で正方形のテーブルを3人で囲って食事をしているところに、玄関のチャイムが鳴った。
二人は誰が来るのか分かっていたようだ。
ここに自分が居てしまって良いのか…と不安になる前で、立ち上がった有馬が玄関を開けると、日曜日に反対隣に引っ越しをしてきた花巻が立っていた。
鳥羽が座ったまま、元気な声をあげた。

「ようこそ。”探偵さん”」

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2,3日upできるかどうか…
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コメント

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一件落着?
コメント甲斐 | URL | 2010-07-19-Mon 10:45 [編集]
海斗くんがあれ以上に悲惨なことになる前に
助けてくれる人がいてよかったです。

ところで、今回の登場人物名も地名シリーズなんですね。
きえさんが地図片手にイメージにあう名前を探している図が目に浮かびました。
Re: 一件落着?
コメントきえ | URL | 2010-07-19-Mon 22:55 [編集]
甲斐様
こんばんは~。

> 海斗くんがあれ以上に悲惨なことになる前に
> 助けてくれる人がいてよかったです。

ここまでしてくれたのですから、海斗はお礼をしないといけませんね。
二人分ってなると海斗も大変でしょうか。
もちろん、忙しいお医者様の卵のお部屋のお掃除…とかですよ。

> ところで、今回の登場人物名も地名シリーズなんですね。
> きえさんが地図片手にイメージにあう名前を探している図が目に浮かびました。

いやーぁ、そんなことはないんですけどーぉ…(バレてる…)
イメージ?!
て、て、適当です…。(冷汗)
コメントありがとうございました。
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