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BLの丘
一番近いもの 9
2010-07-18-Sun  CATEGORY: 一番近いもの
たぶん、落ち着かせるためもあったのだと思う。
写真入りの学生証を海斗の前に差し出し、身分を証明して、とにかく海斗の安心を得たかったようだ。
打ち震える海斗は、温かな季節だというのに、与えられた毛布の中にくるまっていた。
鳥羽の部屋の小さなテーブルの前で、並んで座った有馬と鳥羽が顔を歪めながら海斗を気遣った。
「あんま、深入りしたことは聞かれても困るだろうけどさ。誰かに脅されているっていうなら、それなりの機関があること知ってる?」
「パワハラという状況なら尚更です。会社の信用問題に関わりますからね。泣き寝入りすることはないんですよ」
ほんのささいな発言から、二人はすでに状況を深読みをしたようで、『上司』という存在に気付いていた。
さすがに『精神科』という世界にいるせいか、海斗の性癖に嫌悪感の一つも表さなかった。
だからといって握られた弱みは、いつどこでばらまかれるか分かったものではない。
インターネットというものが普及した今、一歩間違えば世界中にその醜態は公開されるのだ…。

「そういうの、マジ許せねェ。呼び出して一回、ボコボコにしてぇやりてぇ気分」
「健太…」
犯罪に手を染めるのはどっちが先か…という雰囲気だった。
見ず知らずの人間に対して、そんな感情をもってくれる研修医に、嬉しさが沸き立った。
嫌でも顔を合わせなければいけない日は翌日で、夜が明けることに海斗は恐れをなしていた。
さすがにこの二人も機密情報が溢れるばかりのオフィスに入り込んでくることは無理だ。
海斗を守るためには休ませるしかなく、当然それは松島の反感を買うことになる。
「明日はまださ、言い訳できるだろ?とりあえず休んでみない?俺、部屋にいてやるから」
鳥羽の言葉に海斗は思いっきり瞠目した。
今日留守と分かって、未だに執拗に電話をかけてくる松島を思えば、明日、たとえその上の上司の許可を得て休みにしたとしても、間違いなくやってくる存在はある。
そこに、『連れ込んだ』と思うような男がいたと知られれば行く末は最悪の結果だ…。
「いやだ…。だめたよ、そんなの無理…」
「いいから、ちょっとまかせてよ。上京してきた親戚の子くらいに言っておけばいいからさ」
「健太、こういう悪知恵、ホントよく思いつくよね」
「人助けって言ってくれない?」
ニヤリと笑いあう年下が松島と同じくらい脅威な物に感じられた。
ただ、危険だけはないと思えるのは何故なのだろう。

自分の部屋に戻るのを嫌がった海斗を思ってなのか、鳥羽がベッドを開け渡してくれた。
「で、でも、そんな、…おまえ、どこで寝るの…?」
「蓮の部屋、あるし。俺、床でもどこでも寝られるから」
「忙しいからね。慣れるんだよ、仮眠みたいな生活」
研修医の状態がどんなものなのかは知らない。
でも、せっかくゆっくりとくつろげるスペースを奪ってしまったような申し訳なさはあった。

「ね、俺こそ、台所でもいいし。っていうか、部屋に戻ってもいいし…。ごめん、俺、すっげー我が儘言ってる…」
海斗が掠れるような声で詫びを入れれば、それこそ『帰したくない』というような二人の姿に戸惑う。
「頼むから安心するところにいてよ。これだけ散々鳴り続けている電話の音聞いたら、部屋に電気ついた途端に押し掛けてくるよ」
それは、『脅し』だったのだろうか…。
鳥羽の台詞に再び戦慄が走った。
バイブレーター機能にしたままの携帯電話はすでに電池がなくなりかけている。
着信は全て『松島愁』だった。
心の奥底にまで『見張られている』という張り詰めたものが確かにある。
少なくても二人きりで会う気はない…。
とはいえ、松島も日が昇れば、出社しなければいけない存在なのだろうし、海斗以上に睡眠時間の短かった昨夜を思えば今夜も夜更かしをするとは思えない。

海斗の不安を悟ったかのように、さりげなく鳥羽の手が海斗の癖のある髪を撫でた。
「悪には必ず成敗がくだされるんだよ」
いつの時代劇の話しかと思いながら、彼らの優しさに縋ってしまいたい甘えが生まれた。
何も知らなかった隣人はまだ多くの謎に包まれてはいるけれど、与えてくれるものには包容するような温かさを感じる。
昼頃から一度眠った身体のはずなのに、また睡魔に襲われた。
なんとなく、『守られている』という安堵のなかで。

気付けば携帯電話の電源は落とされていた。
鳴り響く音に嫌悪を示した二人組の仕業だったのか、単なる電池切れだったのか…。
隣の部屋で何やら会話する声が聞こえたが内容を把握できるほど大きな声ではない。
ただその声は一晩中続いていたようだ。

翌日、体調がすぐれないと部長に電話を入れ、休暇を貰えば、速攻で鳴りだす携帯電話があった。
無視し続けていれば、お昼すぎ、玄関の呼び鈴が鳴った。
学業はどうなっているのかと心配する海斗の横で、自然と過ごしていた鳥羽が玄関先を確認する。
安心感に包まれ、あげてしまったのは確かに自分なのだが…。
「なにか…?」
海斗が出るよりも早くに玄関扉を開けた鳥羽が、来客を出迎えた。
そこにいたのは松島だ…。

「かいちゃん、さっそく『浮気』みたいだね。まだ物足りないの?この覚悟、当然できているんでしょ?」
「あんたさー」
松島の発するわざと発する明るい声を遮るように、鳥羽の冷たい声が響いた。
ただでは済まない内容を感じて咄嗟に海斗は玄関へと向けてかけだした。
確実に仕事も生活も失うような気がした。

次の瞬間、鳥羽の素早い腕が松島の胸元をつかんだ。
「出せよ、脅しの証拠。隠し持ったって無理だぜ。あんたのヤバイことのほうが調べがついている。まさか薬物にまで手を出していたとはね。家宅捜査入るし、仕事も当然クビだ。これ以上海斗に手出しなんてできねぇよ」
「な、に…?」
驚きの声をあげたのは、海斗が先だったのか、松島だったのだろうか。

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コメント

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守ってあげたい
コメント甲斐 | URL | 2010-07-18-Sun 02:50 [編集]
なんだか、ただのおせっかいなお隣さんかと思いましたが
若いけど頼りになるいい子たちみたいですね。
そうです、悪は必ず滅ぶのです。
成敗しちゃってください。
Re: 守ってあげたい
コメントきえ | URL | 2010-07-18-Sun 09:58 [編集]
甲斐様
こちらにもどうもです。

> なんだか、ただのおせっかいなお隣さんかと思いましたが
> 若いけど頼りになるいい子たちみたいですね。
> そうです、悪は必ず滅ぶのです。
> 成敗しちゃってください。

またまた無理矢理こじつけている展開のお話です。
海斗なんかよりもずーと大人の性格ですね。
悪いことをした人にはお仕置き(天罰)が下されるのです。
コメントありがとうございました。
No title
コメントきえ | URL | 2010-07-18-Sun 10:01 [編集]
MO様
こんにちは。

>海斗君、頼りになるお隣さんがいて、良かったですね。このまま脅され続けてたら、薬にも染められてたかも?なんて。ハラハラドキドキの展開です。

とても親切な隣人が越してきましたね。
薬も打たれずに済んだし。
全てがタイミングよく進むお話です。
ハラハラドキドキするようなことを書いたかな~と、ちょっと思っていますけど。
あまり長くならないうちに完結に持ち込みたいです。
コメントありがとうございました。
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