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BLの丘
一番近いもの 7
2010-07-16-Fri  CATEGORY: 一番近いもの
「何かの事件に巻き込まれた、とか?」
有馬が心配げに海斗に問いかけたが答える気分になどなれない。
最初から『監禁された』とか『強姦された』と言っていれば印象も変わったのだろうか…。
そんな情けない人間に見られるのもどうかと思う話だが…。
「蓮、さっさと救急箱」
「はいはい」
黙る海斗を気遣うのか、鳥羽は深入りしようとはせず、有馬を促した。
男が住む家の中に、立派な救急箱があるとも思っていなかったが、意外にも出てきたのは様々な薬品や道具が詰め込まれた大きなケースだった。
そんなに頻繁に病気になったり怪我をしたりする連中にも見えない…。

「とりあえず、スーツだけ脱がない?袖、捲りたいし」
何かの傷薬やら包帯などをテーブルに出しながら鳥羽が海斗に上着を脱ぐよう言ってくる。
体格の良い二人を目の前にしてしまえば、逆らう気力も失った。
好き勝手に弄ばれた身体に、これ以上体力を消耗させるだけだと諦めの境地に陥る。
引っ越してきたばかりの二人の人間性も素性も分からないのに、大人しく言うことを聞いている自分が、やっぱり惨めに思えた。
なんとなく年下だろうと思った勝手な判断と、悪い人には見えない人懐っこさくらいは感じていたけど…。

海斗が言われるままに上着を脱げば、まず右手を引っ張った鳥羽が袖口を折り返してまくりあげた。
素早い動きは何かに慣れている雰囲気さえある。
「蓮、ちょっと腕、押さえていて」
事情を聞きたそうな様子を見せながらも、プライバシーの侵害だと思う部分もあるのだろうか。
有馬は海斗の背後に回ると、「ちょっとすみませんね」と海斗の腕を下から支えた。
差し出すような仕草に、鳥羽の手にあるガーゼに消毒液が出され手首に塗られれば、ひりつくような痛みが走って思わず引っ込めようとしてしまう。
「いっつぅ…っ!!」
逞しい有馬の腕に押さえられていたこともあったし、掌を鳥羽に引かれていたこともあって動くことはなかったが…。
「すぐ軟膏塗ってやるから。これだけ擦れているとちょっとした布が当たるだけでも痛いはずだよ」
そう言って塗りつけられる薬剤。
大げさに包帯まで巻かれてしまう。
昨夜とは違う用途に皮肉な感情が生まれた。
手首に巻かれる包帯など、もう見たくもなかった。

服従させられた悔しい過去を思い出して知らずに悔し涙が溢れてくる。
両手首の手当てを終えた鳥羽が、すでに悟ったように悲痛な面持ちを見せた。
「やっぱ、なんかあったんだろ?」
心配されたところで、痴態を写真に撮られて脅されているなんて答えたいことではない。
松島の底しれぬ恐ろしさを充分なほど味わった後だけに、人を信用する心まで失ってしまったようだ。
もともと海斗は誰かに気安く心を開いてしまうくせがあるといっていい。
もちろん、それがこの結末を生み出したと言っていいのだが…。
「べつに、なにも…」
なによりも、この二人のことを何も知らない。
逃げ出したい思いを抱え、ただ、手当をしてくれたことへの礼だけを伝えて、海斗は立ち上がった。
…はずなのに、黒いものが脳裏を襲ってぐらりとした。
「おいっ!ちょっと、あんたっ!!」
床に突っ伏してしまう前に、筋肉質な腕が海斗の身体を支えた。
いたぶられた身体は想像以上の疲労感を訴えていた。
ほんの些細な親切心に、張り詰めていたものが緩んだようでもある。

…死にたい…
意識を手放す寸前で、全てから解放される安らぎを求め、海斗は目の中に溜めていた涙を流した。

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どんな話なんだ?!もう私も分からなくなってきた…。
『一番近い』…のかどうなのか。
ご近所様はやっぱり絡んできます。
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