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BLの丘
策略はどこまでも 番外ヒサ編 11
2009-07-25-Sat  CATEGORY: 策略はどこまでも
久志がバスルームから出てくると、滝沢はベッドの4分の1ほどの隅のスペースに体を小さく丸めて横になっていた。物音を立てたのに起き上がる気配がないのを見ると、眠ってしまったのだろうか。
慣れない一日の研修とほどよいアルコールの巡りで一気に緊張が緩んだのだろうなとは思ったが、そんな格好ではゆっくり休むこともできないだろう、と久志は滝沢の眠る側に回った。
スースーと静かな寝息が聞こえてくる。

一瞬のためらいはあったものの、そっと滝沢の体の下に腕を入れ、体勢を仰向けに変えると、手足を伸ばしてやった。那智よりも筋肉がついて重い体だったが、久志からすれば一回り以上も小さい。無意識に体が弛緩したことを悟ったのか、滝沢からは幼子がもらすような大きな吐息が漏れた。

シャワーを浴びたことですっかり酔いの冷めてしまった久志は、冷蔵庫を開けて缶ビールを取り出した。入浴後の乾いた体に冷たい液体が染み込んでいくのがわかった。そのまま窓側の丸テーブルの前に腰を下ろすと、横で眠りにつく滝沢の姿が良く見える。
入社一年目だと聞いていたから、22、3歳だろうか。那智も童顔なので久志と同い年には到底見えない顔つきだったが、それと比べてもまだいとけなさを纏っている。物流の部長が心配をして自分に託してきたのが分かる気がした。

時計を見るとまだ22時を回ったばかりだった。
部屋のライトの光量を落として薄暗くしてから、テレビを見るともなく視線を送っていると、3本目のビールが終わりそうな頃に滝沢がモゾモゾと動き出した。そして何かに取りつかれたかのように、フッと目を開けるとしばし天井を見ていて…それからパッと久志に視線を投げてきた。
滝沢のモゾモゾした行動から、缶ビールを片手にもう一つのチェアに足を伸ばしていた恰好のまま、すべての動きを止めて見入っていた久志と視線が合うと、勢いに任せて飛び起きる。ベッドの上に正座した姿で頭をうなだれた。

「す、すみませんっ、俺寝ちゃって…」
後悔にも似た表情を浮かべる滝沢に、久志は一瞬呆けてしまった。眠ってしまったことを謝られるとは思わなかった。
「いや、俺こそ起しちゃってごめん。テレビ、うるさかったろ」
テーブルの上に置いてあったリモコンを手にしようとするのを、慌てて滝沢が制する。
「いいです、いいです、全然。大丈夫です。……また飲んでたんですか?」

今になってようやくテーブルの上に缶ビールが2本置いてあることに気づいた滝沢は不思議そうに尋ねてきた。しかも久志の手の中には飲みかけと思われるもう一本のビールが握られている。
「まぁ、ちょっと…。おまえも何か飲む?」
別段気にした様子もなく答えた久志は寝起きの滝沢がすぐには横にならないだろうなと思って聞いてみた。寝起きとはいえ、その口調はかなりしっかりしている。
スッと立ち上がった久志が冷蔵庫の扉を開けるのを視線で追っていた滝沢は、「じゃあお水を」と頼んだ。

ミネラルウォーターのペットボトルを持って戻ってきた久志からベッドの上に座ったまま受け取る。キャップを外し、水を飲むと体が潤っていくのが感じられホッと息がこぼれた。
そっと時計に視線を流すと12時になる少し前だった。久志がバスルームから出てくるのを記憶していないということはその頃から眠ってしまったのだろう。寝顔を見られていたのかと思うと妙にこっ恥ずかしかった。

更に4本目のビールを取り出してきた久志には驚かされる。
「え、まだ?」
「どうせすぐ寝ないんだろ」

先ほどと同じようにシングルチェアに腰を下ろし、もう一つのチェアをオットマン代りに使っているのを見ると、滝沢はベッドから降りられないことを知った。座るところがないのだ。
相変わらず久志は自己中心的というか、マイペースというか、あまり周りを気にした様子もなく、それが返って滝沢には安堵をもたらすものであったのだが…。

「高柳さんって普段からそんなに飲んでるんですか?」
先ほど居酒屋に寄ってしたたかに呷った上、さらに部屋で4本目となれば驚かれるのも無理はないだろう。久志はどう答えようかと言い悩んだが、いつまでたっても酔いがまわらず眠くもならないという本音はなんとなく言えなかった。このような状況下ではたぶん酔って眠りに就きたかったのだと思う。
「まさか。今日はなんとなく。風呂入ったらすっかり冷めちゃってさ。居酒屋で飲んだ分がみんなリセットされちゃったみたい」
「やっぱり強いんですね…」
感心した…というよりは呆れた感がうかがえる物言いで、久志は苦笑するだけだった。

この部屋に入ってきたばかりの時とは違って、落ち着いた、というか、心を許した雰囲気の、いつもと変わらない口調に戻っていることに気付くと、久志も少し安心する。さすがにこの1本を飲み終わったら眠ろうと思ったが、目の冴えている滝沢の隣に入り込むのもなぁ…とためらいは生まれる。

久志は高校が男子校だったのと、大学でアメフト部だったのとで、男に囲まれている生活には慣れていた。修学旅行や合宿といった時には当然だが一緒に寝るのは男だったわけだし、正直、那智を気に掛けるまで、これまでの状況に違和感すら抱いたことがなかった。
現に大学時代、友人宅に集まり飲み会を開いて雑魚寝をしたって、くっついている男を何とも思わず自然な姿と受け止めていたくらいだ。まるで幼稚園生がお昼寝をするのと同じく…。
一変したのは那智を特別と思い始めたあたりからだ。何がそのきっかけになったのかは今となっては定かではないが、気がついた時には自分の目は常に那智を追っていた。
同時に自分の性交対象が男にも向けられていることを知った。体を繋ぐだけの行為は、久志にとっては『簡単』なことだったのだ。「恋愛対象」と付けられないのは、いつだって心を奪われた恋なんてしたことがなかったから。

那智という存在を知ってしまった今、これまでとは全く違った意味で、滝沢と「並んで眠る」ということだけなのに戸惑いが生まれる。
それに気付いているからこそ、何となく酒を呷ってしまうのだった。

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酒なんか飲んでいるときじゃないよ、ひさぁ…
滝沢くんと一緒のベッドだったことは、私は黙っててあげるけどさぁ…
ばれるのは時間の問題だからね (…なちに?会社に?)
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コメント

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今日は2話一挙公開♪
コメントメグミ | URL | 2009-07-25-Sat 13:38 [編集]
こんにちわ☆

今日は2話ですねv-10
飲みすぎて・・・ひさはなんかやらかさないか心配しつつ

番外ヒサ編12を見に行ってきます
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