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BLの丘
策略はどこまでも 番外ヒサ編 10
2009-07-24-Fri  CATEGORY: 策略はどこまでも
「ダブルベッドルームぅ!?」

ホテルのフロントマンが告げた内容が、自分の予想していたものと違ったので久志は眼を見開いた。
そんな久志の驚愕する感情など気にした様子もなく、淡々とホテルマンは繰り返した。
「はい。ご予約いただておりますお部屋がダブルベッドルームのお一部屋となっておりました。ご用意はできておりますのですぐにご案内はできます」

「え、ちょっと、ちょっと待って。シングル二部屋じゃないの?」
自分で予約を入れた久志は慌てた。この期に及んで滝沢と一つのベッドはまずいだろう。

フロントマンは声色を変えることもなかった。
「いえ。インターネットからのご予約でしたので、こちらからご確認のメールが届いたかと思います。送信後の変更は何もされておりませんでした」
確かにメールは届いた…と思った。会社のパソコンで予約を入れ、予約したことに対する返信が来たことは知っていたが、予約が取れたということだけを確認して、内容などほとんど読まずにごみ箱に捨てた気がする。今となっては確かめようがない。
きちんと確認をしなかった自分を呪った。

「これって今から変更できませんか?」
久志が切羽詰まった様子で尋ねると、フロントマンは僅かに頭を下げた。
「申し訳ございませんが、本日は満室となっておりまして、他のお部屋をご用意することができません。それと当ホテルの規定で現時刻での変更はキャンセル料がかかりまして、こちらが100%のお支払いとなります」
告げられた内容はあまりにもシビアだった。少しでも早く休みたいと思っていたのに、ここに来てトラブルが待っているとは思ってもいなかった。しかも自分のミスで…である。

満室の原因がいたるところで見られたスーツ姿の男たちだとすぐに感づいた。仮にここをキャンセルしたとして、他のホテルで部屋を探せるかの確証はない。
どう返事をしようか云い淀んでいると、フロントマンは物腰の柔らかい態度で提案を出してきた。
「ダブルベッドと申しましても、当ホテルでは大きめのサイズを入れておりますので、男性お二人でも十分にお使いいただけるかと思います。もし宜しければ先にお部屋をご覧になりますか?」
「あー、あの。それより、満室って…。今日何かあったんですか?」
この原因が分かれば、他で部屋を探すことができるかもしれないと、久志は咄嗟に思った。
「隣市のドームで世界の工業技術に関する展示会がございました。主催者側の発表では50万人の来場者と言っておりましたので、この近辺の宿泊施設はどちらもほぼ一杯かと思われます」

久志の聞きたいことを汲み取ったフロントマンの答え方は的を得ていて非常に分かり易かったが、その答えを聞けば、久志の微かにも芽生えていた希望の灯が消えるのはあっという間だった。
「いいです。もうその部屋で。鍵、ください」
「かしこまりました。少々お待ちください」
寝るところがほぼ確実に探し当てられないと踏んだ久志は即答した。
フロントマンが目の前にあるパソコンに視線を落とし、何かと操作を始めるのを見ながら、ため息をひとつついた。それから隣にいた滝沢に小さな声で「ごめんな」と声をかけると、状況をきいていた滝沢は首を横に振った。ただ付いてきただけの自分に久志を責められるはずがない。

「お待たせいたしました。こちらが鍵になります」
それから部屋の説明と翌日の朝食の案内を受けて、久志と滝沢は記載された部屋へと向かった。
部屋に着くと、確かにフロントマンの言ったように、キングサイズのベッドが部屋の中央に位置していた。窓側にはシングルチェアが2脚と丸テーブルが備えてある。壁側に建てつけられたデスクや薄型テレビを見れば、どこにでもあるビジネスホテルだったが、ベッドの大きさが何時ぞや入ったラブホテルと重なって、妙に居心地の悪い気分にさせられた。

「なんだか悪かったなー、こんなことになっちゃって」
「いえ…」
部屋に入るなり荷物をデスクに置くと、そのまま入口側にあるベッドサイドに腰を下ろしながら久志は謝罪の言葉を述べた。
滝沢はどうしたら良いものかとオロオロしている。久志はフッと息を漏らすと、極力緊張をほどかせるように普段と変わらない口調で口角をあげた。
「いーから、座れよ。安心しろ、採って食いやしないから」
滝沢は散々悩んだ挙句に、奥の窓側に置かれたシングルチェアに腰を下ろすことにした。
「気ィ楽にして。そんなに神経張り詰められたら困るんだけど、俺も」

久志が困惑気味の表情を浮かべれば、少しうろたえたように笑顔を張り付けた。普段仕事で話をしている時のほうがずっと気楽に接することができていた気がする。先ほどの居酒屋でもこんなにガチガチになってはいなかった。

「疲れただろ。先に風呂使えよ」
声をかけられて、滝沢は咄嗟に首を強く振る。いくらなんでもここでハイと素直には頷けなかった。
「いいえ、高柳さんこそ、先に使ってください」
「いいから使って。少しは俺の顔、立てさせてよ」
そこまで言われてしまえば返す言葉もない。滝沢はそそくさと身支度をすると、狭いユニットバスに身を滑らせた。

滝沢が視界からいなくなると、久志も幾分の緊張があったことを感じた。フーっと思わず大きなため息が出てしまう。それにしても滝沢には悪いことをしてしまったなー。なぜきちんと内容の確認をしなかったのかと後悔したが後の祭りだ。
反対に、近くでコンベンションが行われるということは随分前から決まっていただろうに。偶然にしてもよくこの部屋が空いていたものだ。どうせならどこもすべて満室で予約が取れなかった方が良かったのではないだろうか。いろいろ浮かんだがどれをとっても今更何の解決にもならず、久志は早々に考えることをやめた。

上着をクローゼットにかけ、ベッドの半分に寝転がりくつろいでテレビを見ていると、やがて体を流し終わった滝沢が上気した顔で出てきた。
「お先にすいません」
少し大きめのTシャツに膝丈までのパンツ。初めて見るくつろげた格好は、普段にも増して幼さが見えた。
先ほどまで見ていた姿がスーツ姿だったから余計に雰囲気が変わってみえたのだろう。

ベッドの上ですっかり気を緩めていた姿に、滝沢もバスルームに入る前とは違った空気を感じたようだ。
それは久志が醸し出す特有の雰囲気であるのだとは気付くことなどなかったが。
頷いて返事をした久志も、ヨッと腰を上げるとバスルームへと向かった。自分がいない間に滝沢の緊張も解ければいいなと思いながら…。

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コメント

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きゃ~♪
コメントメグミ | URL | 2009-07-24-Fri 13:11 [編集]
お邪魔してます☆

何か怪しい雲行きですね~
滝沢の雰囲気からすると・・・
ヒサに気がある?

このことが那智に知れたら・・・v-12
Re: きゃ~♪
コメントきえ | URL | 2009-07-24-Fri 17:31 [編集]
メグミ様
こんにちは。ご来店ありがとうございます。

>何か怪しい雲行きですね~
アヤシイですねぇ…
那智との関係が思うように進んでいないヒサにとって、一つのベッドの上って危険な香りしかしませんね。
過去に喰い散らかした数がどれくらいあったかは、私も知りませんが(?)、差し出された体の数は数えきれません。

> 滝沢の雰囲気からすると・・・
> ヒサに気がある?
どうでしょうか。
まぁ、見た目だけでヒサに惹かれる人はいっぱいいると思います。
基本的にヒサは今後関わり合いを持たなくて済む相手しか手を出しませんけどね。
その辺は考えているらしいです。(なんでも喰ってそうなのに…)


> このことが那智に知れたら・・・v-12
どうするんですかねぇ。
言い訳するんですかねぇ。開き直るんですかねぇ。
これまでの経験もあるので、多少のことでは那智も動揺しませんが、ますます溝は深まりそうですね。
いい方向に進展すればいいのですが…。


コメントいただきありがとうございました。
またぜひ遊びにいらっしゃってください。
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