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BLの丘
ちょうどいいサイズ 47
2010-05-24-Mon  CATEGORY: ちょうどいい
レクチャーしてくれる人間…と単純に思ったところで、そんな人間が身の周りにいるわけがない。
安住と自分の関係を知り、一葉の中でとてもはずかしいことを口にできる人間…など限られている。
さらに一葉の性格をよーく、知っている人物。

那智しかいなかった…。
ただ一度、際どい会話を断られているだけに、相談に乗ってくれるかはかなり疑問である。

一葉はすっかり悩まされて眠りに落ちるのも遅かった。
翌朝、いつもであれば一葉の部屋に足など踏み入れない安住が、「一葉ちゃん」と優しく揺り起してくれる振動で目覚めた。
リビングで出会った時の行動が早まったように、額にキスが落された。
昨夜の濃厚な色香はなく、爽やかな朝がやってきた。

脳裏が働くようになれば、『篠原画廊』に勤める初出勤の日なのだと咄嗟に頭を巡っていく。
安住がすぐ近くにいたのもおどろいたが、かけたはずの目覚まし時計が止まっていたことにはもっと驚いた。
「うそぉぉぉぉぉぉっ!?」
激しく焦る一葉に、「まだ大丈夫だよ」と静かな安住の声が宥めてきた。
一葉にとって、安住は最終的な『目覚まし時計』になりそうだ。
確実に委ねられる立場なら間違いなく甘えてしまいそうである。
ただ、まだそこまで辿り着いていない存在なのだと知るから、焦りや戸惑いが生じていた。
映画やドラマの世界のような『落ち着いた朝』はかなり遠い世界である。

これまで一人暮らしの一葉だったらドタバタと過ごしそうな朝が、安住が全てを整えてくれていることで充分なほど余裕ができる。
顔を洗い身支度を整えれば同時に朝食はすぐに食べられたし、出勤前の最終確認を行っていると、乱れた箇所を安住の手が整えてくれる。
ビシッとスーツを決め込んだ安住はいつもの惚れぼれする”お仕事スタイル”だった。
久し振りにスーツなんて着た一葉は、あまりの差に気落ちすらした。
仕立てられる生地の良さは当然雲泥の差があったが、なんだろうか…。
安物のスーツは、七五三で押し着せられた子供のような感覚がした。
たとえ、何十年かかっても安住のような貫禄は持てないだろう…。

安住は何かを思ったようだが、一葉の格好については特に口にしなかった。
「今日は僕も篠原さんにお話があるから一緒に行こうね」
安住はなんてこともないように呟いていたが、全てが昨日の中條との会話に直結するのだと思えば心中は穏やかでなかった。
安住は何と篠原に話をするのだろうか…。

安住の車に乗せられて二人で向かった『篠原画廊』。
勤務時間は9時から18時までという、一般の事務員と変わらなかった。
営業の時から比べればお給料も格段に下がってはいたが、何もせずに安住の家にいるよりはいいように感じた。

面接を受けた時と同じように、画廊の端に作られた窓際の喫茶ルームに安住と一葉は通された。
時間は早かったし、当然まだお客さんなどいない。
以前と変わらない篠原オーナーの穏やかな笑みが二人を迎えてくれる。
目の前に出されたのは紅茶だった。
「さすがに享利くんが来たのにコーヒーは出せないよね」
悪戯に笑った篠原オーナーは、口に合わなかったらごめんね、と柔らかな表情を浮かべた。
「いえ。どんな飲み物にも心が籠っていると美味しく感じるんです。商売とはまた別の”想いやり”なんですよ」
安住の答えに、一葉もその精神を受け継ぎたかった。
どんなところで働くにしても、一人のお客様に誠心誠意を尽くしたい…と、心から思う。

僅かな沈黙の間に、安住は手にしていた菓子折りを篠原の前に差し出した。
いつの間に用意したのかは分からないし、本来ならば自分が用意すべきものなのだとすぐに判断がついても今となっては後のまつりといっていい。
声を上げそうになった一葉を無言の目でとめられた。
「一葉ちゃんを見込んでくださったことは僕としてもとても嬉しいと思っています」
「あぁ、本当だよ。少し話をしただけでも、人当たりは良いし、接客にも慣れている。しかも享利くん直伝の手腕まで持つんだろう?もう、うちとしては願ったりだよ。昨日もね、常連さんたちに『新しい子はいつ入ってくるのか』って騒がれちゃってぇ…」
画廊というより、喫茶ルームとして活躍する場とは篠原オーナーも承知済みのようだ。
「お誘いいただくようなお話についてですが…」
穏やかだった雰囲気を翻すような、安住の少し冷たい口調が喫茶ルームに響いた。

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大変お待たせしております、一葉っち。
『えちカプ』なんていうものを始めてしまったせいで余計に進みが遅くなり本当にすみません。
こっちはいつになったらえちにたどりつくのやら…。
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