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BLの丘
みこっちゃん、嫉妬をする編 4
2010-05-17-Mon  CATEGORY: 吐息
またからかわれるネタが増えた…と内心で溜め息がこぼれた。
「野崎の名前だ。野崎が他人にはまず呼ばせないから聞いたこともなかったか」
初めて出会った時に名刺を渡してあるのだが、以前に自分が引き起こした”揉め事”の際に処分されていてもおかしくなかった。
それに英人は美琴よりも千城の存在に圧倒していたのだからたいして見てもいなかったはずだ。

目を見開いた英人が美琴を見返してきた。
瑛佑が人前でもファーストネームで呼ぶために、人の反応には随分と慣れたものがある。
しかし改めて伝えられるのは意外性で驚かれると知るだけに抵抗が生まれた。
「そうなんだ~。野崎さんの名前なんて気にしたこともなかったけど、そんなに可愛い名前ならみんなに呼んで貰えばいいのに」
無邪気な声音に瑛佑は笑いを浮かべていたが、美琴は目を吊り上げたいのを我慢していた。
「滅多に呼ばせないから特別扱いをされているようで優越感が持てるというものだろう」
千城が口にすればどんな言葉にも棘があるようにしか聞こえない…。

「私たちの話題はもう結構です。そんなことより、電話の電源を落とされるのはおやめになってください。緊急時に困ります」
「そうやってグダグダと言ってくる人間がいるからだろう。会議の件なら広重に処理させてある。今日は何の問題も生じない」
仕事などやる気のなさそうな発言に頭を抱えたくなった。
確かに美琴も重要な件がないことを承知しているからこうして甘えて『有給休暇』など使いこんでいたのだから文句も言えないのだが…。
美琴と千城が向かい合ってあーだこーだと言い始めてしまえば、間を持て余してしまった英人がやはり黙ったままの瑛佑に視線を送った。
「仕事の話が始まると長くなっちゃうから…」
英人も今日、急に千城が休みになったには理由があると気を使ったのだろうと、理解はできても穏やかでなくなったのは美琴のほうだった。
ヤギのえさを持った瑛佑を促して、くるりと柵の方へと体の向きを変える。
「あれ、子ヤギもいるんだ~」と瑛佑もさり気なく美琴の傍を離れた。
仕事の話にまで首を突っ込む気はないと言いたそうだし、何より英人が千城を放っておくので、ただの上司と部下にしかならず、いらぬ心配は持たなくていいと判断したようだ。

ヤギにえさなどやる気のなかった美琴は当然何も手にしていない。
それにこんな場所で千城と口論を続ける気もない。
瑛佑と英人の行方に視線を向けてしまった美琴に、千城が顎に手を当てて感心した声を上げた。
「へぇ…。野崎でもそんな顔をするようになったんだな」
『そんな顔』と言われても特に表情を変えたつもりはなかったが、些細な変化すら見逃さないのが千城である。
瑛佑に気を向けてしまったことを、心の中で舌打ちをしながら、平然を保とうとした。
「変わりませんよ」
「英人なんかでは気付かないが嫉妬心丸出しだそ。まぁあの男も鋭い人間のようだからすぐに見極めるだろう。もっともそんな人間でなければ野崎の相手など務まりそうにないが」
「余計なお世話です」
「不貞腐れていないで一緒に『えさやり』でもしてくればいいだろう。嫌ならそこで一人突っ立って見学でもしていろ」
そう言って千城はさっさと英人の隣に戻ってしまった。
全てからの視線が離れたことで盛大な溜め息が美琴を襲ってくる。
何もかもがバレたとしても、素直な感情を人に見せる勇気はまだない美琴だった。特に千城には。

一人になったことに気付いた瑛佑が立ち尽くしている美琴を呼んだ。
心の底から楽しんでいる笑顔を見てしまえば、「早く帰ろう」と言い出すことも出来ず、どうせ全ての人間の性格もかわし方も身につけてしまっている自分が適当にあしらえばいいだけのことだ、と開き直った。
千城も美琴の性格は充分に把握している。

瑛佑が残っていたえさの半分を美琴の手に握らせた。
平日の昼間に、社長と秘書が動物園でヤギのえさやり体験をしていた…などと社員の耳には絶対に入れたくないことをできるようになったのも瑛佑の影響か…。
そんな時間がひどく平和に思える。
「さっき、俺が英人さんにくっついて行っちゃった時嫉妬してたでしょ。美琴さんの目が変わったからすぐ分かった。嬉しいね、こういうの」
耳元で囁かれた声は、園児のざわめきも手伝ってあの二人には聞こえていないだろうが、公衆の面前で耳に息を吹きかけられるような近さと瑛佑にまで見られていたことで羞恥心が沸き上がる。
瑛佑が故意的にとった行動だとも理解した。
「今日はさ、早く帰ろ。俺の愛の深さをまたじっくりと教えてあげるから」
続けられた台詞に2、3発ぶったたいてやろうかと頭を過った。
かろうじて押さえられたのは様々な視線が自分たちを見ていたからである。

帰り際、千城にこの後の予定に誘われたのだが、瑛佑が毅然と断っていた。
千城からは「明日も有給にしてあるから心配するな」と返ってきて、美琴は今度こそはっきりと顔を引き攣らせた。
先の先まで読み越すこの男も、天然無垢な人間に作り変えられてしまった"人形"も、二人ワンセットで一番の脅威であると改めて知った平日。
信じるのは瑛佑の心ばかり。

―完―

だらだらと続いたのに、お付き合いくださいましてありがとうございました~。

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コメント

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優越感
コメント甲斐 | URL | 2010-05-17-Mon 22:26 [編集]
『平日の昼間に、社長と秘書が動物園でヤギのえさやり体験をしていた』
これはもう、新規事業の研究ってことでどうでしょう。

今夜もみこっちゃん、たーっぷり可愛がられちゃうんでしょうね。
明日もお休みなんだから・・・。
Re: 優越感
コメントきえ | URL | 2010-05-18-Tue 07:10 [編集]
甲斐様
おはようございます。

> 『平日の昼間に、社長と秘書が動物園でヤギのえさやり体験をしていた』
> これはもう、新規事業の研究ってことでどうでしょう。

研究…。
そうですよね、物事は自分の目で見て確かめないと…。
(建設会社に動物園の新規事業?!……)

> 今夜もみこっちゃん、たーっぷり可愛がられちゃうんでしょうね。
> 明日もお休みなんだから・・・。

瑛佑が、「みこっちゃんは体力がない」と言っちゃったものだから、千城は「そんなか弱い社員では困る」と"特訓休暇"ですかね。
え?あ、もちろん、お仕事に支障が出ないように…ですよ。
コメントありがとうございました。
コメントきえ | URL | 2010-05-18-Tue 12:31 [編集]
MO様
こんにちは。

>楽しいお話を、ありがとうございました。先の先を見越す鋭い千城と、それを悟られたくない野崎の攻防が、愉快ですね♪ 野崎のプライベートも充実して、会社の発展は益々期待できそうですよね。千城は瑛佑を気に入ったようですし、これからも この4人に登場して欲しいです。 

お互いを知りつくした、ある種、どこの夫婦よりも物分かりの良い千城と野崎です。
千城にしてみたら"カタブツ"だった時の野崎よりも数段可愛がりがい(からかいがい)が出てきました。
以前瑛佑も言っていましたが、『どうせ社長にはバレているんだから開き直ればいいのに』の、野崎にゆっくり近づいていく模様です。
でもやっぱり千城に弱みを握られるのは喜ばしくないみこっちゃんでした。
千城ははっきり物を言う人間が好みのようですね。日野とか神戸みたいに。
コメントありがとうございました。
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