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BLの丘
ちょうどいいサイズ 41
2010-05-12-Wed  CATEGORY: ちょうどいい
悶々と悩み続けている一葉に気付いているはずなのに、何も言ってこない、何もしてこないというのは、やはり興味の対象外になってしまったのだろうか。
日に日に一葉の不安は増していくばかりだった。
一向に変化の見られない安住の態度。
ただ朝と夜に繰り返される”挨拶”のキスだけがかろうじて一葉に勇気を持たせている。

「よろしくお願いします」
窓側に配置された喫茶スペースで、向かい合いに座った初老の男性に、一葉は頭を下げた。
物腰の柔らかな人だ。
落ち着いた口調で静かに話を進めてくる。
年齢が醸し出す雰囲気は親しみやすく、一葉もあまり緊張せずに過ごすことができた。
花園のおばあちゃんの知り合いだという『篠原画廊』。
ちょうど受付や雑用をこなしていた女性が辞めてしまったから、と一葉に紹介してくれた。
これまで幾つかの面接を受けても良い返事が貰えなかった一葉にとっては、棚からぼたもちのような話だった。
絵や作家のことなど全く知りはしなかったが、簡単な接客ができれば良いということで安心した。
安住のことを、オーナーであるこの篠原も知っているようで、世間話をするような”面接”は順調に進んだ。
安住の名を借りて信頼をおいてもらうというのも少々情けない話だが、安住の顔に泥を塗らないように頑張ろうと意を新たにすることができた。
「こちらこそ、宜しく頼むよ」
にっこりと微笑まれて、最近沈みがちだった気分が少し浮上したようだった。

家に帰ると、安住は来客中だった。
すぐにでも仕事が決まったことを知らせたかったのだが、応接室に飛び込んでいくわけにもいかない。
玄関を入った先にもソファセットはあったが、重要な話をする時は必ず奥の応接室を使っていた。
今まではここで話をすることもあったようだが、一葉と暮らし始めてからは細部にまでこだわっている。

自分で飲むためのコーヒーでも淹れようとカウンターに回ったところで、ちょうど応接室の扉が開いた。
客が帰るのかと思えば、出てきたのは安住だけで、一葉がいることに少し驚いたようだったが、「おかえり」といつもの笑顔を向けてくれる。
「ちょうど良かった。僕たちの分も淹れてくれるかな」
「え、でも、俺のじゃ…」
客は安住の淹れる味に慣れている。
滅相もないと首を振れば、「一葉ちゃんだって美味しく淹れられるじゃない」と促された。
「あー、是非頼むよ」
応接室の中から野太い声が聞こえてきて一葉は何事かと思った。
安住の表情が困ったものを聞かれた、と言うように苦笑に変わる。
ドアのところに立ったままの安住を押しのけるように男が現れた。
安住と変わらない、いや、もっと逞しく見える体格の良い男は興味津々といった感じで一葉を凝視してきた。
たぶん、年齢も安住と同じくらいだろう。
大人の貫禄が漂っている。

「享利ちゃんよー、これは『犯罪』っていうんじゃないのか?こんな若い子を連れ込んでいるなんてさー」
客というよりは親しい友人といった印象だ。
安住が親しく話す人間は中條以外を見たことがなかったから驚きはあったが、安住だって付き合いは広い方だろう。
「『連れ込む』…って、あのね…」
「幾つ?学生?…ってことはないか。中條が言ってたよりもずっと健気な感じ。君、こんなオヤジの言うことにコロコロって騙されているんじゃないの?口は上手い奴だから注意したほうがいいよ。それともなに?もう手遅れ?」
中條の名前が出てくればやはり親しい人間なのかと頭を巡った。
口は悪いが安住と一葉をからかっているのが良く分かる。
中條といい、この男といい、どうも安住の回りにははっきりと物事を口にする人間が多いようだ。
「佐貫(さぬき)…」
一葉の前では聞かせたくない話のようで、安住があからさまに戸惑っていた。

「もう話は済んだんだから、あっちで二人の馴れ初めでも聞かせろよ。コーヒーが結んだ縁デスカ?享利の愛弟子の淹れてくれるものを是非とも頂きたいね」
安住の脇を通り抜けた佐貫という男は、慣れたように一葉を正面に見られるようにソファに腰を下ろした。
いきなり”審査”されることに、今日の面接よりも緊張感が走った一葉だった。

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またへんなのが出できた…。
でも一葉、お仕事決まって問題がひとつ解決ですかね。
安住は悲しむのか喜ぶのか…。
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コメント

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コメントきえ | URL | 2010-05-13-Thu 09:18 [編集]
K様
おはようございます。

>あらら~ またまた 登場の新キャラさん。二人の後押ししてくれるといいな。一葉ちゃん 再就職先決定おめでとう!でも これで 安住さんのところに住む理由も無くなるわけで… どうする 安住さん?

画廊でもお手伝いさん程度の働きしかないので、そんなに立派な収入にはなりませんし、たぶん安住がまた引っ越し、なんてさせないと思います。
だから同居は続きますが…。
このアヤシイお兄さん(おじさん)、何者なんだか…。
コメントありがとうございました。
佐貫さん
コメントちー | URL | 2014-01-13-Mon 19:02 [編集]
そうか、ここに出てきたんだっけね。
これを読んでた時は、まさか佐貫さんと成くんの話を何回も読むようになるなんて思わなかった(笑)

つか、このお話も読み返したはずなんだけどねぇ。

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