FC2ブログ
ご訪問いただきありがとうございます。大人の女性向け、オリジナルのBL小説を書いています。興味のない方、18歳未満の方はご遠慮ください。
BLの丘
現実の吐息 8
2010-05-13-Thu  CATEGORY: 吐息
「社長、すみません…」
月曜日の朝、気を失ったまま眠りについた美琴の携帯電話から勝手に通話ボタンを押した瑛佑は、出た相手に謝罪した。
美琴を起こす気にはなれなかった。
昼から始まった行為はこれまでのあいた時間を埋めるかのようにダラダラと夜中まで続いて、結局美琴は意識を飛ばした。
少しの罪悪感を感じながらも、煽ったのは美琴だと責任転嫁したい気分だった。

何と理由をつけようかと悩みつつ、一言発しただけで相手は全てを理解したようだ。
『裸で寝て風邪でも引いたか?体調不良の社員に鞭打つほど非情な会社ではないんでね。滅多に有給休暇など申請しない野崎が自ら消化してくれれば他の社員にも示しがつくからちょうどいい。今週は急ぐ話もないからあと2、3日なら寝込ませて平気だぞ。水谷さんには『介護休暇』ってことで俺から話をしてやる』
この事態に喜んでいいのか、冷汗をかいたらいいのか…。
しかもあと2、3日も寝込ませていいって…。故意的な結果なのだとしっかりばれているし。
自分と一つ違いの年下と聞いていたが、この落ち着きぶりはなんだ?!貫禄か!?経験か?!
風邪だなんて絶対に思っていない発言に返す言葉も見当たらなかった。
勝手に有給扱いにされるのもどうかと思うが、水谷に出される『介護休暇』もワケアリだろ…。
隠し事などできない相手なのだと、直感が働いた。

『野崎さん、体調悪いの…?』
受話器越しの、すぐ近くで聞こえる甘えたような声音に眠さが混じっているのが感じられた。
早朝(とはいえないが)にかけた電話に起こされたと言った感じだった。
『英人は心配しなくていい。若いのが相手だと色々と大変なんだ』
『もう…っ(////)』
『3日ほど休みができた。どこかに出掛けようか』

こちらの意見など全く無視した会話と明らかに分かるくちづけの音が聞こえてきて、思わず通話ボタンを切った。
社長が休みなら、当然『秘書』も休みだろう。
勝手に判断した瑛佑に、数時間後、雷が落ちてきたのは言うまでもなかった…。

「なんで起こしてくれないんですかっ」
「社長の許可はもらったし…」
「ふざけたことを言っていないでくださいっ!!月曜日は会議だってあるんですっ。社員の徴集までしてあるのに、ドタキャンなんて誰も納得しないでしょっ」
時計を見ればすでに会議など終わる時間になっているらしい…。
美琴の会社のことについてはあれこれ言える立場でもないので黙っていれば、裸のまま布団にくるまってベッドの上で何度も携帯電話を耳にあてる美琴の姿があった。
「肝心の社長はどこに消えたんですかっ?!電話は繋がらないしっっ!!」
「あー、…、…。ん。なんだか、どこかにでかけるって…。可愛い声と相談してた…。…ねぇ、俺たちも出掛けない?平日ならすいているよ」
もうこの際、『今日のスケジュール』なんてどうでもいいじゃないか、と開き直った。
無言で睨まれはするのだが、明るい中で見る白い肌に昨夜の姿が思い出され、こんな時なのに自然と頬が緩んでしまう。
「美琴さ~ん♪」
怒った子供を宥めるように誤魔化して布団ごと抱きつくとジタバタとうろたえる。
本当にこのギャップは何なんだろうな…。

「とにかく、一度会社に行きますっ!!」
「2、3日は休んでいいって言われたのに?」
「『2、3日』?!」
「…あ…」
「社長となんの話をしたんですかっ?!…っ、もうっ!!」
だから社長にはばれているんだからさー…。
盛大に照れる美琴がなんとも可愛らしかった。
こうやってどんどんと素直になればいいのに…と思う。
だけど俺の前で、だけにしてよ。

くちづけを贈れば少しだけ抵抗する美琴だったが、すぐに熱い吐息を返してくれた。
…本当にどこかに出掛けないと、明日も休ませることになりそうだ…。
ってか、本当に休ませていいのかな?
瑛佑の葛藤に気付いたのか、美琴が身体を捩った。
「出掛けるんじゃないんですかっ?!」
やっぱりこのままベッドの中はダメか…。
ま、現実なんてこんなものだろう…。
それでも心に染みてくる『幸せ』を満喫する。

新しい生活はまだ始まったばかり…。
二人で新しい思い出を築いていけばいい。
ずっと…。ずぅっと。

―完―

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
関連記事
トラックバック0 コメント7
コメント

管理者にだけ表示を許可する
 
コメントきえ | URL | 2010-05-13-Thu 17:31 [編集]
K様
こちらにも本当にありがとうございます。

>プンプンしながら「出掛けるんじゃないんですかっ」って みこっちゃん どこまで可愛くなるんだろ。この調子では 明日もお仕事に支障をきたしそう。でも 末永くお幸せに('-^*)/ 私は いつも きえさまに 幸せな気分にさせてもらってますよー。お疲れ様でした。

みこっちゃん、随分と可愛くなっちゃって…。
私も想像がつかないくらいのウブさでエイ同様困っています。
しゃちょーのお許しも頂いているので瑛佑としては頑張りたい(若さゆえ)とこなんでしょうけど素直に追い詰めるかな~…。
幸せな気分になれましたか?!
本当にありがたいお言葉です。
コメントありがとうございました。
介護休暇!?
コメント甲斐 | URL | 2010-05-13-Thu 23:35 [編集]
鬼の居ぬ間にってやつですね。
ひーちゃん&ちーちゃんはどこかでいいことしに行くのでしょう。
それなら、こっちもっていう瑛佑の気持ちはわかりますが、みこっちゃんは、とにかく出社してあれこれ片付けて、社長奪還作戦立てるのでしょうね。
あっという間に居所がばれて、2-3日の休暇は1日で終わりそうです。
これで、味をしめて瑛佑を煽って野崎を休ませる方法を手に入れたから千城さんとしては休暇どころか手当てまで出したい気分じゃないでしょうか。

ま、お幸せにってことで・・・。
コメントアオイトリ | URL | 2010-05-13-Thu 23:52 [編集]
お疲れさまでした!(&退院してきました!)

今日はちょっと長めに。。。

えぇと、一番最初に社長の秘書として出てきた『野崎さん』は正直好きじゃなかったです。
冷たいし、英人くんにイジワルだし、で。
でもあの二人に振り回されてる野崎さんを見てて、いつかこの人にも大切な人が現れて、幸せになって欲しいなぁ…なんて思うようになって地味にずーっと待っていたんです。
だからこのシリーズが始まって本当に本当にうれしかったです。
ただ、最初はつらい恋になりそうな水谷さんだったし、次はキツイ物言いの強引なお兄ちゃんだしでホントに美琴さんは幸せになるんだろうか…?と不安に思っていました。(←失礼ですねv-356
が、終わってみたら他のどのカプにも負けないくらいの甘々ハッピーエンドに感動と感謝の気持ちでいっぱいです。

きえさま、本当にありがとうございました♪
Re: 介護休暇!?
コメントきえ | URL | 2010-05-14-Fri 09:14 [編集]
甲斐様
おはようございます。
千城に頭の上がらなくなるみこっちゃんです。
ちーちゃんとひーちゃんにならってお出掛けしたい瑛佑なんですけど…。
まだ強情なみこっちゃん?!

> あっという間に居所がばれて、2-3日の休暇は1日で終わりそうです。

そのあたりはやはり『強い』秘書殿なんでしょうかね…。
言いくるめられる千城か、宥められる秘書か…。

> これで、味をしめて瑛佑を煽って野崎を休ませる方法を手に入れたから千城さんとしては休暇どころか手当てまで出したい気分じゃないでしょうか。

英輔と千城は、裏方で結託でもしそうです。
味をしめる…、うん、まさにそんな感じですね。

> ま、お幸せにってことで・・・。
応援いただきまして感謝です。
コメントありがとうございました。
Re: タイトルなし
コメントきえ | URL | 2010-05-14-Fri 09:24 [編集]
アオイトリ様
おはようございます。
ご無事に(?)お帰りになられたようで良かったです♪

> えぇと、一番最初に社長の秘書として出てきた『野崎さん』は正直好きじゃなかったです。

私も書いていてちょっと辛いところがありました。
でもあの時は、あっちの二人をなんとかするっていうのが頭にあったのでどうでもいい(←ヒドすぎですね…汗)人だったんですけど、あまりにも身勝手なボスのおかげで愛着が出ました。
脇役があまりにも可哀想な気がして、始まったといっていい番外です。
読者様もいてくださって嬉しかったですね。(気に入られないと思っていたので)

> が、終わってみたら他のどのカプにも負けないくらいの甘々ハッピーエンドに感動と感謝の気持ちでいっぱいです。

基本的には甘々で終わりにしたい私なんです。
一時的なお遊びのような肉体関係も好きですが、行きつくところはこういう展開…みたいな。

> きえさま、本当にありがとうございました♪
こちらこそ、励まされています。
コメントありがとうございました。
コメントきえ | URL | 2010-05-14-Fri 09:28 [編集]
MO様
お久しぶりです♪

>野崎にも、幸せな生活が訪れましたね。しかし、一番「現実」を思い出させてくれる千城の登場、とっても嬉しいです♪さすが鋭いですよね。でも、野崎も神戸も幸せになってくれれば、千城にとっても好都合のようで、思う壺なのではないでしょうか(苦笑)。連載、お疲れ様でした。

ようやく野崎も人恋しさというか、恋愛感情の意味が分かってくれたようです。
千城…は、どこまでもからかう、というか、手のひらで弄ぶというか…。
都合良くことを運ぶための材料が整ったというか…。
(この人はいらないことをいっぱい思いつくので私が冷汗です)
連載、終わったつもりで、またなんだか書き始めたんですけど…。
書かないと頭がスッキリしないんですよ…。
コメントありがとうございました。
コメントきえ | URL | 2010-05-14-Fri 09:45 [編集]
甲斐様
すみません、自分で瑛佑の漢字を間違えています…。
トラックバック
TB*URL
<< 2019/10 >>
S M T W T F S
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -


Copyright © 2019 BLの丘. all rights reserved.