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BLの丘
策略はどこまでも 番外ヒサ編 4
2009-07-20-Mon  CATEGORY: 策略はどこまでも
久志は構内で使用されている無線を片手に事務所を後にして構内へと出て行った。
無線はほとんど物流部が使っていて、絶えず何らかのやりとりをしていた。聞こえてくる内容は様々な情報が錯綜していたが、雑音に交じって聞こえてくる音声は何を話しているのか聞き取るのが難しかった。
新人の頃はこれらを聞き取れる黒田や大友の耳の出来具合を感心したものだ。
雑音としか思えない音声であっても、時折運行部を呼び出すのでスイッチを切ることもできないまま、数台が事務所に転がっている。

現場に降り立ち、トラックが着く位置に向かうと、すでに物流部の遠藤と滝沢が待機していた。
彼らはまだ若く、今年こちらの支社に配属になったばかりだ。作業服に身を包み、最近筋肉を使うようになったという感じの二人は、久志から見れば華奢なイメージがあったが、先刻まで見ていた那智の裸体と比較してしまえば、彼らのほうがまだ頑丈そうに見えた。
那智のベビーフェイスを思い浮かべれば、さらに身体に対するイメージまで華奢に感じてしまいそうだが…。

久志の姿を捕らえると、二人は揃って頭を下げてきた。
「すいません、おつか……、お忙しい中お越しいただいて…」
「えー、だって一発目はうちだったんじゃないの?」
遠藤は言いかけた言葉を一旦引っ込め慌てて言い直した。
平身低頭な態度でいることに気を取られ、単に言い間違えたのかと、特に突っ込むことでもないと判断しさらっと流した。
一部のミスを運行部が担っていると聞いていたのに、全面的に物流部が非を負うような発言には驚かされる。
「ええ、まあそうなんですけど…」
言葉を濁されて久志は眉を寄せる。二人して、アイコンタクトをとる仕草にさらに疑問が湧いた。
仕事のミスをお互い様となだめ合うならともかく、こいつらの態度はどう見ても久志に気を使っていることが一目瞭然だった。
ここまでおどおどとされる理由が思い当たらない。

「なに?」
訝しげに長身から低い声を発せば、二人はビクビクと小さくなった。困り果てているようにも見えながら、その顔は幾分紅らんできた。
「…く、黒川部長が…、えと…。高柳さんは、昨夜の合コンでいい人見つけたから今日は午後出勤だし、たぶんお疲れだろうから…って、あのっ、そのっ……。大友主任にも、『君たち、若いから高柳くんの変わりにちゃんと動くのよ』って…言われて…」
「はぁ!?」
遠藤の発言に久志は眼をむいた。一体いつの間に何の情報をどこまで吹き込んでいるんだ、あの連中は…?!
しかも間違ってるし…。

「う、う、うちの物流の方(女)にも、高柳さんに無理な重労働、課せないでねって言われてきて…」
遠藤の言葉に続いて滝沢もポロリと漏らした。

物流部の女子に関わらず、社内でそれなりに人気があることは久志自身も知っている。高根の花などと陰で言われていることだって耳にはいっている。
昔からこの手の噂は絶えなかったし、今更気にもしていないが、今の話は納得できない。
公私混同も甚だしいと内心では感じたが、新人にここまで言えるこの会社のあけすけな人間模様には感嘆の息が漏れるばかりだ。
そしてそんな状況をセクハラと受け止めることもなく嫌でもなく、むしろ自身も楽しんでいる部分があるのも事実で、充分自分がこの会社に染まっていることをつくづく思わされた。
会社の上司、部下という垣根が高くないのは良いことなのか…。

呆れてものが言えないと思いつつも、久志は大きな息を吐き出しながらしばし上空を睨み上げた。
ここまで公私混同されては困り果てるしかない。間違った内容を吹きこまれていることにもチラリとイライラを募らせていた久志は八つ当たりする相手ではないとわかってはいたが、つい声が荒くなってしまった。
「おまえらさー、仕事とジョークの違いくらい気付けよ。なんでも素直に聞いてるな」
自分たちの発言が久志の機嫌を損ねたと思い、二人はさらに身を竦めていた。次の言葉をつけないでいる後輩たちに云いたいことはたくさんあるが…
「ったくよぉ~。」
怒っているとも取れない口調には溜息が混じり、どんどんと小さくなる二人が目についた。彼らには何の悪気もないことなどすぐに気付き少し後悔が見え隠れする。

久志は間違いを訂正すべく、口を開けた。
「あのさー、言っとくけど。合コンなんて行ってねぇし。俺だって相手するヤツは決めてるから。第一、みんなが思ってるほど軽くねぇって」
過去に散々遊びまくったことを棚に上げて、もうこの先は一人に決めたと暗に含ませただけだったのだが…。
たぶん言わなくても良かったんだと思う。のちのちを考えれば今の一言が尾ひれをつけて泳ぎ回ることは想像できていたはずなのに。
なぜかその場では警戒心も薄れ…。自分もそれなりに呆けていた朝(昼)だったんだろうな―ぁ…。


物流と仕事を終えて事務所に戻ってみれば、無線を抱えた石田が、久志の姿を見るなり高い声を上げた。
「高柳さん、ちゃんと恋人いたって本当なんですか~ぁぁぁ?」

恋人などと呼べる存在はこれまでに作ったつもりもなく、どこでそんな話が出たのか、久志は一瞬眉を寄せた。
石田が握った無線の奥から雑音交じりにも物流部の連中の声が聞こえてくれば、諸悪の根源がそこにあることを知る。

無線にはチャンネルが幾つかあって、その番号同士で会話が成り立っていた。
全く気付かなかったが、すでにあの二人が無線のチャンネルの変更を呼び掛け、久志がどんな発言をしたのか、物流の人間には話が回っていたようだ。
それを聞きつけた黒川があきれたように久志を見ていた。
「なんだよ、ナンパじゃなくて本命だったんかぁ。そりゃぁ、朝でも昼でも頑張るしかないよなぁ」

久志は頭を抱えた。どこまで進むんだろうか、このセクハラまがいな話は…。
その日は勤務時間が終わるまで(残業時間になっても)、何の脈略もなく話を振られ、あれやこれやと聞きたがる黒川部長と大友主任にチクチクと刺されながら時が更けるのをひたすら待った。帰社できるのは、定時の時間を大幅に過ぎたころ。
時折那智に連絡を入れても、その電話は留守電にしかつながらなかった。あいつは、まだベッドの中にいるのだろうか…。


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ひえ~っっ!!
UP時間過ぎてから確認にきたら2話も載ってるしっ。
今更なので、このまま残しておきますが…(汗
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