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BLの丘
ちょうどいいサイズ 37
2010-05-07-Fri  CATEGORY: ちょうどいい
要領が悪いのか、家が広すぎるのか、安住が帰ってくるまでに一葉は家の中の掃除機掛けすら終わっていなかった。
最後となる安住の寝室で、籠った独特の香りを吸い込みながらドギマギしているうちに安住が帰宅してしまって、掃除機片手に汗だくになっている一葉を見るなり、安住が少し驚いた表情を見せた。
「もしかして全部の部屋を掃除しているの?…いいんだよ、そんなに神経質にならなくったって。一日1箇所、ローテーションを組むみたいにかわりばんこにやれば。…あー、こんなに汗かいちゃって。ほら、シャワーでも浴びてさっぱりしておいで。お昼ごはんはいつものお店に食べに行こうね」
汗で湿った髪を掬われ、一葉はあっという間に手にしていた掃除機を取り上げられてしまった。
「家じゅう、あちこちすごくきれいになっている。ありがとう」
手の遅さを責められるかと思いきや、きちんと労ってもらって一葉の心はふわふわと浮きそうだった。

実際一人暮らしをしていた時だって部屋の掃除なんて1週間に一度すればいいほうで…。
自分が言いだしたこととはいえ、こんなことが毎日続いたらへこたれてしまいそうだと思っていた矢先、言葉がとても温かく一葉の心を軽くしてくれた。

明日は安住の寝室から始めよう。
そう思ったのだが、体中を襲ってくるようなあの香りは、一葉の動きをさらに鈍らせそうだ。
頭がクラクラしてくるくらいに『包まれている』感じがする。
そして安住の『特別室』に入れるような、妙な優越感が一葉の心の中に生まれていた。
本来ならば寝室に入られるなんて嫌なことなのだろうが、それを嫌がらずにいる安住がどれほど一葉に気を許してくれているのかと感じられた。
そんなことを思いながら、バスルームに放り込まれて頭から少しぬるめの湯をかぶった。
濡れた髪のままでリビングに顔を出せば、「ほら、ちゃんと乾かして」と安住の手が伸びてきて、タオルでわしゃわしゃとかき混ぜられる。
まるで遊んでいるかのような仕草が安住をより一層自分へと近付けた。
「あ、あずみ、さん…っ」
子供をあやされるような手付きに照れはあっても嫌悪はない。
「一葉ちゃんの髪の毛って柔らかいよね」
手櫛で梳く指先にドキドキしながらも、安住の触れてくる全てが心地いいと思った。


『慣れ』とは恐ろしい…と心の片隅でちょっとだけ思う。
1か月も過ぎれば、安住の一日の行動パターンは把握できたし、日々行われるスキンシップにも免疫ができてきた。
一葉が物事を理解できないでいれば、優しく丁寧に順序良く全てが納得できるようにきちんと最初から教えてくれたし、決して近づき過ぎず離れ過ぎずに距離を保って、一日の始まりと終わりに一葉に触れてくる安住がいた。
それ以外でも時折触れる指先などに一葉は鼓動を早めたが、安住はあまり気にした様子もみせず、どちらかといえば些細な行動が一葉にもどかしさを生じさせている。

一葉自身、自分が『もっと触れていたい』と思うようになるとは想像もしていなかった。
そこには確かに照れや羞恥はあるのだが、いつも安住から近寄られるばかりで、偶然でも自分から安住に近づいたらどういう反応を示されるのだろうという疑問と好奇心のようなものがむくむくと湧いた。
これまでの全てを振り返れば、安住は一葉が何かをしでかしたとしても嫌うことはないだろうという自惚れがある。
ほんの少しだけ、心の片隅に脅えはあったが、そんなものは吹き飛んでしまうくらい、一葉はあまりの心地よさの中にいた。

いつものように夜の食事を済ませて並んでソファに座った。
安住は休みの前の日は、アルコールを口にするようだった。
今日も年代物のワインを開けてくれて、食事が終わった今でも、リビングで続きを愉しんでいる。
一葉も、飲み過ぎないように、と注意を払いながら少しずつ口に含んでいるような状況だった。
だが、口当たりが良過ぎて、突然、コトンと安住の肩にもたれかかった。
睡魔は否応なく一葉を襲っていたし、ずっと燻っていた感情をポロリと口から洩らしたい気分にさせられた。

きっと自分は、こんなきっかけでもなければ安住に思いを伝えることなんてできないんだろうな…。
安住はいつまで待ってくれるつもりなんだろうか。
本当はもう、心の準備なんて…。
できているのかどうかは分からないけれど、中途半端な存在のようで、それが余計に一葉の自信を失わせていた。
自分から誘わなければ、安住はこれ以上近付いてくることはないというようなプレッシャーもどこかにある。
「一葉ちゃん、大丈夫?」
「ん……、ね、安住さん…」
目を閉じたまま、一葉は言うべきかどうしようか激しく悩んだ。

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なんだかまた週末、お休みをいただくようです…。
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コメント

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家政婦一葉ちゃん
コメント甲斐 | URL | 2010-05-07-Fri 14:21 [編集]
安住さんすっかり保護者ですね。
あるいは親戚の叔父様か従弟。
居心地よすぎてこのままぬるま湯に浸かっていたいな~

こんなんでは、ちっとも進まないぞ!
と思ったら、一葉ちゃん一歩前進か??
ガンバレ、もうひと押し!いやふた押し!
Re: 家政婦一葉ちゃん
コメントきえ | URL | 2010-05-07-Fri 15:45 [編集]
甲斐様
こんにちは。

> 安住さんすっかり保護者ですね。

このままじゃ保護者止まりですよ~。
どっちが動くかと思えばっ!?

> こんなんでは、ちっとも進まないぞ!
> と思ったら、一葉ちゃん一歩前進か??
> ガンバレ、もうひと押し!いやふた押し!

ちっとも進まないわけにはいきませんので…。
ただ一葉にその勇気というか度胸があるかと…。
コメントありがとうございました。

コメントきえ | URL | 2010-05-08-Sat 11:11 [編集]
K様
こんにちは。

>一葉ちゃん『ね、安住さん…』の次 何て言うのぉ?少しずつの進展が ほんわかして なんでこんなに このお話が好きなのかな?と 改めて考えました。そして 安住さんの立場に立ったり 一葉ちゃんの立場に立ったりして ドキドキワクワクしてる自分に気づき、そっかー と納得しました。

一葉ってば何を言うんでしょうかね~。
とうとう動き出しますか?!
いつまでもただの同居人じゃ、安住も可哀想だし、一葉も大人にならないと…。
って思っても、ちんたらした二人なので困っています。

いやいやいやいやいや…
私の方が何故この話がこんなに拍手もらえるのかが分かりません。
どこが気に入られているのか、さーっぱり理解できないでいます。
ほんわかしているところがいいんですかね~。
それともキャラ???
私が「可愛い系」が好きなのでいつもこんなパターンのような気がしていました。飽きられていないかな~?とか思ったり。
進展がなくてつまらないんじゃないかな…とか。
気に行っていただけているようなので、すごく嬉しく思います。
コメントありがとうございました。
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