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BLの丘
現実の吐息 2
2010-05-07-Fri  CATEGORY: 吐息
何でも知っています、というように場馴れした雰囲気を纏わせているかと思えば、実際触れてみれば傍目にも分かるほど激しい動揺を表すのだから、おもしろいというかかわいいというか…。
瑛佑が荷物の片付けを放棄しているのを咎めるわけでもなく、美琴は手にしていたスーパーの袋の中身を、すでに設置してある冷蔵庫の中に放り込んでいた。
以前の場所から運んだ5ドアの冷蔵庫はこの場には幾分大き過ぎるような気がしなくもないが、使いなれていることもあったし、鍋ごと突っ込める点で重宝している。
美琴は同時に仕分けされているキッチン用品の段ボール箱を抱えてシンク脇に置くと手早く整理していく。
美琴にとって最初に片付けるべきはそこなのか…と、主婦さながらの動きにしばし見惚れていれば、咎められはしなくても「まさか、また私にやらせようという気ではないでしょうね」と嫌味が飛んできた。

ここに積まれている段ボール箱のほとんどは美琴が詰め込んだものだ。
業者顔負けの手際の良さで要不要をさっさと見極められた。
瑛佑が動かしたのは『口だけ』と言われてもおかしくないくらいに、引っ越し時の美琴の姿はきびきびとしていた。
実際、手配したはずの引っ越し業者が立場を奪われたような状態だったのだ。

「べつにそんな気はないけどさ…。美琴さんだってたまの休日、こんなことに付き合って疲れるだけじゃない?片付けなんて後で合間見てやるから放っておいていいよ」
特に生活していく上で困るものは今のところない。
奥の洋室にはベッドはすでに設置されていたし、休むためのソファもテーブルも、位置は後で決めるとして部屋の中にある。
男一人住むのに、急を要するものなど何もないと言って良かった。
必要となったものから順に段ボール箱から取り出せばいい…、そんな程度の感覚だったのだ。
何より触れたいのは段ボール箱ではなかった。

「馬鹿なことを言っていないでください。来るたびに引っ越しされたままの荷物があるのは目障りですよ」
「そういうところは神経質だよね。っていうか、そうしょっちゅう頻繁に来てくれる気でいるんだ~ぁ」
「…べつ、に…」
顔を反らしたつもりでも、対面式のキッチンに立った美琴の表情はこちらからよく見えるんだって。

心の中でほくそ笑みながら瑛佑も手近にあった段ボール箱を開けた。

しばらくすると、キッチン用品を片付けているのだとばかり思っていた場所から、小気味良い包丁の叩く音や香ばしい匂いが漂ってくる。
洋室で衣類を片付けていた瑛佑は何事かと首を巡らせた。
昼食に近い時間だったし、同時に朝からロクなものを食べていなかった腹の虫が空腹を訴えてくる。
迷いもなくキッチンに飛び込んでみれば、肉の塊を処理しているところのようだった。
うちに何の材料もないことを知って、全てを買い込んできたのだろう。
あのスーパーの袋の中身はこれだったのか…と少し感心した。
出来合いのものを買ってこないあたり、美琴らしい。

「ねぇ、何作ってんの?」
「お昼と…夕食にも食べられるようにと、今はローストビーフを。あとは手早くできるパスタとサラダでいかがでしょうか」
「『ろーすとびーふ』ぅぅ???はぁ?!そんな簡単に作れるものなの?!」
料理に関しての知識は豊富な方ではなかったが、多少聞きかじりのようなものはある。
今作り、すぐ食べる、といった感覚のなかったメニューに瑛佑は瞠目したが、美琴は淡々とした様子で手を止める気配はなかった。
「手抜きですよ。本格的に作ったら時間がかかりますが。…パスタを茹でている間にもそれなりの味はできると思います」
何がどうなっているのか瑛佑にはイマイチ分かりはしなかったが、何をやらせてもデキる恋人に言葉さえ失う。

「なんかさぁ…。俺、すごく幸せ気分を満喫中なんだけど」
「ここに立っている時ではないでしょうっ。リビングテーブルの回りが片付くまで食事にはしませんからねっ」
言いたいことの意味は分かっているのだろう。
ほんのりと頬を染めた美琴は瑛佑を引き離そうとしていたが無駄な努力といってよかった。
『好き』とか『可愛い』とか感情を表すたびに照れてその話題から反らそうとする。
背後から抱きつけば、邪魔だと言わんばかりに肘で小突かれた。

「ん。すぐ片付ける。2人、座れるスペースがあればいいってことだよね」
瑛佑が取った行動は、段ボール箱を部屋の隅に追いやるという手法で、5分とかからずにリビングは片付いたように見えた。

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コメント

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ろーすとびーふ
コメント甲斐 | URL | 2010-05-07-Fri 14:32 [編集]
さすが!みこっちゃん、何でも完璧な秘書殿は家事能力も完璧なのか。
すごいな。
瑛佑くんと一緒にびっくり&感激しました。
ワタシもほしいこんな旦那様。
あでも、口は悪いし厳しいし甘えられないし・・・・やっぱりやめときます。
Re: ろーすとびーふ
コメントきえ | URL | 2010-05-07-Fri 15:55 [編集]
甲斐様
こちらにもどーもです。

> さすが!みこっちゃん、何でも完璧な秘書殿は家事能力も完璧なのか。
どこまでもできるのはいいんですけどねぇ…。
みこっちゃんにできないことはないのか?!と考えて思い浮かびませんでした。
完璧すぎて瑛佑に嫌われそうです。
口うるさいし…。

> ワタシもほしいこんな旦那様。
> あでも、口は悪いし厳しいし甘えられないし・・・・やっぱりやめときます。
私もいらないです。
引き取り手がいてくれてよかったね~みこっちゃん。
限定的に甘えてくれる空間が瑛佑にはいいことなんですかね。
まぁ本人たちが満足しているようなので、つついたりもしませんが。
異空間で甘々な時を送っていそうな二人です。
そのうち福利厚生の一種として『介護休暇』が定着するかもしれませんね(?!)
コメントありがとうございました。
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