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BLの丘
ちょうどいいサイズ 31
2010-04-29-Thu  CATEGORY: ちょうどいい
先程入ってきたときはスーツだったのに、黄緑色のシャツを着たすっかり寛いだ姿の男が興味深げに一葉と那智を見ていた。
その隣でバーテンダーがたしなめる口調で男を制する。
「やめとけって。人の会話に口を挟むものじゃないから」
「だってさぁ…」
店員に話しかけられることは特に嫌なことではない。
ないが、性生活の話題という、他人と話などしたことのない一葉にしてみれば、「ハイ、聞いてください」と頷けるものではなかった。
さっきカウンター内で繰り広げられた光景を目にしているだけに、目の前の二人が深い仲なのだとは想像ができる。
こういったお店で相談できるとは歓迎すべきことなのかもしれないが、やっぱり抵抗は生まれる。
一葉は恥ずかしさに俯いてしまったが、男は黙る気配はなさそうだった。
悪戯を交えたように笑う瞳は完全にこの話題を楽しんでいた。
「可愛い子に『ご指導』はしてあげるものでしょ」
「まだ初々しい子にどんな指導する気?余計なお世話だって言うの。本人たちのペースってあるんだからさ。店のことはいいから奥に引っ込んでろって。明日も早いだろ」
「もう、すぐ追い出すんだから」
飲み物の入ったグラスを持たされた男はバーテンダーに背中を押されてむくれていたが、素早くさっと唇を奪って、一葉と那智を驚かせた。
あまりにも自然でさりげなくて、よくこんなことができるもんだ、と感心してしまうくらいだ。
それからまた一葉たちに視線を投げると、「今度彼と一緒においで」と笑いかけられた。
こんな光景を見せられたら安住も何かのアクションを起こしてくれるのだろうか…。
他力本願な淡い期待が少しだけ心を過った。

「まったく…」
呆れたようなバーテンダーに再び背中を押された男は今度は黙って奥へと去っていく。
すかさず水を差したことを謝られて両手を広げて「いえいえ」と答えた。

一葉と那智は思わず顔を見合わせて、顔を赤らめながら「すごいね…」と囁き合ってしまった。
慣れたはずの那智ですら驚くのだから、こんな大人になれるとは全く思えない。
しかも『初々しい子』とまでバーテンダーに言われてちょっとショックだった。
安住は”そういったコト”に対してどんな感じでいるのだろう…。
なんだか急に好奇心のようなものがむくむくと湧いてきて、醜態を晒して裸にされた時の自分を思い出しては、安住との間を想像して一人でジタバタとした一葉だった。


一葉の辞表は受理され、残りの期間は引き継ぎ業務で精神的にも落ち着いていた。
ほとんどは磯部が引き受けていたので処理も早く、はっきりいって一葉は何もしていないのと同じようなものだった。
なんの滞りもなく送別会まで開いてもらって、これまでの苦労を思い出した一葉はちょっとだけしんみりしてしまった。
行く末を磯部に心配されていたようだが、安住の家にお世話になることを馬鹿正直に伝えてしまえば、呆れられ感心され、たまに営業活動に行く、とからかわれた。

引っ越しをしたのはいい。
一葉にはきちんと自分の部屋が与えられた。
リビングの隣の部屋で、「物置みたいだった」と安住は言っていたが、すっかり綺麗にされている。
手伝いだ、といって姿を現した中條が、部屋の中の様子に不思議そうな声を上げた。
「なんで別々の部屋で寝るの?」
ずっと悩んでいた一葉の心境を声に出されたようで一葉はすぐに真っ赤になってしまった。
言葉の裏に”夜の営み”があることに気付くからなんとも照れくさい。
中條は一葉と安住のことをどう思っているのだろうか。
那智と同じように誤解しているのだろうか。いくら自分たちのことを那智と中條が知っているとはいえ、中條に簡単にペラペラと話す那智でないはずである。
「なんで…って…」
安住もこの質問には答えに窮していた。
「おかしくない?君たち何してんの?どこまで純情な中高生みたいなお付き合いなわけ?こんなんじゃ一葉ちゃんだって可哀想だよ」
「可哀想?」
今度は安住が疑問の表情を見せた。
「大人である享がリードしてやるべきでしょってこと。一葉ちゃんだって一緒の家に住めるんだもん、期待しているところがあるよね?」
さすがに未開発であることは中條は気付いているらしい。
だが振り向かれたところで一葉は黙るしかない。

…そんなの、聞かれたって答えられないよ…。

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コメント

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未開発一葉ちゃんの悩める日々
コメント甲斐 | URL | 2010-04-29-Thu 16:17 [編集]
そんなこといわれたって・・・ですよね。、一葉ちゃん。

超上級者にもらうアドバイスは怖すぎる。
ナイスフォロー日野ちゃん。

初心な男の子にとって、事情を知ってる人にだって恥ずかしくて困っちゃうよね。
かわいー♪
頬染めておたおたしているようすが目に浮かぶ。

っで、実際どうなのよ。
今夜からすぐ!かはともかく
同居なの?同棲なの?そこんとこはっきりさせよう、じゃないと、頭の中グルグルして一葉ちゃん寝不足になりそう。
Re: 未開発一葉ちゃんの悩める日々
コメントきえ | URL | 2010-04-29-Thu 17:17 [編集]
甲斐さま
あー、なんか、ご一緒してったぽいっす。ありがとうございます!1

> そんなこといわれたって・・・ですよね。、一葉ちゃん。
>
> 超上級者にもらうアドバイスは怖すぎる。
> ナイスフォロー日野ちゃん。

もう、止められる人間がバーテンにしかいませんでした(汗?
カウンターにでも座られた日には明け方までうんちくが…。
清い一葉でいさせるためには彼の話はきかせられませんっ!!

> 頬染めておたおたしているようすが目に浮かぶ。
>
> っで、実際どうなのよ。
> 今夜からすぐ!かはともかく
> 同居なの?同棲なの?そこんとこはっきりさせよう、じゃないと、頭の中グルグルして一葉ちゃん寝不足になりそう。

あー、安住さんもなにかお考えがあるかと…。
っーか書けないっ。
まくらもって安住の部屋におしかける一葉か
「絵本でも読もうね」と寝物語でも聞かせる安住か。
(現実性のないBLファンタジーです)

コメントありがとうございました。
コメントきえ | URL | 2010-04-29-Thu 19:24 [編集]
拍手コメk様
またのお越しありがとうございます。

>連休の朝から楽しませてもらい、思わず出てきちゃいました。神戸さん 日野さん いい感じで二人を後押ししてくれてますね。バーで 神戸と日野のキスを見て「凄いね」と 囁きあってる 那智と一葉が可愛くて ツボでした。一葉を大切に思うあまり 手が出せないでいる安住さんも さすがに このままではいけないという気になったかな?こんな じれじれの二人 いえ 余裕を見せてる安住さんが そうなると どうなるんだろう と 一葉同様 興味津々!今後の展開 楽しみにしてま~す。あ、でも連休のおり、リアルも何かと忙しいと思いますので、無理はなさらずにね('-^*)/

つなぎあわせばかりでもうしわけないな~
と思っていたりもします。
あっちのふたりは書けない私が登場させたようなものです…。
アレは理想で、実際にはできないもの?!
安住さんもこの先どうしちゃうのかなぁ。
一葉の気持ち(思い)も気付いていると思うので何かしらの何か(?!)があるかも…?!
じらしじらしの世界で読者様には本当に申し訳ないのですが、私も一葉の心境になってゆっくり進んでいます。
コメント、本当にありがとうごさい゛ました。
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