FC2ブログ
ご訪問いただきありがとうございます。大人の女性向け、オリジナルのBL小説を書いています。興味のない方、18歳未満の方はご遠慮ください。
BLの丘
夢のような吐息 11
2010-04-21-Wed  CATEGORY: 吐息
天気は快晴だった。
何の不安があったというのか、あまり良く眠れずに野崎は普段着とも言えるブラックのシャツにグレーのテーラードジャケットを着込んで出掛けた。
時間よりも早く待ち合わせ場所に着いてみれば、すでに宮原が立っていた。
いつも見ていたバーテンの服装よりもずっと落ち着いて見えるシックな装いだった。
それが余計に、染められた頭髪が不自然に見える。
意外なものを見てしまったような気持ちは焦りに似ていた。
野崎に気付けば軽く手を上げて近寄ってくる。
「車、駐車場に停めてあるんだ。行こう」
背中に回された手がごく自然で、こういったことをやり慣れた人間なのだと感じられても、厭らしさといった雰囲気は微塵もない。
大事なものを守るような手の動きだった。

そんな仕草が野崎の動揺を生み出した。
常に自分にまとわせていた殻を割られるような恐怖心もある。
誰かに対して畏怖の念を持つことなど滅多にないから、年下の、この未知な男の誘いに乗るべきではなかったと激しく後悔した。

「宮原さん…」
「今日は瑛佑(えいすけ)でいいよ。どこまでも堅い態度も嬉しくないから」
「"瑛佑”?」
そういえば…と履歴書にあった名前を思い出す。
だが野崎の性格上、気安く誰かと接する環境はごく一部の限られた人間だけだったので抵抗があった。
「瑛佑さんとお呼びしましょうか」
「そういう畏まった態度もさぁ…。…まぁ美琴さんにあれこれ言っても簡単に聞き入れるタイプじゃないしな」
もうこういった生活が身についている。今では変えることのほうが難しいくらいだ。
宮原は苦笑しながらそれ以上は言ってこなかった。
野崎は自分の名を呼ばれることに慣れてしまっているのを今更ながらに実感した。
店では当然のようになっていても、明るい屋外ではまず聞かれることのない呼び名に違和感を覚える。
それは照れくさくもあった。
かつては嫌悪しかなかったというのに…。

立体駐車場に停められたワゴン車に案内され2時間ほど走った。
宮原は途中、街の小さな花屋で大きな花束を購入していた。
今日の予定をいくら聞いても答えようとせず、野崎のことを尋ねたり宮原の普段の生活ぶりなどを語ったりと他愛のない会話が続いていた。
野崎が尋ねる宮原のことについては曖昧に濁されっぱなしだった。
ここまで掴みどころのない人間に出会うことも稀だ。

目的地が近くなった頃から宮原の口数が激減した。
浮かんでいる表情も硬いものに変わっていて、野崎も口を閉ざすべきなのだと悟る。
到着したところが霊園で野崎は困惑した。
意図が全くつかめない。
初めて一緒に出掛けた人間と、初めて一緒に来る場所ではないはずだ。

「これは…、どういうことですか?」
「少しだけ付き合ってよ。全部、美琴さんが聞きたがっていたこと、全部教えてあげるから…」
大きな花束を手にした宮原が野崎を呼んだ。
店では決して見ることのない穏やかで慈悲に満ちた優しい顔をしていた。
口調もいつもよりもずっと穏やかだ。
これは、本当に宮原なのだろうか…。
そう思わせるくらいに…切ない。
サーっと通り抜けた風が、新緑に覆われた桜の葉をカサカサと揺らしているのを見てより落ち付かなくなった。

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
やっと話が動き始めた?!引っ張りますがまだお付き合いくださいますと嬉しいです。何話まで続くんだろう…ちょっと不安…。
関連記事
トラックバック0 コメント2
コメント

管理者にだけ表示を許可する
 
瑛佑の過去
コメント甲斐 | URL | 2010-04-21-Wed 23:26 [編集]
例の過去話が聞けるんですね。
霊園ですからあんまり愉快なお話ではなさそうですが、みこっちゃんに対してそういうことも話してしまいたい気持ちなのでしょうか。
Re: 瑛佑の過去
コメントきえ | URL | 2010-04-22-Thu 09:25 [編集]
甲斐様
こんにちは。

> 例の過去話が聞けるんですね。
> 霊園ですからあんまり愉快なお話ではなさそうですが、みこっちゃんに対してそういうことも話してしまいたい気持ちなのでしょうか。

やっと動き出しました。
愉快な話ではありませんが、みこっちゃんに気を許しているのは確かなようです。
でなきゃ語らない?!
コメントありがとうございました。
トラックバック
TB*URL
<< 2019/12 >>
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -


Copyright © 2019 BLの丘. all rights reserved.