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BLの丘
ちょうどいいサイズ 16
2010-04-11-Sun  CATEGORY: ちょうどいい
「なんだか最近嬉しそうだよな~」
事務所で雑務に追われながら、携帯に入ったメールをチェックしていると、磯部が後ろから覗き込んできた。
部下を見つめる笑顔も途端に厳しい顔に変わる。
「決算を過ぎた途端になんだっ?!このやる気のない数字はっ!!!」
売り上げを示す花が、一葉の場所だけ一つも咲いていなかった。

安住から『今日は鯛の煮付けだよ』なんていうメールを送られてニヤけていた顔があっという間に引き攣る。
「あ……」
「他人の事務整理はいいから売り上げを取ってこいっ!!」
まだお昼にもならないというのに、早々に事務所を追い出され、一葉は行き場所を失ってしまった。
営業に回れる客先などなく、かつて取引のあった客からメンテナンスの受注を受けるのが精一杯だ。
一葉は近くのコンビニに営業用の白いバンを止めると、いくつかしかない客に電話をかけてみた。
もちろん、新車の案内など出す勇気もなく、経過を聞く程度におさまっているのだが…。

『ってか、超偶然っ!!そこにいるの、一葉さんっしょっ!』
何番目かにかけた客がいきなり『一葉』と名前で呼んで、その言葉に顔を上げる。キョロキョロと周りを見れば、コンビニの中から手を振っている男がいた。
以前安住に紹介してもらった花園さんちの孫だった。
まだ大学生だと聞いていた。
いかにも若者らしく、少し伸びた髪と片方の耳にピアスが二つ、だらしなく着こなされた服装なのに清々しさがある。
年下だと分かっているのに、しゃきしゃきした態度は年齢差を感じさせない。

店から飛び出してきた男、花園恵亮(はなぞの めぐる)は一葉が降り立つよりも早く運転席側の扉に近づいた。
契約を取る際に何度か会ったことはあったが、祖母に窘められるほど口調は友達感覚の男だった。
「仕事中なの?忙しい?」
「あ、…いや、そんなことは…」
ドアを開けておりようとするのを掌を掲げられて止められる。
「今日、休講になっちゃってさ。今昼飯でも買って帰ろうかと思ってたとこなの。なんだったら、メシくらい付き合ってよ。あ、おごってとか言わないから大丈夫だよ。そこまでビンボー学生じゃないんで」
快活の良い口調に圧倒されて、思わず頷いてしまえば、助手席にさっさと回り込んで乗ってくる。
まるで我が物顔で助手席に置いてあったカバンや書類など、後部座席に放り投げられていた。
「車で来なくて良かったよ。帰り、送って。この先にフランス料理店あるし。そこでいい?一葉さん連れて行けるってちょっと嬉しいね。なんだか自慢したくなる。あ、ツケでいいからっ。請求、月末にいつももらっているし」
何を訳のわからないことを…と思わず言いそうになった。
何を思ったってどんな状況だって、大学生におごらせるのはプライドがゆるさない。
しかも『客』である。
動揺するのを見越したかのように、恵亮は「連れていくの、俺だし」と一葉の言い分を聞き入れなかった。

カジュアルな雰囲気が漂っていても、来慣れない店に間違いがない。
慣れたようにランチメニューの中から恵亮が適当にオーダーしている。
何かを言おうとすれば遮られ、値段も味も何も分からずただ料理が届くのを待つ始末だった。
「好き嫌いとかあった?アレルギーとかもないよね?今日は魚介のいいのがあるっていうからそれ頼んでおいた」
どこのボンボンなのだろうかと思う…。
花園のおばあちゃんを振り返ればなんとなく生活習慣はみえるようであっても、大学生という存在で、店で『ツケ』とか『本日のおすすめ』とかあっさりと口にされるところ、一葉の常識を明らかに超えている。
「で、俺に電話ってなんだったの?さすがに2台目は買えないから」
「そ、そんなんじゃなくて…」
今現在買ってもらった車だって、祖母からの寄付があってのことだとは一葉も承知している。
早々車の乗り換えなんてしてもらえるものでもない。
とりあえず今の一葉には、いいところメンテナンスの受注をうけるのが精一杯である。
「あ、車の調子はどうかな…とか。あと…、なにか気になることとか…」
「気になること?あるね。車のことじゃなくて一葉さんのことだけど。ほんと言うと、ばあちゃんに勧められたからっていうより一葉さんの健気さに惚れたっていうほうかな。俺のメンテナンスも引き受けてよ」

一葉は固まった。

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コメント

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一葉ちゃんモテ期!かも
コメント甲斐 | URL | 2010-04-11-Sun 16:45 [編集]
人生最初(?)のモテ期かもしれませんよ、一葉ちゃん。
裕福な家のボンボンとか、大人の余裕の弁護士さんとか・・・。

それにしても、一葉ちゃん、営業には向かないと思います、それも車の。
可愛くて人懐こい笑顔で勧められてもそうそうは買えないですからね。
たとえばそうですねぇ、、、、、和みが売りもののバーテンさんとか、画廊で有閑マダムのお相手するとか、旅行代理店の営業とか受付カウンターとかなら、その笑顔で売り上げアップ間違いなしです。
なにやら、聞いたような業種や店舗のような・・・誰かに紹介してもらいましょうか?
Re: 一葉ちゃんモテ期!かも
コメントきえ | URL | 2010-04-11-Sun 17:41 [編集]
甲斐様
スルドスギッ!!!!

モテ期はまぁいいとして…。
向かないですっ!!営業なんてっ!!
転職、そろそろ考えていたんですけど…。
見破られたっ!!

> たとえばそうですねぇ、、、、、和みが売りもののバーテンさんとか、画廊で有閑マダムのお相手するとか、旅行代理店の営業とか受付カウンターとかなら、その笑顔で売り上げアップ間違いなしです。
> なにやら、聞いたような業種や店舗のような・・・誰かに紹介してもらいましょうか?

ありますねぇその辺に。
趣味で営業しているバーとか(喰うか喰われるかは別として)、旅行店の添乗員とかもできそう…。(間違いなく客に襲われるな…)
職種って、向き不向きありますよね~。
一葉、何が似合うんだろう。
求人情報がたぶんそのへんに張られるかと…。
(どこまでリンクするんだ…????)
コメントありがとうございました。
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