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BLの丘
ちょうどいいサイズ 13
2010-04-08-Thu  CATEGORY: ちょうどいい
出掛ける予定が以前からあった安住は、一葉が起きた時に一人にするのは心苦しかったし、見慣れない人物が居ては不安になるからと中條を呼んだらしい。
それなら起こしてくれればいいのに…と一葉は心の中で呟いていたが、安住の性格を思えばそんなことはしないのだろう。
「僕はこき使われていますので。ここまでさせて、作った夕ご飯も食べないで『帰ります』とか言ったら、所長さんに『誘いも断られた』って告げ口するからね」
中條の脅しに一葉は返す言葉もない。
磯部が『おとしまえつけてから帰ってこい』と怒鳴った台詞を中條もしっかりと聞いている。
できる限りの言い分を聞き入れてご機嫌を取ってこいと、その意味は中條では理解するのも容易いはずだった。
「誠、そういうことを言ったら一葉ちゃんが気を使うでしょ。…体調は大丈夫?まだ横になっていたかったら休んでいていいからね」
一葉の後に寝室へと向かった安住が、ビッチリとした服装からラフな格好へと変貌を遂げており、諭すように中條をたしなめた。
私服でいる時の安住からは”デキる男”の鋭敏さが消えて温和な雰囲気が全面に出てくる。
スーツを身に纏っている時でも凛々しさに惹かれるものがあったが、今はもっと寄り添えるような温かさがあった。

さすがにほとんど丸一日眠っていたといっていい状況なのに、これ以上の甘えた生活は送れない。
それに、さきほど食した味噌汁が浸透したように、重苦しかった身体がラクになっている。
一葉は小さく首を振ってもう大丈夫だから…と伝えた。

リビングで3人してティータイムを過ごし、昨夜同様の気兼ねのない会話にいくらか一葉の緊張も取れてはいたが、迷惑をかけた…という後悔は心をすっきりと晴れさせてはくれない。
安住も中條も、一葉の失態を話題に出すわけもないし、触れてもさりげなく反らされていく。
それはそれでありがたいのだが…。

しばらく雑談を楽しんだ後、夕食を用意してくれるという安住と中條の後ろ姿に何も言えず、ただダイニングテーブルのいすに腰かけているだけだった。
リビングで一人待たせるよりは…と連れて来られて、またここでも尽きることのない話がポンポンと飛び出していた。
通常であれば早いと思われる夕食時間。
隣り合った安住と中條の仲睦まじい世界が居たたまれなくて視線を反らしてしまう。
聞こえてくる会話も、憎まれ口…というより、じゃれあいのようだ。

「ピーマン、嫌いっていつも言うのに何でいれるの?!」
「誠の好き嫌いは聞いていないから。彩りも兼ねて。健康にもいいんだよ」
「苦いんだってばっ」
「子供みたいなこと、言わないの」

ぴしゃりと言いくるめてばかりのはずの中條にも苦手なものがあるのだと思えば何となく親近感も持つ。
それは安住相手だからこそ安心して口に出すことのできるもののような気がした。
一葉は手伝わなくても良いものかと思案したが、作り慣れない自分が手を出しては邪魔になるだけだし、なんとなく、二人の間にも入っていけなかった。
キッチンの前に立った二人に、更に気が重くなるが、帰るタイミングすらつかめない。
二人はいつも一葉に話題をふってきて返答を求められ、一葉も逃げられなかった。

胃に優しそうな雑炊や煮物、酢の物などの和食を用意され、一葉はここしばらく見たことのない豪華な食卓に圧倒された。
自炊生活では1品2品を作るのがやっとで、しかも3人分が並んでいるから余計に活気づいているように見えるのだろうか。
「すご…っ…」
テーブルいっぱいに並んだあれこれに呆然としていれば、そんな一葉の反応に満足したような安住が笑顔を向けてきた。
「一葉ちゃんの口に合うか分からないけど、遠慮しないで食べていってね」
「そう、僕も協力して作ったんだからね」
疲れていたはずの胃まで、食事を前にしてグ~っと鳴ってしまうのだからなんて単純な身体なんだろうと思う。
「いただきます」と3人で挨拶をしてからも、前に座った安住と中條がまるで一葉が箸をつけるのを待つように見つめているから、一葉は気まずくなりながらも先に雑炊を掬った。
細かく切った鶏肉や野菜と共に大根おろしで煮込まれていてホッとさせられる。
「おいし…」
一葉が感動で掠れた声をあげれば、万遍の笑みを返してくれる安住が目の前にいた。
「良かった」
柔らかな笑顔に一瞬見惚れる。
安住の顔を見ているのがなんだか辛いことのように感じられて、一葉は食べることに集中しようとした。
嬉しい時間のはずなのに、やっぱり心苦しさの方が勝っている。
それが安住の優しさに対してなのか、中條の存在に対してなのかはっきりとしなかったが、後ろめたさだけが一葉を覆っていた。

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コメント

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安住さんお嫁にほしい!
コメント甲斐 | URL | 2010-04-08-Thu 17:25 [編集]
いい男ってお料理上手ですよね。
仕事が出来てその上趣味でたまにだけど作っちゃうものが相当レベル高いご馳走だったりして。
そして、弱ってるときの心もカラダも癒される一品ていうのも、それだけでコロリと堕ちます。
二日酔いの肝臓に優しいシジミ汁といい、おろし煮といい、ああこんなお嫁さんがほしいですぅ。
Re: 安住さんお嫁にほしい!
コメントきえ | URL | 2010-04-09-Fri 08:48 [編集]
甲斐様
おはようございます。
レス遅くなりまして申し訳ございません。

> いい男ってお料理上手ですよね。

できますよね~。
なにやらせてもささっとこなしちゃう、完璧ですっ。
ご馳走もたくさん用意してくれて…。
うちにもお嫁にきていただきたい。

一葉、身も心もお疲れですけど、美味しいご飯ももらってしっかり癒されたと思います。
あとは「ご奉仕」が待っているだけ…。
(そうか…もうパジャマじゃないからチラ見せとかできないしな…)
コメントありがとうございました。
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