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BLの丘
Present 41(最終回)
2010-03-23-Tue  CATEGORY: Present
包みの中から取りだされたエンジ色のネクタイ。
少し地味かな…とも思うけど、外回りとかをしている以上これよりも派手な色はやはり咎められる。
スッと翳してきた鹿沼の顔と見比べれば、予想通りの落ち着いた姿に言葉が出なかった。
『老けている』というのとはちがう。
年齢以上に物事を極めた雰囲気がより一層漂うようだった。
凛々しいという言葉がぴったりだ。

「ネクタイ…なの?」
鹿沼から発された言葉に、何か気に入らないものでもあったのかと、雅臣は思わず困惑した。
気に入られないなどとは全く思ってもいなかったからだ。
「りゅ…」
鹿沼の表情をみれば、拒絶をされるものではないとは思う。
それでも、素直に喜んでもらえなかったのではないかと心はみしみしと音を立てそうだった。

雅臣が不安になる表情を見た鹿沼はすぐにそれを否定した。
「そうじゃない。嬉しすぎるんです…。…ねぇ、雅臣さん。ネクタイを贈るってどう意味か知っていますか?」
もちろん、何かの意味があるなど、雅臣はこれっぽっちも知りはしなかった。
単純に『似合いそうだから…。身につけてもらえそうだから…』と選んだに等しい。

クイッと首を傾げた雅臣の表情を読み取った鹿沼がフッと笑顔を零す。
「まぁ、いいですけどね。黙っていたら、あんた、他の人に歓送迎会の品とかいってあげそうですから」
そう言いながら、鹿沼は自分の素肌のくびにネクタイを結びつけた。
最後の締めるところまでいかなかったが、中途半端に結えた先を雅臣に促してくる。
結んで、と言いたげだった。
「ネクタイってね。『貴方に首ったけ』っていう意味と、『何か起こしたらこれで絞め殺す』っていう意味があるんですよ」
だらしなく結ばれたネクタイに手をかけようとした雅臣は思わず動きを止めた。
もちろん、そんな意味があったなど雅臣が知るわけがない。
知っていたら選ばなかった…か、今なら故意的に選んだか…。

「りゅ…」
「その言葉通りうけとっていいですか?俺ね、雅臣さんだったら絞め殺されてもいいです。もちろん、そんな誤解を招くようなことはしないつもりですけど。これ、俺の一生の、貴方から貰った『束縛』」
結びかけたネクタイを手にして唇を寄せる。まるで誓いのキスでも落しているようだった。
決して揺るがないと告げられた内容に、偶然のことながら雅臣は嬉しさに見舞われていた。
意味を知れば、余計に、他の人間になんてあげることはない。
そして思いが強くなる。
「…か…。ばかっ!やるわけないだろっ!!おまえだけだよ、こんなことするのっ!悪いけどっ、誰かに物を贈るなんて今日が初めてなんだっ!意味なんか知らないよっ。おまえが教えてくれなきゃ何にも知らないっ。そばにいてくれなきゃ誤解なんかいくらだって招くからなっ!!」
精一杯の強がりの中にある告白に鹿沼は目を細める。
つまりは何の誤解も生ませないためにはそばにいて蘊蓄を教えろということで。プレゼントなんて鹿沼以外の誰にもやらないと言いたくて。
雅臣は咄嗟に口走ってしまったが鹿沼の表情をみれば万遍の笑みを浮かべて喜んでくれている姿に気恥ずかしさで覆われた。
「うん、ありがとうございます。あー、なんだか幸せすぎて心臓バクハツしそう。ねぇ、聞こえます?ほら」
突然引き寄せられて胸に頭を押し付けられて、トクントクンという鹿沼の心音が響いてきた。
この広い胸がひどく落ち着く。この心音が心地よい。

迷信の言葉通りかもしれない、と雅臣は思った。
自分は鹿沼にすっかり溺れ切っていたし、また過去のように辛い目にあわされたら、本当に締め殺してしまうかもしれない。
この心臓の音を止めてしまいそうだ。
少なくとももう立ち上がれないのではないかと思うくらい、鹿沼に依存していた。

『失うかもしれない』という恐怖は常に持ち続けるのかもしれない。
でも今はこの時を楽しもうとようやく思えた。
全身で体当たりをしてくる鹿沼を信じてやりたい。
「お礼を言うのは僕の方なんだって…」
小さな呟きを鹿沼は聞いただろうか。

自分にとって最高の贈り物 ――鹿沼龍太――。

雅臣は至福の時が訪れるのを肌を通して味わった。

―完―

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散々お待たせするようで申し訳ございませんでした。ようやく完結いたしました。突然ですみません。
長い間お付き合いくださいましてありがとうございます。
与えるもの…という意味でつけた『Present』
いや、全然意味合っていないし…と今頃になって思っています。(汗)
ま、まぁ、いつものことながら『あ~、こじつけね~っ』って多めに見てやってください。
最近、一気読みの方が多くて、本当にびっくり&感謝っ!!
そしていつも応援くださっている方々に、心よりお礼を申し上げます。
昨日のPresentに、一日の一話としては一番の拍手数といっていいくらいいただいて感無量です。
意外と人気があったのかな?と改めて驚かされています。
拍手もらうとスゴイ、力が湧いて勇気づけられます。
私の糧。本当にありがとうございます。

40← →おまけ
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コメント

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コメントきえ | URL | 2010-03-24-Wed 06:55 [編集]
MO様
おはようございます。

>雅臣は、やっと過去から解放されて、鹿沼から与えられるだけではなく、自分からも鹿沼を喜ばせたいという気持ちになれましたね。お互いの存在が一番で、かけがえのない最高の「Present」ですね。

長いことお待たせいたしました。
完結してくれてホッとしています。
過去の呪縛から解放されて一番幸せな時だと思います。
鹿沼の甲斐甲斐しい努力が報われて良かった~。
うちにもいないかな~、こんなダンナ…と思いながら書いていました(笑)
良い『Present』になってくれたようです。
コメントありがとうございました。
No title
コメントきえ | URL | 2010-06-20-Sun 06:14 [編集]
K様
おはようございます。
こちら一気読みしていただいたようで感謝です。

>雅臣の心の揺れにこちらもハラハラし通しでした。鹿沼に逢えて、本当によかったねえ。龍太、カッコよすぎ!

龍太にラブコールありがとうございます。
図々しく進んでいく男でした。
一度、こう!と決めたら突き進む性格ですね。
一番のお得意科目がお料理?!
うちにも欲しいです。ぜひ。
コメントありがとうございました。
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