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BLの丘
かけがえのない日々の訪れ 15
2010-02-24-Wed  CATEGORY: かけがえのない日々
「何勝手に話を進めてんのっ!」
千城と神戸の次から次へと飛び出す会話にようやく口を挟んだ英人から叫び声にも近い声が響いた。
英人としては、寸分もなく見守られるような状況がいやなのだろう。
日野があのビルに出入りするようになれば、千城に繋がる連絡係が増えるのと同じ意味になる。
飲みに出歩ける場所が格段と狭くなる。(今だって一か所しかないようなものだけど…)

「千城も神戸さんも勝手に話をすすめないでよっっ。だいいち、日野がこの店を辞めたらこのお店が大変じゃんっ!!!」
日野が長年勤めたこの店を大事に思っていることは誰もが知っていた。
だがそれも所詮、「今勤めている場所」だからといっていい。この店を守る人間は別にいる。
神戸がふふっと笑いながら英人を諭し、日野に向かって言葉を投げかける。
「新しい人間を雇えば済むこと。それにね、自分の居場所を見つければ、次はそこに愛着を持つものだよ。一か所に留まって井の中の蛙になる必要もない。日野君には充分なほどの技量と接客に対するポリシーがあるわけだし、生かせる道は一つじゃないと思うけど」

暗に独立を勧められているのは理解できてもそんな度胸はまだ持ち合わせていない。
やがていつかは…という夢はあったとしても、それは何年も先の話であって、こんなに具体的な案すら考えたことはなかった。
あまりにも突然すぎる。

「だからって…」
戸惑う日野の言葉を神戸が押しとどめた。
「怖気づいていたら何も始められないんだよ」
「それに店一軒の財務管理など野崎の片手間でもできるだろう。いずれ教えてもらえばいい」
神戸に言い聞かせられるように告げられ、引き継いだような台詞が千城から零れて、改めて野崎の名前が耳に響けば、忘れていたものが胸に甦るようだった。
「まだ野崎さんの仕事を増やす気なの?」
「そんなもの、増えたうちに入らないさ」
平然と語り続ける神戸と千城だったが、日野は神戸が内心で怒っているのではないかと思った。
野崎が今まで以上に多忙になることなど、神戸はきっと気に入らないだろう…。
英人のビルにある以上、日野の店と言いながらも『千城の持ち物』に近い存在で、千城や野崎の手を離れられないものになるような気がする。

「もういいですよ、この話は…。将来のことは自分で考えますから…」
日野が戸惑い困り果てたように呟くと、意味ありげに日野を見てから神戸が「それもそうだよね」と話題を変えた。
野崎の名前を出され、神戸がどのように感じているのか、日野はとても気になっている自分自身にも戸惑っていた。

雑談といっていい会話を30分ほど続けたところで、神戸が立ち上がった。
「もう帰っちゃうの?」
英人が「まだ遅くないよ」と言いたそうに神戸へと声をかける。
「ここに居たら君たちにあてられっぱなしだからね。それに2週間ぶりのお休みをゆっくりと寛がせてもらいます」
神戸は嫌味を言うことを忘れずにドアへと向かった。出ていく直前に、英人と千城に軽く手を振って、最後は日野を見た。
「またね」

いつもは「ごちそうさま」と出ていく。初めてかけられた言葉に違和感が生まれた。加えて何かを言いたそうな瞳。
今夜の逢瀬はなくなった…と言いたいのだろうか…。
そう思ったら一層落ち込んでいる自分がいた。

数分ほど千城と英人の会話に耳を傾けてはいたものの、どうにも神戸の態度が気になった。
心ここにあらずの状態でカウンター奥に佇んでいる姿を千城たちに気付かれたくなかった日野は、雑用でも片付けるようにちょこちょこと動いてからごみを抱えて裏口のドアを開けた。
大きなポリバケツの隣にはすでに空いた瓶のケースが数段積み上げられて壁を作っている。
影にある低いケースに腰を下ろした神戸が、膝に肘をついて両手で顔を覆っていた。

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コメント

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素敵な鳥籠計画は頓挫??
コメント甲斐 | URL | 2010-02-24-Wed 21:44 [編集]
っちょっと日野ちゃん、大丈夫?
なんかずいぶん凹んでるみたいだけど・・・・
野崎さんねぇ、気になるよね。
気になって仕方ないけど、聞けないし、っていうか知りたくないような、でしょうか。
こんなとき、英人くんにとっての日野ちゃんみたいな人がいて頭撫でてよしよしして、気晴らしできたらいいのにね。
でも悪魔に魂売ってしまうのも手かもしれませんよ、って悪魔がささやいていたりしませんか。。。。
Re: 素敵な鳥籠計画は頓挫??
コメントきえ | URL | 2010-02-25-Thu 07:03 [編集]
甲斐様
おはようございます。

> 野崎さんねぇ、気になるよね。
> 気になって仕方ないけど、聞けないし、っていうか知りたくないような、でしょうか。

どこまでも野崎のことが気になって仕方ない日野のようです。
すっかり恋する乙女になっちゃって…。

> こんなとき、英人くんにとっての日野ちゃんみたいな人がいて頭撫でてよしよしして、気晴らしできたらいいのにね。
> でも悪魔に魂売ってしまうのも手かもしれませんよ、って悪魔がささやいていたりしませんか。。。。

日野も今までいっぱい頑張ってきたので、頭撫でてくれる人がいてよいはずなんですけど…。
(英人じゃあ役にたたないし…)
日野も精神的に『オトナ』の部類なので、そばにいるのは大人のほうがいいのかな~と思っています。
甘えられるっていうか…。

悪魔もささやいていることだし。
このまま魂を売ってしまうようです。
コメントありがとうございました。
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