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BLの丘
かけがえのない日々の訪れ 14
2010-02-23-Tue  CATEGORY: かけがえのない日々
珍客といっていい。
英人は事あるごとに顔を出したが、千城と二人揃ってとは滅多にないことだった。
神戸の隣に千城が腰を下ろし、並んで英人が座った。
神戸は先程までの沈んだような雰囲気をパッと払拭してしまった。
「こんな時間にどうしたっていうの。もうベッドの中かと思っていたよ」
神戸の台詞を聞いて千城は眉をひそめ、英人はぽっと赤くなった。
「誰かさんが英人を遅くまで働かせるから外で食事をしてきたんだ。この近くの店だったからちょっと飲んでいこうという話になって寄ってみただけだ」
「英人君には随分早く帰ってもらったつもりだったんだけど。僕なんか今帰りだよ」
神戸が疲れ切った声で嫌味を告げれば驚いた顔の英人が跳ね上がるように神戸を覗き込んだ。
「えっ?神戸さん、まだ働いていたの?」
「誰かさんがうちの大事な人員を削っちゃうから皺寄せがきているの」
尖ったような口調は千城の前ではいつものことなのだろう。
まだ飲み物さえもらっていない神戸に、英人は少し申し訳なさそうに顔を伏せたが、千城は「それがおまえの仕事だろ」と冷たくあしらう程度だった。

日野は注文の品を神戸の前に置きながら、隣に並んだ二人にも素早く作れる物を出した。
好みはすでに知っていたし、これまでにも文句を言われたことはない。
千城はどんなアルコールだって口にできたし、英人が保護者の許可を得て飲めるものは決まっている。

何の注文も聞かずにスッと差し出した飲み物に、感心したような神戸の声が聞こえた。
「君も相当な気遣いがあるよね。千城たちを相手にここまでできるなんてさ。この心がけ、敬服する。これだけできるんだから今までの迷惑料と感謝料ってことで店の一軒も持たせてもらったら?一軒くらい大したことないでしょ」
神戸が千城をうかがい見た。
「自分の店が持ちたいなら、英人のビルで開業でもするか?どうせこの店にもそこそこの額は入れているんだ」
「千城ってばこの店のスポンサーにまでなっていたの?!」
冗談半分に言ったつもりだったのか、千城の答えに神戸が目を剥いた。
実際には泣きついてくる英人の世話で日野が抜けることの慰謝料のようなものだ。
千城はそれには答えず、ビルに『空き』があるということを強調した。
「開店祝いってことで改装費用くらい出してやるぞ」
日野は冷や汗をかいた。
どれだけ高額な『開店祝い』なのだろう…。

「あー、でもそれっていいかもね。英人君の絵を飾れる『画廊バー』みたいな趣向でさ。たまにオークションとか開いて顧客を増やしていくっていうのもありだよね」
「や、やめてくださいよ…。俺、経営学とかなーんにも分からないんで…」
いまだってただの雇われ業だ。
『自分の店』などといった千城の言葉には到底身分が追いつかないでいる。
そこに実力を発揮したような神戸の創作案が重なれば一瞬にして現実性を帯びてくるのが知れた。
焦って断りの言葉を入れる日野をよそに、千城と神戸の間では何故か話が盛り上がってしまった。

「大丈夫だよ、適当にやっていれば。千城が今この店に”寄付”している金額がいくらかはしらないけど、それをもらえると考えれば、早々簡単に経営難には陥らないって。最悪、資金繰りに困ったら『お金ちょうだい』って手を出せばいいんだし」
神戸は非常にのんきな口調だった。
自分で事業を展開する強みなのか。
『お金ちょうだい』って英人じゃないんだから、図々しく言えるはずがない。
「アトリエからならマンションも近いしな。英人が飲みに出るにはちょうどいい距離だ」
「隠し部屋とか作ってそうだよね」
「エントランスにガードマンでも配置させるか」
「高級クラブじゃないんだからさー」
話はどんどんと大きくなっていく一方だった。
蒼白になる日野と英人を放って、『大人の二人』は絶妙な会話を進めている。
長年で築き上げられた関係には多くを語らずとも伝わるものがあるようだ。

「オークションなんていうのを開くからにはそれなりの客層は保つべきだろう」
「そりゃぁ、僕だって安値で売る気はないけどさ。そういう会場を持つ時は貸し切りとかね。最低金額くらい設けさせてもらうけど」
「まぁその辺のことは神戸がプロデュースするんだからな」
「面倒な仕事は全部僕におしつけるんだよね…(怒)」
「必要な金なら支払ってやる(薄笑)」

身近で聞いたことのなかったテンポの良い会話には日野と英人はただ絶句するしかなかった。
千城は英人に関しての金銭感覚がどこか失われている。…いや、もともとない…。
日野の店という話から英人の絵の話へと話題が変化していけば、実行されかねないと日野は慌てた。
なんといったって、『有言実行』の千城である。

…特に英人に関しては…。

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コメント

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コメント高谷 | URL | 2010-02-23-Tue 08:14 [編集]
せっかく良い雰囲気だったのに、とんだ邪魔が…

神戸さん、はじめからそのつもりで日野さんを誘ってたんでしょうかね。
意外に独占欲強そうなお人なので、ちーさんとのお店の話、さっさと進めちゃいそうですね。
でもって、今日からはここが君の職場ねみたいな(^^;

千城と神戸さん、ある意味コワい2人ですよね。
でたー慰謝料だ!
コメント甲斐 | URL | 2010-02-23-Tue 10:13 [編集]
いいねーそのアイデア乗った!!
うん、すごくいい。
お酒の飲める画廊、絵画が鑑賞できるバー。
どっちにしても、私も行きたい。
常連になる、絶対。
オークションには参加できるかどうか自信ないけど(最低金額が結構高そう、だって英人くんの絵だモンね)

これで、英人ビルに英人くんの(千城の?)都合がいいテナントが次々埋まってくるね。
ガードマンさんもいるし、愚痴聞いたり優しく慰めてくれるお兄ちゃんも近くにいてくれたら英人くんがどっこも行かずにいられる。まさに千城の手のひらで転がせるのだ~~。
お金持ちの壮大な籠の鳥計画進行中。
後は実行あるのみですね。
中枢を担う日野ちゃん、神戸さんと二人三脚で頑張ってね(公私共に?)。
Re: タイトルなし
コメントきえ | URL | 2010-02-23-Tue 10:14 [編集]
高谷様
こんにちは。

> せっかく良い雰囲気だったのに、とんだ邪魔が…

ホント邪魔ですよね。
どこまでもご迷惑な二人です。
こーゆーところに気が回らない千城。もう少し空気の読める人になって…。

> 神戸さん、はじめからそのつもりで日野さんを誘ってたんでしょうかね。
> 意外に独占欲強そうなお人なので、ちーさんとのお店の話、さっさと進めちゃいそうですね。
> でもって、今日からはここが君の職場ねみたいな(^^;

お店を持たせる云々はたまたまな話なんですけど、神戸が日野を誘い続けたには一応理由があるらしいです。
独占欲強そうなのは当たっていますね。
まだ確実に日野を手に入れたわけではないので、強引にことは進めませんが、やがて、いつか…
高谷様のおっしゃる通りの行動が起こるはずです。
憎まれ口ばっかり叩いているくせに、ちゃーんと分かりあえている神戸と千城らしい。
こういうところで結託するあたり、似た者同士なんでしょうね。
(でも邪魔者…)

> 千城と神戸さん、ある意味コワい2人ですよね。

コワイと思います。
天下無敵っぽいです。
片や悪魔で片や魔王みたいな…
コメントありがとうございました。
Re: でたー慰謝料だ!
コメントきえ | URL | 2010-02-23-Tue 10:33 [編集]
甲斐様
こんにちは。こちらにもありがとうございます。

> いいねーそのアイデア乗った!!
> うん、すごくいい。
> お酒の飲める画廊、絵画が鑑賞できるバー。
> どっちにしても、私も行きたい。
> 常連になる、絶対。

いつか日野のお店…って考えていて、ここまでこじつけてきました。
イメージ的には後者の、絵画が鑑賞できるバーってところでしょうか。
定期的に絵も変わるので、新鮮味がある…みたいな。

> これで、英人ビルに英人くんの(千城の?)都合がいいテナントが次々埋まってくるね。

千城の理想郷ですね。
英人は確実に籠の中の鳥になっていきます。
まぁ、籠から出る気はなさそうですけど。
たまにへんな輩に襲われるので心配はつきない千城でしたから。

> 後は実行あるのみですね。
> 中枢を担う日野ちゃん、神戸さんと二人三脚で頑張ってね(公私共に?)。

さぁ、どんな結果になるでしょうか。
コメントありがとうございました。
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