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BLの丘
かけがえのない日々の訪れ 12
2010-02-21-Sun  CATEGORY: かけがえのない日々
たとえどんな状況になろうとも神戸を恨む気持ちは全く湧かなかったが、込み上げる情はあった。
身体だけを繋げた、過去に抱いた女どもとなんら変わりはないはずなのに、神戸に対しては意識が違った。
自分との関係がいかなるものなのか、はっきりと問うてみたい気持ちをいだきながら、だが神戸に連絡をとる方法を日野は知らない。
…いや、ありはするが、利用したくない手段だった。
オフィスに繋がるから…。
一歩間違えれば英人にまでばれる。日野が神戸のオフィスに電話をかける言い訳など思いつかない。

神戸は2週間ほど顔を出さなかった。
誘うのはいつも神戸からだったが、日野に用がなくなればこの店に来る理由もなくなったのか…。
時間をおいても週に一度は顔を見せていたことを思えば、この期間は長かった。
日野は悶々とした日々を過ごしていた。
神戸がはっきりと言葉にして気持ちを伝えることがなかったから、日野は独り善がりな思いをもつばかりだった。
カウベルの小さな鈴の音が聞こえるたびに入ってくる客を確認してしまう。
いつもの仕草だったがすぐ後に訪れるのは諦めの気持ちと溜め息だった。

だから久し振りに神戸の顔を見た時にはホッとした表情を隠すことができなかった。
…また来たのだ…。

2時間もすれば日付が変わるという頃。そして閉店時間がやってくる。
今日も来ないと思っていたから意外だった。
「御無沙汰しちゃったね。元気だった?」
カウンターの一番奥のいつもの席に座りながら、さりげなく声をかけてくる。普段と変わらない明るめの色をチョイスした服装だったが、少し痩せたのではないかと心配するくらい疲れている様子だった。
「ええ…」
日野は少しだけ嘘をついた。とても『元気』とは言えない毎日だった。

「もう、疲れたー。休日返上で2週間働き詰めってありえないよ」
神戸はいつもの調子を崩さず、ぼやきながらカウンターの上にぐでーとのびるように額を乗せた。
自分の力で物事を動かし続けなければいけない神戸を知ってはいても、その大変さは日野では想像もできない。
お互いの何もかもをさらけだすような踏み込んだ仲ではなかったから、実際に神戸がどのような仕事をしているのか詳しいことは聞いたこともなかった。
それに神戸が『疲れる理由』の一つをすでに耳にしたことのある日野は咄嗟に尋ねてしまった。
「千城さん、また出掛けられちゃったんですか?」
たとえ英人一人でもいなくなれば皺寄せもあるだろう。
「千城?…いや、まだ居るよ。来週末からいなくなるんだよね。だからその前にある程度キリをつけたかったっていうのもあるんだけど…」
何故この場で千城の名前が出てくるのかと、パッと顔を上げた神戸は一瞬不思議そうに日野を見返したが、すぐに理解したようで大まかに状況を説明してくれる。
千城と英人が一心同体のように存在していることは周知の事実だ。

千城がいなくなれば当然野崎も姿が見えなくなることは、これまでに聞いてきた話の中で承知していた。
どうにも日野の頭の中では神戸と野崎のつながりが消えなかった。
一度湧いた疑念はいらぬことばかりを想像させて、良い考えなどひとつも浮かびはしない。

神戸はアルコール度数の薄いカクテルを注文してきて、それからいつものように「今夜どう?」と小さな声で囁いた。
日野は初めて躊躇った。
もしも本当に野崎とまで関係を持っていると知れば、これ以上神戸に関わるのは良くないことのような気がした。
あの二人が自分たちと同じように後腐れのない関係だったとしても、日野の中にはすでに芽吹き始めた感情がある。
続ければこの思いは強くなるだろうし、このような神戸を見るのも辛くなる。
…今ならまだ間に合う…。

「神戸さんは、恋人は作らないんですか?」
問いに対しての返事をせず、曖昧に濁して聞いたつもりだった。
「恋人?作ってもいいけど」
突然の質問でも神戸は気にした様子もなく、今はフリーであることを強調する言い方をした。やはり野崎とも隠れた付き合いなのだろうと思えた。
そして、神戸はきっと、定位置に収まる気がない人間なのだとも推測した。

「君だったらいいな」
続いて神戸の口から洩れた言葉に日野はドキンとした。

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コメント

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コメント甲斐 | URL | 2010-02-22-Mon 08:45 [編集]
今日は切ない日野ちゃんの心情が行間にあふれ出していて思わず抱きしめてあげたくなりましたよ~

『やっぱり遊ばれてたんだ。
もう飽きたんだ。
2週間あの神戸さんが一人ってわけないし、他の誰か達と楽しんでるんだね。
野崎さんも来ないしきっとうまくいってんだ。
え?野崎さんもその手のオトモダチの一人?
「君だったら」ってああやっぱり揶揄われてるし・・・。』
Re: タイトルなし
コメントきえ | URL | 2010-02-22-Mon 09:58 [編集]
甲斐様
こんにちは。

> 今日は切ない日野ちゃんの心情が行間にあふれ出していて思わず抱きしめてあげたくなりましたよ~
>
> 『やっぱり遊ばれてたんだ。
> もう飽きたんだ。
> 2週間あの神戸さんが一人ってわけないし、他の誰か達と楽しんでるんだね。
> 野崎さんも来ないしきっとうまくいってんだ。
> え?野崎さんもその手のオトモダチの一人?
> 「君だったら」ってああやっぱり揶揄われてるし・・・。』

すっかり日野の心情を代弁していただきました。
まさにそのとおりでございます。
すっかり乙女な日野です。
神戸と日野がそろって現れて、揃って姿を見せなくなれば、より妄想の世界は激しくなるばかりです。
神戸には『やっぱりおとな』っていうイメージがついてる日野のようですから、"弄ばれた"感が強いのでしょうかね。
コメントありがとうございました。
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