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BLの丘
【バレンタインコラボ企画】 3
2010-02-10-Wed  CATEGORY: コラボレーション
英人は薫とはすっかり友達のようになった。一つ年下と聞いたが英人と違ってしっかりとした意志や意見を持っているところは感心させられると同時に、自分を守ってくれるようで安心する。英人が育ってきた生活感と似たところもあったから余計に親近感が湧いた。

ギャラリーを出られたのは遅い時間になってしまった。
いつもお世話になっているフランス料理店で食事をして帰ろうとねだった英人の言葉に嫌な顔一つ見せず千城は車を向かわせた。
帰り間際、挨拶に出た料理長の楯山と近況報告を交えた会話を終えた後で、英人は千城に「楯山さんに相談したいことがあるからあっちに行ってて」と願い出た。
以前にもこの店でクリスマスケーキを作ったことがあると聞いている千城だから、また何かを企んでいるのだろうと思われたらしく大人しく従ってくれる。
英人が手早く済ませようと、バレンタイン用のチョコケーキを作らせてもらえないかと頼んだら渋い顔をされてしまった。
「英人君の申し出は聞いて上げたいんだけどね。申し訳ないが今年は日曜日で昼間から予約客だけなんだよ」
そこで初めて今年のバレンタインデーが日曜日だったと知った英人は、薫と約束してしまったことに慌てた。最終的に店に行こうと頼んだのは英人の方だった。
「あ、…どうしよう…」
思わず呟いてしまった戸惑う言葉に楯山が何事かと話を聞いてくれて、薫とケーキを作る約束をしたと告げれば「それなら二人で作ったらいい」と提案してくれた。
「けど、ちゃんとした作り方なんて…」
「その前に来られないかい?うちで練習すれば…、そうだな、当日は一世の家で作らせてもらえるだろう。あそこにはそれなりの料理長たちも揃っているしね」
楯山は豪快に笑ってくれて、英人も頭をフル回転させた。

結局英人は、当日千城をなんとか言いくるめて昼間一人で待たせることにして、絶対に千城一人では立ち寄らないだろうと思われる榛名家本邸で薫との作戦を実行する計画を立てた。
きっと千城の母、百合子に頼めば厨房の一つくらいどうにかしてくれるだろう。彼女は千城同様、英人に非常に甘い部分がある。もちろん楯山には千城に内緒にしてもらうよう頼んだ。
すでに聞いてある薫のメールに変更点を伝えれば、週に一度は理由をつけて『練習室』に立ち寄れるという。これには楯山も頷いてくれた。

「随分と親しそうに話をしていたな」
千城のマンションに戻ってバスタブの中に浸かったところで、千城の聞きたそうだった話題がこぼれてくる。背中を千城の胸に預け、ようやく一日が終わったと安堵した。
「楯山さん?」
「違う。薫と言ったか?」
薫の名前が出た途端、ドキッとしつつもなんとか平静を保った。
「うん、…あの、結城さんっていう人と…って聞いたから、なんとなく、ね」
同じような境遇であれば話題だって色々生まれてくる。彼らの間柄は千城もすでに知っていたようだった。
「あの二人も一緒に住んでいるそうだな」
「え?そうなの?」
「軽井沢で結婚式も挙げたそうだ」
「結婚式?!」
仕事関係の人間としか思っていなかった英人は、プライベートの話までする仲なのかと驚いていた。千城はほとんどの誰にだって平気で英人との間柄を口に出すが、結城も同じタイプとは想像していなかった。
「ああ。まさか結城さんの口から惚気話が出てくるとはな…」
千城が結城との会話を思い出したかのように湿り気を帯びた英人の髪に唇を寄せた。この様子では相当込み入った話をしたのだろう。
薫が結城の隣に立っていた時、幸せそうに笑っていたのが頭に浮かんで、薫も今の英人と同じくらい愛されているのだろうと想像する。
薫と話していた時はバレンタインマル秘チョコケーキ作戦の話に盛り上がり過ぎてあまり踏み込んだ話は聞いていなかった。結城の立ち振舞いを思えば『榛名家』との繋がりもあるのだろうか。
尋ねてみれば過去のいきさつを説明してくれた。結城の両親が亡くなられていると聞けば胸が痛くなる。だから薫も結城にいろいろなことをしてあげたいのだろう。
結城に喜んでもらうためにも今回の作戦を成功させるのだと心に誓っていると千城の唇が英人の首筋を這った。
「それで楯山さんとは何の話をしていたんだ?」
ニヤリと笑った千城はすでに何かの企てがあることに気付いている…。英人は千城の手から逃れられなくなったとわかりながらも一応「ないしょ」と応戦してみたのだが無駄な努力で、結局店にディナーの予約を入れたことをばらすはめになった。
薫たちも同席することは黙り続けた。それがばれればケーキ作戦のことも連鎖的に気付かれると思ったからだ。一度会っただけの人間とバレンタインデーに共に食事をするなんて更なる計画があるのだと絶対に千城は感づいてしまう…。
「ね、ぇ…、もう、話したんだから……、あ…」
「ああ。じゃあ一人で決めてしまったことの仕置きとしよう」
どんな会話を交わそうが、英人の身体の方が先に千城に縋ってしまった。


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妄想スパイラル SKY様編


 個展の後で結城さんと食事をしてから家に帰ってきた。一緒に風呂に入ってのんびりとお湯に浸かっていると、結城さんが言った。
「英人くんとはたくさん話ができたかい?」
「はい、最初は俺も緊張してたんですけど、話してみたら結構話しやすかったし、すっかり友達になっちゃいました」
 個展の会場を出る時に見送ってくれた英人のにこにこした顔と千城さんの最初よりは少しだけ綻んだ顔を思い出して俺は言った。
「そう?彼も結構複雑な境遇みたいだから、きみみたいに同年代の明るい子が友達になると大分違うんじゃないかな」
「そうなんですか?……英人くん、ところどころ庶民の俺とはちょっと違う感覚なんだなぁって思うこともあったけど、1つ年上なのに俺なんかよりすっごく可愛くて、なんかこう守ってあげたい、みたいな感じで……」
 結城さんはくすりと笑った。
「きみがそう思うくらいだから、千城さんもかなりそう思ってるんだろう。眼の中に入れても痛くないくらいにね」
 ……千城さんかぁ……俺は挨拶しただけだけど、なんか近寄りがたい雰囲気だったよなぁ……。だけどそんな千城さんを英人は呼び捨てにしてたし……二人でいる時はもしかしたら想像できないような優しい顔になってたりするのかもしれない……。
「……信哉さんは千城さんと以前から知り合いだったんですか?」
「うん……僕の両親が生きていた頃は家同士の付き合いがあったからね、ただ彼はずっと海外にいたからそんなに親しかった訳じゃない。……話をするようになったのは4年くらい前からだよ」
 4年前か……俺が会社に入る前だから俺が知らないのも当り前だ。結城さんは33歳、ってことは丁度役員になったばかりの頃なのかな。
「…… その頃は彼が海外から帰ってきて今の会社を立ちあげてまだ間もない頃でね。榛名家の御曹司として、小さい頃から英才教育を受けて、人の上に立つことだけを教え込まれてきた人だから、とにかく凄かったよ。若いということは時に相手に見くびられたりしがちだが、彼はそんな風聞は蹴散らすように瞬く間に頭角を顕した。当時の彼は……そう、まるで野生の獣のような雰囲気だった。今もそうだが、その頃から既に人を威圧する風格があって、さらにゆくゆくは榛名グループを背負って立つというギラギラした野望が、まるで刃のようにこちらに突き刺さってくるようだった。……彼が興した会社は破竹の勢いで成長していった。…… 僕が彼の会社に営業に行ったのは丁度その頃だ。彼の会社がさらに大きくなることは明らかだったからね。門前払いされるかと思いきや、意外にも彼は忙しい中会ってくれた。昔何度か会ったことのある僕のことなど覚えてはいなかったと思うが、うちの会社の一貫したシステムに興味を示してくれてね、榛名グループの物件を何軒かうちで管理させてもらえることになった。勿論かなりの額の新規受注になったから、その功績が認められて僕は会社の役員に昇格した。……僕にとっては恩人のような人でもあるんだよ」
「……そうだったんですか……凄い人なんですね……」
 俺は溜息と共に言った。俺には想像もできないような生活なんだろうな……。それにしても、結城さん、そんなすごい企業に一人でそれもアポなしで営業に行くなんて……やっぱり考えることが違う……。
「でも今日久しぶりに千城さんと会って正直驚いたよ。英人くんには僕からもお礼を言わないといけないかな」
 結城さんはくすりと笑った。
「は?どういうことですか?」
「随分性格が丸くなった……というか、穏やかになった。……きっと、心から愛して、愛されている人が傍にいるからなんだろうね……きみと僕みたいに」
「ぶはっ!」
 俺はつい噴いてしまった。……ち、千城さん、あれで丸くなった!?穏やか!?……よ、よっぽど昔はとんがってたんだなぁ……。俺は結城さんの話を聞きながら、ライオンのたてがみが全部剣になってる変な生き物を想像してしまった。……近付いたら痛そうだし怪我しそうな雰囲気だ……。
「そ、そうなんですか……」
「そのうち4人で一緒に食事にでも行こうと言っていたよ」
「は、はあ……」
 その一言で俺はバレンタインマル秘チョコケーキ作戦(仮)を思い出した。……英人と一緒に今週と来週でなんとかケーキ作りをマスターして、バレンタインデーには結城さんをびっくりさせてやるんだ!
 俺はちょっとにんまりしながら心の中でガッツポーズをとった。


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